勇者の行動記録   作:サトウトシオ

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<第4話>

「パプニカ王国」という聞いたこともない国名。ここは自分がいたのとは別の世界ではないかと考え始めている。アレフガルドという未知の世界を経験した自分にしかできえない発想ではあると思うが、アレフガルドと同様、ここが別の世界であると考えれば容易にこれまでの不可解な点も説明がつく。見たこともない景色、自分が倒したであろう大魔王ゾーマとは別と思われる大魔王、未知の武具。異世界であることを考慮すればどれも納得がいく。幸い、未知のモンスターなどは見ていないし、ゾーマと戦ったときの自分の能力を発揮できている。「王者の剣」といった装備品は失ってしまったが、今のところ戦った相手は格下ばかりであったので、現地調達した鉄の槍と鉄の盾で間に合っている。もっとも、これからは少し厳しい戦いになるのかもしれないが。

 

ともかく当座の目標が定まった。この未知なる世界の冒険、倒さなければならない魔王がいるのであればそれを倒すこと、そして元の世界に帰還することだ。

自分が元いた世界とアレフガルドはルーラで相互に往復ができたが、この世界とではルーラでの相互の移動は不可能なようだ。必然的にこの世界を知るためには冒険が必要となる、自分が元いた世界でも国によって大きく生活が違っていた。この世界でも国や地域によって文化や風習も違うかもしれない。まずは冒険し、この世界を知ることが必要か。

 

 

敗残メンバーたちは撤退の準備をすすめている。詳しく聞くと「バルジ島」というところに行くそうだ。一行の中の魔法使いにルーラの使い手がいるようで、それによる移動とのことだ。地図を見せてもらったが、この敗残メンバーが陸路・海路で島を目指すというのはかなりの不安があるため、ルーラでの移動と聞いてひとまず安心だ。

一行のリーダーである賢者に簡単な経緯と事情を説明し、この世界の地図と装備品をわけてもらった。わけてもらったといっても軍の倉庫から引っ張り出してきたもののため、じゅうぶんに正規品である。最低限ではあるが一通りの装備が整ったため、ここから冒険を始められそうだ。

 

敗残メンバーたちがルーラで飛び立ったあとも少し探索を続けていたところ、おそらくはパプニカ国王であろうと思われる亡骸を見つけた。脇には高価そうな宝石がはめ込まれたナイフが転がっていた。国王が持っているようなナイフである、このパプニカ王国の国宝なのだろうか?このままでは永遠に失われてしまうであろうことを考え、ナイフを回収。パプニカ王国は復興した際には返却するように記憶しておこう。

 

今後の目的地をどこにしようか考える。先の賢者の話によると、ここから新たに旅をするのであれば、ベンガーナやカール王国を目指してはどうかとのことだった。ベンガーナは人が集まり、軍事、経済ともに活発な国だそうだ。またカールは、この世界の勇者として名高い「アバン」を輩出しており、世界でも指折りの騎士団を抱えているとのこと。

 

目的地として、最初はやはり賑わう場所がよいだろう。ベンガーナへ向かい、その後、見識を深めるためカール王国へというのが妥当な順番か。海路でベンガーナへ渡り、その後は陸路でカールまで向かうかたちだ。

別の大陸へ行くには必然的に海を渡る必要があるが、パプニカの港はすでに破壊されているためこの大陸内でどこか別の港を探さなければならない。まずはこの大陸内の探索、それと船の手配が最優先だろうか。大陸内を歩きまわって港を探すこととする。

 


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