Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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黒の世界
第一七話: 七大罪


 目が覚めると、唐突なる激痛が体全体を襲った。

 ギシギシと痛む骨に、焼けるように熱い体。

 実際酷い火傷にはなっていないが、腕や足の所々が焼け爛れているのが覗える。

 

 それに加え、右の胸部に深い傷が…。

 

――何で俺、こんな重症になってんの?

 

 思い返しても、記憶の一部だけが思い出せない。

 アレキサンダーとその御一行との戦闘になって、ウイングゼロが解放されて。

 禁断のシステム…『ゼロシステム』に触れて。

 

…これじゃん。

 記憶の一部が無い理由なんて考える必要も無かった。

 『ゼロシステム』を発動した時点で我を失い、システムに呑まれ、挙げ句の果てにはシステムの言いなりになって。

 その後何が起こったかは分からないが、思い当たりは一つしか存在しない。

 

 恐らく、システムが自爆の選択肢を選んだのだろう。

 

 装着者の生命すら勝利の為に捧げる『ゼロシステム』。

 流石に一発本番では制御出来なかった。

 だから今、俺はこんなにもボロボロなのだろうな。

 

…いやでも、良く生きていられたな。

 普通は死んでも可笑しくない筈なんだけど。

 右肺が無くても呼吸は正常だし。

 

 もしかして、あまりのショックに俺の体がお花畑に…?

 

 そんな訳無いよな。

 

 というか、随分と薄暗い場所だな。

 周りを見渡す限り、淀んだ空気が全てを支配している。

 建物や草木は勿論、生き物すら骨へ朽ち果てている。

 この光景は、見るに耐えない。

 

 自身の体の状態に、周りの状況把握がある程度確認出来た瞬間――

 

「あら、漸くお目覚め?」

 

 ふと、直ぐ傍から上品な感じの女性の声が耳に入ってきた。

 慌ててそちらを向くと、其処には中々に露出をした女性が…。

 

「ほあっ!?」

 

…女性が居たのだが、何だこの露出度。

 腹は出してるわ腕は出してるわ足はニーソだわ。

 大きい胸は隠してないも同然だわ。

 頭には山羊の角みたいなのを両方に付けてるわ。

 

 誰だ、この女性。

 というか、露出度がリゲルさんより高(以下略)

 

「そんなに驚かなくても良いじゃない。…この格好、言う程びっくりするかしら?」

「びっくりするも何も、胸、胸部、隠して下さい。それでは全部見えてしまいます。」

 

 リゲルさんと同じ位、或いはそれ以上ある大きな胸を隠しているのは、着ている衣服の端っこ。

 本当に、隠すべき場所だけを隠している感じで。

 リゲルさんにも言えるが、まだ15歳の健全な男子にそんなの見せちゃ駄目だって。

 感情がオーバーロードしてつい襲いたく…襲いたく……。

 

 ならないから!

 

 俺にはあづみさんとリゲルという可愛い彼女達が…か、彼女達が…

 

 まだ彼女じゃないから!

 

…はぁ、赤の世界に来てアレキサンダーとかいう変に強い奴と戦って、自分のシステムに呑まれて自爆して、二人と離れ離れになって、起きたら激痛に襲われ目の前にかなりヤバイねーちゃんがいて。

 あと、A-Zちゃんの顔が見れないのも地味に精神が削られる。

 ははっ狂っちゃうな。

 

 誰か!僕に!あづみさんとリゲルさんの顔を見せて下さい!

 二人の姿が目視出来ないと、僕の心は――

 

「目の前に私がいるのに、他の女の事でも考えてたの?」

「目の前に誰が居ようが、二人の事を第一に考えますよ。」

「わぁ、大胆ね。貴方は浮気者なのかしら。」

「いや、違いますよ!……ていうか此処、何処ですか?貴女は誰?」

 

 ふっと会話を進め、はっと我に帰る。

 記憶の一部が飛んでいるせいで、俺が何故此処にいるのか状況が掴めない。

 それに、こんな重症で何で平然としていられるのか。

 目の前にいる露出女性は誰なのか。

 何もかもが分からない。

 

 しかし、そこら辺の事情はこの女性が知っているのだろう。

…何故それだけ分かるのかって?

