ときめきメモリアル4 ~the original story ~ 作:ユキヒコ
「こんにちは、ここで寝てると気持ち良いよな」
相手からの返事はない まぁいきなり話しかけりゃそうなるわな
むしろ怪しい奴と思われてそうだが 俺はさらに隣良いかと確認する
「…別に良いよ、好きにしな」
「サンキュ」
俺は鞄を置いて隣に座らせてもらって相手をちらっと見た
性別は声を聴いても分かったが女、きらめき高校の制服を着崩しをしていて
茶髪でそれなりに可愛くだけどツリ目で耳にピアスを付けた
所謂ちょい不良っぽかった
不良少女「お前もきらめき高の生徒か?」
「そうだぜ、新入生だ…お前もそうだろ?」
不良少女「あぁ、あたしも新入生
…でも入学式なんて行く気分じゃあないからサボった」
入学初日からサボったなんて悪びれもなくほざきやがった
こいつは中学から問題を起こした奴だと直感で分かった
そしてさっきからこの女から既視感を感じさせるものがあった
何故感じるのかは未だ分からずにいた
でもあえてこの女子の素性は必要以上踏み込まずにスルーしておいた
俺も似たような貉なわけだし 今でも心の奥底に残っているのだ
「まぁ一度ズルして休むと気分で勇み足になるよな
俺も中学じゃそんな感じだったよ」
不良少女「へぇ…お前もそうなのか じゃあここにもよく来たのか?」
「あぁ、たまり場だった 他の連中が授業を受けている時に
スーパーで買い物してここで有意義に楽しんだもんさ」
不良少女「あーあたしもやったやった 授業を頑張っている時間帯に
こうしてコーラを飲んだり街で買い物するのも楽しいよな」
「そうだな、バレるんじゃねぇかって思うスリル感が味わってたまんねぇよな」
その後も俺達はお互い目を合わさず話せる範囲で自分の話をしていた
同じ貉同士とはいえこんなに話すのはちょっと異常だとは思ったが
どうせ三年経てば会うこともない奴だからいいかと短絡的に考えていた
がやっぱり話してる最中でも俺の心にこの女子への既視感が拭えなかった
それは彼女の笑い方がどこかアイツにそっくりだったから
不良少女「…おい そろそろ気づいてくれたか?」
女子が体を起こして俺の方へと向いた
二つに分けられた茶髪が吹き抜ける風で乱れ始めた
それを見た俺の目に既視感の答えを導き出す
子供の時の面影が映し出された…
「…お、お前…カイ…いや龍光寺…なのか?!」
龍光寺「…正解だ、小学校卒業以来だな………立花
お前…少し変わっちまったな あたしは結構だけどさ」
俺は言葉を返さなかった それどころじゃあなかったからだ
皐月先輩のことでも心底驚いた所にこいつと来たもんだから
俺の頭が混乱してきている…何でこうなっちまったんだって
ムカついたことはあったが 龍光寺には自分らしく生きて
俺みたいに落ちぶれず幸せになって欲しかった…と思っていたのに…
「…………何があったんだよ」
龍光寺「…さぁな、お前には関係ないだろ?」
龍光寺は冷たく俺を突き放す
確かにこれは龍光寺の問題で俺がとやかく口にするべきじゃない
それに俺は中学ん時に色々ないざこざがあって
ビジネス上の付き合い以上の関係はごめんだと決めている
こいつも中学の時に俺と似たようなことがあった
「そうだな…」
龍光寺「あぁ、さてっと…あたし もう帰るわ
お前の親父さんによろしく伝えておいてくれ」
親父は龍光寺がこうなったのを知っていた
なんて事実なんて吹っ飛んだ がらにも無く後悔していた
このままだとアイツがどこかへ行ってしまうと感じた俺は
今になって龍光寺を引きとめようとする
しかし、踏み込むことをやめた俺じゃ
絞りだしても声が出せず息苦しくなって諦めてしまう
龍光寺「…じゃあ、またな 立花」
そんな俺にかける言葉ではないことを言った龍光寺の目は
穏やかで優しいものだった 変わってしまった俺への哀れみなのかもしれないが…
それがとても胸にくるものがあり、ここに留まってしまった
家に戻った俺はすぐに部屋へ戻った
散らかってきたねぇそれまでの当たり前が広がっているこの部屋を見て
「…久しぶりに…やるか」
部屋着に着替えた俺は床に散らばったポテチの袋や衝動買いで買った雑誌
バラバラに千切った100点のテストの紙きれを一か所に集め
必要だと思ったもの 子供の時の思い出の品を分けて締まっていく
するとオフクロが階段を上がって俺の部屋へ入ってくる
「流、これ」
なんと可燃不燃の大きいゴミ袋を持ってきてくれた
「オフクロ…」
「頑張りなさい、流…諦めずに行けば 道は広がっているわ
これは最初の一歩よ」
帰ってきた俺が何があったかなんて聞かなくても分かるって目をしてた
改めて母の強さを思い知った俺は袋を受け取って
「…ありがとう オフクロ」
「うん…」
オフクロの表情はとても嬉しそうだった 暗い闇の中を籠った俺が
立ちあがってくれたのだと思ったんだろう
正直まだ中学時代のトラウマや勇気の無さは解消していない
だけどこの眼差しをするオフクロを見て少しずつでも答えていこうと
決意した…
それからオフクロの助力もあって、
だらしなく散らかっていた部屋が見違えるように綺麗になっていた
その達成感に浸っていると 机の上に古びた本を見つける
裏っ返しになっていて 小学校の図書室の本が今になって出てきたのかと
びびりながら表にしてみた
「こ、これは…皐月先輩にもらった本じゃあねぇか…っ」
そう、あの『素敵な恋を贈る樹』第一巻だ
今になってこんなものがぽんと置いてあったとは思わなかった
本は子供の時に読み込んでいたから折り目がついていたり
角がすれていたり古ぼけていたが それが懐かしさが俺の心に響かせ
気が付くとページを捲って読み始めていた
気持ちわりぃ程一行を丁寧に目で追っていく
「ふふ、そういやこんな始まり方だったな…懐かしいや」
物語の舞台は東京、高校に入学した新垣翔は
汐澤晴美と出会い恋に落ちる でも中学までぱっとしたものがない
翔はデートに誘っても何も進展がないので彼女に振り向いてもらう為に
自分自身を鍛える為に勉学や運動を頑張り 欠かさずデートを繰り返す
というのが第一巻の内容で俺は全部読み上げてしまった
「は、はは…どうしちまったんだかね 俺は…」
恋愛小説を真剣に読んでいた俺は苦笑いを浮かべる
そして小五の時あの人が課した宿題の事を考えてみた
「…これを読んで俺がこの翔のように本気で恋をしてみて
その感想を言えってことかね………」
漠然としたものだがそう推察した しかしそれも違和感のある話だが
「まぁ何にせよ、少し頭の中に入れてみてもいいかもな…」
そう呟いた俺はこの後食事へ出てみた
相変わらず親父の小言がうるさく思ったが 今日はあまり気にならなかった
そして部屋へ戻った後、また一巻を手に持って読み始める
今、少年の暗く冷え切った心が揺れ動き そうしていつも背け逃げ続けた
背後でそびえたつ光の方を少しだけ向くことが出来たのだ
果たして、この後どうなるか それは次の話で…
続く