足跡を追いながら歩いて数分、徐々に木の生え方がまばらになっていき、そのまた数分後には森を抜け出し、草原にたどり着いた。
俺は、あまりにも簡単に出られたのですこし拍子抜けしてしまった。
しかし、今まで過ごした陰鬱な森とは対称的な、この開放感のある草原は、俺の心に活力を生んでくれた。
遠くには、小さく人里らしきものが見えた。
俺は期待で胸を膨らませながら、勢いよく走り出した。
その町は、江戸時代末期の和風建築に似た建物がずらりと並んでおり、その建物に挟まれた大きな通りには、和服に身を包んだ人影がちらほら見える。
俺は比較的近くにいる男性に目をつけると、声をかけにいった。
「すみません。少しおたずねしたいことがあるのですが。」
しかし、男性は怪訝な顔で俺のことを見るとそそくさとどこかへ行ってしまった。
その後も、何人かに同じようにして話しかけるが、誰も応答してはくれなかった。
どうしたものかと悩んでいると、
「外から来た人かね?なら博麗の神社にいくといい。」
と背後から突然声をかけられた。
驚いて振り向くと、小柄な老年の男性がこちらを見ていた。
老年の男性は続けて、
「神社までの道はわかるか?まず、この通りをまっすぐ進んでここを出る。そのまままっすぐ進むと、鳥居が見えてくるだろうから、後はそれを目印にすればいい。」
と言った。
俺は、
「“外から来た”というのはどう言うことですか?」
と聞いたのだが、聞こえなかったのか、先ほどまでの人達と同じように何処かへ行ってしまった。
お礼をいい忘れたな、などと思いながら、俺はその博麗神社を目指すことにした。
集落を出てしばらく歩いていると、先ほどの老年の男性が言ってたとおりに、山の上にに建つ鳥居が見えてきた。俺は方向を変え、鳥居目指して歩いた。
参道の入り口にたどり着くのにそう時間はかからなかった。俺はそこから鳥居を見上げる。そこには、とてつもない長さの階段があった。俺はこの階段を上るということに半ば気が遠くなりながら、上り始めた。
しかし、俺の予想に反して、脚には疲労がたまらず、息切れもすることもなく、神社にたどり着いた。
境内は綺麗に掃除されており、本殿に腰かけている二人の女の子が見えた。
片方の女の子は頭の後ろに大きなリボンをつけ、肩と脇が露出した赤色の不思議な服装をしている。
もう片方の女の子は、大きなリボンが特徴的な魔法使いのような帽子を頭にのせ、黒いエプロンドレスを身に付けている。
神主が見当たらないので、俺はとりあえずこの二人に声をかけることにした。
「すみません。博麗神社に用があってきたのですが」
すると、赤い服装の女の子が、
「外来人の方ね。詳しい話の前に、お風呂沸かしてあげるから、入ってきなさい。」
と言われる。
自分の身体を見回して見ると、全身が泥だらけで、手のひらもマメが破け、全体的にとても汚い。
俺は先ほど自分が無視され続けたことに納得した。
視線を戻すと、そこに赤い服装の女の子の姿はなかった。風呂の用意をしてくれているのだろう。そんな中、黒い服装の女の子が興味津々といった様子で話しかけてきた。
「私の名前は霧雨魔理沙、魔法使いだ。魔理沙って読んでくれ。あんたの名前は?」
「浅井守景って言います。」
「敬語じゃなくていいぜ。守景は外来人なんだって?よくここまで来れたな~。」
「人里の人に場所を聞いて来たんだ。それよりさっきから気になってたんだけど、外来人ってなんのことだ?」
「外の世界から幻想郷に来た人のことだぜ。」
またわからない単語がひとつ増えたとき、奥から風呂が沸いたという旨の声が聞こえたので、一旦話を中断し、声のする方へ向かう。
脱衣所らしき所へたどり着くと、和服が綺麗にたたんでおかれていた。恐らくこれを着ろということだろう。
服を脱ぎ、ポケットから投石器を取り出した後、風呂場に入り、身体をお湯で洗い流し
、全身を石鹸で洗い、再びお湯で洗い流した。その後湯船に浸かった。四日ぶりの風呂はとても気持ちよく、疲れが溶け出していくようだった。
しかし、あまり長く入っているのも悪い気がしたので、早々に出ることにした。
和服に着替え、脱衣所を出ると、どこからか包丁とまな板の当たる音がする。
もしかしたら昼食を食べさせてもらえるのかもしれないと、期待しながら音のする方へ向かう。
台所には赤い服装の少女が料理を作っていた。
「あ、もう上がったの?もう少しでできるからで居間で待ってて。」
