中間考査が、憂鬱でしかない!
「・・・・・・どうしてこうなった?」
月光に照らされ、辺りは淡く明るい。時間帯は---『夜』。
武偵高の第二グラウンドに、神楽ケンジは立っていた。
ケンジが『一直線上《ドストレート》』との戦闘で負傷したため、数日間部屋で休んでる間に、
---どうやら、『バスカービル内』で 問題 があったらしい。
それは、『バスカービルのメンバー達』の 立ち位置 を見れば解る。
バスカービルの女子達は一致団結しているようだが、その女子達の目の前が『問題』だ。
まず、自分の身長ほどの---長い、抜き身の刀を背負っているのは自称、キンジの妹の『遠山 かなめ』。あの刀は確か先端化学兵器、単分子振動刀《ソニック》。『これで斬れないモノなんかない』とか言ってた、恐ろしい刀だ。
---ここまでなら『まだいい』。かなめとアリア達は、もともと対立していたからな。
『問題』は、かなめの隣・・・・・・
まるで、『かなめの味方』であるような位置に立っているのは『バスカービルのリーダー』。
「---どういうことだ? ・・・・『キンジ』」
「・・・・俺にもわからん」
(・・・・・・じゃあ、どうしようもないな)
---そう。今、この第二グラウンドは俗に云う『修羅場』です。
「おいおい。キンジから『緊急の電話』があったから来たってのに。痴話ゲンカに巻き込むんじゃねーよ」
「っな!? ち、痴話ゲンカとかじゃないわよ!」
ケンジが文句を言うと、アリアが叫んできた。
「あっれーー? ケーくん。『一人増えてない』?」
「・・・・・・」
理子がケンジの方を見ながら声を上げる。
「初めまして。ケンの契約精霊、エクレール・ティアニスです」
ティアが、深々と一礼する。
「・・・・ケーくん」
「?」
何故か、理子が下を向きながらプルプル震えている。
どうかしたのか?
「---超カワイイじゃんッ!!」
「は?」
バッと勢いよく顔を上げた理子は、こっちに向かって走ってくる。
「理子にもなでなでさせてーー!」
(---いやッ! 俺、なでなでしてねぇーし!)
「ッ!?」
しかし、ティアはケンジがツッコむよりも早く、驚いたようにケンジの後ろに回り込み、ケンジの背中にしがみ付いてきた。普段クールで無表情なエシルやレストと違い、ティアには表情がある。
(まぁ、それが普通なんだが・・・・)
今も怯えているのか、頬が赤くなり瞳が潤んでいる。身体も震えてるし・・・・
---ティアが怯えている理由は明白だ。
なぜなら、今、理子が持っているのは『ショットガン』。弾が拡散し、標的を『面』で捉えるモノだ。
拳銃弾と違い、『避けられない弾』を撃つことができる。
『ショットガン』を持った理子が、嬉しそうに笑いながら走って来ている。
・・・・・・普通、引くだろ?
「おい! やめろよ、理子。怯えてるだろ」
「ふふふ・・・・怯えた表情もカワイイですなぁーー」
(---誰か、助けてくださいッ! 犯罪者が、犯罪者がいます!)
