Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第二十六話: 緑の世界へ

 目的地は緑の世界。

 此処、黒の世界と丁度隣接している世界だ。

 徒歩移動だが、あまりそう遠くはないだろう。

 だが、急ぎと言えば急ぎだ。

 緑の世界には俺の大切な二人の人物が向かっていると知り。

 一度、離れ離れになってしまったその二人と会う為に緑の世界へ赴く。

 

 早いとこ…あづみさんとリゲルさんに会いたい。

 二人には話したい事が山程ある。

 バトルドレスの機能が幾つか追加、戦力の増強が出来た事。

 新しくルクスリアさんとバンシーちゃんを仲間に出来た事。

 俺の[リソース放出能力]で、あづみさんのリソース症候群が抑えられる事。

…俺が二人に好意を抱き、出会った時から好きだった事。

 俺の本心をしっかりと伝え、二人の本心もちゃんと聞く事。

 

 他にも色々と話したいが、それ以外は正直他愛もない話ばかりだ。

 三人で笑って、楽しんで、そんな生活を夢に見て。

 だからこそ、あづみさんとリゲルさんを討ちに来る奴等からは俺が全力で守り通す。

 それが誰であろうと、二人の道を邪魔しようとするならば一切の躊躇無く切り捨てる。

 そこに俺の心の有無なんて物はない。

 何が何でも二人を幸せな世界へと導く。

 

 それが、俺の使命なのだから。

 

「…大祐くん、何だか思い詰めてる。どうかしたの?」

「最近の大祐くんは何時もこんな感じだから、放っておいても大丈夫だと思う。それでも心配なら、彼を安心させてあげれば良いわ。」

「安心させて…私に出来るかな。」

「やってみなければ分からないわよ。私も協力するからっ♪」

 

 俺の使命…?

 本当にそれが俺の使命なのか?

 確かに二人の幸せが俺の幸せでもある。

 なら彼女達の幸福を実現させて。

 俺の幸も実現出来て万々歳、的な。

 しかし、二人の望む幸せとは一体何なのか。

 そこを本人達に聞かないと話は進まない。

 先ずは二人との再会を果たし、且つ話し合いを成功させれば完璧だ。

 彼女達を信じる心があれば恐れる物は何もない!

 

「けど…どうやったら安堵してくれるかな…。」

「考えるよりも先ず実行!さぁ、歩いている大祐くんを後ろから襲うわよ♪」

「えぇっ…!?」

 

 うん、何だかやる気が出てきたぞ。

 本心的にはそこに俺も交ぜてくれたり…なんて。

 やっぱり、ずっと三人で居たい気持ちが大きいな。

 知ってはいたが人間の感情には抗えない。

 が、人って不思議なもんでその感情を楽しんでいたりもする。

 時には葛藤し、時には喜怒哀楽。

 面白いよな。

 

…あ?

 なんか違う話になったぞ。

 何で人間の感情の話に持っていった?

 そんな事よりも、あづみさんとリゲルさんの素晴らしさを語らなければ話は始まらない。

 進まない。

 

 取り敢えず二人な素晴らしさを語る上で外せないのは彼女達の魅力。

 二人共可愛いし、美しい。

 汚してはならない存在だ。

 しかし、可愛いや美しい等では俺の感情は許さない。

 もっとこう…なんて言うのかな…。

 

 あづみさんが天使で、リゲルさんが女神みたいな――

 

「それっ♪」

「ご、ごめんなさいっ!」

「うぇっ!?」

 

 あづみさんとリゲルさんの天使、女神っぷりを此れから語ろうとした瞬間。

 唐突に後ろから押された。

 片方の押した理由は分かるが、なんでバンシーちゃんも一緒に押したの?

