勇者の行動記録   作:サトウトシオ

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<第6話>

<第6話>

漁村を出発し2日目の昼、とある洞窟を発見した。入り口付近は洞窟だが、足を踏み入れてみたところ、そこはなにかの研究所のようだった。人よりも相当に大きなものが入ることのできるサイズのカプセル、充填された培養液らしきもの、そこから考えられるのはおそらく何かしらの生物兵器の研究、あるいは人体実験の証。幸か不幸か今現在この洞窟内は無人である。破壊しておくべきか悩んだが、そもそもこれが魔王の手によるものかもわからなかったため実施しなかった。

 

順調に旅を続け、漁村を出て3日目の昼前にベンガーナへ到着した。ベンガーナは人の出入りも激しく、軍事・経済ともに活発な場所。デパートと呼ばれる大規模な商店も存在する。漁村を出てからかなりの資金が貯まったため、この街で装備を整えることにした。

パプニカ軍の制式採用装備は確かに悪いものではないが、ベンガーナで売られているものに比べると見劣りする。もっともアレフガルドで手に入れた装備と比較すると、このベンガーナで売られているものすら見劣りするがやはりぜいたくは言えない。

 

デパート内の武器屋・防具屋で「炎のブーメラン」「ゾンビキラー」「魔法の鎧」を購入し、これまで装備していた鋼の剣と鉄の防具一式を売り払う。購入したものはどれも一品モノとして入荷されており、この世界の店売りアイテムとしてはかなり上等なもののようだ、かなりの戦力増である。気になるのはこれらのアイテムが一品モノであるということ。自分のもといた世界ではある程度高価ではあるがごく普通に量産され店売りされていたもの(ブーメランを除く)だが、この世界では限定品のような一品モノとのこと。なかなか手に入らないアイテムだけに、ここベンガーナで手に入れられたのは運が良かったのかもしれない。

 

ベンガーナの街中で聞き込みをした結果、次の目的地であるカール王国へは定期便の馬車が1日1往復あることが判明した。馬車でおよそ1日でカール王国に到着するという。歩いて行くと3日とのことなのでここは定期便の馬車を利用することとした。利用料金は片道500Gとのこと。先ほど購入した装備に比べると実に安価である。

自分のいた世界やアレフガルドでも馬車を利用できれば旅の期間をかなり短縮できたのではないかとも思う。自分のいた世界では馬車という文化はほとんど発達しておらず、王族や一部の貴族が移動する際に利用する、あるいは旅商人が街と街を移動する際にその商材を運ぶため、といった程度の利用のみであった。一般の旅人・冒険者は徒歩で移動しており、馬車というものは普及していなかったのである。

 

翌日、定期便の馬車がカール王国に到着した。ちょうどドラゴンやヒドラといった竜族モンスターに街が襲撃され、ほとんど全滅状態であった。屈強な騎士団を持つと噂のカール軍だが、さすがにドラゴンの群れには敵わなかった…ということか。御者はその様子を見て、自分を降ろすとものすごい勢いでベンガーナ方向へ逃げ帰っていった。生存者がいないか捜索していたところ、斬り合う二人の騎士と、その付近でほぼやられかけた状態の騎士を発見した。戦闘中の二人は…身につけているものは、あたりに倒れている兵士と同じものであるから、片方は間違いなくカール騎士団の騎士だろう。剣の実力は、自分ほどではないがかなり高そうだ。純粋な戦士タイプの騎士と思われる。もう一人の騎士は…竜の装飾が柄に施され…自分が使っていた王者の剣と同じ輝きを放つ…おそらく材質はオリハルコン、間違いないだろう。アレフガルドでも王者の剣一本分しか見つからなかったオリハルコン、この世界にやってきてこうもすぐに巡りあうとは思ってもいなかった。そしてこのオリハルコンの剣を振るう騎士、何者だ?


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