奴隷と少女   作:煉音

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貿易都市1

 舞踏会の次の日、私のグループは定期的な休息日だ。休息日は三日与えられており、この日レオとレナを連れて西国の貿易都市に来ていた。

 

「ん…人多い…苦手」

「ほらレナ、迷子にならないでね」

 

 隣を歩くアルムバルト姉妹は手を繋いでついてきている。髪の黒い方がレオで白い方がレナ、瓜二つの姿なのにその性格は全然違う。レオは活発な印象を受けるけど、レナは常に眠たげで静かなイメージを持っている。

 手をつないで歩く姿は見ていてとても微笑ましいものだ。

 

「ところで琴香、なぜ貿易街に?輸入品の調達なら屋敷から派遣所に依頼を出せばいいと思うんだが……」

「うん、だから今日はちょっとしたものを見にね。あと2人と食べ歩きとかしたくてさ」

「食べ歩き…!」

 

 琴香の返事にレナが反応する。

 レナは普段静かであまり遠出を好まない。その理由は知らない人が多いことだ。しかし彼女はこと食べることにおいては専属メイド一番で目がない。

 

「琴香、早くいこ?ほら!」

「レナ落ち着いて」

「まぁまぁ、先に派遣所に寄ってからね」

 

 少々興奮気味になったレナがレオから離れて琴香のそばに寄る。

 自分よりも低い身長の彼女を落ち着かせるように頭を撫でながら目的地に向かった。

 望月領を基準に西国の最大都市ユリッヒ、都市経済は貿易業が大変盛んで南国や海の先にある島国と海商路が確立されており、毎日のように大型の運搬船が出ては入っている。市内は卸売場を始め、様々な海産物の料亭や貿易品の小売店が立ち並んでいる。その出店の中にはその場で調理して料理を提供する店も多くあり、控えめに言っても毎日お祭りのような状態だ。

 

「こんにちは」

『こんにちはー』

 

 望月領の派遣所は見た目普通の酒場だ。派遣所なんて大層な名前がついているが、言わば望月領のユリッヒ館みたいなもので、館の奥にはいくつも宿泊部屋があり、望月領の使用人が随時手続きの上利用できるようになっている。

 

「はいはーい…あ、よぉ本館からはるばるお越しならはったなぁ。私はユリッヒ館の館長を務めますニーナ・アセントと言います。たしかぁ専属メイドのぉ」

「翠田琴香です。こちらは」

「レオ・アルムバルトとその妹のレナです」

 

 琴香が挨拶しながら館に入ると、裏方に繋がる壁際からささっと女性が出てきた。琴香よりも高い身長と良いスタイルを持っており、その特徴的な口調は彼女の掴めなさをより一層強調する。琴香に続いてレオ達が自己紹介を行う。

 

「まぁユリッヒはほんま広いさかい、数は少ないけど温泉もぜひ周ってみてほしいわぁ。あ、そや先に部屋見ていきはる?せっかく来はるさかいおもて3人部屋空けてといたんよぉ。はい鍵」

「あ、ありがとうございます」

 

 ニーナ館長は一言で言うならお喋りだ。琴香とレオが口を挟むのもたじろぐぐらい、その口周りの速さはとてつもない。

 

「部屋はそこの階段上がって奥の扉抜けた突き当りやで、外出はるときは裏方に経理室窓口あるさかい、そこの人に渡しぃ」

「何から何までありがとうございます」

「ほなまぁ、ゆっくりしてってなぁ。私裏で仕込みとかしてるしなんかあれば言ってなぁ」

「はい!」

 

 ニーナ館長と別れ、部屋へと向かう。二階はテラス式となっており、下が見下ろせる立派な酒場を呈している。掃除が行き届いており机も手すりもピカピカだ。

 

「ふぅ、ニーナ館長すごい人だなぁ」

「うん、私も返すのに精一杯だった」

 

 レオがレナの手を引きながら漏らす。全くその通りで、初め出てきたときに受けた印象が少しばかり揺らぐ性格であった。とはいえ、彼女がこの西国最大都市ユリッヒの望月領拠点を任されていることは間違いなく、それだけの人であることに変わりはないだろう。

 ニーナさんの言っていた通り、裏口へ続く扉を抜けると右手に窓口があり、向こう側では何人かの人が書き物をしているようだ。目線が合うと会釈だけ交わされ、琴香達も軽く返しておいた。

 部屋は広く、ベッドが3つ並んでしかも4畳ほど畳みの茶の間がある。机の上にはご丁寧に名物らしい茶菓子と陶器のコップに水差しが置いてあり、ちょっと豪華な旅館のようだ。

 

「よし、レオレナ、着替えたらさっそく市場に行こうか」

「食べ歩き…!」

「レナ、落ち着いて」

 

 朝早くに望月領を出発してからすでに現在昼過ぎ、市場もあと一踏ん張りと賑やかになる頃合いだ。レナもそろそろ一人で走って出店を探しそうな雰囲気になり始めたし、早く市場へ目的のものも探しに行こう。

 

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