Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜 作:黒曜【蒼煌華】
「私……かない…!」
「…が……誰に……」
………騒がしいな。
女性同士が言い争う声が、頭に容赦無く響き渡る。
戦いが終わって、人が折角寝ていたっていうのに。
それに何だか背中が痛いな…。
地面が硬いから、恐らくこれのせいだ。
何故か頭部だけはふかふかしている何かの上に乗っている。
…そして腹も痛い。
腹の内部が痛い。
何でこんなに痛いんだ?
もしかして、冷たい物を食べ過ぎて下したか?
いや、確か転移してからカレーパンしか食べて――
「…カレーパン?」
自分で言うのもアレだが、起きたての第一発声は相変わらず意味不明だ。
というかこのふかふかの感触は一体――
「…おはよ、大祐くん。カレーパンがどうかした?」
「あづみさ…!?」
何で目の前にあづみさんが!?
凄く可愛いじゃないか!
毎回、起きたらあづみさんが目の前にいてくれたらどれほど幸せか…。
…それは良いとして。
何故目の前にあづみさんがいるのか、そちらを解決するのが先だ。
ってか、さっきから頭の下にあるふかふかの感触は何だ?
よし、確かめよう。
「えへへ…前に大祐くんが膝枕をしてくれたから、今日は私が…って大祐くん!?」
「?」
一度あづみさんから目を背けてそのふかふかに手を突っ込むと、あづみさんが驚愕の声を上げた。
何故驚いているのか分からない。
俺はそのまま手探りを開始。
すると、何かもふもふした感触が伝わって来た。
「ん…??」
「…もう、大祐くんのエッチ…。」
「はぁい!?俺、あづみさんに何か………あ。」
行き成り何を言っているんですか!
僕は何もしてませんよ!
そんな言葉が口から出る瞬間、俺は止まった。
…何で俺、あづみさんに膝枕してもらってんの。
ていうか、それに気付かないであづみさんのスカートの中に手を突っ込んでしまった。
あのもふもふは恐らく、あづみさんの履いているニーソだろう。
…変態じゃねぇか。
あづみさんの頬が赤く染まっている。
「本当にすみませ…ごめん!」
「…えっとね、ちょっとびっくりしちゃっただけ。この前に膝枕してもらったから、お返し。」
「…少しの間、また膝枕して貰って良い――良いかな?」
「え〜、どうしようかな?」
おっと?
あづみさんがまさかの焦らし行為をしてくるとは…。
しかも、ニコニコと笑顔になりながらだ。
実はあづみさんってドの付くSだったりして…。
「なーんて♪私は良いよ?」
「…ありがとう、あづみさん。」
お言葉に甘えて、再度あづみさんの太股に頭を置く。
目を開けた状態でいると、あづみさんの可愛らしい顔が至近距離で見れる。
ここは天国だな。
頑張って戦った御褒美を頂いている気分だ。
………ん?
戦った御褒美?
―――もしかして、さっきから言い争っているのって。
「だから、私に聞かれても分からないわよ!」
「その筈はありません。リゲルがあの男性と一緒にいたのであれば、男性の目的を知っている筈です。」
「だーかーら!私には大祐の考えている事は分からないって!」
…やっぱり。
言い争いをしている張本人は、リゲルさんとXちゃんの二人だった。
互いに分からない事だらけなのか、会話が上手く成立していない。
つーか、しっかりとXちゃんを見たの初めてな気がする。
青く綺麗なロングヘアーに、青い瞳。
スタイルは正に、ボン・キュッ・ボンだ。
リゲルさん以上にありそうな大きな胸、キュッと締まったお腹周り、下半身の方は個人的語りたくない。
…何故かって?
見た物をどう思うかは個人次第だからだ。
只、俺の個人的な意見ではボン・キュッ・ボンが正しいなと。
そんな二人が目の前で言い争い。
地味に距離が近く、もうそろそろ互いの胸がぶつかり合いそうだ。
その前に止めなければ。
そう思って声を出そうとすると、誰かが俺の横に座った。
小さな少女だ。
「…私、どうすれば?」
不安げな表情を見せるA-Zちゃん。
俺のせいで記憶を失ってしまい、そうして今は隣にいる。
「大丈夫。君の面倒は俺が見るから。」
「貴方が…ですか?」
「あぁ。元々の元凶は俺だしね。」
「…そう…ですか。それでは、今から宜しくお願いします。ますた。」
流石、決まると早いな。
話を直ぐに納得してくれて助かる。
分からない事が殆どだろうに…。
それに、ますたか。
マスターではなく、ますたと。
…しょうがないか。
記憶を失ったというよりかはデータが飛んだ、の方が正しいだろう。
どちらにせよ、聞き馴れなくて居心地が悪いな。
ちょっと呼び名を変えてもらおうかな。
名前を呼び捨てでも構わないから。
「マスター、じゃなくても良いんだよ。」
「…では、何と呼べば――」
「敬語も使わんで大丈夫。普通に接してくれると。」
「…分かった。だけど、ますたが良い。」
「了解。んじゃ、宜しくね。」
「はい、宜しくです。」
……今一瞬、敬語とタメが混ざったような?
