来禅高校のとある女子高生の日記   作:笹案

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十香デットエンド ~士道視点〜

 4月10日。なんてこともない日になるはずだったその日は、俺の今までの人生の中で最も不思議な日になった。

 

 昨日までは琴里や殿町達と騒がしくも平和な日常を送れていたのだが、それは精霊と出会ってしまったことで崩れていってしまいそうだ。

 精霊。

 空間震警報が鳴っているときに街へ琴里を探しに行って出会った存在。

 この世のものとは思えない程美しく、ASTの攻撃を片手であしらえる程に圧倒的な強さを持っている少女。

 

 故意に起こしているか、それとも無意識に行っているのかは分からないらしいのだが、空間震は精霊によって起こっているらしい。

 どちらにしても、ASTは空間震を起きないように精霊を攻撃し、殲滅しようとするだろう。

 

 だけど、精霊が故意に空間震を起こしているなんて、そんなことあるはずがない。……そんな奴があんなにも悲しい顔をするはずがない。

 

 今にも泣きそうな目を。

 自分以外を映さない瞳を。

 世界に絶望しきった顔を。

 

 

 泣かないでくれ、世界はそんなに悲しい物じゃないんだ。

 世界には、そりゃあ悲しいこともあるけどさ、楽しいことだってたくさんあるんだ。

 だから──そんな絶望しきった顔、しないでくれよ。

 

 

 

 ……まあ、そうは思っていたのだが、それは間違っていないのだが。

 

 ……いやいやいや! 何さ、精霊に恋させるって! 対話なら分かるけど! おかしいだろ! そんな流れじゃなかったって! 

 そんなことを思いながらベットにダイブ。

 風呂にも入っていないが汚いとかそんなことは関係ない。琴里の話に渋々ながら承諾したら、じゃあ明日から訓練よ! などと悪人面で言われ、その後に知らない男の人に精霊のことや敵対組織の話を意識が飛びかけながら深夜まで長々とをされて、よく分からない書類にサインをさせられ、今やっと家に帰れた所だったのだから。布団を被った瞬間、俺の意識は驚くほど早く落ちていった。

 

 

 

 翌朝。

 重い体を引きずり学校に行き、眠い授業に耐えて帰りのホームルームを終え、そして帰りの支度を済ませたときだった。

 

「あ……あの、五河、君」

 

 鈴を転がすような綺麗な声。

 しかしその声は弱々しく、消え入りそうだった。

 ……聞いたことがある声だと思いながら、俺は後ろを振り返った。

 そこには、目を閉じて顔を下に向けている、肩につくくらいの長さの髪の女子生徒の姿があった。この女子生徒は、昔から俺の隣の家に住んでいる女の子で、名前は……

 

観月(みづき)京乃(きょうの)……?」

 

 俺がそう聞くと観月はビクッと肩を震わせ、こくこくと頷いた。

 

 観月京乃。去年から同じクラスで、小さい頃から俺の隣の家に住んでいる少女。

 基本的に弱々しい表情をしていて、人と話すのが苦手なのか、いつも自席にいたような気がする。

 なんてことを考えながら、話しかけてきている観月を見る。観月はそんな俺の視線からビクッとして目を逸らしたあと、俺の顔を遠慮がちに見つめて口を開いた。

 

「………あの、大丈夫ですか? 疲れて、いるみたい、ですけど」

 

 俯きながら途切れ途切れに彼女はそう言った。

 もしかして、昨日のフラクシナスの一件での疲れが顔に出てしまったのだろうか? 

 ……頑張っていつも通りに振る舞っていたつもりだったが、無理があったか。

 

「全然大丈夫だ。その、悪いな。気を使わせてしまって」

 

 俺は少し気を落とすと、観月はぶんぶんと首を横に振った。

 

「そ、んなことないです! あと、あ、あの。あ、飴どうぞ。……さ、さようなら!」

 

 観月は俺の手にレモン味の飴を乗せると、慌てながら自分の席に戻った。

 ……何だったんだろう? そう思いながら手の上に乗っている飴を見つめる。

 そこまで観月と仲良くなかったから分からないけど、彼女は昔から積極的に人に話しかけるタイプじゃなかったような気がするのだが。

 ……ん? 昔から? 

