Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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話が進むにつれ、主人公の精神が不安定になっていく…。
こんな筈じゃなかったんや!


第二十五話: ソトゥ子の◯◯

 扉を開くと、ガチャリという音が周囲に響く。

 その扉を開けた先には何があるのか。

 少しのワクワクを抑え込み、扉を開くのと同時に目を開ける。

 すると其処には、少し大きめのソファーに座っている三人の女性が視界に映し出された。

 相手の女性三人も、扉を開けた時の音に気付いて此方に視線を向ける。

 

「貴方が…大祐くん?」

「えっ、あっはい。」

 

 最初に話し掛けてきたのは、薄い紫色のウエーブ掛かったロングヘアーの女性。

 服の露出度は中々に高く、ルクスリアさん並にある大きな胸元は少しの範囲だけ隠している。

 衣服は黒いドレス的な何か。

 静かな声と見た目が地味に合っていない可愛らしさが見える。

 

 だが、俺が気になったのはその女性の見た目ではない。

 寧ろその女性と話し合っていたかの様な雰囲気を醸し出す二人の女性。

 俺は其方の方に目が釘付けになった。

 

 しかし、それは俺だけではない。

 相手の女性二人も、俺を見て動きを止めていた。

 丸で死者が生き返った所を目の当たりにした様な表情をしている。

 全員の時間が止まった、そんな感覚が体を支配する。

 動けない、声を掛けれない、けど今直ぐ二人の元へ駆け寄りたい。

 様々な感情が心の中で渦巻いていた。

 

 しかし、その沈黙は直ぐに破られた。

 自分が気付かない内に、一人の女性…女の子が俺の胸元へとそっと体を寄せてくる。

 両手を自分の胸に置いて。

 そして彼女の一言に意識が全て持っていかれた。

 

「九条…大祐くん、だよね…?」

 

 俺はその女の子へと視線を向ける。

 すると彼女は上を向き、にっこり笑顔で俺を見つめる。

 

「あれから一週間…私の事、覚えてるかな。私はしっかりと覚えてるよ。」

「…忘れるなんて出来ませんよ。自分が一に思っている人の事を。」

「えへへ…嬉しいな。大祐くんが私を一に思ってくれてるなんて。」

「当たり前ですよ。俺にとってあづみさんは舞い降りた天使なんですから。」

 

 そう言うとあづみさんは、頬を真っ赤に染めながら俺の胸元に顔を蹲らせた。

 そんなあづみさんに対して俺は両腕を使って抱き締める。

 どうせこれは夢の世界なのだろうと知っていても、嬉しくてついつい力を強めてしまう。

 自分の妄想でも構わない。

 それ程にあづみさんに会いたかったから。

 

「大祐くん…やっと会えた。」

「これが夢じゃなければ、死んでも構わないのにな。」

「…これ、夢じゃないよ。ほんとに。」

「はい?」

 

 俺はあづみさんの一言に動きを止めた。

 彼女の言っている言葉の意味が飲み込めない。

 これが夢の世界じゃなかったら、一体此処は何処なんだ。

 あまりに現実だと信じたくて、遂には夢の中であづみさんにそんな事を言わせるのか。

 

 どんだけ会いたくて堪らないんだよ、俺。

 事実なのは確かだけど。

 

「えっと…って事は、本物のあづみさん?」

「うん、そうだよ。本物の私。」

「でっでも…それじゃあ此処は――」

「あの、大祐さん。取り敢えず此方に座って貰えるかな…?」

 

 あづみさんが本物かどうかを聞いて確かめていると、紫ロングヘアーの女性に呼ばれた。

 あの人は、何だか静穏な性格だ。

 何処かあづみさんを彷彿とさせる。

 まぁ、唯単に静かってだけだが。

 

 兎に角、呼ばれたからには実行に移す。

 座れと言われたソファーに向かって歩き出すと、あづみさんが一緒に横を付いてくる。

 何故か、離れたくないという意思が見えた。

 俺の勘違いかも知れないのは間違いないが、俺の傍を離れない感じが何とも可愛らしい。

 今直ぐもう一度抱き締めたい。

 

…はっ!駄目だ駄目だ。

 何の理由も無しに抱き締めるのは只の変態じゃないか。

 俺はへっきーとは違うんだぞ。

 あんなヤバイ変態とは違うんだ。

 

「…大祐?何か久し振りね。私の事も覚えているかしら?」

 