ま、あまり気にしてもしょうがないしな。
凄く心地好いのは間違ってはないが。
A-Zちゃんとの話し合いも終ったし、そろそろ二人を止めますか。
よいしょっと。
「大祐くん、もう良いの…?」
体を起き上がらせると、あづみさんが少し寂しそうな表情をした。
全くもって可愛い。
「ゴメンね。また後で……今度は俺がして上げても宜しかったり?」
「本当!?……えへへ、じゃあ、後でお願いします。」
「此方こそ。」
華の咲いた様な笑顔を向けてくれるあづみさん。
実は俺の膝枕を気に入ってくれてたりするのかな?
…そんな訳無いだろうけど。
枕としては良いよね的なアレかな。
うむ、悲しみ。
後であづみさんに聞いてみよう。
「俺の事、どう思ってる?」って。
いや、もうちょっと言い方を変えて言わなければ。
誤解が生じてしまう。
…それよりも、目の前にいる二人をどうにかしなければ。
まだ言い争ってるよ。
「…ベガ様の元に帰らせて頂きます。」
「ちょっと!まだ大祐の話を聞いて無いでしょ!」
「あの人に聞く事なんてありません。」
「ちょっとでも良いから、聞いて貰えると有り難いな。」
「大祐!」
俺が起きた事に今気付いたリゲルさんは、安堵した表情をしている。
一方でXちゃんは、地味に俺を睨み付けている。
おぉ、怖い怖い。
…なんてのは冗談。
取り敢えず事情説明をしなければ。
勿論、納得してくれるように。
「…貴方は何故、私とA-Zを殺さなかったのですか?」
「君達には何の罪も無いから、かな。」
「何の罪も…?大祐、こいつらは…!」
「落ち着いて、リゲルさん。先ずは話し合いです。」
「…むぅ…分かったわ。」
瞬間的にもXちゃんに殺意を向けたリゲルさんを宥める。
リゲルさんの側にあづみさんに来て貰う。
すると、あら不思議。
リゲルさんか嬉しそうな顔をしたではありませんか。
本当にあづみさんが大好きなんだなぁ。
あづみさんもニコニコ笑顔でリゲルさんを見ている。
素晴らしい光景だ。
「…で、君達を生かした、というか助けさせて貰った訳だ。」
「罪も無いから、その答えでは矛盾しています。私とA-Zは貴殿方を――」
「それは君達が望んだ事じゃない。ベガに言われてやったんだろう?」
「しかし、ベガ様に同意した次点で望んだも同然。」
「そうかもしれないが、提案を出したのはベガだ。君達はそれに同意しただけの事。」
「…話が噛み合いません。私はベガ様の元に帰らせて頂きます。」
「了解したよ。何時でもどうぞ。」
「大祐くん…!?」
俺の言葉に、あづみさんが驚いた。
リゲルさんも驚愕の目で此方を見ている。
対して俺は至極真面目な表情をした。
…真面目な表情…してる、よな?
「君が帰りたいなら好きにすれば良い。勿論、ベガへの報告も。」
「大祐、それじゃあ割に合わない…」
「はい。なので、此方からは助けたお礼として要望を二つ聞いて貰います。」
「構いません。それで戻れるのなら。」
戦闘中のXちゃんとは打って変わって、話がスムーズに進んで行く。
多分だが、早く戻りたいのだろう。
今は引き留めても無駄だろうから、後でまた会った時にでも詳しく話し合おう。
ベガも一緒に。
…離婚寸前の夫婦みたいな感じで何か嫌だな。
Xちゃんと夫婦になれるのなら良いって人は沢山いそうだけど。
俺だったら圧倒的あづみさん&リゲルさんが(以下略)
転移してからの自制心を持たねばって心意気は何処いったのか。
ま、それは置いて。
取り敢えずは要望を話さねば。
Xちゃんが今直ぐにでも帰りたそうにしている。
「…先ず要望1。ベガに伝言を頼む。「リゲルさんを排除し、あづみさんを取り戻したいのなら自分から来い」と。要望2、A-Zちゃんは俺が預かる。」
「ベガ様への伝言は分かりました。…ですが、何故A-Zを?」
「A-Zちゃんの記憶を奪った責任。それに、こうすればベガも自分から直ぐ来るだろう。態々返して調整とかされるのは可哀想だしね。」
「…分かりました。要望1、要望2を了承します。では。」
飲み込みと理解、行動の早さがバトルドレスの特徴なのか。
なんて思える程に行動に移すのが早い。
流石、とでも言えば良いのかな?
