Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜 作:黒曜【蒼煌華】
「うおおぉぉぉ!!」
俺は目の前にいるプレデターに向かって大声を出し、突撃を敢行する。
因みにバトルドレスはウイングゼロ。
こいつを制御する為に多数のプレデターを相手にしている。
…のだが、ちょっと多過ぎじゃありませんかね。
敵は前方にしかいない有利な展開だが、それだけで10、20……酷い数だなおい。
此方人等一人だぞ!
いや、もう一人いるけど居ない様なもんだからね。
「うぉっ、このワンコロ!」
「グルルルル…!」
以外に素早い動きを見せてくれる。
だが。
「ゼロの反応速度なら…!」
ビームサーベルを降り下ろし、すばしっこい犬を両断する。
そのまま、襲い掛かってくるワンコロ共の攻撃を躱しつつ、全てビームサーベル一本で対処していく。
返り血が服に飛び散るが、気にしてなどいられない。
一瞬でも気を抜けばそこで終わりだ。
俺の命は、無い。
しかし、このままでは埒が明かないな。
俺のリソース量はそこまで高くないのが現状。
数で押しきられる可能性が無いとは言えない。
それに、相手は黒の世界のZ/X「プレデター」。
大小様々な種族のせいで、逐一戦い方を変えなければならない。
凄く面倒臭い作業だが、これは作業等ではなく特訓。
一歩間違えるだけで――
「くそっ…!」
命が無い事位分かっている。
だからこそ、気が抜けないのだ。
「頑張れっ頑張れっ♪」
…元凶はあの高みの見物している女性なんだけどな。
何でこんな場所に連れて来られたのだろうか。
幾ら特訓と言えど、限度という物がある。
行き過ぎた訓練は人を殺す元となる。
そして、本人が死んでしまっては元も子もない。
程好く地道な積み重ねが大事なのだ。
だが、今の俺はそんなに悠長にしている暇など有りはしない。
一刻も早く力を制御し、彼女達を見つけなければ。
そう心で感じた瞬間、一瞬の気の緩みが生じてしまった。
敵の吐き出した何かをバックして避けた時に、足での着地をミスってしまう。
そして無様に尻餅。
あ、俺、終わったくさい。
敵のプレデター共は獲物の隙を逃さない。
全匹一斉に襲い掛かって――
…全匹一斉に弾け飛んだ。
「…あっぶな。」
「確かに今のは危険ね。油断していたのもあるけど、疲労が目に見えて表れてる。今日はもう休みましょ?」
彼此二時間位か。
ずっとプレデターを相手に苦戦を強いられていた。
丸でデスペラードバラードを歌っている人みたいに。
強〜いら〜れて〜いるんだ〜。
良かった。
どうでも良い事を考える余裕だけはあるらしい。
実際の疲労は半端無いがね。
「助かりましたよ、ルクスリアさん。」
「んふふ♪大祐くんからお礼なんて、新鮮な感じね。」
「…取り敢えず、安全地帯で休みますか。」
「そうね。疲労が溜まり過ぎると体に毒だし。」
ルクスリアさんはこういう所を分かってくれているから助かる。
色欲に貪欲で無ければ、良いお嫁さんになれると思うんだけどなぁ…。
ま、それが好きって人もいるだろうし。
人それぞれだよな。
因みに、俺は色欲嫌いです。
何でか知らないが心身共に拒否反応を起こす。
そういう性格と言われればそれまでだが。
「…んじゃ、ルクスリアさん、此方に。」
「はいは〜い♪」
じゃあ、あづみさんとリゲルさんがもしそうならどうしたか?
そりゃ決まってますよ。
遠慮します。
あづみさんはまだ14歳だし、リゲルさんは…リゲルさんは…うん?
良く分からない。
何歳とか以前の問題として、リゲルさんは俺の事好きじゃ無いだろうし。
どちらかと言うなら嫌いじゃないのか?
いや、自覚はあるが確信はない。
じゃあ何故そう思うのか。
「…よいしょっと。」
「それじゃ、宜しくね♪」
「りょーかいです。」
とある一件の問題が、俺の中で引っ掛かっている。
あづみさんを独り占めしたい発言をしてしまった時だ。
心の底から感じた想いがつい本音に出てしまい、それをリゲルさんに聞かれ。
そこから彼女の、俺に対する想いが分からなくなってしまった。
…でも、あの発言以来あづみさんの態度が一変した気がする。
自ら近くに寄って来てくれたり、膝枕をして上げる頻度が高くなったり。
何故かあづみさんに求められてる気がして。
…う〜ん、気のせいかなぁ。
あの小屋で言われた事が本当ならあづみさんは俺の事を……
――俺の勝手な妄想か。
「あっ、良い場所発見♪大祐くんっ、そこで一度――大祐くん?」
「………」
けどなぁ…リゲルさんはともかく、あづみさんは俺に気があるような。
俺があまりにあづみさんが好き過ぎるせいで、気が狂ったか?