 指定位置に着くや否や、金髪の美しい女性が話し掛けてきた。

 話の内容はあづみさんと同じく「私を覚えているか」。

 俺がその質問に対しての返答など考える必要も無かった。

 

「勿論覚えてますよ。忘れた事なんてありません。」

「全くもう…大祐は何時も通りの敬語ね。でも、また会えて嬉しいわ。」

「それは此方の台詞ですよ、リゲルさん。二人に会いたくて仕方がなかったんですから。」

「私達も同じよ?大祐を必死に探したんだから。」

 

 リゲルさんは俺の事をじっと見つめながら話を進めた。

 どうやら二人は、俺を探してくれていたらしい。

 何と優しいのか。

 

…ん?というか今、聞き捨てならない発言をされた様な気がしなくもないぞ。

 私達も同じ?

 俺に会いたくて仕方がなかったって事になるのか?

 いや、待てよ。

 そんな事がある筈がない。

 幾ら夢と言えど、リゲルさんが「貴方に会いたかった」なんて言ってくれる訳が…。

 

 よし、取り敢えず座って状況を整理するか。

 今の俺の脳内は色んな疑問で埋め尽くされている。

 何で俺が此処にいるのか、抑此処は何処なのか。

 先ずはそこから考えないと。

 

 座り心地の良いソファーに体の全体重を預けながら悩んでいると、あづみさんが隣に座ってきた。

 てっきり、リゲルさんのお隣にでも座るのかと思いきや違ったよ。

 それを考慮して俺とリゲルさんの間を少し空けたのだが、これじゃ詰めなければあづみさんが座れない。

 真ん中に来ないんですか?と聞いてみるも「此処が良い」と言われてしまった。

 俺は気が進まないが、リゲルさんに近寄る。

 

…殺されたりしないよね?

 

 そんな冗談を頭に思い浮かべたが、寧ろリゲルさんは何も喋らなかった。

 唯、顔を背け、リゲルさんの方から少し近寄って――

 

 えぇ!?

 何これ、夢の世界って超すげー!

 まさかリゲルさんから来てくれるなんて思いもしなかったよ。

 右にあづみさん、左にリゲルさん。

 正に「両手に花」だね。

 こんな事が前にもあったような気がしなくもない。

 

「えっと…初めまして、大祐さん。行き成り過ぎて混乱していると思うけど…今から説明するね。」

「あっ…と、お願い致します。」

 

 予想外の展開に自身の感情が荒ぶってしまった。

 ここは目の前に居る女性の話を聞かなければ。

 そして相変わらずの敬語である。

 誰に対しても敬語を使ってしまう。

 それが俺の悪い癖。

 

 と、まぁ自分の悪い癖なんかどうでも良いので、しっかりと紫ロングヘアー女性の話を聞こう。

 状況を説明してくれる優しいこの方の話を。

 

「…私の名前はリス・ソトゥ子。この部屋の住人と思ってくれれば有り難いな。」

「ソトゥ子さん、唐突ですが此処は?」

「…今私達が存在するのは[夢の世界]の中。貴方はあづみちゃんとリゲルさんに呼ばれて此処に来たの。」

 

 あづみさんとリゲルさんに?

 それを聞いた俺の心には更に疑問が生まれた。

 自分でも思うが理解力の無さが目立つ。

 好い加減もうちょっと解する力が欲しい。

 今の俺に足りないのは、圧倒的に理解する能力だ。

 

 身体能力も高くなく、物事を解釈出来る程の力も無い。

 丸で無い事だらけじゃないか。

 何時もそうだが。

 

「本当は事前に伝えておくんだけど、二人が急を要するって焦ってたから。…貴方が生きてるって伝えた瞬間は凄かった。」

「それは何故故(なぜゆえ)?」

「二人共、歓喜の心で一杯だったんじゃないかな。…至極嬉しそうだったよ。」

 

 ソトゥ子さんの言葉を信じて二人の表情を伺ってみると、俯きながら顔を赤くしていた。

 何だかその反応に嬉しくなってしまう自分がいる。

 二人共、本当にそう思ってくれたのだろう。

 俺としても歓喜の音が止まらない。

 勿論心の中でだけど。

 

「…それで、此処が夢の世界という事は?」

「あづみちゃんとリゲルさん、大祐さんの体は眠ったまま。意識だけが此方に持ってかれてるの。」

「ソトゥ子さん…貴女、Z/Xですよね?」

「私は…種族的にはディアボロス。でも私は血なんか吸ったりしない…。」

 

 ディアボロス。

 そうだったのか。

 彼女はディアボロス、ルクスリアさんと同じ種族なのか。

 でも、血を吸わない?

