Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜 作:黒曜【蒼煌華】
「大祐くん、大丈夫?」
隣から、少女の可愛らしい声が俺の脳内に響き渡る。
何とも言えない、心地好い声。
その声が聞こえて来た方向を見ると、右手直ぐ傍には薄い青色の髪の毛を持つ少女、各務原あづみさんが心配そうに顔を覗かせていた。
+上目遣いで。
「…えぇ、俺は大丈夫ですよ。」
彼女の質問に対しての答えを口にしつつ、笑顔を見せる。
そのまま彼女の頭の上に手を置き、上から下へ何回も撫でる。
あづみさんは気持ち良さそうに目を閉じた。
「…大祐くんが何時も通りなら良いの。心にも体にも、傷は負って欲しくないから。」
「それは俺も同じですよ。…勿論、リゲルさんに対しても。」
あづみさんのいる反対側の左には、俺とあづみさんを微笑ましく見ているリゲルさんがいた。
彼女は、俺の言葉に照れるという反応を示す。
何とも可愛らしい。
「私も、二人には怪我をして欲しくないわ。特にあづみはね。」
「リゲルさんもですよ。…二人の幸せが俺の望みですから。」
「…嬉しいな。ありがと、大祐くん。」
「大祐は相変わらずね。その気持ちはしっかり受け取るわ。」
三人でお互いの顔を見合い、笑みを浮かべる。
この時間が、俺の幸せタイムだ。
‐‐‐
「…ん?」
下半身に重みを感じ、夢の国から目を覚ます。
あれはやはり夢だったのか。
起きて直ぐに憂鬱感と罪悪感に襲われる。
今日の朝は嫌な気分だ。
…いや、待てよ?
今は朝なのか?
先ずはそこからなのだが。
しかし、夢の世界は何でもありだな。
妄想し放題だぜ。
というか、この下半身が感じている重みの正体は一体――
「…うわぁっ!?」
寝ている俺の下半身の上にいたのは、紛れもなくルクスリアさんだった。
やっぱり、絶対やるんだろうなと思ったよ。
分かっていながらビビったけど。
「…ん〜…」
…ていうか、もしかしてルクスリアさん、寝てる?
だとしたら何故俺の上で寝ているの。
しかも、下半身は無いだろ下半身は。
せめて横で寝てくれ…。
まぁ、下半身というよりかは膝の上だけど。
にしても、俺は乗り物じゃないんだぞ。
ルクスリアさんとは別に親密な訳でも無いし。
…言っても無駄か。
「あ〜…びっくりした…。ルクスリアさんは態とやっているのか…?」
取り敢えずは体を起こし、周りを見渡す。
ルクスリアさんはそのままで。
…だって、今起きられたらややこしい事になりそうだから。
それは良いとして、どうやら今寝ていた場所は気を失う前と同じ場所らしい。
当たり前っちゃ当たり前だ。
しかしなぁ…これからはルクスリアさんと一緒に旅をする事になってしまうとは。
まさかこんな展開になるとは思わなんだよ。
無理矢理襲われて終了宣言喰らうのかと思い込んでいた。
だが、それは俺の検討違い。
ルクスリアさんは素直で優しい美女でした。
はい、美女なのは認めます。
実際にこうして見ると、確かに可愛らしい顔立ちをしている。
色欲縛りが無ければ、或いは俺も彼女の虜になっていたかも知れない。
そんな想いを胸に秘め、膝の上で寝ているルクスリアさんをまじまじと見つめる。
「…あ、そうだ。」
ふと、良い案が頭に思い浮かぶ。
自身のボロボロになったバトルドレスを解除、再度装着し直す。
するとあら不思議。
自分の衣服が完全に元通りに。
原理は分からん。
そして、完全復活を遂げた自身の黒いコートをルクスリアさんの上に掛ける。
この機能の評価出来る点は、着ている衣服の消臭効果付き。
更に雑菌まで熟してくれる。
実際に雑菌されているかは、俺自身も知らない。
至極怪しい。
「…んんっ…大祐くんっ…」
「?」
おや?ルクスリアさんの様子が…。
頬を赤くしながら足を内股に、もじもじし始めた。
更には息が荒くなり、はぁはぁ言い始める。
「…ルクスリアさ――」
「もうっ……意外と激しい…のね…」
「…」
俺は両手でルクスリアさんの頬を摘まみ、少し強めに引っ張る。
すると、一瞬で綺麗なお目目がパッチリ開き。
「いひゃい!いひゃい!だいひゅひぇくん(大祐くん)!もうひょっとやひゃひく(もうちょっと優しく)!」
「誰ですかね?起きているのに寝ている振りをし、変な事を言い始めたのは。」
「ご〜め〜ん〜な〜ひゃ〜い〜!」
本気で痛がっている様なので、ルクスリアさんの頬から手を離す。
ふにふにしてて柔らかかった。
「…大祐くんも堅物ね。あのまま襲ってくれれば良かったのに。」
「誰が。」
「大祐くんが。」
「舐めてますよね、俺の事。」
全く…どれだけ色欲で満たそうとしているんだ。
俺の心を、外壁から埋めていこうって魂胆か?
