Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第一六話: 彼への想い

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各務原あづみ視点

 

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「…それじゃあリゲル、宜しくね。」

「あづみを二回もお姫様抱っこ出来るなんて…幸せだわ。」

 

 大祐くんが戦闘中、小屋の中では緊迫に包まれていた。

 会話の内容からは、全然危機感が感じられないけど…。

 

「A-Z、そっちは大丈夫かしら?」

「何時でも行けます。」

「私も準備OKだし。ほのめは任せたし。」

 

 今の私は、リゲルにお姫様抱っこされている状態。

 ほのめさんはA-Zさんに抱えられ、びんがさんは一人で。

 

 非戦闘員の私やほのめさんは、リゲルとA-Zさんの力を借りてこの場を脱出しなければ単なる足手まといになってしまう。

 それは嫌だから、と思っていたらリゲルがこの考えを提案。

 満場一致でリゲルの提案を取り入れる事に。

 後は大祐くんの指示を待つだけ。

 

「…大祐くん、大丈夫かな。」

「そんなに不安にならなくても、大祐なら最善手を選んでくれるわ。」

「…そうだね。今回も助けられる立場になるなんて。」

 

 正直、守られてばかりの自分が嫌だった。

 リゲルは「体の事があるから」って、言ってくれるけど…。

 

 それだけで済むんだったら、私は無理をしてでもリゲルや大祐くんの力になりたい。

 自分にはそれ位しか出来ないから。

 でも、今の自分は何も出来ない事位分かっている。

 二人の、周りの人達に協力して貰わないと何も出来ない。

 そんな私に協力してくれる二人に、何か恩返しがしたいな。

 

…リゲルには贈り物を。

 大祐くんには――

 

「皆さん!今です!」

 

 どうやって恩返しをしようか迷っていると、大祐くんの大声が周りに響き渡った。

 それが合図となり、びんがさんの周辺に炎が出現。

 その炎で小屋を破壊、大きな穴を開ける。

 

「凄い威力ね。」

「流石、私のびんがですの!」

「褒めても何も出ないし。」

 

 愉快な会話をしながら、全員で小屋から脱出成功。

 そのまま一気に突っ切る。

 この勢いで順調に行けば、大祐くんを含めた全員での赤の世界脱出が出来る。

 そんな事を思っていると、男性の大声が聞こえてきた。

 大祐くんとは違う、男性の声が。

 その瞬間、周りに多数の敵が出現。

 私達を囲み始める。

 

「皆!一気に突っ切って下さい!!」

「大祐はどうするの!」

 

 遠くから、大祐くんの声が耳に入ってくる。

 それに対してリゲルは、答えつつも全速力でその場を離れようとしていた。

 私達の安全確保が、一番の優先と言っていた大祐くんの指示を守る為だろう。

 

 でも…このままじゃ。

 

「全員、そのまま突っ切れ!」

「そんな…大祐くんは!?」

「A-Zちゃん!リゲルさん!皆を任せたよ!」

「…ますたの指示に従います。」

「…分かったわ。急ぎましょう!」

 

 私以外の四人が満場一致した事により、即座にその場を撤退する事になってしまった。

 

 しかし、これでは大祐くんが大多数対一人という、圧倒的劣勢で戦う事に…。

 幾ら大祐くんと言えど、このままじゃ生きては――

 

「リゲル!あれじゃ、大祐くんが…!」

「大祐は私達の安全優先に徹して、囮になってくれたの。その気持ちに応える為にはこれしか…!」

 

 リゲルは歯を食い縛り、屈辱の表情をしていた。

 そんなリゲルを見たのは初めてで、私にはどうすれば良いか分からなくなって。

 

 出した結論は「振り向かず逃げる事」。

 

 この行為が何れ程重く、罪深いのかは自覚済みだけど。

 それでも逃げなくちゃなくて。

…助けてくれた人を犠牲にするなんて、私、最低だ。

 

(大祐くん…ごめんなさい…!)