 ルクスリアさんに関しては七大罪という不老不死を得たから問題ないが、ソトゥ子さんは――

 

…止めておこう。

 深い詮索は彼女の心を傷付けてしまう。

 何か理由があって血を吸わない訳だし。

 もしかして、ソトゥ子さんは単に血を見るのが好きじゃないから、見たくないから拒んでいるのか。

 恐らく彼女は争い事が嫌いな性格なんだ。

 例え自分がディアボロスであろうと、その種族の運命を越えようとしている。

 唯、ディアボロスは確か血を自身に与えなければ滅ぶ筈じゃ…。

 

「大祐さん。今、私の事を考えてくれてたんだよね?」

「…このままではソトゥ子さんは――」

「私は大丈夫。自分なりに何とかして見せるの…!」

 

 そう言ったソトゥ子さんの表情はやる気で満ちていた。

 しかし、その奥底には不安や苦しみという様々な感情も見て取れる。

 協力をしてあげたいのは山々なのだが、今は自分達の事に専念しよう。

 これでは何時まで経っても現実世界で二人に会えない。

 

「そう言えば、二人は何処に居るんですか?」

「私とリゲルは緑の世界一歩手前。青の世界を抜ける所にいるよ。大祐くんは?」

「俺は今、黒の世界に居ます。プレデターだの何だの相手にしながら前世の親友と会えて、上柚木綾瀬とかいう女性に殺されかけて。」

「その親友って人も、この世界に転移してきたのかしら?」

「はい、どうやってかは知りませんが。……あ、因みに今の僕のパートナーZ/Xは「七大罪色欲の魔神 ルクスリア」という女性です」

「「七大罪…!?」」

 

 俺、七大罪がパートナーなんだぜ、すげぇだろ。

 みたいな発言をした瞬間、二人は驚愕の音を上げながら驚愕の表情をしている。

 そりゃ驚きもんだよな。

 一週間行方が分からないと思いきや、黒の世界とかいう一番危険で混沌としている場所で生き延びて、挙げ句の果てには七大罪がお友達。

 というかパートナー。

 何言ってんだ此奴みたいになるよな、普通は。

 

 だが、それが当たり前の反応だ。

 二人もそんな反応を示して――

 

「ま、大祐のパートナーが誰であろうが関係無いわ。一時的な物でしょうし。…それよりも、貴方の体は無事なの?」

「そうだよ!赤の世界であったあの事件の後、大祐くんは大丈夫だったの…?何処も、怪我してない?」

 

…おぉ神様や、この二人は何て可愛い子達なんでしょうか。

 嫁スキルが高くないですかね?

 七大罪のパートナーなんか知らないけど、貴方の体の状態は気になる。

 何と優しきかな、優しきかな。

 ぜひ僕に二人を下さいよ。

 どっちかなんて選べませんから。

…無理だ。

 そんな事、言える筈が無い。

 言えたらとっくに告白してるっての。

 いや、あづみさんには一度告白めいた事を言ったけどさ。

 返事、応答、リゲルさんが起きた事により遮られる悲しみ。

 

 うーん、この。

 

「あの…私、さっきから話に付いて行けない。」

「あっ、ソトゥ子さん御免なさい…。大祐くんとばかり話しちゃって。」

「ううん、良いの。あづみちゃんにとってその人は大事な存在なんでしょ?…大祐さんは幸せだね。こんなに可愛い女の子の一番になれるなんて。」

「あっあの、ソトゥ子さん!?」

「…ソトゥ子さん、一言良いですか?」

「どうかした…?さっきのあづみちゃんの話?」

「いえ、その話は正直聞こえませんでした。…それは違くて、僕を呼ぶときに大祐さんじゃない呼び方をして貰えませんか?あまり慣れなくて。」

「む〜…」

 

 何処からか凄く可愛い声が聞こえてくると思ったら、直ぐ隣にいるあづみさんの声でした。

 何故そんな拗ねてる的な声を出したのか、何故そんな頬を膨らませながら此方を向いているのか。

 

 俺にはさっぱり分からない。

 

 流石にこれを鈍感とか言わないよね?