そんな訳無いじゃないか。
あんなに可愛い少女が俺と釣り合うなんて、妄言にも程がある。
そんな自分に贈る言葉。
「身の程を弁えろ。」
そんな妄想はいい加減止めろと。
ちゃんと現実を見ろと。
「お〜い?大祐くん?」
「………」
あぁそうか。
俺が彼女に恋愛感情を抱いてはいけないのか。
これは恐らく彼女だけでなく、リゲルさんにも言える。
あんなに綺麗な美女を好きになって、お前如きが白白しいとな。
…あーあ、俺は二人に恋を出来ないのかぁ。
何でこの位の事を気付かなかったのだろう。
ほんと、馬鹿馬鹿しい。
自分で自分が嫌になってくるな。
――って、どうした俺!?
急に二人に恋出来ないだの、身分を弁えろだの、一体何の話をしているんだ。
彼女達に会えないからって、情緒不安定過ぎるだろ。
「ねぇ大祐くん。…大祐くんってば!」
「…あ、ルクスリアさん。どうかしました?」
「どうしたもこうしたも…全然私の呼び掛けに反応してくれないから、何事かと思って。」
「あっと…それはすみませんでした。少しボーッとしてまして…。」
少し所では無かったのだろう。
ルクスリアさんが大きな声を発した位なのだから。
ほんと、馬鹿馬鹿しくもあり、何をしているのかという情け無さもあり。
…しっかり自分の心を制御出来なければ。
自心制とか言ってた頃が懐かしく感じる。
しかし、これではとても『ゼロシステム』を扱えたもんじゃない。
装着者の精神を蝕み、呑み込む『ゼロシステム』。
今の俺が発動したら、とんでも事件が又一つ増えてしまう。
先ずは其処ら辺一帯を更地にして。
……ってこの場所、元から更地じゃないか。
あるとしても朽ちた物体が散らばってる位。
そしてその後、ルクスリアさんに手を出して――
「丁度良く休めそうな場所を見つけたの。大祐くんの為に探したんだからねっ。」
「……ルクスリアさんは、優しいですね。」
――駄目だ。
彼女を襲うなんて真似、したくもない。
仮にもルクスリアさんは俺を助けてくれたのだ。
何処の世界の者か分からない俺を。
そんな彼女に攻撃するなど、言語道断。
もし襲った場合、俺は最低なクズ人間となる。
というか、先ず襲う事をしたくない。
「…ん?俺、いつの間にルクスリアさんをお姫様抱っこしてたんですか?」
「えっ、そこからの話?…まさか、大祐くんと私で決めた事を無意識行動しちゃうだなんて。」
「移動する時は俺がルクスリアさんをお姫様抱っこしていく、でしたっけ。」
「そうそう♪けど、それを無意識で実行するなんて少しは私に興味を――」
「取り敢えず、其所で休みますか。」
俺はルクスリアさんの話を完全に無視し、指定された地点へとブースターを飛ばす。
途中、腕の辺りから「も〜…」と聞こえて来るが気にしない気にしない。
構って上げたいのは山々だが、誰かさんのせいで両手が塞がっている状態。
せめて一息吐いてからにしましょうぜ。
‐‐‐
指定地点に着くや否や、ルクスリアさんが触れ合い行為をして来る。
何故か以上に触れ合いを好む彼女に、正直疲れていた。
身体は戦闘で、精神はルクスリアさんで。
ごりごりと体力を減らされていく。
…兎に角、一旦休みたい。
「あら?大祐くん、もうお休みタイム?」
「凄い疲れたんですよ。眠くて眠くて堪らないです。」
「ふ〜ん……あっ、そうだ…♪」
地面の上だろうがなんだろうが関係ない。
俺は今、至極眠いのだ。
心身共に疲れ過ぎて果てる寸前だ。
一刻も早く身体を休めたい。
「…大祐くんっ、ここ来てっ。」
「ん〜?…っと。」
「この上に頭を置いて。」
「………」
もう眠過ぎて、目を瞑りながらルクスリアさんの指示通りに動く。
声のした方向に体を引き摺り、指示された所に頭を置く。
するとそこには、柔らかい感触の枕が――
「どう?私からのご褒美「膝枕」。気に入ってくれた♪」
「……すぴー…」
「んもうっ、大祐くんったら。」
たった何日間…それでも久し振りに思えたこの感触に抗えず、俺の意識は暗闇へと吸い込まれていった。
「…こう見ると、やっぱり私好みの顔立ち――…ん、これ…。」
「…俺のせ…」
「…大祐くん、泣いてるの?」
――その日俺が目覚めると、ルクスリアさんが唐突に抱き付き、頭を撫でてくれた。
……何があったんだ?
‐‐‐