「・・・・お、お姉ちゃんたち。そろそろ、始めない?」
かなめまで引いてんじゃん・・・・。
「で、どうすんだキンジ。俺を呼んだってことは、『なんか』するんだろ?」
「---『決闘』だってさ。アイツらが勝手に始めちまったよ」
「・・・・だろうと思ったよ」
「止めてもムダよ、ケンジ」
「止める気はねぇーよ。ただ・・・・」
そこでケンジは言葉を止め、アリア達を見回す。そして、
「『ランバージャック』以外の『決闘方法』を求めるぜ」
「「「「「「!?」」」」」」
この場に居た全員が驚愕する。バスカービルのメンバー、かなめ、あと・・・・
「・・・・ジャンヌ。お前居たんだな」
「---その言い方は、無礼ではないかッ!?」
「・・・・すいません」
ケンジが素直に謝ると、
「それで、ランバージャック以外の方法とは?」
ジャンヌがキリッとした表情で聞いてきた。どうやら切り替えたらしい、『決闘』への意識に。
「それは、キンジに聞いてくれ」
ケンジは、アメリカ人などがよくやる『やれやれ』のポーズをする。
すると、全員の視線がキンジに集中する。
「『決闘』は、もう止めねえよ。やれ。お前らの気が済むまで。だが俺は、こういうイジメみたいのがこの世で一番嫌いなんでな」
「イジメじゃないよ~、かわいがりっていうんだよ~」
手メガホンで理子がそんな事を言ってくる。
「似たようなもんだろ」
だが、ケンジが切り捨てる。
そして、その後にキンジが続く。
「俺が提案するのは・・・・」
そこでキンジは、一呼吸入れてから・・・・声を上げた。
「---『五対五の集団戦』だッ!!」
この場に居るのは、合計、十人。そしてこの場にはいないが、すでに『こっちを狙っている』スナイパー、レキを合わせると十一人になる。
つまり、アリア側は五人。かなめ側はキンジと、ケンジにティア。そして、
「やはりケンジの周りでは、いつも『争い事』が起きますね」
「ケンジさんに付いて来て正解です」
ケンジの両隣に立っているエシルとレスト。
一人で外出すると、必ず『何かがある』ケンジに見かねた二人は、今度は自分達も付いて行くと言い出したのだ。最初は断ったが、二人の冷たい視線に、ケンジは心を折られた。
「あれは、キツかったな・・・・」
「「?」」
どこか遠い目をして呟いたケンジに、エシルとレストは首を傾げた。
「ケンジ。ホントにすまん」
「・・・・何謝ってんだよ」
「いや、巻き込んじまったからな」
「それは違うぜ、キンジ」
「?」
「これは『バスカービル』の問題だ。だったら、俺もメンバーとして参加するのが『道理』だろ」
「け、けど『こっち側』だぞ!?」
「関係ねぇーよ。・・・・・・かなめ。今回は、『協力』してやる」
「・・・・・・」
(その無言は、『異存無し』って事と解釈するぞ・・・・)
そして、ケンジは自分の契約精霊たちに視線を向ける。
「今から始まるのは、『五対五の集団戦』だ。悪いけど、ティアは観戦しててくれないか?」
「え?」
ティアが驚いたように顔を上げてくる。自分も参加できると思っていたのだろう。
「そんなぁ・・・・。ティアも参加したいです!」
『ティア』という名前が気に入っているのか、ティアは一人称が『ティア』だ。
---って、今関係ないな。それ・・・・
「大丈夫。ティアも見てみたいだろ? エシルとレストの『実力』を・・・・」
「ッ! そ、それは・・・・」
「自分の『ご主人様《マスター》』の戦いを見ててくれないか? 俺は、ティアに見ててほしいんだけどな」
そう言いながら、ケンジはティアの頭を撫でる。
我ながら、マジで『ヒステリアモード』っぽいな、これ。
「は、はい! ティアはケンの戦いを見ることにします!」
「・・・・ありがとな」
ティア、ホントはゴメンな。後で、ちゃんと謝るから・・・・
「こっちはあたしを入れて、理子と白雪とジャンヌ。あと、ここにはいないけどレキ。この五人よ」
「こっちは俺とかなめとケンジ。それとエシルとレスト。この五人だ」
さて、メンバーも決まった。そろそろ・・・・
「じゃあ、もう始まってるわよ」
アリアが嬉しそうに始まりを告げる。
「相変わらず好戦的なヤツだな。・・・・・・キンジ。白雪とジャンヌは、お前とかなめに任せる。アリアと理子とレキは、俺たちに任せろ」
「・・・・わかった」
ケンジの言葉に、キンジが短く答える。
「さーて、神楽を始めるか!」
---やっと、『開戦』だな。
「理子とは誰が遊んでくれるのかな~?」
そんな事を言いながら、理子は『ショットガン』を構える。
「・・・・まぁ、『まとめて』でも全然オッケーですよ。くふふ」
---バンッ!