 だってソトゥ子さんの言葉が頭に入ってこなかっただけで。

 別に、態とでも無ければ無視しようとした訳でも無い。

 もしそれで何か言われるようであるならば、間違いなく冤罪だ。

 

 なんて、どうでも良い事は放置しといて。

 他にも聞きたい話がある。

 今は兎に角其方に集中しようじゃないか。

 

「ねぇ、大祐くん。」

 

 とか何とか、そんな事を心中で決めていると横からあづみさんに話掛けられた。

 話し手の顔をしっかり見るのが俺。

 あづみさんの表情を確認すると、彼女は俯き気味に顔を下に下げていた。

 一体何事だ。

 

「どうかしましたか?」

「大祐くんはこれから何処に向かうの…?出来るなら、大祐くんさえ良ければ、今直ぐにでも」

「…会いたいです。二人に、夢の世界なんかじゃない。現実世界で二人に会いたいです。」

「大祐くん…。」

 

 あづみさんの質問に対して自分の本心で返答すると、彼女は此方側に少し体を寄せて来る。

 密着しそうな所まで近付いて来ると、今度は俺の腕を自信の胸近くに持っていき。

 そして、両腕でぎゅっと抱き締められた。

 

 もう俺の役目終了。

 死んでも良いよ。

 いや、宜しくないけど。

 しかし、嬉しいという気持ちが湧くのは止まらない。

 自分の好きな女の子からこんなサプライズを頂いているのだから。

 

「………」

「リゲルさん?」

 

 俺の腕を抱き締めるあづみさん。

 表情に出していたかは分からないが喜びを感じていた俺。

 それをずっと見ていたリゲルさんは、ぷいっと顔を逸らしてしまった。

 何故逸らしたのかは理解…。

 

 出来る!

 

 これは唯単に、俺とあづみさんが仲睦まじくしているから拗ねてしまったのだな?

 成る程成る程。

 確かに、リゲルさんを一人にするのは男として一番してはいけない行為だもんな。

 安心して下さいよ。

 こんな美人さんを放っておく訳無いじゃないか。

 俺自身から攻めに行けば良いんだよ。

 

…ふふ、出来る。

 私にも相手の気持ちを理解出来るぞ!

 

「あの、リゲルさん。」

「…何かしら。」

「ちょっと此方に来て頂けますか?」

「…こんな感じで良いの?」

 

 恥ずかしがりながらも実行してくれるリゲルさん可愛い。

 戸惑いながらも近くに寄ってくる感じがこの上なく可愛くて堪らない。

 そして、地味に胸をアピールしてくる感じが心そそられる。

 だが、俺はあまり胸に興味なくてね。

 有ろうが無かろうが関係無い。

 その女性を好きになってしまったのであれば胸の有無など忘れるものだ。

 男としてそそられるものはあるって話。

 どうせならこのまま襲ってやろうかな。

 

「大祐…その…近過ぎないかしら?」

「リゲルは大祐くんと近いの、嫌?」

「別にそうじゃない…けど。唯普通に恥ずかしいというか、ほら、ソトゥ子さんもいるから。」

「リゲルさん、相変わらず可愛いですね。」

「ふぇっ!?」

 

 俺の言葉に驚きつつもずっと顔を赤らめているリゲルさん。

 そんな彼女に大胆な行動をしてみようと思う。

 これが大胆と言えるべきかはさておいて。

 取り敢えず自分の左腕をリゲルさんの左肩に回すだろ?

 

「ちょっ…大祐――」

 

 その後、申し訳無いけどあづみさんから右腕を返して貰って。

 

「あっ…」

 

 今一瞬あづみさんの切なそうな声が耳に入ってきたな。

 後で思いっきり抱き締めよう。

 あづみさんが望めば、だけど。

 

…それは兎に角、解放された右腕で何をするかって?

 決まってるじゃないか。

 あの夜にした事をするんだよ。

 

「リゲルさん、此方に顔を近付けてくれますか?」

「えっ…あ、うん。」

 

 おどおどしながらも、リゲルさんは俺の胸元に顔を近付ける。

 俺は右手を彼女の後頭部に当てる。

 

「…えぇっ!?」

 

 恥じらいながらも指示に従ってくれる彼女の体を、そのまま自分の胸元に寄せていく。

 そして抱き締める。

 

「凄い…大胆だね。」

「ソトゥ子さん…目の前ですみませんね。そう言えばリゲルさんを抱いて無かったと思いまして。」

「抱く……大祐くんは言葉も大胆なんだ。」

「さんからくんに変えてくれて、有り難う御座います。」

「だっ、大祐…これは…」

 

 何ですかリゲルさん。

 肩だけじゃ物足りないとでも言うのですか?