 俺は自分の思考に疑問を持った。

 そういえば観月って昔はあそこまで──

 

 そこまで考えた所で誰かに話しかけられたことにより、その思考は遮断された。

 

「五河士道。話がある、着いてきて」

 

 声をかけてきたのは鳶一折紙だった。学年一の天才であり、精霊と敵対している組織であるASTに所属している少女。

 さっき観月と俺が話していた時にこっちを見ていたのだが、もしかして話が終わるまで待っていてくれたのだろうか?

 そんなことを思っていたら、突如鳶一に手首を捕まれ、引きづられながら教室を出た。その際に落とさないよう、レモンキャンディーをズボンのポケットにいれておいた。

 教室から出るときに、観月に不安そうな顔を向けられ、女子の集団にはキャーキャーと叫ばれ、後方にいる殿町にはポカンと口を開けられたが、今はそのことについて考えられず、何で鳶一に引きずられてるのかということについて考えるしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「……私のような犠牲者を増やさないようにする為に、か」

 

 鳶一が屋上の扉の前から立ち去ったあと、俺は壁にもたれかかって息を吐き、その言葉を呟いた。

 琴里は精霊が世界を壊すことを対話で解決しようとし、鳶一は精霊を殲滅することで解決しようとしている。

 どちらのやり方も間違ってはいないのだろう。

 だけど、ASTのやり方では双方が悲しい結末を迎えるだけだ。

 精霊は世界から憎まれ続け、鳶一は精霊に心をとらわれたまま。

 

 

 ……まあだからといって、琴里のやり方に賛成という訳ではないのだが。

 だから何だよ精霊に恋をさせるって。ふざけてんのか? 

 いや、本人達は至って真面目なんだろうけど。

 そうでなかったら、フラクシナスなどという空中艦に乗っている意味が分からない。

 

 ……俺はどうすればいいんだ。

 俺はため息をつき、屋上の前から立ち去ろうとした時、廊下の方から女子生徒の悲鳴が聞こえた。

 

 その女子に駆け寄ると、その近くに人が倒れているのことが確認できた。

 驚いて近づいてみると、倒れている人物は見たことのある顔だった。

 

「令音さん……!?」

 

 

 

 琴里の所属している組織の解析官である令音さんと鉢合わせ、高校に来ていた琴里と合流し、生物室のあったはずの部屋に行き、間違うとペナルティでラタトスクやクラスメイトに黒歴史を晒されるという非常にありがたくない特典付きでギャルゲーをやらされ、そして帰宅。

 

 ……辛い。とても辛い。

 妹とその他大勢の前でギャルゲーをしているという状況も俺の心を削っているんだが……

 

 何でミスったら黒歴史が晒されるんだよ! 

 封印したかった過去が俺のSAN値を確実に削っていく……! 

 それに公開処刑とか何プレイだよコンチクショウ!!! 

 

 そんな思いや焦燥を胸に、恋してマイ・リトル・シドーというギャルゲーを始めてから10日が過ぎ、遂に全クリをすることが出来た。

 安心したのだが、二次元か三次元にパワーアップして、たまちゃんや鳶一を褒めちぎることになった……のだが……

 

 ただ褒めていただけのはずが、たまちゃんと結婚したいという話になった途端に恐ろしい形相になってしまったたまちゃんから逃げ、次に好感度を上げることになった鳶一も何故か付き合うことになってしまった。

 

 そして鳶一からも逃げてしまい、精神的にくたくたになりながら図書室の前を通ったら、丁度そこの扉を開けた観月と衝突した。

 

 ……頭付きは食らったが、鳶一の時みたいなラッキースケベなイベントなんか起こらなかった。

 ぶつかったあと、めっちゃ謝られたけど。

 その様子を見ていたのか、琴里からインカム越しに声をかけられた。

 

『士道、彼女なんか良いんじゃないかしら』

「……は?」

 

 俺は慌ててインカムを抑え、小声で話しかけた。

 

「……ま、まだやるのか」

『ええ、当たり前でしょう? 