 

 今直ぐにでも引き戻り大祐くんを助けたいのは山々だ。

 けど、私が戻った所で意味は無い。

 唯の邪魔な存在にしかならないから。

 

 リゲルだって、本当は戻りたいのだろう。

 きっと心残りがあるのだろう。

 ここまで大祐くんには、助けて貰ってばかりだったから。

 でも、私は何も返せなかった。

 タイミングなら何時でもあったのに。

 

…自分の気持ちすらも、しっかり伝えれなかった。

 

「――あれ…リゲル、A-Zさん達がいない…。」

「えっ?…まさか、はぐれたの…!?」

 

 この状況で信じられない事態が起こってしまった。

 少し移動した所で、後ろを付いてきていたA-Zさん、ほのめさん、びんがさんの姿が見当たらない。

 

「リゲル、どうしよう…。」

「…しょうがないわ。このまま、本来の目的だった緑の世界に逃げましょ。」

「う、うん…。」

 

 何時ものリゲルにしては珍しい提案だった。

 少し後戻りをして三人を探し、そこから移動をするのかと思ったけど…。

 やっぱり、リゲルは大祐くんの犠牲を無駄にしたくないんだ。

 大祐くんの言った事を必死に守ろうとしている。

 

「…大祐とは、いつかまた会えるわ。それまでに、あづみのリソース症候群を何とかしないとね。」

「リゲル…」

 

 そうだよね。

 まだ大祐くんが殺された訳じゃ無いもんね。

 実際にこの目で見ていないのに、何で決め付けちゃっていたんだろ。

 大祐くんは私とリゲルを信じていてくれたんだから、私達は彼を信じる。

 彼とは…大祐くんとはまた会える、と。

 

 そう自分に言い聞かせ、気持ちを一回落ち着ける。

 また、大祐くんに会えた時に足を引っ張らないように、今はリソース症候群を治す事を優先しよう。

 彼が頑張っているのに、リゲルが協力してくれているのに、私だけ何もしないのはおかしい。

 

 体のせいにしちゃ駄目。

 私にだって、出来る事はあるんだから。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

「…何とか遠くまで来れたわね。」

「ありがとね、リゲル。何時も助けて貰っちゃって。」

「ううん、良いの。あづみに何も害が無ければ。」

 

 結構な距離を移動し、一旦休憩にする。

 私は何もしていないけど、リゲルには中々重労働だったのだろう。

 少し息を切らしている。

 

 大変な仕事を、良くこんなに熟せるのか不思議でならない。

 人一人をずっと抱えた状態で移動なんて、普通は出来ない――

 

……あ、リゲルはZ/Xだった。

 

 何時も忘れてしまうけど、リゲルは人間では無い。

 私の中ではしっかりとした人間だけど。

 誰が何と言おうと、リゲルはリゲルなんだし。

 そんなリゲルと会話をしていると、嬉しく、楽しくなる自分がいた。

 私自身、どれだけリゲルに愛されているのか、何をどうしなくても分かる。

 態度や発言、全てに置いて私優先だから。

 

 そんなリゲルに私は甘えっぱなし。

 情けないなと、何度か思う事もある。

 

 私からは何も――

 

…あっ…またこの話に戻る所だった。

 こうして何時までもくよくよしていないで、その間にやれる事をやろう。

 それしか、今の自分に出来ない事だから。

 

「…取り敢えず、休める場所を探さないと。」

「私が探してくるよ。リゲルは少し休んで――」

「駄目よ。…それで万が一あづみが攫われたりしたら…私は…」

 

 私を真っ直ぐ見つめてくるリゲルの瞳には、絶対に守り通すという意思が感じられた。

 その瞳を見て、私は直ぐに察する。

 余計な行動は控えて、リゲルの求める事だけをして上げれば良い。

 私が単独で動いたらリゲルに迷惑が掛かっちゃう。

 

 それだけは絶対に嫌だ。

 

 ずっと私を優先に考えてくれているリゲルだけど、私はリゲルを優先したい。

 けど、リゲルは自分のしたい事、やりたい事は一切口に出さない。

 どんな選択も、私の決めた方を選んでしまう。

 それじゃ、リゲルの自由が無くなっちゃう。

 

