奴隷と少女   作:煉音

6 / 25
お嬢様のおもてなし

「以上です」

「ふあぁぁぁぁ……」

 

 超ロングな説明がようやく終わり机に突っ伏した。専属メイドの話が終わったと思ったら逃がさないとばかりに戦闘のことについて教えられた。豊富な戦闘技法から戦闘精神まで教えられた。

 常にお嬢様を守ることに努め、決してこちらから攻撃することは許さない。そういう掟らしい。ちなみに攻撃されたからと攻撃し返す報復戦法ではなく、基本的には状況時の目の前のターゲットを無力化するまでを戦闘とする防衛戦法だ。そしてこの戦闘というのは実際の素手や武器による攻撃を指し、経済的商業的な資源財産を圧迫する攻撃ではない。例え相手がわかっていたとしてもそれに対する防衛は禁止らしい。

 

「おっと、すまないな。数日かけることを先に全て話してしまったな。ちなみにこれからの6日間はほとんど実技教育になるから頑張ってな」

 

 そういってメイド教師のユフィさんは先に出て行ってしまった。ある意味嵐のような人だった。てゆうかなんだ実技って、まさか戦闘訓練とか。いや、さっき戦闘について学んでもらうって言われたからそれしかないだろう。戦えるかな?

 

「ふぅ」

 

 軽く息をついた。さっきの続きの話だけど、戦闘術とかについて説明しておきます。

戦闘方法は豊富って言った通り、様々な戦術技法から戦術方法がある。剣術、槍棒術、拳法術、銃術、魔法術、機械術、錬金術、そのほかetc……本当に豊富だ。ちなみにこの全ての分野で段ていうか戦績的結果を積むことにより、さらに上の技を学んだり、追加の術を学んだりできる。非常に複雑な過程だが、確かな技術と経験を積めるようなシステムになっている。ちなみに言わなかったが、まず専属メイドが学ばなければいけないのはメイド戦術だ。これは全てのメイドが入った時点で学ぶものだ。ちなみに私はこのメイド戦術を全部マスターしなければならない。それが義務らしい。

 どんな戦術か残念ながら私はまだ知りません。それにメイド長が最強らしいからきっと難しい技なのかもしれない。

 カチャッと音がし振り向いた。お嬢様がいた。なぜここに……桃色が基調となった白の服を着ている。金色の瞳がちょっとだけ細められ表情が笑顔に変わる。と思ったが微笑みに変わっただけでした。

 

「今日のお勉強は終わりだね?」

「あ、は、はい!」

 

 はい、唐突に来られましたが私の主様です。焦って立ち上がったせいで椅子が倒れて大きな音を立てる。さっそくやらかした……。

 

「す、すみません」

「ふふ、焦らなくていいよ」

 

 急いで椅子を立て直して足を揃え、手を前のほうに置く。背筋も伸ばし、ちゃんと真っすぐお嬢様を見た。

 

「さ、初めのお仕事だよぉ?」

 

 わざと語尾を伸ばしてお嬢様はそう言い、クルッと後ろを向いて後ろ目に「いこ?」と言ってきた。やばい、イチコロどころかオーバーキルしそうだ。アレ?ていうかあと4人専属メイドがいるんじゃ……まぁいいか行こう。

 グーっと音が鳴った。無意識にお腹を抑えてしまう。恥ずかしい。それより今は6時くらいでいいくらいに外が赤くなっている時間だ。

 

「ふふふ」

 

 お嬢様が軽く笑うのが聞こえた。うぅ~聞かれたぁ~……。そんなことを思いながらトボトボとお嬢様についていくのだった。

 

 

 コツコツとお嬢様の後ろをついていく。もちろんお嬢様の斜めに位置するところだが……同じ速度で足音をずらさずに。

 

「ごきげんよう」

 

 お嬢様がそう言って廊下の端々に軽く頭を下げてお嬢様に挨拶をするメイドに、お嬢様は一人一人しっかり挨拶されている。メイドたちはお嬢様が見えた時点ですでに足を揃えて頭を下げるのだ。かなり慕われているのは分かってたけどここまでとは……思いもしなかった。

 そんなかなり気まずい廊下を抜けついた先、つい6時間前くらいに食事を食べた場所、メイド長曰く、館に仕える人専用の食堂らしい。アレ?待って、お嬢様って確か別で食事をとらせているってさっきユフィさんが……大丈夫なのかこれ。私嫌な予感しかしないんだけど。

 

「あ、あのお嬢様……ここは食堂なのですが……」

「あら?この屋敷の主である私が、どこで食事をとろうと勝手じゃないかしら?」

 

 立ち止まってゆっくり振り向きながらそう言われた。しっかり話す対象に視線を外さないところも慕われる理由だろう。すごい完璧すぎる……気がする。

 

「そ、そうですが……お嬢様の安全のためにも……」

「ささ、行こ行こ!」

「あっ!ちょ、おじょ、お嬢様ー!」

 

 急にパッと手をとられ引っ張られる。ただのメイドなのにこんなにお嬢様に触れていいのかな。やばい、すでに食事をしているメイドたちも手を止めてこっちを見てるし、緊張どころか鳥肌とか立ってきてるし!?

