勇者の行動記録   作:サトウトシオ

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<第14話>

<第14話>

王城へ到着。衛兵に声をかけ上席者への取り次ぎを依頼しようと考えていたのだが、その必要はなかった。城門…といってもまだ復元が済んでいないので木造仮門なのだが、そこでの警備にあたっていたのは最初にパプニカを訪れたときに助けた兵だったためだ。こうなると話は早い、簡単ながらも用件を伝えるとあっさり入城が許されたためそのまま進んでいく。命の恩人である、そして王女の書状を持参しているというのは非常に効果が大きいようだ。この国の王女レオナは即位こそしていないものの、父王、その他一族も魔王軍に殺されているためパプニカでは最高の権力、あるいは権威を持つのだろう。納得できる話ではあるが、そんな最高権力者である王女が冒険に出てしまっているというのは国としてどうなんだろうか…という疑問もある。彼女はそういう性格なのだろうとムリヤリ納得するのが正解なのかもしれない。

そんなことを考えながら入城。案内兵に話を聞くと王女レオナ不在の今、最高指導者は「パプニカの三賢者」とのことだそうで、その三賢者のひとりでリーダー格の「賢者アポロ」が応対するとのこと。場内を走り回る謎の老兵(といっても50代くらいか?)を横目に、賢者アポロの応接室へ通される。そこにいたのはなんと最初にパプニカを訪れたときに助けた賢者であった。なるほど、あのときの彼がパプニカの三賢者であったわけか、そういえば名前を聞いていなかったなと今さらながら思い出す。あのときは自分も想定外のできごとに多少気が動転していたのかもしれないなと少し反省をした。

賢者アポロへ旅の目的…大魔導師マトリフに会い、様々なことを習得する、そのために軍用馬を一頭借りられないかという用件を伝えると、あっさりと断られてしまった。そのかわりに積極的な提案を受けた。ルーラで大魔導師マトリフの住む洞窟まで送迎するとのこと、そのほうが移動に要する時間も短いし、まだ見知った顔である自分のほうがマトリフの警戒も薄まるのではないか、とのことだった。なるほどもっともな話でもある、たしかに初対面の自分単独よりも、アポロを同伴させたほうが多少はマシだろう。交渉という観点からも多少は有利かもしれない。王女レオナの書状があるためパプニカで馬を借りられないということは考えてもいなかったが、それ以上の回答を得られたので満足ではある。

賢者アポロの時間がとれそうなのは夕方ごろとのことだった、今は昼過ぎなので多少間があくが、そもそもパプニカ王都から大魔導師マトリフの住む洞窟までは馬を走らせても1日はかかる。それを考えれば夕方まで待つのは大したことではない。アポロの話によると、どのみちタダで話を聞くような人ではないそうだ、パプリカ城下でちょっとした手土産でも買っていかないとなと考え、いったん城を出て街を散策することにする。

 

城を出てパプニカ城下を歩く。ダイ少年たちが不死騎団を壊滅させ、街の人々が戻ってきてはいるものの本来の状態を取り戻しているわけではないことは明白だ。木造の仮設建築物、屋台や露店などで賑わってはいるが、やはり石造りの住居や商店が建ち並ぶのが本来の姿なのだろう、不死騎団襲撃による結果である廃墟状態を知っているのでそう感じてしまう。ただパプニカは復興中の街だ、時間はかかるだろうが元の姿と同じかどうかはわからないが、石造りの住居が並ぶ街は元に戻るだろうとも思う。もっとも自分がそれまでこの世界にいるのだろうか?という不安も同時に感じはする。


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