割かし策略家なんだな。
本当か怪しいけど。
ルクスリアさんは天然だったりしてな。
「えっ?私に舐めて欲しいの?」
「そんな訳無いじゃないですか。」
「もうっ、冷たいわねっ。」
「ちょっ、ルクスリアさん!」
急接近しながら肌と肌を密着させてくるルクスリアさんに、たじたじになってしまう。
しかし、ここで日和ってしまうとその隙を突かれる。
何時でも強い姿勢でいなければ。
だが、威張り散らすのとは別だ。
それに、少しは構って上げないといざという時に予想外の事態に陥る可能性がある。
それを考慮しての事だからねっ。
べ、別にルクスリアさんを構って上げたい訳じゃ無いんだからねっ!
…うわぁ、↑此奴(俺)うぜぇ。
男のツンデレとか誰得だよ。
「スキンシップもいけないの…?」
「うっ」
少々涙目になりながら、俺を見つめて来る。
輝く瞳についつい囚われそうになるが、しっかりと精神を保ち、ゼロ距離で離れそうにないルクスリアさんの頭を撫でてあげる。
「ふにゅ〜…」
「何の鳴き真似ですか、それ。」
「大祐くんに初めて構って貰えた♪」
「あはは…」
これが彼女の本心なんだよなぁ。
思わず苦笑いしてしまう。
というか、やっぱりルクスリアさんは構ってさんなんだな。
可愛らしい一面もあるじゃないか。
色欲と聞いたから御姉様タイプの人種かと思ったけど、どちらかと言えば年下タイプの――
人種じゃねぇな、Z/Xだな。
いっつも忘れがちだが、人形(ひとがた)のZ/Xと言えどZ/XはZ/X。
人では無いのだ。
バトルドレスに関しては一概に断定出来ないが。
まぁ、人と認識しても間違いは無いよな。
「…ん?何だこのヌメヌメは。」
「あれ、ほんとだ。…まさか大祐くん、私にローションを使うつもりじゃ。」
「こんなに密着した状態で何で足元にローションがあるんですか。ってか、ルクスリアさんにローションなんて使いませんよ。」
「えっ?…じゃあ、これは?」
えっ?
もしかしてルクスリアさん、マジで俺がローション持ってると思ってたの?
嫌だよ、誰が持つんですか。
今ローション持ってても何の意味も成さないじゃないですか。
…にしても、このヌメヌメは一体――
「…ルクスリアさん、後ろにいるあれ、なに?」
「わぁ、大きい蝸牛。あれは黒の世界のZ/X[溶滅の凶獣シュメーザ]ね。口から緑の溶液を吐き出して、対象をどろどろにしちゃうの。」
「緑の溶液って…アレですか?」
ルクスリアさんがすらすらと解説してくれたでかい蝸牛の、恐らく口部分。
そこには緑色の液体が溜まり始めて。
――発射された。
「くっ…!」
「おお〜。」
俺は即座に、ルクスリアさんにホールドされていた左腕で彼女の膝元を支え、頭を撫でていた右手の腕を首元に回す。
地面に落ちていた自分のコートを足で蹴りあげると、ルクスリアさんがナイスキャッチをしてくれた。
その一瞬の間にバトルドレスのブースターを吹かし、ノックバックで距離を離す。
それと同時にシュメーザとやらのカタツムリ粘液攻撃が着弾。
地面がどろっどろに溶け、抉られた。
「大祐くんにお姫様抱っこされるなんて…貴方も割りと大胆ね。」
「遊びでやってる訳じゃ無いんですよ!」
ルクスリアさんの下らない話に突っ込みをいれ、そそくさとその場を撤退する。
あんなデカ物と戦う理由なんて、これっぽっちも無いからね!