 彼女も鳶一折紙同様、人に言いふらすタイプではないし、知らない仲でもないし』

 

 よくチュッパチャップスも貰ってたしとね、と呟く琴里。心なしか嬉しそうな声である。

 

『士道、今からいう言葉を……』

「いや、何か嫌な予感しかしないんですけど!!」

 

 琴里が命令しようとする前に強制終了させた。

 ラタトスクの言葉に従ってしまったせいでどれだけの被害を受けたと思っているのだろうか? 

 そう思い、半端ヤケになりながら、俺は自分から観月を褒めることにした。

 

「……観月って昔から可愛いよな!」

「……? 五河君、何言ってるの?」

「もう超可愛い!」

「あの……」

「観月マジ天使!」

「あの、五河、君?」

「可愛い、可愛いよ!」

「……」

 

 まくし立てたせいか、観月は茫然としている。

 その反応で冷静になって、恥ずかしくなり顔を下に向けた。

 

「だからさ、そんなにビクビクしなくても良いと思うぞ? もっと自分に自信を持って良いと思う」

 

 そこまで言って顔を上げて観月の顔を見た。

 彼女の顔には無理やり作ったかのような笑みが浮かべられ、その目からひと粒の小さな雫が落ちた。

 ……あれ? 何か言っちゃ駄目なこと言ったか? 

 そんなことを思ったりもしたが、全くと言っていいほど心当たりがない。

 だが。彼女の作った笑みの中に隠れている絶望、恐怖といった感情には気づくことが出来た。

 彼女の身に何があったのだろう。何故彼女に隠れている絶望に気づくことが出来なかったのだろう。

 それに、俺と観月は昔からの()()()()なのだから…

 だから何なのだ? 

 自分の中にある訳のわからない感情に振り回られる中、彼女の声が聞こえた。

 

「……そんな、はずは……」

 

 観月が戸惑ったように震えた声でそこまで言った途端、彼女の体がぐらりと傾いた。

 

「観月!?」

 

 俺は驚きながらも、倒れそうな彼女の体を支える。

 声もかけてみたが、気を失ったようで返事がない。

 ……昨日も倒れてたけど、何か病気でも持ってるのだろうか? そう思いながらインカムを突くと、暫くの沈黙の後に琴里から返事が帰ってきた。

 

『士道。彼女を保健室に送ってあげなさい』

「あ、ああ分かった。えっと琴里……」

『何よ』

「……訓練、もう良いのか?」

『人が倒れたんだしそっち優先に決まってるじゃない。それとも何? 彼女のこと放っておいて訓練続行する? いや、別に私はそれでもいいけど、この場を他の人に見られていたら、士道は倒れた女の子を見捨てたクズ野郎と言うことに……』

「いや、そんなことする訳ないだろ!!」

『ふん、ならそれで良いじゃない。士道は京乃を運べば良いの。……そうね、起きるまでは待ってあげたら? 起きた時、見知った顔があったほうが嬉しいでしょうし』

 

 心なしか柔らかい声音に同意し、どうやって観月を保健室に運ぶかを考える。おんぶは相手が起きていないと無理だから、お姫様だっこってやつになるのだろうか。

 何か恥ずかしいと思いながら、観月の体を持ち上げた。

 不可抗力で触ってしまった太ももや、鼻にふわりと入っている甘い香りに良からぬ考えが……

 ここまで考えた後、そんな邪念を振り切るように頭を振る。

 ……観月、軽いな。まさか本当に持ち上げられるとは思ってなかった。ちゃんと飯食っているのか? 