俺もあんな風になりたいな。
感情まで機械化するのは勘弁だが。
――そんな事を考えていると、いつの間にか目の前からXちゃんが居なくなっていた。
帰るのも早いな。
即刻にベガを呼んで来て殺しに来たりとか。
…ないか。
「で、これからどうするの?」
先程までびっくりしっぱなしだったリゲルさんが疑問をぶつけてきた。
無論、返答は決まっている。
「赤の世界へレッツゴー、ですが。」
「いや…それは決定事項なんだけれど。」
「…えっと、A-Zさんの事だよね。」
あ、そっちか。
俺が責任を持って面倒を見るのはやっぱり駄目なのかな…。
っと、今気付いたがあづみさん、リゲルさん、A-Zちゃんという順番で並んでいる為、面白い光景になってる。
リゲルさん、幸せだったりするのかな。
俺も彼処に交ざりたいな。
欲望が透けまくっているが。
「A-Zちゃんは俺が面倒を見る…じゃ、駄目ですかね。」
兎に角、どういう返答を返されても聞いてみなければ始まらない。
二人になら納得して貰えると信じたいな。
過信のし過ぎは良くないが、二人は別だ。
不思議と、裏切らないと思える。
俺の勝手な解釈だが。
「…私は、良いと思うよ?」
おぉ…流石あづみさん。
貴女がOKを出してくれればリゲルさんも――
「あづみが良いなら私も良いわよ。大祐になら任せられるし。」
やはり。
あづみさんの影響力は素晴らしい。
何でもかんでも良いという訳では無いだろうが、あづみさんが了承してくれれば大幅な確率でリゲルさんも了承してくれる。
リゲルさんのあづみさん愛には負けるな。
何時か追い越したいものだ。
…それは良いが、実は最後の言葉の方に反応してしまった。
「大祐になら任せられる」という言葉に。
嬉しくてついつい涙が出そうにな…
「…ますた、今からどこ行くの?」
「んー?赤の世界だよ。」
「あかの…?」
「う、ん、赤の、世界、って、所、だよ。」
「…大祐、一体どうしたの。」
上目遣いでほにゃほにゃした口調で喋るA-Zちゃんが破壊力ヤバイ。
だってどう見てもあづみさんがそう喋ってる風にしか見えない。
しかも上目遣いで。
だから、あづみさんが俺に対してそういう事をして来てる風にしか…
あぁ!何が何だか分からなくなってきた!
そんな俺を見てリゲルさんが微妙な表情をしている。
その子はあづみじゃないわよ的な視線をぶつけて来る。
分かってますってリゲルさん。
僕がそんな事を分からない筈が――
「…ますた、行こ。」
「えっ…待って待って。まだ話が色々あるから。」
「…分かった。」
――判断が早過ぎるのも考え物だ。
もうちょっとマイペースでも良いでないか。
あづみさんのリソース症候群を早く治してあげたいのは事実だけど…焦っても良い事はないからね。
ゆっくり、確実に。
物事を解決するのにはそれが一番。
…っと、危うくバトルドレスの話を忘れる所だった。
新しい機能、特殊能力が追加されたと。
「リゲルさん、リゲルさん。Xちゃんとの戦闘で、バトルドレスの能力が解放されました。」
「そう言えばすっかり忘れていたわ。…それで、何が解放されたの?」
ぐぅ…。
リゲルさんに忘れられるとは、少し悲しい。
…ま、まぁね。
色んな事があったもんね。しょうがないよね。
リゲルさんだって忘れる事くらいあるさ。
「先ず戦闘話から。リソースが無くなったXちゃんにベガから通信が入り、リソース限界解放という能力を発動されました。」
「ベガから、リソース限界解放を!?」
リゲルさんは自分の驚きの域を越したのか、手を口に当てている。
そこからは一方的に話した。
その瞬間フルボッコにされて内臓まで切り裂かれた事。
だが、俺の特殊能力[SEED]が解放され、やり返した事。
何故A-Zちゃんを、オリジナルXIIIを助けようとするのか。
全てを洗いざらいに話した。
‐‐‐
「…これで全部ですかね。」
取り敢えず話し終わった。
二人共、俺に対して微妙な感じだ。
「…駄目でしたかね、戦闘結果。」
思わず口が開き、そんな言葉を投げ掛けてしまう。