それに無駄なリソースは消費したくない。
只でさえ、未だにバトルドレスがボロボロなのに。
「え〜逃げちゃうの?」
「…ルクスリアさんがあのカタツムリに飲み込まれて、触手にうねうねされてくれるなら止めは刺せますけど。」
「まさか大祐くん…私が触手に○○されるのを見たいの?それならそうと言ってくれれば――」
「違いますって。あのカタツムリがルクスリアさんを襲ってる隙に、俺が止めを刺すって話です。」
「見掛けに寄らず酷いひとっ。」
段々、ルクスリアさんのテンションに慣れてきたな。
何時かノリ突っ込みとかする日が来るのだろうか。
…それはそうと、あのデカタツムリは鈍重だな。
不幸中の幸い、とでも言うべきか。
ルクスリアさんと出会った時点で、不幸の始まりだったのかも知れないが。
命を救ってくれた恩人に、そんな事を堂々とは言えないけど。
……そう言えば、何故あの場にルクスリアさんが居たんだ?
俺は赤の世界で自爆をした筈だが、何でか黒の世界に移動していた。
しかし、移動距離が至極遠い。
赤の世界は九州の熊本・宮崎・鹿児島県境だが、黒の世界は東京・埼玉・千葉・神奈川境だ。
此所が何処に位置するのか分からないが、どう考えても移動には長時間を有してしまう。
ルクスリアさんが態々、黒の世界や赤の世界を行き来している訳では無さそうだしな…。
だとしたら、俺は一人で黒の世界に来たのか?
『ゼロシステム』に呑まれていたという事もあり記憶の一部飛んでいるが、辻褄だけは合っている。
しかしそれは、あまりにも非現実的な話だ。
そんな長距離をリソースも無い俺が、渡れる筈もない。
だが、一つだけ引っ掛かる部分がある。
俺は恐らく、アレキサンダーに対して自爆行為を選択したのだろうが、何故アレキサンダーは俺を殺さなかったのか。
まさか、殺せなかったのか。
殺そうとしなかったのか。
殺す度胸すらないのか。
…いやいやいやいや。
アレキサンダーに限ってそれはない。
それこそ有り得ない。
俺が『ゼロシステム』を発動する前までは、血気盛んに襲って来たのだから。
じゃあ何故、アレキサンダーは俺を見過ごしたのか。
俺が、軍師・黒崎神門を殺したとか。
これもない。
『ゼロシステム』発動中にも関わらず、対話が成功したとか。
…意味が分からない。
そうとなれば、一番確率が高いのは「アレキサンダー自身が重傷を負った」事になる。
周りには「アーサー」とか言う野郎が居た気がしなくも無いが、どうなったのか。
すげーフルボッコにされた記憶ならあるんだけど。
様々な疑問が交錯し、謎だらけになってしまう。
それでも、焦る事はない。
一つ一つを確実に解明していけば良い。
幸い、ルクスリアさんという七大罪がパートナーなんだし。
後ろ楯は中々に強力だ。
「ふんふんふ〜ん♪」
「…ルクスリアさん、何だか上機嫌ですね。此方人等萎えてますよ。後ろから3体、前から5体のプレデターに襲われているんですから。」
「私はこのままでも構わないかな〜。…だって、ずっと大祐くんにお姫様抱っこして貰えるんだもん。」
「そのせいで俺の量腕が塞がって、攻撃出来ないじゃないですか。」
どの疑問から解決しようか考えながら移動していると、いつの間にかプレデターの集団に囲まれていた。
何に引き寄せられたのか分からないが、丸で「その何か」を求めて襲って来ている感じがする。
その原因が分かれば苦労しないのだが…。
しかも、殆どが鴉のプレデターっていうのがウケる。
「大祐くん、そのバトルドレスは足で攻撃とか出来るの?」
「プレデター相手に近接戦なんか挑みたく――あ、そうだ。」
近接戦で一つのバトルドレスが有効なのを思い出す。
手も足も使わない、素晴らしいバトルドレスがあるじゃないか。
ずっとウイングゼロを装着しっぱなしで、すっかり忘れていたが、違うバトルドレスにはまだリソース量が存分に残っている。
それらに換装した方が早いじゃないか。
「大祐くんっ、前から攻撃!」
「おわっ」
前方から勢い良く突っ込んでくる鴉を躱し、即座にバトルドレスを換装する。
無論、サバーニャに。
「有り難う御座いますね、ルクスリアさん。」
「わーい、大祐くんからお礼言われた♪」
「丸で子供みたいですね。…ま、殲滅戦を開始しますか。」
殲滅戦。
そう断言した俺はGNホルスタービットから、GNピストルビットを大量展開。
全プレデターに向かって攻撃させる。
