魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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狂気サーカス編、行きますぜ!!





引き裂かれた親子

 

 

 

 

 

 

 「ショウリン~、サアカエロウ…。オイデ。」

 

 

 男の子の父親が包丁を持っていない手で男の子に手を差し伸べる。しかし、ショウリンと呼ばれた男の子はミナホの胸の中で固まったまま動こうとはしない。寧ろ嫌がっていて怯えている。

 

 

 「もしかして、これっていわゆる児童虐待ってやつ?」

 

 

 「それだったら、許せないね!」

 

 

 「でも、傷をつけないように取り押さえて警魔隊に身柄を引き渡さないと。一般人みたいだし。」

 

 

 「そうだね。まずはあの包丁を取り上げて、羽交い絞めしてやる!」

 

 

 状況判断で取り押さえようとみんなが刺激しないように徐々に近づき、両手を広げて何もしない事をアピールすると、今まで黙っていた暁彰が顔つきを凶変させ、大声でみんなに声かける。

 

 

 「とまれ!!それ以上、近づいてはだめだ!!」

 

 

 「どうしたんだよ、暁彰!相手はただの一般人だ!」

 

 

 「いいから言うとおりにしてくれ!!警戒態勢はみんな取っていてくれ!!」

 

 

 いつもより声を荒げている暁彰の緊迫した表情に何かあると直感したみんなは言われたとおりにCADやアイテムに手を翳し、距離を保ちながら警戒態勢を取り続ける。

 

 みんなの動きを確認し、暁彰はミナホに男の子を連れて、警魔隊の駐屯所に行って応援を呼んでくるように頼む。ミナホも暁彰の異様な感じに何か考えがあると気づき、男の子を連れてこの場を離れる。暁彰はミナホと一緒に行くようにとるーじゅと火龍人にも指示し、二人は頷いてミナホと男の子の後を追う。

 

 ミナホ達を見送った暁彰は残ったみんなの所へ行き、みんなと同じく男の子の父親と対面する。

 

 

 「暁彰、どういう事か説明してくれるよな。」

 

 

 「相手一人に私達は17名…。多勢過ぎるよ…。」

 

 

 「ああ、一般人を取り押さえるにしてはこっちが悪役になるんじゃねぇ?」

 

 

 「まぁ少し、おかしいとは思うけど、虐待するような奴はあんな感じじゃないの?」

 

 

 父親から視線を外さず、暁彰に理由を問いかけるみんな。みんなが疑問に思うのは最もで、いくら自分の子供を虐待するやつが許せないからと言って、これはまるでリンチに思えてもしょうがない状況だ。

 しかし、暁彰だけは険しい表情を浮かべたまま、不快な物を見る目付きを父親をみつめる。

 

 

 「ごめん、みんながそう思うのも無理はないけど、こうするしかもう方法はない。

  ……さっきの男の子には悪いが…」

 

             ...

 言葉を詰まらせる暁彰はあの時の事を思い出す。

 

 また、同じことを繰り返そうとしている自分がまったく嫌になる…。

 

 

 「暁彰、大丈夫?」

 

 

 くろちゃんの心配そうに声かける言葉に我を取り戻す暁彰。平気だと言って、これから行う事に覚悟を持って、みんなに自分が見た事を伝える。

 

 それはROSEのみんなにとっても許せない現実だった。

 

 

 「あの父親は……もう死んでいる。もう彼は生きてはいない…。」

 

 

 暁彰の口から明らかになった事実に全員衝撃を受け、目の前の男を凝視する。

 

 

 「嘘、だろ?」

 

 

 「そうだよ、動いているじゃない!?」

 

 

 「ああ、今だってあの男の子の名前を言ったぞ! 意思があるじゃないか!?」

 

 

 みんな口々に驚きを隠せないまま、否定する。その言葉を聞いてなお、暁彰は警戒と悲哀の入り混じった表情をする。暁彰も否定したい思いだが、自分がこの眼で見たこれは現実を告げていた。

 

 

 「いや、嘘じゃない。俺はこの眼で、タツヤ族遺伝異能『精霊の眼(エレメンタルサイト)』で彼の構造を見た。

  彼は今、生命エネルギーを死体に循環されている。例えるなら…、死者でありながら生命がある死体?ってとこか。まさに生命そのものを弄ぶ忌まわしき魔法を彼は掛けられている。そのせいか、記憶も知識も薄れていっていて自分がもはやだれかはわかっていないだろう。」

 

 

 「そうか…、『精霊の眼』を使ったなら納得できるけど、そんな魔法、存在するの?」

 

 

 「あるから目の前に存在するんだろ?それに俺達はこういう事をする奴らがいる事も知っているはずだ。」

 

 

 「でもさ!完全なる死体じゃないんだよね!?なら、助けられるんじゃない!?

  その魔法の起動式を取り外せば、意識だって…」

 

 

 ホムラとサガットが暁彰の説明に納得し、今までの経験から闇ギルドの仕業だと推測する。そして動きを止めるため、魔法を発動しようとする。それを鳥になる日が止めて、何とか助けようと提案する。しかし…。

 

 

 「本当ならそうしたいが…、もう手遅れだ。

  彼の心臓部分にその起動式が刻み込まれていて、心臓の動きを止めないと…、要するに心臓を潰さないと彼はなにがあっても動き続けるように起動式に細工されているようなんだ。解除しようとしても、されそうになっても、自害するようにも組み込まれている。だから…、何もしなくても潰しても彼はもう死んでいるんだ。」

 

 

 苦しそうに男の状態をみんなに告げる暁彰は今からする事に嘆いた。

 

 そして、暁彰と同じくROSEのみんなも手の打ちようのない状況に救えないもどかしさを感じながら覚悟を決めていく。

 

 





苦渋の決断をするみんな。

これは切ない結果だな。
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