 少しの不安を感じつつ、直ぐ近くにあった保健室に入る。驚いた顔をしている保険の先生に事情を説明し、観月が起きるまでここにいる旨を伝えると、快く承諾してくれた。

 

 

 観月を保健室に運んで数十分が経過し、起きないんじゃないかと不安になってきた時、観月は目を覚ました。

 彼女は、隣に俺がいることに驚いていたようだが、すぐに何かに思い当たったのか、納得した表情を浮かべていた。

 

「ごめん、いきなりあんなこと言って」

 

 俺は頭をさげて謝った。

 可愛いだの、天使だの、そんな仲良くもないやつに言われて嬉しいはずがないし、いきなりそんなことを言われたから驚いて倒れてしまったんだろう。

 だから、そのことについて謝ったのだが……

 

「何が、ですか?」

 

 きょとんした顔でそう返されてしまった。

 本当になんともないかのように。

 その反応に、何か違和感を感じながら俺は言葉を紡いだ。

 

「何がって、いきなりあんなこと言ったことだよ」

「……? あの、もしかして何かあったんですか? 

 すみません、五河君と図書室前で会ったのは、覚えているんですけど、その後の記憶が無くて……」

 

 覚えていない、のだろうか。それはそれで俺にとっては嬉しいというか好都合なんだが……

 そんなことを思っていたら、ずいっと顔を近づけられた。

 

「あの……何、話していたんでしょうか?」

「え……? あ、いや、しょうもない話だし、聞いても面白くないぞ?」

「……別に面白くなくて、良いです。だけど、自分が何してたのかくらいは、知りたいです」

 

 取り敢えず、興味を減らす方向に持って行こうとしたのだが、逆効果だったようだ。

 寧ろさっきよりも興味を持たれているような気がする。

 

「えっと……だけどだな……」

 

 

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──────

 

 

 冷や汗をかきながらその続きを言おうとした時、空間震警報が鳴った。

 

「空間、震……」

 

 観月が音のする方を見ながら呟く。

 

「またか。観月、シェルターまでいけそうか?」

 

 いきなり倒れたし、後遺症みたいなのが残っていないか不安なのだが……

 

「……大丈夫。全然大丈夫、だよ。

 だから五河君は、私の心配なんてしなくていいから、……君は、自分の心配をして、ね?」

 

 弱々しい笑みを浮かべながら彼女はそういった。

 ……単なる親切心から言われた言葉なのだとは思うが、今の俺にはその言葉が違った意味で聞こえてしまう。

 

『士道、空間震よ。一旦〈フラクシナス〉に移動するわ。戻りなさい』

 

 精霊の前で自分の身の心配なんかしてても、下手したら死ぬんじゃないかなぁ……なんてな。

 

 

 

 本当に死ぬところだった。だけど、精霊……十香にはデートまで取り付けることが出来たし、まあ結果オーライだろうか? 

 

 そう思いながら布団を被る。 

 

 十香とデート。デートって何をすれば良いんだ。遊園地にでも行くのか? 

 ……思うようにいくだろうか? 

 久しぶりにあの呪縛(ギャルゲー)から解き放たれたんだし、明日も学校があるのだろうから早く眠りたいのだが、緊張して眠れない。暫くの間布団にくるまっていたのだが全然寝つけないので、寝るのは諦めて布団から出た。

 

 ちょっとは眠くなるかもしれないし、ホットミルクでも飲むか。

 そう思い、物音をたてないようにしてリビングに行き、カップに入れたミルクをレンジで温めてスプーン1杯分のハチミツを入れて自室に戻った。

 ボーッとしながらちびちびと飲み、カップが空になった後、制服のポケットに飴を2つ入れていたことを思い出す。

 ……琴里に朝はチュッパチャップスなんて食うなと言ったが、自分も人のことは言えないかもしれないなんて思いながらポケットからブドウとレモン味の飴を取り出して、なんの気なしにレモン味の飴を口に含む。

 その味で、昔飴をくれた子がいたことを思い出した。

 よく覚えていないけど、世話焼きな子だった気がするな……

 そんな懐かしいことを思い出すと同時に少しずつ眠気が出てきた。その眠気に身を任せ、意識は遠のいていった。

 その日は、懐かしい夢を見たような気がする。

 

 

 

 

 

 ……学校が休みで、十香と会って、デートで。

 