そう言うと、また料理作りに戻った。俺はあまりに親切なので少し疑いながらも、ご厚意を受け止め居間に向かった。居間に行くと先に魔理沙がちゃぶ台のそばに座っていた。俺もそのそばに座り軽く談笑をする。
しばらくすると、料理が運ばれてきた。料理が出揃うと、三人で食べ始める。料理の味はとても美味しく箸が
軽快に進んだ。
昼食を食べ終えいよいよ本題へと入る。
「自己紹介が遅れたわね。私は博麗神社の巫女、博麗霊夢。ちなみにこの神社に神主はいないわ。」
「浅井守景です。」
「敬語じゃなくていいわよ。とりあえず、ここについて説明するわね。」
「ここは幻想郷と言って、人間の他に、妖怪などの人外も暮らしているわ。あなたのいた外の世界と、幻想郷の間には結界があってお互いに干渉できないんだけど、たまにあなたのように外の世界から幻想郷にやってくる人がいるの。そういった人をまとめて外来人とよぶのね。ほとんどの外来人は、妖怪に襲われるか、餓死するかで死んじゃうんだけど。」
「こんなところね。わかったかしら?」
「だいたい理解した。」
「そう。じゃあ、一つ質問するけど、外の世界に帰りたい?」
「今はまだ、帰りたくないかな。」
俺には一つ試したいことがあったのだ。
「あなたがそう言うんなら別に構わないわ。だけどあなたがこの世界に残る以上覚えていてほしいことがあるの。弾幕ごっこっていうんだけどね。霊力や魔力、妖力を弾にして放つの。人間と妖怪が対等に戦う手段なわけ。普通に襲ってくるやつもいるけどね。」
そう言うと、霊夢は懐から三枚の札を出した。
「これはスペルカードと言って、自分で決めた弾幕の名前を書いておくお札ね。これを使うことで弾幕ごっこができるわけよ。このスペルカードはあなたにあげる。」
俺は霊夢からスペルカードを受けとる。
「ルールについては、絶対に避けられない弾幕はだめ、弾幕には美しさを持たせること、あらかじめ被弾回数と、スペルカードの使用枚数を決めること、これらに注意してくれれば基本的には大丈夫だわ。」
「説明が長くなっちゃったけど大丈夫かしら?」
「一つ質問なんだけど、弾幕って俺みたいな一般人にも出せるのか?」
「出せないと思うけど、とりあえず、ためしてみたらどうかしら?」
俺は手のひらを広げ意識を集中させる。すると、手のひらに淡い光の弾が出現した。
「おおーっ!守景すごいなーっ!あんた絶対一般人じゃないよ!」
「そうね、結構才能有るんじゃないかしら。」
霊夢と魔理沙に誉められなんだか照れてしまう。
「これで空も飛べたら文句なしだな!」
「え?ここの人って空飛べるの?」
「人里の人間以外は全員飛べるんじゃないかしら。」
俺は唖然とする。
「まあ、空を飛ぶ練習は後々するとして、あなたこれからどこに住むの?お金もなさそうだし、食べ物も買えないんじゃない?」
言われてはじめて気がついた。これじゃ前の生活に逆戻りだ。
「私にいい考えがあるぜ!」
魔理沙が声をあげる。
「こーりんのところで住み込みで働くっていうのはどうだ!」
「あら、中々いい考えね。」
「こーりん?」
「私の知り合いだ。安心してくれ。」
「じゃ、それで決定ね。」
半ば強引に決められた気もするが、果たして大丈夫だろうか。
「霖之助さんのところには明日行くとして、今日はここに泊まっていきなさい。」
「ありがとう。お世話になります。」
「それじゃ、私は家に帰るぜ。明日の朝またここに来るから。」
「わかった。今日はありがとう。」
魔理沙はそばにかけてあった箒に乗ると颯爽と飛んでいった。
その後俺は、霊夢の手伝いをしながら1日を過ごした。
夜、久々の布団で寝れることに歓喜しながら俺は寝床にはいった。そして、今日あったことについて、自分なりに考察した。
幻想郷には妖怪が住んでいると言っていた。とすると、あのときの豚頭は間違いなく妖怪だろう。そして、あの長い階段を上っても息が切れなかったり、手のひらでわずかながらも弾幕が出せたのは、妖怪を食べたことで、微量ではあるが妖怪の力を取り込んだのではないだろうか?今のところ、身体に目立った不調もない。霊夢や魔理沙にはとてもいえないが、これは俺がこの世界で生きていく上で重要な鍵になりそうだ。
俺はそんなことを考えながら深い眠りに落ちていった。
第三話にして初の会話&主人公の名前登場ですね。
名前登場記念に守景の詳細をのせておきます。
名前 浅井守景(あさい もりかげ)
年齢 18歳
性別 男
身長 174cm
体重 62kg
髪型 オールバック(K○Fのクリ○リッドのような)
髪の色 黒
目の色 黒
好きなもの 散歩 妄想
嫌いなもの 特になし
ご感想お待ちしております。