胸が苦しいんです!! これっていったいなんでしょう!?
みんな!!読む前に、ハンカチ…、いえ!!タオルを準備してください!!必ずいります!!
…では、どうぞ。(泣)
そして、二人の運命は別たれる…。
屋敷の侵入されそうな場所を厳重にチェックし終えたセイヤは、しばらくは襲ってこないと踏んで、自室に戻り、戦闘服から寝間着に着替え、寝ているオドリーのベッドへ戻ろうとした。自室へ戻る足を一歩踏み出した瞬間、大きな爆発が起き、屋敷が揺らぐ。
突然の爆発音に、セイヤはすぐさまオドリーの部屋へと向かう。
爆発音がした方向とはちょうど正反対。寝ているのなら、ベッドにいるはず。しかし、セイヤはなぜか嫌な予感をしていた。そしてそれは、ドアを勢いよく開けてみて、さらに増す。ベッドで寝ているはずのオドリーの姿がないのだ。部屋の中を探し、名を呼ぶが、オドリーはいない…。
妙な胸騒ぎがするセイヤは、まさかと思い、爆発音がした方へと駆けていく。それは、自室がある方向…。
そして角を曲がり、目的地に着いたセイヤは、自室が爆発し、燃えて、炎が今にも他の部屋に広がろうとしているのを目撃した。急いで、爆炎が蠢く自室へ向かい、ドアを蹴破って、辺りを見回す。
こんな場所にいる訳がないと…思いながら、必死に眼を拵えて、探す。
「オドリー~~~~~っ!!!!」
何度もオドリーの声を呼ぶが、炎の勢いが凄まじく息が苦しくなる。それでも必死に探すと、掠れたような、それでいて詰まったような弱々しい声がセイヤの耳に入ってきた。言葉にはなっていないが、その声がする方へ急いで家具を飛び越えて向かうと、そこには大量に出血し、壁にぶつかって倒れているオドリーの痛々しい姿があった。
「オドリーっ!! しっかりしてくれっ!!」
「セ、………あ…」
「!! いいっ!! しゃべらなくていいっ!! ここから脱出する!! 絶対に意識を手放すな!!」
オドリーの状態を診たセイヤは険悪な表情になり、歯軋りしてオドリーを横抱きにすると、窓から外に飛び出した。三階からの飛び降りだったが、高さを物ともせずにオドリーに衝撃を与えないようにして着地する。セイヤが着地した時、セイヤの部屋は再び爆破した。後一秒遅かったら、更に爆発に巻き込まれていただろう。
セイヤは自室に見向きをせずに屋敷の庭をオドリーを抱いて素早く駆けていく。そして、庭の草陰に隠れ、自分のロングコートを地面に敷いて、その上にオドリーを寝かせた。ここなら死角になっていて誰にも見つからない…。この爆発を起こしたカバルレにも…。
セイヤはカバルレへの怒りと同時に、自分への怒りも募らせる。
どうして、カバルレが仕掛けてくると分かっていて、黒ずくめをさっさと逃がしてしまったんだ?どうして、すぐにカバルレの息の根を止めようとしなかった?どうして、オドリーをひとりにしてしまったんだ?
