勇者の行動記録   作:サトウトシオ

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<第2話>

<第2話>

城門まで到着した、城下町である。家々は依然として燃え上がっており、すでに焼け落ちているものも多い。歩みを進めるとモンスターの攻撃で事切れたであろう住民の遺体、火事による焼死体、モンスターに応戦したであろう兵士の亡骸を多数見かけた。この街はもう全滅のようだ、30分ほど街の中を捜索したが生存者は見当たらない。せめて人々が街から逃げ出しているか、あるいは王城での立てこもりが無事にできていればいいのだが…と願う。

 

護身用として兵士の亡骸から「鉄の槍」と「鉄の盾」を拝借し身に付ける。目を覚ましてから今まではずっと素手による格闘と魔法での戦いであったため、このような一般的な装備でも非常に心強いものだと感じる。幸い、基本的な槍術は習得しているため特に手間取ることもない。

 

壊滅状態のこの街だがいまだに多くのモンスターが徘徊している、「がいこつけんし」や「くさったしたい」といった生きているものではないモンスターたちだ。どういう軍勢なのかは把握できないが、こういった不死モンスターたちはとにかく数が多い、倒しても倒しても次から次へと湧いてくるように出てくる。ニフラムでまとめて昇天させてもいいが、これだけの数だと魔法力も心配だ。幸い今の自分にとって大した敵ではないため、軽く槍でなぎ払いながら王城へ向かう。

 

壊滅状態の街を抜け王城へ至る。城というよりも神殿、といった言葉のほうが適切かもしれない場所ではある。ここでは残存兵や魔法使いら、それと…数名の賢者が不死モンスターたちと戦闘していた。見たところ戦闘は膠着状態…でもなさそうだ。単一局面では残存兵らのほうが優勢だがいかんせん数が違う。このまま時間が経過すればジリ貧、押し切られてしまうのは間違いないだろう。戦闘に介入することとする。

 

この城に攻めてきているモンスターたちはさほど強いものでもないため、槍で一気に片付けた。幸い、この程度のモンスターであれば鉄の槍でも武器が破損したりといった問題は起きない。そんな中、このモンスターたちのボスであろうひとりの人間の剣士が現れた。

 

纏う空気というか雰囲気が明らかに普通の人間とは異なるうえ、この不死モンスターたちを操っていたことを自供した。なにゆえこのようなことをするのか理解はできないが、既にハッキリと敵だとわかった以上、制圧するか、それができないのであれば仕留めるのみである。ただ相手は同じ人間である以上、不要な殺人は起こしたくない。やはり制圧を主軸に考えるべきであろう。鉄の槍を構え、一足飛びで相手の懐へ飛び込む。石突きで相手の鳩尾を狙い、一撃で「落とす」考えだ。自分の飛び込みよりも遅い相手の反応速度、この剣士は明らかに自分よりも格下だ。剣士はかろうじて身をひねり、石突きでの一撃を回避する剣士。しかし剣士の顔はおおよそ信じられないものを見るような状態であった。

 

そのまま追撃をしてもよいが、既に剣士は自分との格の違いを理解しているようだ。そこでこれ以上の攻撃はムダだろうと判断し、剣士との間合いを広げる。そして警告、「これ以上の戦闘は無意味だ、おとなしく捕縛されろ」と。だが剣士は納得する様子もなく自分語りを始めた、自分は最強の剣士、この程度では負けないと。自分語りで落ち着いたのか表情も戦闘前と同じように戻っている、まだ戦闘を続けるつもりなんだろう。なにかしらの切り札を隠し持っているのだろうか?見たところ、雰囲気と実力はともかくごくごく普通の剣士にしか見えないが…


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