「…リゲル、ずっと言いたかった事があるんだけどね。」

「あづみ?」

「…貴女にはもうちょっと、我が儘を言って欲しいな。私は関係無く。」

「それなら一つだけ我が儘を言わせて。」

「うん!」

「…何時までも、一緒にいてくれるかしら…?」

 

 予想外な我が儘を口にされちゃった…。

 やっぱり、リゲルはリゲルなんだね。

 でも、リゲルがそれを望んでも望まなくても――

 

「私とリゲルはずっと一緒だよ。」

「あづみ…!」

 

 貴女がどうなっても、敵に回ったとしても、私はリゲルと一緒にいる。

 それが間違った選択でも構わない。

 リゲルと過ごす時間の中で、間違いなんて無いから。

 

 それをリゲルに伝えると、急に抱き付かれた。

 力強く、ぎゅーって感じで。

 

 それに対して私も、リゲルを強く抱きしめる。

 リゲルとの絆は、誰にも裂かれない。

 壊す事なんて出来ない。

 その位お互いに愛し合っているのが、今この瞬間で感じ入る。

 これからも、ずっと一緒にいようね。

 

「…ふぅ、ありがとう、あづみ。苦しくなかった?」

「そこまで心配しなくても、私は全然平気だよ?」

「ふふ、なら良かったわ。…兎に角、今は休める場所を探しましょ。」

「分かった。私も手伝うね。」

「無理しない程度にね。」

 

 私を見るリゲルの瞳には、心配という感情が混ざっている様に見えた。

 

 私自身、また何時リソース症候群の症状が表れるか分からない不安がある。

 けれど、それを治す為に自ら行動しなければ治る物も治らない。

 自分の意思を、しっかり出さないと。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

 リゲルと二人で休める場所を見つけ、其処で一夜を過ごす事にした。

 相変わらず野宿だけど、この状況にも慣れてきている。

 今夜の野宿場所は、壊れかけている廃墟に近しい建物。

 壊れないかと不安も残るけど、もう外は真っ暗。

 しょうがないからと、二人でここに決めた。

 

 体感温度は少し肌寒い位かな。

 先日までは、大祐くんが着ていた黒いコートを借りて、それに身を包んで寝てたっけ。

 貸して、とは言った事無いけど大祐くんから貸してくれて。

 

…何だか、寂しいな。

 

 前日は、私とリゲルを一緒に膝枕をしてくれた。

 彼の傍にいると何故か安心しちゃって、直ぐに眠っちゃう。

 何時も助けられているから、戦力的にとか、そういう類いの安心じゃない。

 

 ほっとするというか、落ち着ける。

 

 けど、大祐くんの笑顔を此方に向けられた時は落ち着く事なんて出来ない。

 寧ろ体が熱くなって、胸の奥が凄くドキドキして。

 何回もキュンとしちゃって。

 キュウと締め付けられる感じで。

 

……う〜…やっぱり、大祐くんの事を考えると止まらなくなっちゃう…。

 妄想が幾らでも頭に浮かんで、その都度一人で興奮してしまう。

 

 止めようとしても止まらなくて。

 

…自分でも薄々気付いてたけど、私、やっぱり大祐くんの事が…

 

――好き。

 

「…あづみ、大丈夫?体が熱いけど。それに顔も赤いわ。」

「えっ…?あっ、違うの!大祐くんが好きなんて――」

「…はぁ…思った通り、あづみは大祐が好きなのね。」

「ちっ違くて、そうじゃなくて///」

 

 膝枕をしてくれているリゲルにはバレバレだった。

 完全に図星。

 

――駄目だ。

 自分の感情が整理出来ていない。

 

 急に話し掛けられて焦っちゃって、思わず本音が出てしまい。

 挙げ句の果てには誤魔化しすら利かない状況に。

 これは多分、どうやっても嘘を吐けない。

 吐いた所で最早見抜かれ済み。

 これはもう、本当の事を喋るしか無いのかな…。

 

 でも、リゲルには何れ話さなきゃとは思ってたし丁度良かったのかも。

 この機会に全てを打ち解けよう。

 私の、大祐くんに対する想いを。

 