 

 引っ張られるままに厨房前まで来ると船見さんがいた。

 

「お嬢様、本日は何になさいますか?」

 

 お嬢様は私の手を離し、軽く両手をポンと叩き合わせて言う。

 

「ごきげんよう船見さん、今日は新しいメイドさんが来たので軽くやってくださいな」

「言われると思ってすでに用意しております」

 

 え?まじですか?

 

「うんうん、じゃあ今日の主役を案内してあげてね」

「かしこまりました。お嬢様」

 

 船見さんはお嬢様に軽くお辞儀してこちらに歩いてきた。その間お嬢様はスタスタとどこかに歩いて行ってしまった。

 

「また会ったね。じゃ、こっち来て」

 

 あれ?あらら?私の最初のお仕事はー!?てか、待って主役?今の感じからしてどう見ても主役ですよね!?待って待って!?あぁぁぁーーー……。

 

 

 シャンデリアの明かりも消え、巨大な空間は真っ暗だ。ていうか待って、シャンデリアといえど蝋燭の明かりだよね?あんなに明るいかふつう……部屋の端の端の隅まで照らせる明かりってなんなんだろ。そういえば魔法術もあるって言ってたっけ?それの一端なのかな。またいつか勉強がてら習ってみようかな。専属メイドでも学ばせてもらえるみたいだし。

 

「ね、琴香ちゃん」

「な、なんですか?船見さん」

 

 真っ暗な中いきなり船見さんに耳元で囁かれビクッとしてしまった。

 

「食べたいものあったらなんでも言ってね」

「あ、ありがとうございます」

 

 船見さん本当に料理好きなだと思いながら目が慣れるのを待つ。

 

「ひゃ!?」

 

 急に目に強烈な光が入ってきてチカチカしてしまう。目が目がぁぁ!

 

「ごめんね琴香ちゃん、もうすぐだから……」

 

 ううぅぅぅ船見さんの仕業か……。

 

「ううぅぅぅ目がぁ……」

 

 スススっとたくさんの衣擦れの音が聞こえる。四方八方至るところからも聞こえる。私が来る前からメイドとか使用人がいっぱいいたからきっと移動してるんだろう。

 

パチンッ

 

 大きな音ともに光がッパッパッパっとついた。

 

「……ッ!?」

 

 四方八方に埋め尽くすほどの数のメイドや使用人がいた。そして今ごろ気づいたけど私はその中心にいて、一段高いところにいるのだ。いやでも注目がこちらに来る。四方八方からの無数の目線が来て一瞬で顔が熱くなる。前からそうなのだが……私の苦手な部分は視線を浴びることなのだ。

 その瞬間か、周りのみんなが急にザワザワとなりだした。

 

「あ、可愛い」「赤くなってる赤くなってる」「好みかも」「ktkr」

 

 いやなくらい集中力がまし、小さなザワザワとした声ですら聞きとってしまう自分がいた。

 

「はーい、お静かにー!」

 

 そんなとき聞き覚えのある声が響き渡った。2階席の方にメイド長と等間隔に並んだメイド4人、そして発声主であるお嬢様がいた。そんなお嬢様の前には一人大きな本を持ったメイドさんがいる。よく見ればお嬢様の口元に小さな魔法陣らしき円が出現している。

 私の故郷では魔法はあまり普及していなかったが、見たことくらいはある。ほとんどの魔法は目に見える状態で円形の魔法陣として出現し、その上で効果や力が発揮されるのだ。

 

「さてみなさん、毎回恒例でお分かりだと思いますが、今日から仲間になりました。翠田琴香さんなのですよ。みなさん、仲良くしてあげてくださいね!じゃ、楽しみましょう!」

 

 お嬢様がそういってゆっくりと透明のグラスを持ち上げる。よく見ると何か液体が入ってるようだが……なんだろアレ、まさかお酒か?

 

「ではみなさん、新しい出会いに乾杯!!」

 

『乾杯!!!』

 

 すっごい迫力だ。よろめきそうになるのを抑えて、渡されたグラスを掲げた。

 

「ねぇ、君どこから来たの?」「きれいな髪だねー」「緑の瞳!美しい!」

 

 一気に質問攻めされる。受け答えどころか喋るのもままならない。四方八方女性ばっかりで、ところどころ男性も顔を見せている。なんだこの状況、初めてすぎて胸が破裂しそうだ。誰だ貧乳のくせにっつったやつ。無乳って言いやがれ。

 

「あ、あのですね……」

「おっほー!この子が新しい専属メイドか!」

 

 受け答えに専念しようとした瞬間、目の前に4人のメイドがすっと現れてきた。異様に目立つように登場したため目についてしまった。あれ?お嬢様の後ろにいた4人じゃないか?そして、その真ん中の一人が口を開いたとともに、一番左の人が一瞬で消えた。

