<第8話>
自身の知る限りではあるが、翼の生えたモンスターや鳥、それから不死鳥ラーミア以外で空を飛ぶものなど聞いたこともない。パプニカ王国で聞いた限りだが、空を飛ぶ船「気球」なんてものも存在するそうだが、それしたって人間が単独で空を飛べるものはない、気球により空を移動する、といったほうが適切なんだろう。身体能力を活かした大ジャンプならともかく、敵は完全に空中で静止している。これはもう空を飛んでいるとしか考えられない。炎のブーメランを拾い再度投擲するも、今度も簡単に剣で弾き落とされてしまう。強力な呪文でもないし、やはりブーメラン自体はそこまで頼りにならないといったところか。
ともかく空を飛ぶ、いったいどういうことなんだと完全に理解不能だが、逆に竜騎将バランもこちらの突撃の速さに相当驚いているようだ。が、それだと戦闘が進まない。竜騎将バランはライデインを唱えこちらを攻撃するが、そのバランの手の動きから雷撃の軌道・攻撃地点を予測し軽く回避。回避と並行してこちらもギガデインで反撃、竜騎将バランへ直撃させる…も、なんと相手はオリハルコンの剣で雷撃を受け止め、剣に帯電させているではないか。ひょっとして呪文を受け止め、載せることがあのオリハルコンの剣の特殊な効果なんだろうか?
こちらも混乱しているが、竜騎将バランもそれ以上に混乱しているようだ。敵とはいえ互いに情報交換をしないと理解が追いつかない。そう考え竜騎将バランに一時休戦を申し出る。
バランと話をしてわかったのは以下の通り。この世界にはルーラのほかに「トベルーラ」という空を飛ぶ呪文があり、ルーラを使えるものはほとんど全員がこの呪文を使えるということ。ライデイン・ギガデインといった電撃・雷撃呪文はバランを含む竜の騎士と呼ばれるものしか使えないこと。自分の突撃・一閃はバランの反応速度を凌駕しており、そのためトベルーラで回避したとのこと。
にわかには信じがたいが、空を飛ぶということについてはトベルーラという呪文であることが確定したため、とりあえず解決か。竜騎将バラン以外にもトベルーラの使い手は数多いるようなので、これは習得しなければならない呪文だろう。空を飛ぶモンスターと同様、上空からの襲撃というのは非常に対処が難しい。ましてや高レベルの呪文を上空から連発されると文字通り手も足も出なくなってしまう。それを考えるとやはり習得は必須だ。それから当初の目的でもあるこの未知なる世界冒険・探索、これにも大きく役立つだろう。今までの行程はすべて徒歩、あるいは船であったため、ルーラとトベルーラを組み合わせれば大幅に時間短縮ができそうだ。
ライデイン・ギガデインは勇者の呪文、自分はそう認識しており、(特にギガデインは)使い手はそう多くないが、自分の元いた世界では自分以外にも勇者と呼ばれるものたちが習得しているだけに、この世界とは若干呪文の意味合いが異なりそうだ。たしかに勇者と呼ばれるものは魔法使いや僧侶に比べて絶対的に人数が少ないが、それでも使い手はいる呪文なのである。
ともかくこの世界ではライデイン・ギガデインは特定のものしか使えない、ということだ。そういう状況下で普通の人間である自分が、しかもより上位の呪文であるギガデインを使ったのだから、竜騎将バランも真っ青、といったわけである。