今更ながら、もう少し違った選択ができたのではないかとオドリーがこんな目に遭う必要はなかったのではないかと自分を責めずにはいられない。カバルレが狙ったのは、オドリーではなく、自分なのだからと…。
しかし、自分に怒りをぶつけ続けたい気持ちもあるが、今、一番大雪なのは、オドリーの命を繋げること…!!そう自分に言い聞かせ、セイヤは血まみれのオドリーに手を伸ばす。
オドリーは爆発による爆風で壁に吹き飛ばされ、全身で強く打ちつけただろう…、身体中に痣があったが、それよりも喉元にガラスの破片が刺さっていた。
爆発の影響で窓ガラスが壊れ、そのすぐ下で倒れていたオドリーの喉元に落ち、刺さったのだ。そこから大量の熱い血がどくどくと流れてくる。何かを必死に言おうとするオドリーだが、声帯にガラスの破片が刺さっているため、声が出ない。荒い呼吸をするオドリーが涙を流しながらセイヤをみつめる。
「…大丈夫だ!! 助かるからな!! オドリー…!! 絶対に俺が助けてやるから!!」
セイヤは心配いらないと無理やり笑みを浮かべて、喉に刺さった破片をそっと抜き、喉にハーフタオルを置き、手で押さえ、圧迫止血し始める。その間、他にも外傷はないか確かめ、応急措置が必要な傷がない事を確かめ、ほんの少し安堵する。
救急魔法医師の資格も持っているセイヤは、技術も優れていて、以前はよく戦闘地域への派遣で、戦闘しながら、同志の治療に当たった事がある。
だから、オドリーを救う自信はあった。
圧迫止血し、念のために持っていた止血剤も投与し、麻酔もして、痛みを緩和させる。
「オドリー…、すまない。本来なら、俺が受けるべきものだったのに…。君にこんな危ない目を負わせてしまった…。…俺は婚約者失格だな。」
オドリーの頬に触れ、泣きそうになるのを堪えた笑みを向けるセイヤ…。
そんなセイヤに、オドリーは今できる限りの笑顔を見せて、頬に触れるセイヤの手に自分の手を重ねた。冷たい自分の手を添えて、でも、熱い視線はずっとセイヤに向けた。
(…大丈夫よ。寧ろ、私がセイヤを守れてよかった…。セイヤがもし、こうなっていたら、私…、絶対に耐えられない…。
ずっと…、私を守ってくれるセイヤだから…。私もずっとセイヤを守りたかったの…。
あなたは悪くないわ。こうなったのも…、私が隣にセイヤがいない事に寂しくて、苦しくて、あなたの部屋に行ったのが悪いの…。
セイヤが私のために闘ってくれていたのを知っていたのにね…。
セイヤにそんな泣くのを堪えて心配する顔を見たかったわけじゃないのに……)
声が出ない分、思いのたけを伝えるため、笑顔を作って、大丈夫だと伝えようとするオドリー。
だが、徐々に眠げが走り、瞼が落ちていく…。
瞼が下がり、視界が狭くなっていくのを感じながら、オドリーは自分の最期を覚悟して、眠りについた。
オドリーが麻酔によって眠った事で、セイヤは、綺麗に消毒したナイフでオドリーの喉元の傷を開き、もう一つのナイフで自分の喉元を開く。そして、オドリーの声帯を摘出したセイヤは、素早く自分の声帯も摘出し、自分の声帯をオドリーの喉元に入れ、移植していく。針を通し、縫い付けていくその腕は素早くて、それでいて正確で、声帯移植は短い時間で終了した。
セイヤは、傷口を縫ったオドリーの喉に触れ、微笑を浮かべる。
せめてもの償いとして、自分の声を送ったのだ。
(目覚めたら、オドリーは驚くかもしれないが、そんな顔を見れたら、君が生きていてくれている証だから、嬉しいよ。)
そう、心の中から話しかけるセイヤは、無意識にオドリーの胸に触れた。オドリーの鼓動を感じようとしていたのかもしれない。しかし、オドリーの心臓から伝わってくるはずの鼓動が手から伝わってこない…。
慌てて、耳を胸に当て、鼓動が聞こえない事を確認したセイヤは、身体に手を触れ、診察する。すると、自分がとんでもない失態をしていた事に気づく。
オドリーは、肋骨を折っていた。そして、その肋骨の一部が心臓に突き刺さっていたのだ!!
その心臓を今まで、持たすために、オドリーが自分自身に冷却魔法をかけ、血の巡りを抑えていて、少しでもセイヤとの時間を延ばしていたのだ。
(何でもっと早くに気づかなかったんだ!!?あの時の冷たい手の感触に違和感があったはずなのに!! 俺は!!)
手が震え、涙を流すセイヤ…。
助けられると自信を持って、結果がこれか!!?…と自分が平常心でしっかりと診察していなかった事に気づき、悲しみに淵入りそうになる。溢れる涙は止まらず、叫びたい声は、もうない…。
もうオドリーに謝る事も出来ない…。
冷たいオドリーの身体を抱き、自分の過ちを嘆くセイヤ…。
(…オドリー…!!いかないでくれっ!!
俺は、お前がいないと、生きていけない身体になってしまったんだ…!!
お前の笑顔が、俺を支えてくれていたんだ…!!
頼む…!! 目を…、目を開けてくれ…!! …ううっ…お願い…、だ…!)