 あまりの不意打ちに俺は反応仕切れず、そのまま体は前に倒れる。

 その勢いで地面に顔面を――

 

「おっ…と。」

 

 ぶつけるかと思ったが、今度は両腕を掴まれ俺の体はストップした。

 因みに顔面は地面すれすれだった。

 

「…どうしたんですか、急に。」

「大祐くんが呆けてるから、驚かそうと思って。そんなに思い詰めても良い事は無いわよ。」

「ルクスリアさん…」

「あ、後ね。バンシーちゃんが話をしたいって。」

「えっ…と」

「バンシーちゃんが?」

 

 会ってから少ししか時間は経っていない。

 それにも関わらず俺に話とは?

…まぁ、突然ルクスリアさんに連れて来られれば聞きたい事も色々とあるよな。

 だが、それは俺に聞く事では無いような気がするぞ。

 ルクスリアさんに直接質問すれば良いよね。

 兎に角、一度体勢を立て直そう。

 話はそれからだ。

 

「あの…えと…」

「…」

「うん、と…大祐くんは――」

「…バンシーちゃん。」

「はっはい!」

「焦らなくても大丈夫だよ。自分のペースで話してくれても、何の問題も無いからさ。」

「う、うん…」

 

 自分の気持ちを即座に伝えなければ。

 彼女の表情からは、そんな焦りが見て取れた。

 しかし、焦る必要など何一つない。

 急ぎの用事なのは間違いないが、それとこれとは話が別だ。

 相手が何か言いたそうにしていれば、足を止めて耳を傾けて上げるのが当然。

 

 足を止めるかどうかは本人次第だが。

 

「…大祐くん。」

「なんだい?バンシーちゃん。」

「…こっ此れから一緒に行動するって事は…大祐くんと私はパートナー同士って事…だよね。」

「何か不満があったかな?だとしたら謝る――」

「違うのっ。…只、パートナー同士ならお互いの心の中にある悩みを…話し合っても良いんじゃないかなって…。」

「バンシーちゃんは、俺の悩みを聞きたいの?俺個人の感情が溢れんばかりの話になるけど。」

 

 するとバンシーちゃんは俺の目の前に歩いてきた。

 そして恥ずかしそうに両手を後ろに回し。

 

「それで大祐くんの心が軽くなるなら…是非、聞きたいな。」

 

 両手を自身の胸の前で握り、俺に「本気」という意思を見せる。

 

…パートナー同士だから、思い詰めている俺を助けねばとかでも思っているのかな。

 バンシーちゃんは凄く献身的な女の子だ。

 しかも、俺を最早パートナー認識してくれている。

 俺も彼女をパートナーとして、しっかりと認識しなければなるまいな。

 

 手始めに、此れまでの体験談でも語ろうとするか。

 転移してきたというのは抜きで。

 初めてあづみさんとリゲルさんに出会った時の事。

 そこからは色々な思い出(恐怖)とか、自分のバトルドレスの事等。

 流石に、二人が大好きで堪らないというのは黙っておこう。

 相手方は関係無いが、此方側の勝手な理由でね。

 仲間になった女の子に対して「俺、凄い好きな女性が二人いるんだ」って、可笑しくね?

 何で二股宣言を堂々と話してるの。

 しかも女の子の目の前で。

 

…何だか話が逸れたな。

 さっきの話はさておいて、今まで俺が学んだ事を語ろう。

 時間もある訳じゃないしな。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

「…じゃあ、大祐くんはその二人の女性と会う為に?」

「うん、そうなるかな。」

「そっか…会えると良いね。」

「本当は今直ぐにでも彼女達の顔が見たい。笑顔が。苦痛や悲愴といった表情は見たくない…な。」

「大祐くんがその二人に会えるように、私も頑張る…!」

「有り難ね、バンシーちゃん。」

 