 最初はいきなり現れた十香に驚いていたが、ラタトスクの助けもあり、順調にデートをすることが出来た。

 ……ラタトスクの策略で大人の休憩所の前に来てしまった時は、泣きたくて仕方がなくなってしまったが。

 それはさておき、今、俺と十香は公園にいる。

 そして、十香にこの世界にいていいんだといい、それを聞いた十香は泣きそうな顔で恐る恐る俺の手を取ろうとして──

 

 嫌な感じ。寒気。殺気。

 そんな悪意の塊が十香の方へ向かっているのを感じて俺は十香を突き飛ばした。

 十香には不満を言われるかもしれないけど、仕方ない。そう思いながらぎゅっと目を閉じる。

 そして、誰かに抱えられる感触と訪れる爆音。

 抱えられた後、凄い勢いで体が引っ張られて引き裂かれるような痛みが来たが、それも一瞬の内に終わる。

 不思議な浮遊感がなくなったから恐る恐る目を開けると、目の前には何が起こったのか分からずに困惑している十香と、国内で人気のある魔法少女のお面を被った女の人がいた。

 

 

「……あの、助けてくれたんですか? ありがとうございます」

「……」

 

 俺がお礼を言うと、女は無言でぺこりと頭を下げ、目にも止まらぬ速さで跳んでいった。

 もしかして精霊なのだろうか……? 

 あれ、そういえば精霊ってそんな何人もいるものなのか? ……琴里には言われてないが、可能性はあるな。

 

 そんなことよりも、俺と十香は今、公園の外の路地裏のような所にいるみたいだが、この後どうすればいいのだろうか。

 そんなことを考えながら、インカムを突くと琴里の声が飛んできた。

 

『……な、何よ士道!』

「何って……どうすれば良いんだ?」

『そんなことも考えられないの? 少しは自分で考えてみたらどう? そんなことだから士道はミジンコレベルなのよ。……急いで十香とキスをしなさい』

「は? 何言って」

『取り敢えず十香とキスすれば良いから! そうすれば十香の精霊としての力は封印されるの! 詳細は後で伝えるから早くしなさい!』

 

「……え、あ、わ、分かった」

 

 インカムから琴里の焦った声が聞こえる。

 何でなのかは分からないが、急いでキスをしないといけないらしい。

 

「と、十香……」

「な、何だ、シドー」

 

 俺の動揺を察してか、十香も緊張した声を出す。

 

「……言ったよな。この世界で暮らしたいって。これ以上この世界を傷つけたくないって」

「あ、ああ、勿論だシドー!」

「そ、その。俺とキスしたらそれは可能になるんだ。だから……」

 

 俺が歯切れ悪く伝えると、十香は俺の手をガシッと掴んで、大声を上げた。

 

「キスとは何なのだ!?」

「……えっと、キスって言うのは唇と唇を合わせることで──」

「これでいいのか?」

「……っ!?」

 

 ……キスを知らないとは思わなくて恥ずかしくなりながら説明したら、いきなりキスをされた。

 柔らかい唇の感触と仄かにする甘い香りに頭がクラクラしそうになる。

 そして、キスをすると同時に十香は全裸になり、ふらりとよろめいた。……それを見てしまった俺は狼狽しながら十香を受け止める。

 

 

「シドー……これは、いったいどういうことだ!?」

「えっと…」

 

 どういうことなのかは俺の方が聞きたいのだが。

 そう思いながら再度インカムを突くと、琴里がいつもの調子で声をかけてきた。

 

『ちゃんと封印出来たようね。

 今から士道達をフラクシナスに移動させるから。あ、質問はすべてフラクシナスで受け付けるわ』

 

 じゃあ行くわよ。などと琴里に言われた後、フラクシナスに来るとき特有の浮遊感に包まれて気がついたらフラクシナスに着いた。

 

 

「し、シドー、いったいここは……」

 

 そりゃ、いきなりこんな所に連れて来られたらそうなるかと思い、返事をしようとしたら琴里に妨げられた。

 

 

「フラクシナスへようこそ、十香。歓迎するわ」

 

 

 

 

 

 




前話にも書きましたが、この後で十香と士道に事情が説明されます。
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