奴隷と少女   作:煉音

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決戦とお勉強日和

 正直自分がこの1週間だけでここまで戦えるようになったのは驚きだ。ナイフの位置がよくわかったり、相手の動きの予測がある程度できたり、自分はそういうセンスがあるのかもしれないと疑ってしまう。

 でも残念ながら2戦目は惨敗だった。相手の次の動き次の動きと見ていたら開始30秒で数回切りつけられるという状況、1戦目では一度も切られなかったからわからなかったけど、なんというかね、切りつけられたところからだるさがあふれるように……こう、ガクンっていうのかな。そんな感じに疲労が襲ってくるんだよね。

 

「はぁ……」

 

 金属同士の鋭い音が響くフィールドで私は敗者席に座っていた。敗者同士で勝負をして下から順位を決めていくのだ。私は2戦目で敗北したから結構下のほうになる。ちなみに受験者は同じ部屋の人だけかなっと思ってたけど、実は別の部屋や屋敷の管轄の別拠点でも行われていたみたいで、今目の前にいる人だけじゃなく、別の地でも受験者がいるらしい。ちなみに私のいるところだと150人くらいいる。

 お嬢様は私が2戦目の途中で準備があるからーっと屋敷の中に戻って行ってしまった。

 ま、どっちにしろ次の1戦で私の順位が確定するからあとはボーッとしておくだけだ。

 

ーー数時間後

 

 ようやく決まった。最後の一戦はうまく攻め倒すことができた。順位は120位だけどね。最後は現役専属メイドとの勝負なのだけど……私の相手は運悪いことにメイド長なのです。まぁどっちにしろ嫌でもソフィさんになる可能性だったんだけどね。周りのメイドさんから「新人さんハズレひいちゃったねー」って言われるし。まぁいいや。

 しかも順位的にも後ろなのになぜか一番最初にメイド長の前に立つことになるというなんなのこれ……見世物じゃないよ。

 

「あら吹田、どういうくじ引きをしたのかしら?」

 

 腕を組んで余裕のある笑顔のメイド長を前にギュッと拳を握る。

 

「扱える武器が一つしかないんで……」

「そうだったわね。まぁいいわ。70%手加減してあげるからかかってきなさい」

 

 そう言ってメイド長は軽く足を開いて完全に上司感満載の仁王立ちをする。なんだこの威圧感は……目の前の人がまるで巨大な壁のように見える。

 

「くっ……では行きますよ!!」

 

 私に迷う時間なんかない、やるかやらないかだ。早速ナイフを構え突っ走ったのだった。

 

 

 気づいたときには体は空中に浮いていた。あれ?さっきまで地に足をつけていたはずじゃ……考えろ、何があったかは知らないが次の動きを……。

 

 上を向くとすぐそばに地面が向かっていった。咄嗟に両手で受け身をとり、ゴロゴロと転がった。どうやら地面にも魔法がかかっているみたいで、受け身が軽い疲労感として体に伝わった。

 

「ッ!?」

 

 すぐ立ち上がり前を見ればすでにメイド長が迫っていた。ナイフは……落としたか、回避は……てかここフィールドの端っこだ。仕方ない。

 

「はぁ!!」

 

 メイド長も少し驚いたように一瞬目が開いた。よけるのではなく、逆に突っ込み体当たりをかます。

 

「ふっ」

 

 結局空振りに終わったがメイド長とまた対等に立ち会う。まだ始まって20秒も経ってないぞ……。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 落ちていたナイフを即拾い、もう一度構える。

 

「……まだ……いけますよ」

 

 メイド長は興味深い顔をして「いいわね」と言ってくれた。余裕のあった笑顔が崩れたのが今のところ一番のやりがいだな。

 

「今度はこっちからよ」

 

 そう言って今度は突っ込んできた。上がり気味だった腰をもう一度深く落とし、動きを見ることに集中する。まるで予測のできない突っ込み方ほど怖いものはない。うまくよけて攻撃を……。

 

「よし」

 

 それが私の最後の一言になったのは言わずとも知れたことだったのは仕方のないことだった。

 まさかメイド長も武器を持っていたとは……予測してなかったわけじゃないけどひどすぎる。とゆか先に二つ武器を持っていたことを忘れていた私の方が悪いか。簡単に言えばいつの間にか盗られた武器を攻撃に使われて完全な敗北だった。

 

 それを再度思ったのはメイド長との決戦のあと1時間後だった。

 

ー面接待ち

 

 お嬢様との面接は非常に長いものだ。専属メイドとの決戦が終わった後のメイドからどんどん面接に行っているのだが、その順番もまだまだ長い。私はメイド長との戦闘後からかなり寝てしまっていたから、夕食とお風呂を済ました後から行くことにしたのだが、まさか最後尾になると思わなかった。