 仕様が無いなぁ。

 んじゃ、左腕をリゲルさんの背中に回して。

 その勢いで、括れてるお腹も触らせて貰って。

 

「ほんとにっ、ほんとにっ恥ずかしいから!」

「そんな事を言いつつも抵抗しないなんて、全くもって可愛いなぁ。」

「うぅ…何回も可愛いって言われると…」

「三人共、ラブラブ。何か羨ましいな。」

 

 俺と二人のイチャ――じゃなくて、俺が何れだけ二人に好意を抱いているかを目の前で見つめるソトゥ子さん。

 人差し指を顎に当てながら何かを悩んでいるその姿は、恋する乙女の様に見える。

 少なくとも、俺の目にはそう映った。

 

「…もしかしてソトゥ子さん、誰かお好きな方が?」

「えっ!…うん、と……いるけど、その人の事が好きな女性が何人かいて…。」

 

 おぉ、ハーレム野郎か?

 へっきーなら間違いなく其奴を後ろから刺し殺しに行きそうだな。

 だが、話し手のソトゥ子さんの顔が赤くなっているという事は本当に好きなんだな。

 良かったじゃないか、そのハーレム野郎。

 こんな美人さんから好かれるなんて。

 ソトゥ子さんだけを見てあげれば素晴らしいハッピーエンドにでもなるんじゃないか?

 そのハーレム野郎。

 

(ハーレムハーレム言ってるけどな、おまえも人の事は言えないからな?)

 

 うっ。

 何処からかへっきーの声が。

 

 違うもんね!

 二人に対しては俺が唯、片想いをしているだけだもんね!

 一方的にする片想いの辛さと苦しみを教えてやろうかぁ!

 

(本当に片想いか?)

 

…は?

 

(お前が唯、片想いをしているだけなのかって。)

 

 当たり前だ。

 

(んじゃ、何で二人と抱き合いとかしてんの?)

 

 それは…二人が無理をしてでも俺に合わせてくれているだけで。

 

(あづみって子に関しては自らお前に近付いてったぞ。これをどう否定するんだ。)

 

………。

 

「…あ、そうだ。三人はそれぞれ、お互いをどう認識してるの?如何にも恋人同士に――」

「そっそれは、まだ分からなくて!」

「そうね!まだ分からないわよね!大祐もそう想うでしょ?」

「………」

 

 馬鹿だ。

 俺はなんて馬鹿なんだ。

 救いようのないアホだ。

 彼女達の本心すら聞かないで何て事をしているんだ。

 俺が勝手に手を出して、二人がそれに合わせてくれていただけじゃないか。

 何が抵抗しないなんてだよ。

 リゲルさんは空気を読んで抵抗しなかっただけだ。

 そうだ、きっとそうに違いない。

 これは俺の思い込みじゃなく、事実だ。

 事実…だ。

 

 急な罪悪感に苛まれた俺は、そっとリゲルさんから手を離す。

 

「大祐…どうかし――」

「二人とも、本当に申し訳御座いませんでした。二人の本心を聞きもせずに様々な愚行をしてしまって。」

「大祐くん…?」

「一体何があったの?少し卒然過ぎるわよ。」

 

 そうだな。

 この世界に転移してからというもの、俺は何だか情緒不安定過ぎるな。

 自分でもどうしたのか分からない。

 一度落ち着かなければ。

 

「…二人に、あづみさんとリゲルさんに質問です。僕の事をどう思っていますか?」

「えっ…大祐くん?」

「…本当に、どうしたのかしら。」

 

 こんな事、今此処で話すべきでは無いと思う。

 でも、もし二人が嫌と感じていたのであればその時は全力の謝罪をせねばなるまい。

 悪いのは全て俺なのだから。

 

 そして、俺もしっかり本心を伝えよう。

 男なら先に言わなければ情けない。

…よし。

 

「俺は二人の事が――」

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

 目が覚めると、相変わらず暗い景色が目に映る。

 そこには俺が一人だけ存在していた。

 ルクスリアさんは何時も通り何処かへ出掛けているようだ。

 気にする事は無い。

 