体の大きなプレデター達は反応が間に合わず、そのままもろ喰らい。
緑だの何だの、気持ち悪い色をした液体が辺りに飛び散る。
それを躱しつつ、状況を把握。
…大体は排除完了。
言わずもがな、シュメーザとやらも。
しかし、中にはビットの攻撃を全て掻い潜るプレデターもいた。
先程飛び込んで来た鴉がそれだ。
まさかあの大量ビットを躱すなんて、思いもしなかった。
「へぇ…あの鳥、中々ね。」
「本当ですよ。あの鴉だけは、難なく躱してくれますね。」
「確かあの鴉…「ライゼンデ」とか言う名前だったような…」
「随分とカッコいいな、あの鴉の名前。」
見た目はまんま鴉だが。
只、個人的に鴉は好きな鳥類だからな。
あまり殺したくない。
いや、遠慮無く殺すけど。
自分達にとって害のある存在だからな。
だが、ビットを全て回避した鴉が何匹もとなると面倒臭い。
4匹が束になっているだけだが。
「まぁ、相手が鴉ですからね。楽勝ですよ。」
「…それがね、そうもいかないの。」
「え?」
あのルクスリアさんが断言出来ないなんて、珍しい。
それほどに嫌な相手なのか。
大変な相手なのか。
面倒臭い相手なのか。
…結局面倒臭いじゃないか。
相手するの嫌だなぁ。
そんな感じで鴉達の動きを観察していると、唐突に羽を広げ始めた。
「おぉ…翼を広げると割りとデカ――」
「大祐くんっ!防衛して!」
「はい?」
俺にお姫様抱っこをされているルクスリアさんが、大きな声で俺に警戒を呼び掛けて来た。
俺は焦りつつも迅速に、シールドビットを展開。
その瞬間、ライゼンデとやらの羽から、鋭い刃の様な物体が放たれた。
羽から直接撃ってきているという事は、アレは恐らく鴉本体の羽の一部。
丸で小刀の様な形状をしている。
だが、此方は既にシールドビットを展開済みだ。
どんな攻撃が飛んで来ようとも、易々と破る事は出来ない。
防衛は完璧。
…だったのだが。
「くっ…威力といい範囲といい、厄介だな…!」
「それに加えて物量も。4匹分の攻撃を、どこまで耐えられるかが勝負どころね。」
ギャリギャリと音を立てながら、シールドビットの装甲を削るライゼンデの羽。
威力や範囲、物量……これが中々にうざったらしい。
自分のリソース量との勝負かと思ったが。
あまりの物量に耐えられなくなったシールドビットが、次々に破壊されていく。
一枚、また一枚と、蝕まれるかの如く。
「シールドビットが…壊された…!?」
「あれれ、大ピンチ。」
遂に残り一つのシールドビットも破壊され、ライゼンデの羽が自分達に襲い掛かる。
相も変わらない物量、シールドビットを破壊した威力……このままでは二人共奴等の餌食だ。
…せめて、俺を助けてくれたルクスリアさんだけでも。
「…リソース解放♪」
と、思った次の瞬間、ルクスリアさんが手を前に付きだしながら何かを言い放った。
すると、目の前に暗い紫色の結界の様な壁が現れる。
その結界はライゼンデの攻撃を弾き返し、俺と彼女を守り抜く。
ライゼンデも、弾き返された自身の攻撃を躱すものの、2匹程が直撃を喰らい地面に落ちる。
視線をそちらに移すと、地面に広がる液体と混ざり合って…。
……おぇ。
吐き気を催す光景と化していた。
「まだまだ殺らせて貰うわね。」
ルクスリアさんは次の工程として、現れた紫色の結界から真っ黒い波動を放つ。
その波動は、残った2匹のライゼンデに纏わりつく。
直後ライゼンデの飛行能力が乏しく低下し、空中でもがき始める。
それは丸で、何かに苦しみ怯える様な。
「じゃね♪」
しかし、ルクスリアさんはそんな光景に目もくれず指をパチンッと一回鳴らす。
その音が周囲に響き渡った時、ライゼンデは内部から爆裂した。
…うっわ、グッロ。
いやいやいや、今、内側から爆発して、血が、ビシャッて勢い良く……えぇ?
ルクスリアさんの攻撃、凄く強いけど凄く残酷で。
「…」
思わず無言になってしまう。
「…ふぅ、気持ち良かった♪」
――その時俺は、ルクスリアさんが七大罪だという事実を思い知らされた。
‐‐‐
オリジナル技を容易に想像出来てしまう。
流石ルクスリアさん。
(これからも自分勝手にオリジナル技を考えていきます。しかし、どんな技を誰が使うのか、自分ですら未だに分かっていない事案。)
小説内容的に色々と抜けているかも知れませんが、それに関して感想を頂けると嬉しいです。
(強制では御座いませんので、お好きな時に。)