 さっきエリーから聞いたのだが、お嬢様が言っていた準備っていうのは、早めの食事と入浴だったそうだ。あとは部屋の設営などとか。とゆかエリーに最後尾の番号札を渡されたときなぜかかなりニヤニヤしてたけどなんだったんだろう。なんとなくわかるけど。

 まぁどっちにしろ就寝直前くらいまでは暇だろうよーって言われたから勉強でもしておこう。

 

ー図書館

 

 そう思って図書館に来たのだが、意外と人が多い。昼に来るより多いのは当たり前か。たまには他国の歴史書とか読んでおこうかな。

 

ー1時間後

 

 バァーッと地図を広げていろんなものを確認する。そういえばこの屋敷の敷地面積は測りしれない大きさで、屋敷の周りの山のほとんどは全てこの屋敷の敷地らしい。それとお嬢様の計らいもあってここは一つの国としての成立しているらしい。ただ、国とはいっても入るために入国審査みたいなのがあるわけではなく、言うなれば私有地のような感じに存在している。まぁ簡単に言えば、国に縛られない自由な土地だ。

 じゃあ国から税をとられないようにするために、そこを買い取ろうとする人や無断で利用しようとする人がいるんじゃないか?って思うかもしれない。当たり前だが、一応規則は存在しているから大丈夫。詳しいことはまた後程。

 屋敷を円に囲むように6つほどの国が並んでいる。北の一国は巨大だが敵対が強くあまり他の国と交わることが少ない。東にある二つの国はとても仲が良く、取引もほとんど依存しあっている。おまけにお互いがまったく逆の環境にあるおかげで、サイクルの取引が主流だ。南の国は熱帯にさらされる国で、胡椒を良く流通させている。国々の流通はかなり盛んだ。西の二つの国は互いに敵対が強く、毎日上げ足の取り合いをしているといわれるほど行きかいする情報にはあることないこと書いているらしい。戦争がいつ起こってもおかしくない状況にあるらしいから、屋敷の者も相当なベテランしか派遣されていないらしい。

 

「あ、琴香ちゃん」

 

 後ろから声が聞こえて、振り向けば未希がいた。

 

「未希ちゃん、お疲れさま」

「琴香ちゃんこそ、友美さんにあたったのは不運だったけどね。まぁ大丈夫だよ」

 

 そう言って未希は小さくうんと頷く。そういえば未希はどうしてここに来たんだろう。周辺の国じゃ髪も瞳も真っ黒な人種はいないに等しいんじゃないかな?

 

「聞いてもいいかな?」

「?なんでもどうぞ」

 

 未希は小さく首をかしげてそう言ってくれた。

 

「未希はどうしてここに?」

「ああ……そうねー。5年前、親に売られたの、お金のために」

「……」

 

 似たような境遇の人が多いってきいたけど私よりよっぽどひどい人のほうが多い気がするな。

 

「まぁ……結局お嬢様に救われて今こうしてるけど、お嬢様がいなかったら今頃もう生きてないんじゃないかな。だからお嬢様には感謝してもしきれないし、こんな恵まれた環境で生活ができてるのもお嬢様のおかげだし、私ももっと頑張らないとって思うとね」

 

 一瞬暗い顔をしたけど、お嬢様のためにというところでとっても良い笑顔を作ってくれた。

 

「おろ?お二人さん何の話をしてるのー?」

 

 急に間を割ってエリーが入ってくる。

 

「急にびっくりするなもう」

「この間より精度良くなったわね」

 

 エリーは照れるように笑顔で頭をかいた。

 

「お、そうだそうだ。琴香、お嬢様の順番が次だよー」

「それを先に言いなさい」

「あいてぇ」

 

 ペチッとエリーの頭にチョップを入れて立ち上がった。

 

「じゃ、二人ともごめん、行くね!」

 

 そのまま図書館を後にしたのだった。

 

「あの時は辛かったね」

「あら?聞いてたの?」

「まぁね。私もまだ入りたてで未熟だったから助けるのに時間かけすぎて結局悟られて……そのせいであんた体……」

「気にしないで。あんな状況の中で生きていることすら不思議だったのよ?身体の機能不全と損失くらいどうってことない。それに……できるたびに未熟なのに引きずり出されて目の前で殺されるあの感覚は……もう誰にも味わってほしくない。そのために私……私たちはいるのだから」

「……」

「まぁ、なんにせよ。生きているのよ?過去は取り戻せないわ。あなたが気にすることじゃない。最近、藍香ちゃんが来てから自分が変わった気がするわ。あ、そうだ。エリーこのあと一緒にお風呂行こう?」

「……ああ、わかった。行こう」

 

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