 

 そりゃあ、それがテンプレだからですよ。

 

 自分で言っておいて、何と理不尽な答えだな。

 

 兎に角、俺の傍にいて且つ、こんな重症で死んでいない所を確かめると、恐らくこの女性が俺に何か施しをしたか。

 もしそうなら、実質助けてくれた事になる。

 

 命の恩人には敬意を払わねば。

 いや、まだそうと決まった訳じゃ無いけど。

 

「取り敢えず、私が分かる範囲で教えてあげる。」

 

 分かる範囲?

 

「此処は黒の世界。ブラックポイントと呼ばれる場所よ。」

「ブラック企業…!」

 

 なるほど。

 鞭とか使って無理矢理仕事をさせるとな。

 いやはや、黒の世界は本当にブラック企業――

 

「ブラックポ・イ・ン・ト。分かったかしら?…そして私の名前は「ルクスリア」。七大罪の「色欲」の魔神よ。」

「七大罪!?………あの、殺すのだけは勘弁願いませんか?何でもしますんで。」

「何でも!今、何でもって言ったわね?」

「え?あ、はい。」

 

 ヤバイぞ。

 何故か今、ルクスリアさんが舌をペロッと舐めて……その瞬間に背筋がゾクッとなり。

 死にたくないあまり口を滑らせたが、これでは同じことじゃないか。

 

 「殺さないとは言ったけど、死に追いやる事は良いのよね?」的な発言されたら終了じゃないか。

 馬鹿やったな、俺。

 はいしゅーりょー。

 

「…ふふ。」

「る、るくすりあさん?」

 

 思わず平仮名で表記されそうな感じで、七大罪の名前を呼んでしまう。

 しかも、ルクスリアさんは色欲のまじ――

 

 ん?色欲の魔神?

 

「口約束でも約束は約束。…今から貴方に快楽という名の、○○○をしてあげる♪」

「ちょっと待って下さい!?先程、放送禁止用語が出てきましたけど!」

「何でもって言ったのはあ・な・た♪」

「だからって僕の純潔を散らす気ですか!?」

「う〜ん、そうね。私好みっていう点もアリだわ。」

「何の話!?」

 

 ルクスリアさんが勝手に話を進めているが、これでは俺の処女が、純潔が、華麗に…いや、無惨に散ってしまう。

 そんなのは断じて嫌だ!

 俺の処女(初めて)はあづみさんとリゲルさんに捧げ;゜∀゜⊃)^-^)バキッ!

 

 痛ってえな!おい!俺の中に潜む自我に殴られるなんて聞いてないぞ!

 

(自我)待て待て、そう早まるな。あの娘も中々の美人だぞ?

 

 それはそうだけどさ…俺はあづみさんとリゲルさんに――

 

(自我)まぁまぁ、もう一回ちゃんと見てみろよ。

 

 ちゃんと見てみろよって言われてもなぁ。

 

「…」

「どうしたの?そんなにジーっと見つめちゃって。…あ、もしかして。やっと私の魅力に囚われちゃったのかしら♪」

 

 ルクスリアさんの戯れ言は放って置いて、自我に言われた通り彼女を観察する。

 

 鮮やかな紫色の髪のロングヘアー、そして頭の両方に山羊の角を付けている。

 瞳は澄み渡る金色。

 

 衣服は言わずもがな、露出度がエグい。

 色欲だからと言われればそうとしか言えないが。

 上半身は殆ど隠しておらず、唯一胸の両端を衣服で隠しているだけ。

 谷間付近は見せつけるかの如く露出している。

 無論、腹部は丸出しだ。

 肩から背中までの後ろには、白く短い布みたいなのをひらひらとさせている。

 

 以上、上半身終了。

 次行ってみよう。

 

 下半身は…一応隠しているっぽいが、良く見てみると全然隠していない。

 先ずもって評価出来るのは、ニーソという点。

 膝よりちょっとあるかな位の長さで、そのニーソの上部分には黒く平たい紐らしき物を巻いている。

 恐らく、ニーソと一緒に使う物だろう。

 