号泣するセイヤは目を開けないオドリーを力強く抱きしめた。
そんな時、泣き崩れているセイヤの胸が、オドリーの冷たい肌に触れ、ドクンッ…と脈を打った。
その瞬間、セイヤはある事を思いつく…。
それまで泣いていたセイヤは、泣くのを止め、袖で涙を拭い、服のボタンをはずし、自分の胸を露わにする。そして胸をナイフで開く。その開いた傷に指を差しこみ、大きく開ける。そこには、大きく今も鼓動を打つセイヤの心臓が存在を主張していた。
セイヤは、オドリーにも胸を開き、オドリーの心臓を取りだすと、折れた肋骨を治癒魔法で治し、そして…
自分の心臓を思い切り引き抜き、すぐにもう脈を打っていないオドリーの小さくて綺麗な心臓を空になった場所に入れこむ、意識が朦朧とするのを耐え、電気ショック程の放電魔法を自分に施す。
すると、オドリーの心臓がゆっくりと動き出した。…弱々しく。
そして、自分の心臓をオドリーに移植し、同じく電気ショックの放電を発動する。
すると、セイヤの心臓がゆっくりと動き出し、徐々に大きく命をオドリーの全身に吹き込むように血を送りだす。それを確認し、苦しいのを必死に堪えて、オドリーの胸を閉じていく。
オドリーの脈を確認し、脈に触れるのを感じて、嬉し涙が零れ落ちる。
安堵した気持ちが全身に広がったのか、身体の力が抜け、横に倒れる。
息が苦しいのか、荒い呼吸を繰り返すセイヤ…。
そのままの状態でセイヤは、まだ動く右手でポケットの中から小さなキューブを取りだす。
そのキューブは『相子保存キューブ』。キューブに自分の相子を蓄積する事で、そのキューブに組み込んだ起動式を、キューブにある相子が尽きるまで発動し続ける魔法アイテムだ。
セイヤはずっと、自分の持つ少ない相子を少しずつこのキューブに貯めこんでいた。
そしてスイッチを押し、キューブに組み込んでいた障壁魔法を発動させる。
これで、もしカバルレに見つかっても、手を出す事も出来ずに、警魔隊が駆けつける時まで持続するだろう。
…セイヤが死んでも、魔法が発動し続け、オドリーを守る。
掠れてくる視界で、障壁魔法が発動したのを確認したセイヤは、横を向く。
そこには、穏やかに眠るオドリーの寝顔があった。
(ああ…、今日の寝顔、見れたな…。)
微笑を浮かべ、残る力を全て使う勢いで這って、オドリーに近づき、自分の腕の中で優しく抱きしめる。
先程までと違ったオドリーの程よい体温に、冷えていく自分の身体が気持ち良く感じるのを噛み締め、眠るオドリーの頬に触れ、愛おしそうに頭を撫で、髪を梳く。
(オドリー…、君が生きてくれるだけで俺は嬉しいよ…。
君がいなければ、俺は白い世界でただ一人で生きていた…。だけど、君の俺の世界に色を付けてくれた。
初めて、人を心から愛する事を教えてくれた…。
君からいろいろ教わったな…。
そんな君と出逢えて、俺は幸せだった…。
もう君のいろんな顔が見れなくなるのは、残念だ…。
それでも、俺はずっと君の一番近くにいる…。
何があっても、君を守る…。
君が俺を愛してくれたように、俺も君を愛している。その君の”心”を俺は受け取った…。
…絶対に誰にも真似できない交換になったな…。
…じゃ、……名残惜しいが、…………俺はいく…。
オドリー…、君を愛している…………ずっと…………………な…。)
そう、愛するオドリーへの想いの丈を込めた誓いのキスを眠るオドリーの唇に注ぎこみ、セイヤは、旅立った…。
セイヤが息を引き取ったあと、騒ぎを聞きつけ、駆けつけた警魔隊が屋敷や庭を捜索していた時、横たわる二人を見つけ、警魔隊が駆け寄る。
駆け寄った警魔隊は、二人を見て、息をのみ、固まったそうだ。
夜が明け、燃える屋敷を消火していた水しぶきと朝日を浴びる二人の身体が輝いて、飾り付けられたような印象を受けたからだ。
そしておそるおそる、近寄ってみると、男の表情を見て、驚いたそうだ。
…指輪ではないけど、お互いの”心”を交換し、二人の永遠の愛を誓った。
それを成し得たからか…、セイヤの最期の顔には、幸せそうな笑みを浮かべていた…。
そして、大事そうにオドリーを抱いていた…。
書き終わりました…。そして、それと同時に号泣する私…!!
悲しくて、感動的で、もう胸がいっぱいです!!
みんなはどうですか!?