 俺の言葉に、バンシーちゃんはパートナーとして決起した様に見えた。

 だが、彼女にも無理だけはして欲しくない。

 バンシーちゃんの戦闘能力が何れ程の物かは分からないが、例え強かろうが弱かろうが戦うのは俺だけで良い。

 態々、女の子の綺麗な手を汚させるなんてしたくないから。

 が、その為には俺自身の力が必要だ。

 早く[リソース放出能力]や『ゼロシステム』、『TRANS-AM』等の特殊能力を制御せねば。

 今の俺に似合う言葉と言えば、宝の持ち腐れだ。

 こんなに素晴らしい能力を持ち得ているのに使いきれていない。

 勿体無いったらありゃしない。

 磨けば光る能力ばっかりなのに。

 何だか自分にがっかりする。

 

 だが、それと同時にやる気も出てきた。

 先の見えない強さがある程、その力を手に入れたくなる。

 制御下に置きたくなる。

 支配したくなる。

 

 すれば、二人を守る事が出来るのだ。

 俺の本来の望みを叶える事だって出来る。

 二人の幸せが俺の幸せ。

 絶対に制御し、自分の力の一部根源として使わせてもらう。

 

 だが、この能力は全てどう扱うか分かっていない。

 何時もはパッと勘で使うが、あの感覚を体は覚えていない。

 真似をしようとすると失敗は確定。

 最初に得た特殊能力『SEED』ですら、解放条件が分かってない。

 一体どういう状況下に置かれれば発動するのか…。

 

 第一に考えるべきはこれだな。

 

「ね〜え〜。バンシーちゃんと仲良くするのは凄く良い事だけど、私と態度の差が酷くない?」

「いやいや、別に普通ですけど。」

「そう?…だって、最近大祐くんが構ってくれないから…。」

「省くつもりも貶すつもりも、況してや無視するつもりもありません。只、ちょっと悩みが多くて…構ってあげれなくてすみませんね、ルクスリアさん。」

「じゃあ、今構って♪」

 

 先程まで、本当に寂しそうな顔をしていたのに今構って♪って…。

 確かに最近は反応すらしてあげられなかった、気がする。

 実際はどうか忘れたけど。

 

 しかし、このまま構ってあげない状態が続くと良からぬ方向に進みそうで嫌だ。

 その前に対処をしなければ。

 頭でもよしよししてあげれば満足するかな。

 それだけじゃ足りないとか言われそうだが、まぁその時はその時だ。

 それに、寂しかったから構って欲しく――

 いや、違う。

 ルクスリアさんに限ってそれは無い。

 とも言えないが、ある可能性の方が薄いだろう。

 正しくは「暇だから」になるな。

 暇潰しに使われるってのはどうなんだ?

 

「…で、何をしてあげれば良いんですか?」

「そうねぇ…本当は大祐くんと愛の」

「さぁ、バンシーちゃん。早く緑の世界に行こうか。」

「えっ…う、うん。」

「今完璧に無視したっ!ねーねー…少しで良いから〜。」

 

 丸で子供の様に俺の体へと抱き着きにくるルクスリアさん。

 見た目の大人女性らしき雰囲気とは違い、内面は凄く幼い感じだ。

 甘えられて、構って攻撃をされて。

 俺としては早く緑の世界に辿り着きたいのだが。

 

 バンシーちゃんはルクスリアさんと対照的で、凄く静かで大人しい。

 偶に此方を見ては目を逸らし、また見ては目を逸らすの繰り返し。

 何だか静観されている気分だ。

 バンシーちゃん側としては、分からない事があるから俺に聞きたいのだろう。

 だが、それを上手く切り出せずにチラチラと此方を見ては目を逸らす。

 何とも可愛い。

 

「…あの、ルクスリアさん。抱き着くのは構いませんが、お互いの顔まで近付けるのは止めません?」

「あら。態とらしく胸を押し付けていたのに、其方に意識が行っちゃうの?」

「胸も確かに気になりましたが……はぁ、俺の負けですね。」

 

 一体何の勝負をしていたのか。

 自分ですら分かっていなかったが、恐らくは折れたら負けとでも思っていたのだろう。

 俺は、心の何処かで、いつの間にか。

 

 しかし、負けは負けだ。

 自分に負けたのだ。

 ここは素直にルクスリアさんと遊んであげよう。

 勿論、心の壁を無くす為にバンシーちゃんとも。

 