 それよりも、俺は先程まで夢の世界に居た筈だ。

 唐突に現実世界へと戻された感覚。

 いや、実際に戻されたのだろう。

 何故かは分からないが。

 と、頭の中に誰かの声が響いてくる。

 

(リス・ソトゥ子です。さっきのはごめんなさい。でも、あのまま話を続けていれば大祐くんは周りが見えていない状況で大事な事を喋ってしまうところだったから。…現実でちゃんと二人に伝えた方が良い。という理由で強制退場させて貰いました。)

 

…あぁ、そうだ。

 俺は周りが見えていない状態で話を続けていたんだな。

 目の前にソトゥ子さんが居たのにも関わらず。

 彼女達にとっては迷惑だっただろうな。

 ソトゥ子さんにはまた会った時に謝ろう。

 あづみさんとリゲルさんには直接、会って話の続きをさせて貰おう。

 

「…はぁ。」

 

 上を向き、両手を顔に当て深く後悔する。

 そして溜め息。

 自分の過ちに気付くのが遅いとこんな事になるんだな。

 早いとこ二人に謝罪しよう。

 

 確か、あづみさんとリゲルさんは緑の世界一歩手前って言ってたな。

 となると、目的地は恐らく緑の世界。

 俺も其方に向かえば何れ二人に会える。

…多分。

 だが、そうとなれば早速移動したい。

 今が何時かは把握できないが、大体なら――

 

 大体すら分からねぇや。

 携帯すら持っていないこの悲しみ。

 酷い話だよな。

 

 まぁ、それは良いとして。

 取り敢えずルクスリアさんが戻ってくるまで寝ながら待つか。

 また事件に巻き込まれない事を願うよ。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

「ん…あ、ルクスリアさん。」

「お早う大祐くん。しっかり眠れたかしら?」

「…はい。」

 

 二度寝から目を覚ますと、ルクスリアさんが俺の寝顔を覗き込んでいた。

 この状況には未だに慣れない。

 起きた瞬間に映る物が二つの大きな物体と美人の顔なんて。

 一週間経とうが慣れないものは慣れない。

 こういう耐性は高くないのだ。

 

 夢の世界ではノリノリで二人を抱き締めてたけど。

 それとこれとは違うっていうか…攻める時はイケイケだけど、受けは弱いみたいな。

 正論噛まして自分を守る位しか出来ない。

 相手から積極的に来られると日和るという。

 戦闘スタイルと似て非なる物だな。

 

 そう言えば、そろそろ新しいバトルドレスが解放されないかな。

 扱うのは確かに大変だけど、自分の好きな機体が解放されると感情が思わず高ぶる。

 そして、使えるバトルドレスが増える程二人を守って――

 

…二人はこんな俺が邪魔だったりしないのかな。

 というか、俺は彼女達に執着し過ぎてるのでは?

 あづみさんとリゲルさんを守りたいと思う気持ちと、好きという気持ちは全くの別物だ。

 そこら辺をちゃんと弁えないと。

 あの時強制退場を選んでくれたソトゥ子さんには感謝だな。

 

「大祐くん、何だか元気ないわね。お姉さんが癒してあげる♪」

「ルクスリアさん…」

「なーに?」

「其処にいる女の子に関して何か教えて貰えません?」

「やっぱり気になっちゃった?」

「そりゃ勿論。」

 

 二人に早く会いたい、ルクスリアさんの膝枕に抵抗力が無い。

 そんな事よりも気になった物が一つ。

 俺とルクスリアさんから少し離れた場所に、ちょこんと座っている女の子。

 俺の意識はその子に奪われた。

 

「あの女の子は?」

「気になったから拐って来たの。」

「さらっ…!?あの子、Z/Xですよね…?」

「当たり前じゃない。幾ら私でも人間は拐ったりしないわ。…それに、拐ったって言うのは間違い。連れてきたって方が正しいかな。」

「連れてきた…。」

 

 にしては少し怯えてないか、あの子。

 気のせいか。

 外の景色を見ながらぽかーんとしてるけど。

 ここは黒の世界だからあまり良い景色ではないぞ。

 なんて言葉を投げ掛けたくなる。

 

 ルクスリアさんが連れてきたという女の子をジーっとみていると、ふっと此方を向いた。

 そして逸らされた。

…じゃあ何で此方を向いたのだろう。

 相手方も気になったのかな?