「…そうじゃないって言ったけど、ほんとは大祐くんの事…好き。」

「何時から?」

「…大祐くんと会ってから二日目の朝。「独り占め出来るのかな」って言われた時から…。」

「あの時から!?…随分、早い目覚めだったわね。」

「だって、あんな風に言われたら…私…」

 

 それに、大祐くんを好きなった理由はこの事だけじゃない。

 私やリゲルを必死に守ってくれようとしている姿。

 面白い話で私達を笑わせてくれたり。

 短い期間の中で、段々と彼の魅力に惹かれていって。

 

 実際に、大祐くんが私の事を好きかは分からない。

 けれど、あんな言葉を言われたら…少し期待しちゃう。

 大祐くんも私の事、好きなのかなって。

 それでも彼には、私自身の想いを伝えれなかった。

 何時か、何時かとやっている内に踏ん切りが着かなくなり。

 最終的には大祐くんと離れ離れに。

 

…あの時、思い切って話してみたのに。

 赤の世界の人達に襲撃されちゃって、無駄になっちゃった。

 あのまま行けば、ほのめさんやびんがさん、更にはリゲルの目の前ですら気にしないで言えたのに。

 

 初めて人を恨んじゃった…。

 しかも、それだけで済めば良かったのに大祐くんと離れ離れになるなんて、不幸な出来事が多すぎて悲しいな…。

 

 私、幸薄いのかな…。

 

「リゲルは大祐くんの事、どう想ってるの?」

「私?…そうね。嫌いでは無いけど好きって程でも無いわ。」

「でも、大祐くんと話してる時のリゲル、何だか楽しそうだよ。」

「そっそれは………今まで話した男性の中で、一番話しやすいから…。」

「――けど、リゲルって大祐くんが初めての話し合えた男性じゃないかな?」

「…はい。」

 

 あ、リゲルが縮こまった。

 実は大祐くんが初めてだったんだね。

 リゲルが珍しく男性と仲良くお喋りして…。

 抑、リゲルと仲良くなれるなんて一筋縄ではいかない事なのに。

 ああは言ってるけど、実はリゲルも大祐くんが好きだったりして。

 

 一概に無いって言えないのが怖いな。

 それでリゲルが大祐くんを好きになっていたら、私は――

 

「…さ、大祐の話はまた後でにして、今はもう寝ましょう。本人と直接会った時に話せば良い事よね。」

「リゲル!?…それって、また会った時に直接…その……告白って事…?」

「それを決めるのはあづみ次第。…けどね、幾ら大祐でも、私のあづみは易易と渡さないわ。」

「…リゲル…ありがと。」

 

 もしかしたら、リゲルは本当に私を渡さないつもりなのかな。

 だとしたら、一生大祐くんに本心を言えずじまいになって…。

 それはそれで…微妙な感じになっちゃうな。

 

 好きな人には――大祐くんには、しっかりと私の本心を言いたいから。

 もしもの場合は、リゲルのいない場所で。

 

…けど、それじゃあリゲルに失礼だよね。

 丸で恩を仇で返すみたいな。

 ちゃんとリゲルの目の前で、更に大祐くんの目の前で。

 恥ずかしいなんて域は超してしまう。

 

…もし…それで告白が成功したら……大祐くんの本心も聞きたいな。

 

――あ、でも、大祐くんの本心って「私を独り占めしたい」んだよね。

 至って本気だったから、大祐くんは私の事を…。

 

 あうぅ…また勝手に一人で妄想しちゃった。

 

 私が告白して、大祐くんが「俺も、あづみの事が好きだ」なんて言ってくれて。

………これ以上は、私の感情が収まらない。

 でも、妄想が現実になれば良いな。

 その為にも早くリソース症候群を治さなきゃ!

 

 次に大祐くんと会えた時に、自分の気持ちをちゃんと伝える為に。

 

 心の中でそう決心した私は、その日の出来事を忘れるかの様に眠ってしまった。

 

「…お休み、あづみ。」

 

‐‐‐

 

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