 俺はルクスリアさんを一度引き剥がし、左に立たせる。

 そのまま左手で擦る様に頭を撫で始め。

 彼女の反応を伺――

 

「ふふっ。大祐くんから遊んでくれるのって、初めてかしら?」

「別に初めて…初めて?」

「記憶に無いという事はそうなんじゃない?もっと撫でて♪」

「それは良いんですが。バンシーちゃん、ちょっと此方に来てくれるかな。」

「私…?」

 

 ルクスリアさんは嬉しそうに、バンシーちゃんは首を傾げながら。

 取り敢えずバンシーちゃんに近くまで寄ってきて貰う。

 少し不安気な彼女を安心させたい。

 という理由で、ルクスリアさんの頭を撫でながらバンシーちゃんと会話を始める。

 

「えっと、大祐くん…?」

「バンシーちゃん。君のして欲しい事、聞きたい事は何かある?良ければ遠慮なく聞いてね。」

「…それじゃ、一つだけ。大祐くんの隣を歩いても良いの…かな。」

「良いも何も、お好きにどうぞ?」

 

 ちょっと意外な要望だった。

 気付けば、バンシーちゃんはずっと俺の後ろを歩いていた。

 何故かは知らないが、彼女なりに何か思う所があったのだろう。

 俺は何も気にしていないが。

 

 バンシーちゃんはルクスリアさんと逆の右側に立ち、再度歩き始める。

 これで満足してくれているのかな…。

 バンシーちゃんが良いなら良いんだけど。

 

 と、ルクスリアさんが急に俺の左手を元の位置に戻し。

 その左腕を抱き締めて来た。

 

「けど、やっぱりこれが良いかな。バンシーちゃんも、大祐くんを抱き締めれば良いのに。」

「ふぇ…!?」

「ルクスリアさん。興味も無い人を抱き締めてどうするんですか。」

「だって、さっきから大祐くんをチラチラ見てるから。私みたいにすれば良いのにって思って♪」

「はぁ……。」

 

 相変わらずのルクスリアさんクオリティに、思わず溜め息を吐いてしまう。

 まぁ、それが彼女の魅力でもあるんだろうけどさ。

 俺の精神は疲労していくばかりだ。

 

 ふと、先程よりもバンシーちゃんが近付いて来たような気がする。

 さっきまで人一人分位空いていたのに、いつの間にか埋まっていた。

 もしかしたら、バンシーちゃんは自分の願いを伝えるのが怖いのかもしれない。

 此れからはそれを、少しずつで良いから解いていってあげないと。

 やはりまだ不安ではあるだろうから。

 

 取り敢えず、緑の世界へ早く向かおう。

 バンシーちゃんを何で連れてきたかは、後々質問責めにさせてもらうか。

 覚悟しといて下さいね、ルクスリアさん。

 

‐‐‐

 




森山碧の軌跡

第二章
可愛い天使、襲ったろか。

森山碧は白の世界に着くや否や、上柚木綾瀬と別の方向へ向かった。
別れ際に「俺の親友殺すなよー」と伝えながら。
上柚木綾瀬と別れた森山碧は、白の世界を放浪し始める。

「別に見張りなんて居なくても大丈夫だろ。俺は俺の好きにさせて貰うぜ。」

歩きながらぶつぶつと喋り、何かを考える森山碧。
五分程歩くと、目の前に羽が生えている天使を見つける。
この世界では「エンジェル」と呼ばれる種族。
森山碧はそのエンジェルを視界に入れた瞬間、猛スピードで近付いていく。

「そこの可愛いエンジェルさん!どうかしたのかい?」
「あっ貴方は…?」
「俺は森山――通りすがりの只の人間さっ!(キラッ)」
「………」

そのエンジェルは冷たい視線を森山碧に喰らわせた。

―――

(あの時、通りすがりのブサメンとでも言っておけば良かったかなぁ。)
by森山碧
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