 俺とかルクスリアさんの事。

 

 と、再度此方を向きながら口を開いた。

 

「…あ、あの。」

「ん?どうかしたのかい。」

「えっと、これから何処へ行くの…?」

 

 まさか、俺とルクスリアさんの目的を知らないで来たのか?

 せめて何処其処に行くとか伝えておこうよ、ルクスリアさん。

 俺が言えないけどさ。

 

「と、取り敢えず、君の名前を教えてくれないかな。」

「私の名前…?」

「そう。名前。」

「…バンシー。」

「それが君の…俺の好きな名前だな。」

「すっ好き…!?そんな事を急に言われても…」

 

 ありゃりゃ?

 彼女何か勘違いしてるぞ?

 俺は「バンシー」という名前が好きであって、彼女を好きとは――

 

 見た目なら凄い好みだけど。

 

 黒いロングヘアーに、髪型なのか生えているのか分からない獣耳。

 更に頭にはピンク、ブラックで色付いたカチューシャ?を付けており、紫色の薔薇の髪飾りを添えている。

 瞳は透き通る様に綺麗な赤。

 可愛らしい顔立ちをしている。

 

 衣服は全体的に黒、所々に紫と暗い色が目立つ。

 というかその二色しかない。

 強いて言うなら白も少し、ほんの少しだけ混ざっている。

 

 如何にもドレス、みたいな衣装を身に付けている。

 上半身と下半身が一緒くたになっている、本当にドレスの様な衣服だ。

 腕は両方とも露出し、左腕には菱形を何個も繋げた感じの模様が見える。

 右腕には何も無し。

 足も、特に気になる点は無い。

 言うなればニーソじゃないくらいか。

 その他に気になる点は一つだけある。

 

 何故か彼女、両手首と両足首に枷らしき物を付けている。

 鎖で繋がれている訳では無いのだが、一体どうして。

 とてもファッションには思えない。

 

 うむ、至極気になる。

 

「えと…そんなに見られると、恥ずかしい…」

「こら、大祐くん。女性をあまりじろじろ見るのは駄目って言ったでしょ?」

「俺、ルクスリアさんから何も言われてませんけど。……御免ね。気分を害したのなら謝るよ。」

「ううん、そうじゃなくて。唯恥ずかしかったの…。」

 

 そう言いながら彼女は、再度俺から顔を背けた。

…別に嫌われてる訳じゃないよね。

 いや、嫌われてるなら嫌われてるで良いんだけどさ。

 心に浅い傷を負うだけで。

 身体的には何も問題はない。

 

「ま、兎に角。これからは彼女も一緒に行動するから、宜しくね大祐くん♪」

「はい。……って、俺!?」

「勿論に決まってるじゃない。その子の事は大祐くんの責任で、ね?」

「いや、ね?じゃないですよ!何で俺が――」

「迷惑だったら、私は何処か行くから大丈夫…。」

「バンシー…ちゃん。」

 

 何があったかは知らないが、こんな健気な女の子を俺は見捨てるのか?

 自分の旅には邪魔だから、必要ないからと切り捨てるのか?

 如何にも困ってそうなバンシーちゃんを。

 

…Z/Xとは言え、彼女はひ弱そうだ。

 もし他のZ/Xに襲われたりなんかしたら間違い無く俺の責任だ。

 例え自分に責任が無くとも、バンシーちゃんを見捨てるなんてしない。

 

「…分かりました。これから宜しくね、バンシーちゃん。」

「うん…!」

「流石大祐くん♪私の大祐――」

「僕はルクスリアさんの物じゃありませんからね。」

 

 そう言うとルクスリアさんは、頬を膨らませながらつまらなそうな表情を見せてきた。

 だって貴女が押し付けて来たんじゃないですか。

 関係無いけど。

 

…なんて事はもう良いや。

 何時も通りのルクスリアさんでいてくれた方が安心する。

 寧ろ、彼女が真面目な時って…あったよな?

 あった、よな?

 

 そんな疑惑を抱えつつも、新しくバンシーちゃんを加えた旅がスタートした。

 

…あの時のへっきー、完全に念話してきてたよな?

 親友さんの謎は深まるばかりだった。

 そして、一番大事な話を二人に喋れなかった事を後悔する俺だった。

 

‐‐‐

 




森山碧の軌跡

第一章
そうだ、白の世界へ行こう。

終了

「…ちょい待てや!ふざけるなぁぁぁ!!!」
by森山碧
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