理子が笑いながら『ショットガン』の引き金を引く。
『面』となった弾丸がケンジ達に迫る。
「『白き城壁《ホワイト・ウォール》』」
しかし、その弾丸は『白い魔法陣』に止められる。
「私が遊び相手になりましょうか?」
ケンジの左隣りに居たエシルが声を上げる。
「じゃあ、エシルん。理子と『いいコト』しよ!」
・・・・お前らがやってること、すでに『殺し合いもどき』だからな。そこんとこ忘れるなよ。
「ケンジッ! あたしの相手はあんたね!」
今度は、右側からアリアが突っ込んで来た。
これにはさすがに、ケンジも神楽《しんら》を抜こうとしたが・・・・
「喰らえ、灼熱の劫火球。『火炎球《ファイア・ボール》』」
アリアに向かって、燃え盛る球体が投げられる。
「---ッ!」
しかし、アリアもそれをバク転でギリギリ避ける。
「アリアさんの相手は私がします」
そう言って前に出たのは、ケンジの右隣りに居たレスト。
「上等よ!」
アリアは、すぐに体勢を整えると両手に持っていた『ガバメント』を同時に発砲する。
「炎よ。巨人に苦痛の贈り物を・・・・」
こっちに向かって来た弾丸を、レストの炎が焼き尽くす。・・・・・・それより、アリアって巨人か? 逆だろ、どう見ても・・・・。
「さてと、俺もそろそろ・・・・」
ケンジが一歩、前に踏み出そうとすると・・・・
---バスッ! バスッ!
「ッ!?」
いきなり、足元に銃弾が飛んで来た。
(・・・・そういえば、俺の相手『一番の難敵』じゃね!?)
恐らく、この銃弾の送り主は・・・・『この場にいない者』。
「そうだろ。『レキ』」
そして、ケンジは神楽《しんら》を抜いた。
「今の狙撃の位置として、場所は・・・・」
ケンジの視線は、グラウンド脇の桜の木に向く。
「そこかッ!」
そのまま、全力で駆け出した。
銃弾は、『直線』にしか飛ばない。例外もいくつかあるが、今はそうと仮定する。
さっきの銃弾は、この方角から飛んで来た。
「・・・・・・ッ!?」
刹那、ケンジは足を止めた。なぜなら、
「神楽流剣舞 ニノ型 神楽瞬身・・・・ッ!!」
さっきまでケンジがいた場所に銃弾が飛んで来たから。
その銃弾をギリギリ、高速移動で避けた。
「・・・・迂闊に近づけないな」
レキがいる場所は解っているのに、近づけない。何とか、『一瞬』でも気を引く方法があれば・・・・。
「・・・・ん?」
---あるじゃん。『その方法』。
「・・・・・・」
その時レキは、無言で『ドラグノフ』を構えていた。
「・・・・・・!」
そして、そのスコープにまた『ケンジ』が映った。
「-----カナさん。使わせて貰うぜ!」
ケンジはただ、立っているだけだ。しかし、すでに『構えている』。
「・・・・カナさんの技と一緒になッ!」
こっからは『見よう見マネ』。
だが、うまくいったようだ。ケンジの身体の前で『マズルフラッシュ』が輝いた。
しかし、拳銃本体はまったく『見えなかった』。
---『不可視の銃撃《インビジビレ》』
カナの得意技である銃技。それをケンジは、カナから貰った『ピースメーカー』でやったのだ。
もちろん、初めてだけどな。
「神楽流剣舞 ニノ型 神楽瞬身・・・・ッ!!」
もう一度、ケンジは高速移動する。
---キイィン!