微妙な表情、何も言われない、沈黙。
自分が喋った後にこの三拍子が揃うと結構な不安を抱いてしまう。
何言ってんのこいつ、みたいに思われていたりとか…。
なんて、此方が逆に思ってしまう。
実現されない事を願うよ。
「…あ、いや…リソース解放したXを倒したんだなと思うとね…大祐が怖くなって。」
「そうだね…リゲルを彼処まで追い詰めたZ/Xの全力に勝つなんて。」
「その戦力が二人の味方ですよ?…安心して下さい。裏切りなんてしませんから、断じて。」
最後の「断じて」に力を込めて言い放つ。
すると二人共、安心したように胸をほっと下ろしていた。
やはりだが、まだ完璧に信用はされてないようだ。
…仕方がないよな。
まだ二日ちょっとしか一緒にいないのだから。
三つ目の目標は、二人の信用を勝ち取る事だな。
頑張らねば。
…って、こんなに呑気にしている場合じゃなかった。
早いとこ赤の世界に行かねば。
そうすればベガも手出しを躊躇する筈だ。
他世界に喧嘩を売っているもんだからな。
「…俺の話は置いといて、それじゃ、赤の世界に行きますか。」
「そうね。あづみの事が一番だから。」
…リゲルさん。
それは、俺の事はどうでも良いって事ですか?
そういう事なんですか?
これこそどうでも良いわ。
と、不意にコートの裾を引っ張られた。
「…ますた、一緒に。」
「そうだね。A-Zちゃんは近くにいてくれるかな。」
「うん。」
「…むぅ〜」
「あづみさん?」
然り気無くA-Zちゃんの頭を撫で撫でしていると、あづみさんが頬を膨らませながら此方を見ている。
…大祐はどうする。
○ンスターボールとか投げて、捕まえて、超愛でたい。
が、そんな夢物語は出来ないので、頬を膨らませているあづみさんをこうしよう。
「撫で撫で〜。」
我ながら変な掛け声をしたなとか思いつつ、あづみさんの頭も撫でる。
あの時の感触がまた味わえるとは…やったぜ!
…あ、けど、俺は良いけどあづみさんは嫌がったりしないのかな。
「…あづみさん、大丈夫でしたか?」
「んー…?えへへ…」
…え!?
それだけ!?
ちょっと意外過ぎたな。
しかし、あづみさんは目を閉じながらにっこり笑顔で撫で撫でをされている。
割りとお気に入り設定されているらしい。
またして上げたいな。
「…はぁ、早く行きましょ。」
待って下さいよ、リゲルさん。
あづみさんとA-Zちゃんを同時に撫でれる幸福な時間をもうちょっと――
「リゲルもして貰えば良いのに…。」
「…あづみ、それはない。」
「ますた、早く行こ。」
あづみさんからは絶賛され、リゲルさんからは否定をくらい、A-Zちゃんからは催促され。
大変だが、何だか幸せだな。
こんなに可愛い三人が近くにいてくれるなんて。
リゲルさんの言葉にはグサッときたが。
「…だね、もう行きましょうか。」
「リゲル、勿体無いよ?」
「構わないわ。撫でられるのは嫌いなの。」
「早く目的地に行こ、ますた。」
「随分バラバラですが…大丈夫なのかな…。」
毎回の如く抱く不安が、今回も味わう事になるとは。
味わうのは幸せだけで勘弁して下さいよ…。
痛いのとかもう辛過ぎて嫌になってきたからさ。
とか何とか思いながら、赤の世界に歩みを再会した。
…色んな事がありすぎだよ。
‐‐‐
リゲル先生のパーフェクトZ/Xの世界教室
…ではなく、特殊能力[SEED]の効果。
・発動条件
不明
・効果
リソースが全て回復し、[SEED]が使えるバトルドレスの特殊武装が使用可能になる。
更に、感情に変化が表れる。
使用最中のバトルドレスで変化は異なるが、デスティニーの場合は[怒り]。
反応速度が異常に高くなる。
・[SEED]発動最中デスティニーの特殊武装
『光の翼』
自分のリソースを大量に放出し、紫色に似た光の翼を展開する。
光の翼を展開中は動く度に残像が生まれ、敵はそれを「本体」と見間違える。
移動速度も高くなり、一瞬で相手の懐に入り込む事が可能。
但し、長期的な戦闘ではリソース消費が足を引っ張る原因になりかねる。