Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜 作:黒曜【蒼煌華】
第十話: 目的地への到達
人形(ひとがた)のZ/Xが多く存在し、主に戦闘を好む者達が犇めく世界。
「…赤の世界、着きましたね。」
「………大祐、その――」
長かった…。
実に長かった。
たった二日だが。
内容の濃い二日だった。
A-Zちゃんを預かったあの日は歩いて直ぐに暗くなり、又だよ野宿さん状態に。
あづみさんに約束の膝枕をし、A-Zちゃんにもそれをやり、ダブル膝枕になり、リゲルさんを隣に眠りに――
就ける筈がないじゃないか。
如何にも俺の理性がぶっ飛びそうな感じになったよ。
実際に飛びかけたが。
眠れないからしょうがなく起きてたらリゲルさんが完全に寝落ちして、俺の肩に寄り掛かって――
理性なんてあったもんじゃないね。
…けど、あまりにも気になってリゲルさんの頬を触ってしまった。
ぷにぷにしてた。
だが、それに違和感を感じたリゲルさんが上半身ごと身体を背け、倒れそうになり。
ダブル膝枕状態で動けない俺は限界まで手を伸ばし。
リゲルさんの両肩を掴んで、リゲルさんの綺麗なお顔が地面とごっつんこする事は避けれたが…。
丁度起きちゃったんですよね。
…誰が?
リゲルさんが。
そして、俺に両肩を掴まれながら見つめられたリゲルさんは何を思ったのかバトルドレスの状態でビームサーベルを構え。
「…死ぬ覚悟はあるのかしら?」とか言われてしまい。
「リゲルさんをずっと見つめられるなら」って真面目に返答したらですね。
なんと意外にも顔を赤くし、目を逸らしたのですよ。
可愛いったらありゃしない。
そのまま見つめ続けたら、流石にアレだったらしく肩に置いた手を優しく払われた。
てっきり、思いっきり叩かれるのかと思ったが。
その後に理由を聞いてみたが、「そんな事、誰にも言われた経験がないから…」って恥ずかしがりながら言っていたな。
一瞬、変な雰囲気になりかけたが身動きをしたせいであづみさんが起きてしまい。
寝起きのぽけーとした可愛らしい表情で此方をじーっと見て…。
寝た。
…その事を朝になって聞いてみたら「それ、何の話?」と、マジな表情をされた。
本当にただ寝惚けていたっぽい。
助かったちゃあ助かったかな。
因みにその日は寄り道せずに、ずっと歩きっぱなし。
途中で休みもしたが、食事をする時のみ。
ほとんどの労力は歩く事に使った。
それ以外は…色々あったな。
濃い、までとはいかなくとも普通より濃い的な………醤油の濃さで例えちゃ駄目だよね。
あづみさんにぷいっと無視されたり、リゲルさんが寝ている隙に撫で撫でしたり、A-Zちゃんを愛でたり。
早く目的地に着かなければと自分を急かしながらも、何だかゆっくりしてしまい。
だが、丸1日歩いた御蔭で今日の昼頃には赤の世界に着く事が出来た。
一週間掛かるなんて、少し大袈裟だったか。
今でも相変わらず、あづみさんはぷいっとしている。
リゲルさんには先程話し掛けられた気がするが、きっと気のせいだろう。
A-Zちゃんは近くから離れない。
俺は何時も通り。
「…ねぇ、大祐。」
「はい?何で御座いましょう、リゲルさん。」
「その…一昨日の事なんだけれど。」
一昨日?
はて、何かあったっけ――
…あぁ、アレだ。
さっきの思い出した一部だ。
リゲルさんを見つめながら死んでも良いって言ったやつだ。
あの日以来リゲルさんの態度が一変したっけな。
リゲルさんから接しに来るようになったり。
…気のせいか。
「あの…私に言ったアレって、本気なの?」
「本気も何も…当たり前じゃないですか。死にたくはありませんが。」
「…そう。ごめんなさい、何でも無いわ。忘れて。」
「?」
うーむ…。
今一リゲルさんの心が分からない。
やっぱり、嫌だったかな。
起きたらあんな状況だったら、誰だって嫌だよな。
はぁ…。
失敗だな。
大好きな人に嫌がられるのって辛いね。
いや、実際にはリゲルさんから嫌がられてはいないが。
もしかしたら俺の勝手な妄想かもしれないし。
後でその辺聞いてみよう。
「…大祐くん。」
その話をどうやってリゲルさんに切り出そうか考えていると、あづみさんから呼ばれた。
地味にジト目をされているような…。
唯、間違いなく怒ってる。
そんな雰囲気を漂わせているな。
俺、あづみさんが不機嫌になる事した?
