勇者の行動記録   作:サトウトシオ

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<第10話>

<第10話>

竜騎将バランは去ったもののまだカール城下にはバラン配下のドラゴンたちがうろついているため、生存者を探して周囲を駆けまわる。ドラゴンはたしかに強力なモンスターだ、以前に戦った際にはその炎や吹雪といったブレスに苦戦した相手だが、今の自分の相手ではない。ブレスを防ぐ防具などなくても、すべて避けてしまえばいいのだ。あるいは正面からブレスの中を突っ切ってもいい、やはり今の自分には大したダメージではないからだ。そうして2日ほどかけて城下のドラゴンたちをすべて全滅させた。今の自分の実力で全滅させるのに2日かかる…いったい竜騎将バランはどれだけのドラゴンを放っていたんだ…とも思う、この物量であれば確実にカール王国を壊滅させることができるだろう。生存者はやはり相当数いたため、彼らには回復呪文をかけ、そして城外へ避難させた。

冒険で宝物庫を探るのは基本だ、なにか優良なアイテムが入っている可能性も高い。そう考えカール王城の宝物庫を探った。これが平時であれば若干心が痛むが、今は戦時、ましてやカール王国はすでに壊滅済み。強力なアイテムはぜひともいただきたいところなのでその心の痛みは無視することにした。

宝物庫…というかある意味ここは備蓄庫なのかもしれないが、そこで見つけたもののうち使えそうなアイテムは星降る腕輪と「魔法の盾」、いくつかのキメラの翼、それとおそらくはこの世界の高名な人物によるものと思われる手書きの書物だ。キメラの翼は非常時に逃げ出すためだろうか?王国が壊滅しても使われていなかったことを考えると、星降る腕輪や魔法の盾ともども、この宝物庫の存在意義もそこまで高くないのでは?と変に疑ってしまう。星降る腕輪と魔法の盾についてはこのまま頂戴するとして、問題はこの書物をどうするかというところだ。

ザックリと流してみたものの、自分のいた世界と文字が違うため読むことができない。3部構成となっていることは挿絵からもわかるが、内容までははっきりと…といったところだ。ところどころ入っている挿絵により第1部は武術全般、第2部は呪法や技術について書かれていると思われるが、第3部については完全に理解不能である。かろうじてわからないでもない第1部・第2部にしても、挿絵だけで内容を理解できるほど簡単なものではないだろう。つまり現時点でこの書物は自分にとって不要なもの、と判断する。いずれ役に立つときが来るまで、あるいは他に必要な人が出てきたときのためにここに残しておくことにした。

 

ドラゴンたちをすべて退治した今現在、このカール王国でできることは限られている。城下にはこの他に人がいないためここを拠点に何かするというのも難しい。今やるべきことは何だろうか…必要なのはこの世界の情報と文字、新たな武具、トベルーラなどこの世界独自の呪文習得、そしてこの世界をともに旅できる仲間、といったところか。どれを優先するにしろ人のいる場所、知識人のいる場所でなければなにも成果は上がらないだろう。そう考え、カール王国を後にし、あらためてルーラを唱えてベンガーナへと飛んだ。この世界にきて、初めてまともにルーラを活用しているなと気づく。ここまでの旅は未知の地の冒険、すべて陸路あるいは海路であったため、ルーラの活用余地などなかったのだ。

ベンガーナに到着、適当な宿をとり街で情報収集をすすめる。街といっても道行く人に話しかけるのは明らかな不審者だ、やはりこういうときは酒場で食事でもしながら、に限る。そんなかたちで3日ほど街に滞在し情報を収集していたところ、デパートでのオークション開催情報を入手。オークション対象はドラゴンキラー、一品のみ販売されるそうで、価格は15,000ゴールド前後ではないか、ということだそうだ。自分のいた世界ではごくごく普通に市販されていたことを考えると、この世界の量産品はレベルが低いのではないか?と疑ってしまう。


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