勇者の行動記録   作:サトウトシオ

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<第12話>

<第12話>

いとも簡単に2匹のドラゴンを始末したからだろうか、魔法使いの少年は強さへの恐怖と羨望、両方を含んだような眼でこちらを見ている。ただ敵ではないと本能的に理解しているのか敵対心は感じない、少なくとも自分を救ってくれた相手とは考えているようだ。少年は魔法力だけでなく体力も消耗しているようなのでベホマをかけて回復をしてやる。ドラゴンを倒したところでひとまずこの戦いは落ち着いたので簡単に話を聞いたところ、少年はポップと名乗った。以前パプニカで話に聞いた、カール王国が世に送り出した勇者アバン、そしてその仲間だった大魔導師マトリフを師に持つそうだ。年齢不相応と思えるトベルーラや強力なプレッシャーの呪文を使うわけだと納得する。魔法力は足りていないようだが、これは経験を積めば問題なく補えるだろう、将来が楽しみではある。そして聞くところによると先ほどの強力なプレッシャーの呪文…ベタンというそうだが、彼の師である大魔導師マトリフのオリジナル呪文だそうだ。またまたこの世界独自の新しい呪文が出てきたが、大魔導師マトリフのオリジナル呪文であり知名度もほとんどなく、使い手は他にいないとのこと。広く伝わっていないというのも理解できる話だ。

 

手短に概要だけを聞いていたが、そんななか突如の落雷・雷鳴、これは間違いなくライデインの稲光だ。別にライデイン程度で驚く必要もないが、この世界での電撃呪文は竜の騎士の専売特許。すなわちここに竜騎将バランか、あるいはそれ以外の竜の騎士がいるということになる。竜騎将バランはこの世界のトップクラスの実力者だそうだから、敵の強さという面ではそう大した心配はしていないが、トベルーラと遠距離攻撃を主体とする相手だと長期戦が予想される。ともかくまだヒドラも残っているであろうことを考え、ポップを引き連れルーラでデパートまで飛ぶ。そこで見たのはドラゴンキラーを右手に装着し、ヒドラの死体近くで佇む少年であった。ただ普通の少年と明らかに異なるのは、ヒドラの返り血を全身に浴び、額には竜騎将バランのものと同じような紋章を輝かせている、というところだ。おそらくはこの少年がヒドラを倒したのであろう、それに対し恐怖を感じる街の人々。人外の強さに恐怖を感じるのはどこの世界でも同じかと思う、幸い自分のいた世界では強さを求めて旅をする冒険者が多かったことからそういったものに対する風当たりはそこまで強くなかったが、それでも皆無というわけではない。魔王勢力による侵攻があろうと武力での抵抗を好まない人は一定数いたのだ。

少年…ポップの言によると彼の名前はダイ…は紋章の輝きを止め、街の人々に話しかけるが、やはりその応答は鈍い。街の人たちの眼は人間ではないものを見る眼そのものだ。この迫害がダイ少年の未来を暗くしなければいいのだが…と案じる。

 

ふと何者かがダイ少年が人間ではない旨のコメントをする、何者かはわからないがゾンビキラーを抜きその気配の方へ突撃…するもそこは壁面。するとその壁面から不気味な仮面をかぶったものが出現、そのまま壁面から浮き出できた。自称「死神・キルバーン」、魔王軍からやってきたというキルバーンの発言によれば、ダイ少年を観察するためにドラゴンたちをベンガーナへ放ったそうだ。もっともこんなやつには用はない、こちらから突撃しながらギガデインを唱え直撃させたところ沈黙、行動停止した。死んだのかはわからないが確実に倒すためゾンビキラーを振りかぶったところ、ひとつ目の魔法使いが突如現れ、倒れたキルバーンを回収、そのまま消えてしまった。増援なのだろうか?ともかくキルバーンは去ったためベンガーナの街中に平穏は訪れた。


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