「…ますた、こっち。」
「あ、うん。」
「大祐くんはこっち。」
「あ、う…えぇと?」
あづみさんに引っ張られ、A-Zちゃんに引っ張られ。
すごーく嬉しいのだが、どっちに行けば良いのやら。
まぁ、無難にあづみさんだけどね。
単なる憶測だが、A-Zちゃんは目的地に着く事を一番優先にして俺を急かしている。
しかし、あづみさんはどうだ。
A-Zちゃんが味方に入ってから(俺が強引に入れた)、ずっとA-Zちゃんを敵視している。
戦闘とかの敵視ではなく、それとは違う敵視。
なんなのか。
…それを考える必要は無さそうだし無闇に詮索する必要も無い。
あづみさんがどうであれ、あづみさんが好きだからそちらに行くで良いじゃないか。
「ごめんね、A-Zちゃん。今はあづみさんを優先させてくれるかな。」
「ますたが言うのなら。」
「大祐くん…」
あづみさんが俺の横に移動し、ちょっと距離が近くなった。
ゼロ距離とは言い難いが、結構近い。
反対側にはA-Zちゃんが、一切離れる素振りも見せない。
多分、最初に言った「近くにいて」が響いているのだろう。
そんなに忠実じゃなくても…良いのにな。
「大祐、取り敢えずマイスターを探しましょ。現在地を確認する必要もあるし。」
「ですね。…あ、リゲルさんもあまり離れずに。」
「どうして?」
「戦闘民族がリゲルさんを攫う可能性があるので。身体の方を目的に。」
「…それは嫌ね。分かったわ、大祐の傍に居させて貰うわね。」
「勿論です。」
身体の方が目的、で良く通じたな。
流石リゲルさん。
横ではあづみさんが首を傾げているよ。
意味が分かっていないあづみさん可愛い。
無知ですか?無知なんですね!
よーし、俺が手取り足取り教えてあげて――
「リゲル、身体の方って何?」
「操られたり〜的な感じかしらね。」
「それは駄目!…リゲルが攫われない、何か良い方法は無いかな。」
「手でも繋げば良いのでは?」
俺の発言に、あづみさんはハッと気付いた。
そして俺とあづみさんの間にリゲルさんを呼んで…。
何故呼んだんだ?
ってか、リゲルさんも身体目的の意味分かっていないよな。
二人共無知ですか?無知なんですね!
よーし、今日の夜にでも俺が教えてあげ――
「…あづみ、貴女と手を繋ぐのは構わないけれど、大祐とは…」
「お願い、リゲルを守る為なの。」
「う〜ん…」
二度に渡って最後まで言わせて貰えなかった。
どうやら俺は二人とそういう関係にはなれないらしい。
なる気は…無いとは言えないが、まだ14歳の女の子を襲う気は無い。
だからと言ってリゲルさんを襲うなんて愚行もしたくない。
A-Zちゃんは……幾ら記憶が飛んでるからと言ってそれは無いな。
それを利用してA-Zちゃんと〜なんて鬼畜過ぎるわ。
「あづみ、一番は貴女なの。真ん中に来るのだったら私じゃなくあづみが、ね?」
「…」
「…リゲルさん、あづみさんにとっては貴女が一番なんです。なので、自分の事も大切に。」
「大祐…。」
そう言いつつ、A-Zちゃんの頭を撫で撫でする。
さっきから話題にすら参加していないのを見ると、興味がなさそうな。
というか、A-Zちゃんが興味を持つ話ってなんだ?
先ずそこからなのだが。
あづみさんに似ているから、あづみさんが好きそうな話でもすれば良いかな。
あづみさんの好きそうな話。
…あづみさんの好きそうな話。
………えーと。
答え、分かりません。
マジかよ…。
俺はあづみさんの好きそうな話題すら知らないで話し掛けていたのか。
これからの日常で必要不可欠になりそうだから、何かしらのネタは考えておくか。
その前に、あづみさんの好きな話題探しだが。
割りと必死に考えていると、あづみさんの隣にリゲルさんがそろーり近付き、あづみさんの手を握る。
少し恥ずかしそうだ。
逆に、あづみさんは嬉しそうにニコニコしている。
ほんと仲良しだなぁ。
羨ましい。
と、不意に隣から袖を引っ張られた。
あづみさんが自分の手を、俺の手に近付けてきている。
「あの…んと…大祐くん。」
「えっと…良いのかな?」
「ほら、大祐。あづみからの頼み事よ?」
「…!」
あづみさんからの頼み事!
これは引き受けるしかありませんね。
大丈夫、大丈夫。
あづみさんからのご指名だから、俺の自制心は関係ないと。
…いや、それはないな。
誰にどう言われようが自制心は自制心。
自分の心を制御する事を自制心と言うのだ。
あづみさんから、リゲルさんから、そんなのは只の言い訳にしか過ぎない。
あれ?
でも、それじゃ自心制になるな。
自心制ってなんぞ?
…ま、取り敢えず。
「では、要望にお応えさせて頂きますね。」
「あ…えっと、お願いします。」
そんな会話を交えながら、あづみさんの手を握る。
自分の手よりも圧倒的に小さく、柔らかく、可愛らしい手。
ずっと握っていたい。
「…う〜…やっぱり恥ずかしい///」
「俺も恥ずかしいで…恥ずかしいよ…。」
「ふふっ。…あづみが初めて男性の手を握ってる。」
まさかこんな幸運が舞い降りて来るとは。
って、俺があづみさんの手を繋ぐ必要はあるのか?