 腰にはスカー…トじゃなくて、黒く四角い布………いや、布じゃないんだけど何て言えば良いのか…。

 只、一つだけ分かる。

 エロい。

 

 腰の後ろには、肩部分からひらひらしている白い布に似た物を着用している。

 長さや大きさは圧倒的に此方が上だが。

 

 彼女が何故こんな衣服を着ているのか。

 それは色欲の七大罪だから。

 はい、知ってる知ってる。

 

…しかしだな。

 別に興味のきの字も沸かないぞ。

 これでは自我に騙された風じゃないか。

 俺の自我よ消え去れ。

 

「――って!?ルクスリアさん、近いです!」

「当たり前じゃない。お互いの肌が触れ合う位に密着しないと、やりたい事も出来ないわ。」

「貴女は!一体!僕と何がしたいんですか!」

「そりゃあ、○○――」

「ああぁぁぁ!もう大丈夫です!それ以上は言わないで下さい。」

「…むぅ…理不尽ね。」

 

 こんな解答しか出来ないのはルクスリアさんのせいじゃないですか、なんて更に理不尽な事を言い放ちそうになる。

 今日は珍しく、他人に対して大声を出した。

 今日だか昨日だか分からないが、その時も大声を出したけど。

 

「はぁっ…はぁっ…」

「私を見て興奮されるなんて、思わず此方が高ぶっちゃいそう。」

「誰のせいで息切れしたと思っているんですか…。」

 

 あっはは。

 何で俺、七大罪の色欲さんに目をつけられたんだろう。

 悪運スキルが全面に押し出されてるな。

 

 そして、そろそろ突っ込むのが辛くなって来た。

 自分の処女が守れるのであれば、後は正直どうとでもなれ。

 

 それは駄目か。

 

「…そう言えば、この傷ってルクスリアさんが応急措置でも?」

「してあげた〜。」

「やはりでしたか…なら、命の恩人にはお返ししなければなりませんね。」

「そうそう♪先ずは貴方の下半身を見せ――」

「という訳で、ルクスリアさんの下ネタ以外の望みを叶えたら、僕はさっさと消えますね。」

「え〜…」

 

 頬を膨らませ、至極つまらなさそうにするルクスリアさん。

 だが、彼女に構っている暇は無い。

 早いとこあづみさん、リゲルさん、A-Zちゃんを見つけないと。

 三人が何処の世界に逃げ込むか把握できない。

 だからこそ、即急の事態なのだ。

 

 できれば緑の世界には行って欲しくないが…。

 

 ほのめさんとびんがさんは赤の世界に居ても、問題は無かろう。

 元が赤の世界のZ/Xとパートナーなんだし。

 

 というか、今更ながら気付く。

 びんがさんの本名って何?

 後で本人に聞けば良いか。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

 20分位経っただろうか。

 ルクスリアさんの要望が何時までも決まらない。

 下ネタ行為以外に望む事が無いのか。

 それはそれで素晴らしいが。

 

 しかし、このままでは結構な時間が過ぎてしまう。

 過ぎた時間は取り戻せない。

 命の恩人を急かすような真似はしたくないが、今は一秒も無駄にしたくないのだ。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

 1時間位かな。

 未だに悩み続けているルクスリアさんを目の前に、そろそろ俺の心が折れそうになる。

 自分の処女を大切にするよりも、三人を助けに行く方が大事だよな。

 そうだよな。うん、きっとそうに違いない。

 

 今はこの場凌ぎの為に自分という物を散らそう。

 華華しく、潔く、パーって一発――

 

「…ねぇねぇ、これから貴方は何処行くの?」

「えっ?何処って……色んな所ですけど。」

 

 長く続いた沈黙を打ち破ったのはルクスリアさんだった。

 そして何故か口調まで変わっている。

 

 空気的には、もう決めても良いんじゃないかと思う。

 最終手段としては、自らの体を捧げる手段が残っている。

…切りたくないカードだけど。

 

「色んな、かぁ……」

「探している人がいるんです。その人を見つける為に――」

「よし!私の望み、決めた。言って良い?」

「勿論ですよ。それを待っていたんですから。」

 

 ようやっとルクスリアさんの願いが決まったらしい。

 俺の体をどうのこうのするの下りは喋っていないから、身体を求められる事は無いだろう。

 

…と、信じたい。

 

「貴方に付いてく♪」

「分かりまし――え?」

 

 ルクスリアさん…僕は貴方の言っている事が分かりません。

 何故僕に付いてくるのでしょうか?

