勇者の行動記録   作:サトウトシオ

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<第5話>

<第5話>

パプニカから旅立つ前に気になることを確かめることにした、この世界のルーラの効力だ。自分が知っているように一度訪れた街を自由に移動できるか?という点が気になっている。昨日試したときは確かに魔法力を消費したが、ルーラの効果は発動しなかった。他の呪文と違って現時点では効果を確かめる術がない。なぜならまだこの世界の他の街に行ったことがないからだ。そこでパプニカの城門から30分ほど歩いき、パプニカを意識してルーラを唱えてみたところ無事ルーラが発動した。時間と魔法力を多少ロスしたが、必要な経費みたいなものと割り切り、再びパプニカから歩き始めた。

 

目指す目標地点はベンガーナと定めている、つまり海を船で渡る必要がある。パプニカから海へ向かい、ホルキア大陸を海沿いに歩き続ける。海沿いは街道になっており、漁村がいくつかあると聞いていたからだ。

道中、何度もモンスターと遭遇するがいずれも大したことはない。ある程度歩き回ってわかったが、このホルキア大陸にはそれほど強力なモンスターは生息していないようだ。

そうやって海沿いを歩いて2日。途中3つほど漁村を見つけ、ベンガーナのあるギルドメイン大陸への航海を交渉するがすべて失敗に終わる。3つ目の漁村では道中でモンスターを倒して得たゴールド(5,000G)を交渉材料として使ったがやはり失敗。いろいろと村の人の話を聞くと、最近は海のモンスターも増え、荒くれ者で知られる漁師たちも自分の村から大きく離れたがらないそうだ。さらに1日歩いて見つけた4つ目の漁村で10,000Gを手渡して交渉成立。手持ちの資金も宿代を除くとほとんどなくなってしまったが、ともかくこれでギルドメイン大陸への移動ができそうだ、旅を続けられる。この日は宿に泊まり、翌朝の出港に備える。

 

翌朝、といっても夜も明けきらぬ時刻だが出港。漁師によればこのあたりの海のモンスターは夕方から活動が活発化するそうだ。この時間からギルドメイン大陸を目指せば夕暮れまでには到着できそうとのことである。

これまでポルトガ王室の船やアレフガルドの小島の男からもらった船を利用したが、どちらも立派な船であった。ポルトガ王室の船は王家の船なので当然にしても、アレフガルドで利用した船も個人が作った船としては相当に立派なものだった。しかし今回は小さな漁船である。交通手段が他にない以上、ぜいたくは言えないがやはり比較してしまうというのは人間として致し方ないと思う。

 

途中やはり何度か「マーマン」「しびれくらげ」などのモンスターに襲撃されたが航海は続く。これらのモンスターはもはや敵ではない。船に接近する前にキガデインの一撃ですべて沈める。船に雷が落ちないよう気をつける必要はあるが、ただそれだけのことである。

 

大きな事故もなく順調に航海を続け、無事にベンガーナのあるギルドメイン大陸に到着。漁師へお礼をいい別れる。彼が無事に母港へ帰ることができるかという心配の種はあるが、ともかくここからはベンガーナを目指しての陸路である。

到着した漁村で携帯可能な保存食を買い溜め、徒歩で旅を続ける。村人によるとベンガーナの中心部までは旅慣れた人の場合で3日程度とのこと。

 


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