勇者の行動記録   作:サトウトシオ

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<第7話>

<第7話>

二人の騎士の戦いは互角…というほどでもなかった。たしかに傍目からは互角に見えるだろうが、オリハルコンの剣を持った騎士はほとんど本気を出していない。対するカール騎士は常時全力で戦っている様子だ。この調子で戦えば仮に武器が互角だとしても、いずれ決着は着くだろう。ましてや鋼の剣とオリハルコンの剣での斬り合いだ、鋼の剣が損壊するのも時間の問題だろう、勝負は見えている。

 

無駄な戦闘を続けさせるのも意味はないだろうと判断し、威嚇・警告のためメラの炎を両者が斬り合う方向へ向けて飛ばしたところ、こちらへ注意が向いた。その瞬間、カール騎士はオリハルコンの剣の騎士へ全力で斬りかかる…が、その剣が届く前に、オリハルコンの剣の騎士の額のあたりから出た光線のようなものにより一撃でやられてしまった。なにか未知の魔法や兵器なのか?まったく検討はつかないが、その威力はともかく、速度は「ピオリム」や「星降る腕輪」を使わなくてもじゅうぶん避けられるレベルだと感じる。もっともこの世界にそういった呪文やアイテムが存在するかわからないし、さらにいえば自分はピオリムを使えないし今の自分は星降る腕輪も持っていないため比喩として適切かどうかはわからないし、そもそもその表現自体に大した意味を持たないのかもしれない。

オリハルコンの剣の騎士がこちらを見て唐突に語り出す、自分は魔王軍・超竜軍団の軍団長、竜騎将バランであると。なるほど、軍団長という肩書が付くほどであれば、それなりの実力の持ち主なんだろう。ここまで見た限り、竜騎将バランは間違いなく相当な実力者だ。その辺のモンスターや以前に戦った剣士とはレベルが違うだろう、もし戦うなら本腰を入れなければとも思う。しかも武器の差が大きい、相手はオリハルコンの剣、こちらはゾンビキラーだ。ゾンビキラーも悪い剣ではないがいかんせんオリハルコン相手には分が悪い、剣で剣を受け止める、鍔迫り合いは避けたほうが懸命だろう。ゾンビキラーが簡単に折れてしまうだろうしな。必然的に戦い方は相手の攻撃をすべて避けるか、あるいは相手に剣を振らせない、この二択になる。

この竜騎将バランの隠している余力がどの程度かわからないが、さきほどのカール騎士との戦いを見る限り身体能力・戦闘能力そのものについては自分と同等以下、相手の剣撃を避け続けることはそれほど困難ではないと思っている。ただ以前戦った剣士のようにそこまで圧倒的な実力差があるというわけでもないだろう。もっとも全力を出す必要もないレベルとも思っている。

 

現時点で自分が竜騎将バランへ明確な敵対の意思を見せていないことから、あえてオリハルコンの剣について聞いてみた。その結果得られた回答はこうだ、「神から頂戴したオリハルコンの剣」と。その言を信用すると、オリハルコンを材料とした剣というのは間違いないだろう。見ればわかることだから、わざわざ隠す必要もないということか。

ともかくこれでオリハルコンの剣と直接斬り合うのは避けたほうがよいと明確に判断できたわけだ、じゅうぶんな収穫である。

ともかくここまでわかれば敵は魔王の手先、軍団長であろうとも倒すだけである。オリハルコンの剣は戦利品として頂戴しようと思う。どんな効果を持つのかわからないが斬撃武器としての能力だけであれば王者の剣に匹敵するはずだ、あらたに王者の剣と同等の剣を手に入れるまでの武器と考えれば必要十分すぎるものには違いなさそうだからである。

 

炎のブーメランを牽制として投擲、間髪入れずにゾンビキラーを構え突撃・一閃。オリハルコンの剣で防がれないように足元を狙う。竜騎将バランはブーメランを剣で弾くもののこちらの一閃を…空へ飛び上がり回避…空を飛ぶ…だと?

 


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