 それは貴女にとってメリットのある話なのでしょうか?

 

 そんな感じの質問を投げ掛けたくなる返答だった。

 

 いや、ねぇ…。

 幾ら何でも七大罪を横に様々な場所へは行きたくないよ。

 悲惨な目に遭う未来しか見えないからね!

 所構わずちょっかい掛けて来そうで嫌だなぁ。

 

 それに、何故俺に付いてきたいのかが意味不明だ。

 ルクスリアさんの目的が知れないのは怖い。

 だってこの娘、色欲なんだもん。

 寝ている間に襲われたりなんかされたら、それこそ取り返しのつかない事態に発展しそう。

 

「…理由は?」

「面白そうだから。」

「……はぁ。まぁ、ルクスリアさんに任せますよ。これ以上は時間の無駄でしょうし。」

「ありがと☆これから宜しくね、九条大祐くんっ♪」

「…え?」

「どうかした?」

 

 あれ?

 今、ルクスリアさん、俺の名前を呼んだのか?

 

 可笑しいな。

 彼女と出会ってから、一回も名前を口にしていないのに。

 失礼な話だが。

 

「…何で俺の名前を知っているんですか?」

 

 その瞬間、俺はルクスリアさんに対して敵意を持った。

 今まで軽い口調で話し警戒を怠っていたが、思い返せばルクスリアさんは飽くまで七大罪。

 黒の世界でトップに立つZ/Xだ。

 

 もしかしたら、軽い口調で相手を油断させ、一瞬の隙にグサッと一発みたいな…。

 

――はっ!まさか!?

 

 あの誘惑はその為の布石!?

 色欲に囚われた男はそのままゼロ距離で殺し、そこで囚われなかった男には敢えて油断させる手立てか。

 ルクスリアさんも中々やりますな。

 

「知ってるも何も…貴方、結構な有名人よ。」

「は?俺が有名人?」

「えぇ。青の世界で謀反者に手を貸し、赤の世界で秩序を乱した人物って事で。」

 

 あ、あぁ…、なるほど。

 要するに、俺は要注意人物って訳か。

 こいつに近付いたら殺されますよ的なアレ。

 

 けど、ちょっと待て。

 俺はあづみさんの事もリゲルさん事も謀反者だと思っていないし、赤の世界で秩序を乱したなんて言われても、襲ってきたのは彼奴等だし。

 青の世界で起こした事はご最もかも知れないが、赤の世界でやった事は正当防衛だろ。

 

 悪いのは相手方な訳であって、此方側を責めるのはお門違いだ。

 しかも、それであづみさんやリゲルさん、A-Zちゃんに危害が加えられるのであれば、俺としては黙っちゃいない。

 直ぐにでも其奴等を皆殺しに――

 

「うぐっ…!」

 

 早速行動に移そうと立ち上がると、右肺が唐突に痛みだした。

 

 それと同時に、体の彼方此方が更に痛み出す。

 呼吸が苦しくなり、視界が狭まる。

 

「あぁもう…そんなに急に動いちゃだーめ。大祐くんの肺、完全には治りきって無いんだから。」

 

 そう良いながら彼女は俺に寄り添って、ふらふらとしている体を支えてくれた。

 

「…はぁっ…ルクスリアさん…有り難ね。」

「ふふ。これから一緒に旅するパートナーとして、支え合いは大事でしょ?」

「その優しさ…素直に受け取りますね……」

 

 俺はルクスリアさんにそう言い残し、意識を暗闇に閉じた。

 急なショックが、体に対しての負担が大きかったのだろう。

 全体重をルクスリアさんに任せ、そのまま力を無くす。

 

「…大祐くん、中々面白い子ね。傷が完治してから色々聞きましょ♪」

 

‐‐‐

 

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