無意味な気もするが……俺にとってのメリットが大きいから許そう。
「…ますた?」
俺達三人だけではあんまりなので、A-Zちゃんの手も握る。
A-Zちゃんは首を傾げたが、握り返してくれた。
多分、俺が要求したからだろう。
A-Zちゃん自身は何時も通り、無表情だ。
彼女から見て俺は、只のマスター。
くぅ…ま、しょうがないのだが。
‐‐‐
そんな幸せタイムを味わっていると、一つ気付いた。
赤の世界は青の世界と比べて廃墟廃墟していない。
寧ろ王国みたいな感じだ。
しっかりとした建物が綺麗に規律良く並んでいる。
何故こんなに建物があるのかは分からないが、赤のZ/X達は大量に犇めいている。
大量に犇めくってなんぞ?
なんぞ?なんぞ?
…それはどうでも良いが、一見した所、治安自体は安心出来そうだ。
何があってもおかしくないのは事実だが。
兎に角、赤のZ/X[マイスター]を探さねば。
その為に赤の世界に来たのだから。
ベガから離れられるという保障も含めて。
「…しっかし、見つからないな。」
先程から周囲を確認しているが、[ブレイバー]らしきZ/Xしか見当たらない。
全員が全員武装し、少々恐ろしさを感じてしまう。
だが、探しに来たのはブレイバーではない。
もう一度言うが、見つけたいのはマイスターだ。
別にブレイバーなんか、赤の世界で「誰か俺と戦え〜!」とか言ってれば颯爽登場してくれる訳だし。
こいつらが戦闘民族なんだし。
脳筋ばかりで無い事を願うよ。
「…ふぅ。ちょっと疲れちゃった。」
「そうね、何処かで休みましょうか。」
「買い物は青の世界で済ましてあります。直ぐそこで休憩しましょう。」
俺の提案に、二人は頷いてくれた。
A-Zちゃんは既に移動している。
なんと素晴らしい行動力だ。
見習いしようかな。
「…ますた、この隅ですか?」
「うん、そこなら休めるでしょ。他のZ/Xも休憩中だし。」
「あづみ、私の隣に来てくれるかしら。」
「分かった。…大祐くんは?」
「俺はマイスターを探してきます。三人で休んでいて下さい。…リゲルさん、何かあったら俺のバトルドレスに通信を。」
「…大祐も休みなさい。でなければ貴方が疲れてしまうわ。」
「良いんですよ、それで。あづみさんを助ける為ですし。…A-Zちゃんは二人を頼むね。それじゃあ!」
「大祐くん…。」
走り去る俺、カッコいい。
…なんて妄言は置いて、 さぁ、マイスターさん達は何処にいるのかな。
一応A-Zちゃんにも二人を守ってくれるか聞いたが、すんなりと頷きを返してくれた。
優しい、とは違うのだろうけれど。
少なくとも俺は優しいと思う。
ただただ忠実なだけなのは分かっているが。
取り敢えずバトルドレスを起動しておこう。
何かあった時にバトルドレス同士で通信出来るようになってるし、この機能を使わないのは勿体無い。
あづみさんだけ使えないけどね。
そう言えば、索敵能力とか便利なの付いてないかな。
あったらお兄さん、凄く嬉しいのだけれど。
逆に、あったら何で使わなかったって話になるが。
それかいっそ、空中から見下ろすか。
一番良い方法ではあると思う。
あくまでも、Z/X達に気付かれずにの話だけど。
…無理か。
何か良い方法は無いかなぁ。
こう…目的の物をパッと見つけられる機能…… これじゃあ無い物ねだりじゃないか。
ある物で何とかせねば。
しかしながら、何とも出来ないのが現状。
やはり歩いて探すしかないのか。
また徒歩だよ。
何歩歩けば気が済むんだ。
俺は十分に満足したからな。
あとは神様次第ですぜ。
…神様なんている筈ないけど。
「て言うか、マジで見つからん。マイスターさんは何処(いずこ)へ…」
「…ん?私達に何か用か?」
唐突に目の前にマイスターが現れて少々ビビる。
…本当に貴女、マイスターですか?
見た目は女性だが、しっかりと引き締まったお腹。
上半身は露出しており、最低限隠す所は隠しているくらい。
それとは対照的に下半身は露出無し。
髪は長く、金髪。
何故だろう。
一目見ただけで分かるマイスター感。
そして達成感。
マイスター探し完了。
‐‐‐
リゲル先生のパーフェクトZ/Xの世界教室7
バトルドレスの機能
・容量内ならば何でも収納出来るブラックボックス(収納箇所)
・バトルドレスを装着している者同士の通信機能
・収納中の好きな物を何時でも取り出し可能
・一度バトルドレスを解除すると、衣服が元通りに(原理は分からないが、調べ途中)
・一部のバトルドレスだけではあるが、一瞬でのワープ[瞬間移動]が可能
リゲルさんからの教えはこれくらい。
まだまだたくさんあるだろうが、これからは自分で確かめていこう。