レキがケンジの銃弾を『銃弾撃ち《ビリヤード》』したため、『一瞬』だけ気を引くのに成功した。
そして、ケンジが桜の木の下に着く。
「神楽流け・・・・」
だが、ケンジの言葉は最後まで続かなかった。
「う・・・・うぇ・・・・うぇえええええええん・・・・!」
なぜなら、かなめの泣き声がケンジの言葉を掻き消したから。
キンジの方に視線を送ると、キンジは『降参』のジェスチャーをやっている。
「・・・・・・まぁ、仕方ないか」
こっちのリーダー《キンジ》が降参したんだ。
ケンジは桜の木の上からこっちを見ていたレキに、右手を見せる。
その手の人差し指は、ピースメーカーのトリガーガードに掛けて・・・・銃をブラリと垂らしている。
ケンジは、キンジと同じ『降参』のジェスチャーをやっていた。
---その後、何故か『深夜のお月見会』が始まった。
・・・・・・どうしてこうなった?
「ふざけンじゃねェぞ、三下ッ!」
ケンジ達が『深夜のお月見会』をしている頃、一直線上《ドストレート》は月に照らされた闇夜の中に立っていた。『あの時』の一撃でかなりのダメージを負ったが、すでに『全快』していた。
「・・・・・・とりあえず、死体決定だ。あのクソ野郎ッ!」
ドストレートはこれから、『東京武偵高』に向かうつもりだった。
もちろん、ケンジ達を『始末』するために・・・・
しかし、ドストレートが一歩前に踏み出した時だった。
「-----無理して出てきたってのに・・・・何だァ~、このバカみたいな三下は・・・・」
暗闇の中から声が響いた。
「誰だッ!?」
ドストレートが、慌ててそっちに意識を向ける。
「---ハッ! 誰でもいいだろ」
暗闇の中から出てきたのは、『白髪の少年』。まるで『負傷者』のように杖を突きながら歩いていた。
「・・・・ッ! 邪魔なんだよ・・・・・・三下がァッ!!」
ドストレートが一気に駆け出す。一瞬で少年の前に立つと、『黒い霧』を右手に纏った。
しかし、少年は・・・・・・・・笑っていた。
少年は首筋にある『黒いチョーカーのようなモノ』に、手を伸ばしていた。
-----ピッ!
少年は、そのまま---『電極のスイッチ』を押した。
「ここから先は、破滅への一直線上だァッ!」
ドストレートが『黒い霧』を纏った右手で少年を殴った・・・・・・・・はずだった。
---パァン!
「---ッ!?」
ドストレートの右手を、少年は『何もせずに弾いた』。
「哀れだなァ。本気で言ってるとしたら、抱きしめたくなるくらい哀れだわ~・・・・」
少年はドストレートを見ながら続ける、
「---悪ィが、こっから先は『一方通行』だ!」
少年が右足を上げ、コンクリートで舗装された道路に一気に降ろした。
---バキィィィィィッ!!
刹那、道路がまるで『地震』でも起きたかのように『隆起』し始める。
それも、---ドストレートに向かって。
「なッ!?」
ドストレートは慌てて身構えたが、・・・・遅い。
「---おとなしく、無様に、元の居場所に引き返しやがれェッ!!」
ドストレートの目の前には、すでに少年がいたから。
「・・・・がはッ!!」
少年の右手がドストレートの顔面に炸裂する。
そして、ドストレートは吹っ飛ばされる間もなく、『消滅』した。
それはまるで、立ち込めていた霧がキレイに晴れるかのように・・・・・・
「・・・・ちッ! 無駄な時間使っちまったぜ」
---少年・・・・『一方通行《アクセラレータ》』は、再び暗闇の中に消えた。
Go for the next!!!
どうでしたか?
この物語は『アクセラレータ』も参戦します。
そして遂に、次回は『体育祭』!!
---カミトやエスト、レスティアが登場します。
お楽しみに!