 

「ひゃっ!?」

 

 急に胸に異様な感触を覚えてその腕をつかんだ。

 

「おろろー……今回の子は全くないよぉ……」

「わ、悪かったですね!」

 

 バッと無理やり後ろを向けばさっき一瞬で目の前から消えた女性のメイドだ。顔をよく見れば意地悪そうな笑みを浮かべていた。よく似合う女の子だ。あれ?よく見れば私より身長が低い。でも私の肩に顎を乗せられる程度にはあるみたいだ。

 

「こらこら、新人をいじめちゃだめよ?エリー」

「はーい」

 

 エリーと呼ばれた女の子は元気な声で返事して、風が通ったかのような音がしまた正面に移動した。瞬間移動なのかすごい能力を持っている子だ。

 

「翠田琴香さん。初めまして、私たちはお嬢様の専属メイドの者です。私の名前はソフィ、よろしくね」

 

 真ん中左手の女性、おそらく専属メイドのリーダーらしい。金髪の短い髪と高い身長が特徴だ。かっこいい顔つきでスタイルもすっごく、動きやすそうでたくましい。

 

「さっきはごめんねー」テヘペロ☆

 

 怒ってはいないが、わざと胸あたりを抱きしめて体をひねってやった。

 

「うぅ~……ごめんってばぁ……あ、私の名前はエリーね」ニコニコ

 

 悲しがる顔を見たかったのにずっとニコニコしてる。なんか負けた気がするのはなぜだろう。ちなみに彼女は黒い髪に真っ黒な瞳の持ち主だ。

 

「次は私ですね」

 

 真ん中右手の女性が一歩踏み出て口を開いた。

 

「桐ヶ丘冬実といいます。よろしくね」

 

 冷静そうな静かな感じの女性は少しだけ茶髪の長髪女性だ。身長も私より高い。顔つきも落ち着きのある顔立ちで、そばにいるとなんか安心する印象を持てる。

 軽くペコッとあたまを下げておいた。

 最後の一人は一番右手の子だ。私より少し身長が高いくらいの子で、漆黒なまでに真っ黒な瞳と真っ黒な髪だ。可愛らしいレベルの短さの髪に全体的に他の女性より小柄で、女性としてはなんかいろんな部分でかなう気がしない。しかもなんかちょっとオドオドしてるし。何この子。

 

「ほら、早く挨拶しなさい。私はあんたの母親か」

 

 ソフィさんがその子を促す。もじもじと顔を赤らめだしてしまったではないか。何この生物可愛い!お嬢様の笑顔には負けると思うけど。

 

「あ、えっと……」

「相変わらずだねーみっちゃん。初めての同期だからって緊張しすぎだよー」

「あぅ……」

 

 エリーさんがまた瞬間移動して女の子をつついた。それによって女の子が声を漏らしている。やばい可愛すぎて顔がにやけそう。がんばって顔には出ないようにしてる。

 

「ほら、ちゃんと挨拶して」スッ

「ふぇ?うわ!?」バスッ

 

 またすごい勢いで瞬間移動してエリーさんが女の子を私の前に移動させる。まさかの他人まで使える技なのかそれ……卑怯じゃね?てかそれまずいでしょ……神出鬼没だし。

 

「あ、ちょっエリー……ぁぅ……」

「……」

 

 苦笑いになってるだろうなぁ……きっと。エリーさんを追いかけて一瞬後ろを向きかけた女の子は私が目の前にいることを思い出してか、一瞬でためらってまたこちらに向いた。

 

「あ!……うにゅぅぅ……ぁぅぅぅぅ」

 

 さっきよりも真っ赤になった女の子は何とも言えない声を出している。そして軽くペチペチと頬を叩いて首を振った。

 

「あ、あの私は……」

 

 やっとしゃべりだしてくれたあの何分この尺とるつもりだろうか。あ、意地悪しちゃいけないよね。ごめんね。そのまま黙って聞くことにする。

 

「私は、萩本未希って言います……。あ、あなたと同じ年だから……あ、えっと……なんでも聞いてくださいね……」

「はい、よくできました」

 

 未希ちゃんが言い終わったと同時にソフィさんがそう言って未希ちゃんの頭を撫でた。

 

「じゃ、これからよろしくね」

「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」

 

 そう言って深々と頭を下げた。

 それからの夜は非常に忙しかった。てゆうか眠たかった。主催者のお嬢様が見守る中、酒に酔って痴態をさらす人もいれば気が高ぶって魔法を暴走させる人もいた。そのたびに統率権を持ったメイドの人たちが圧倒的な力でねじふせていた。

 お嬢様、毎回って言ってましたけどこんなことが毎回ってやばいですね。そのあとはみんな片づけとかで結局深夜まで眠れない人もいたようだ。私は早めにお休みをいただいた。

 それとお嬢様に最後に「じゃあ、これからよろしくね。琴香」って言われてしまった。そのときの私も気持ちが高ぶっていたのかとても嬉しかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。