Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第二話: バトルドレス

…体感、五秒程だろうか。

 眩い光が俺を包み込んだ後、目を開けると元の世界に戻っていた。

 いや、正確には元の世界じゃ無いが。

 異世界…Z/Xの世界に戻っていたと言った方が正しいだろう。

 

 俺は即座に自分の身に何があったか確かめる。

 

 全体的に機械の様な物に包まれた体。

 着ている服はそのままなので、機械の様な物を装着した体という方が正しい。

 手には拳銃の一回り程大きなライフルを持ち、背中には赤と黒で色付いた翼の様な物を背負っている。

 

 後ろのウェポンラックには二つの武器が収納されており…と、目視出来るのはこれ位。

 だが。

 

「これは…まさか…!」

 

 俺はすぐに分かった。

ㅤこれがバトルドレスだという事を。

 しかも、モチーフは俺の大好きな[デスティニーガンダム]という事も。

 

 バトルドレスを装着しても体の大きさは変わっていない。

 部分部分で装甲があったり無かったりなので、バトルドレスと呼んで間違いないだろう。

 顔には装甲が付いていないが、目の下に直接赤いラインが入っている。

ㅤ赤い涙を流しているかの様な、デスティニーの特徴の一つだ。

 

 まるでリゲルさんのバトルドレスみたいな…。

 

(…ん?リゲルさん?)

 

 あれ、と疑問に思った瞬間ふと我に返る。

 何処からか声が聞こえて来た。

 焦り、怒りという感情の混じった声が。

 

 その声がした方向を見ると二人の女性が、球体の様な物のアームに捕まってしまっていた。

 必死に互いの名前を呼び合い、そのアームの中で抵抗している。

 

『あづみ!貴女だけでも逃がさなければ…!』

『嫌だよリゲル!私だけなんて…!』

 

 女性一人に少女一人、嘆きに似た声を出しているが彼女達にはどうする事も出来ない。

 それを見た俺は、何故このバトルドレスを装着するに至ったのかを思い出す。

 

…Z/Xの世界に転移してきた事。

 あの球体の様な物に左足を裂かれた事。

 そこで、あづみさんとリゲルさんが助けてくれた事。

 敵に囲まれてしまい、あづみさんの危機を助ける為に左足を完全に失った事。

 大量出血の中、唯一の希望を掴むかの如く瓦礫の中の光に触れた事。

 そして今現在、その光に触れた事によりバトルドレスを手に入れた事。

 

 こうして思い出すと、俺は二人には一つの借りが出来ている。

 二人に助けて貰わねば俺の命は無かったのだから。

ㅤ借りは…返さねば。

 

「今度は俺の番だな…行くぞ、デスティニー」

 

 俺の声に応える様に、バトルドレスが起動する。

 

 回復機能の無いデスティニーだが、失った左足は元通りになっていた。

ㅤどういう原理で回復したのか分からないが、まぁ、後でちゃんと調べれば良いだろう。

 調べられれば、だが。

 

「…デスティニー、目標の救出を開始する!」

 

 兎に角、今はバトルドレスどうこう言っている暇は無い。

 俺は翼を広げ、限界までブーストを吹かしながら球体の群へと近付く。

 囲んでいる球体の脇をスルスルと抜け、一瞬で群の中心、あづみさんとリゲルさんを捕まえている二機の球体の元まで移動完了。

 

「強襲する!」

 

 そこに着くや否や、背中のウェポンラックからアロンダイトを取り出し、リゲルさんを捕らえている球体のアームを叩き切る。

 一瞬の出来事に混乱しながらも、リゲルさんは体勢を立て直し地面に着地。

 

「もう一つ…!」

 

 リゲルさんが着地する頃にはもう一体の球体のアームも切り落とし、あづみさんも救出完了した。

 

「ふあっ…?」

 

 あづみさんは少し高い高度に捕まえられていたので、申し訳無いがお姫様抱っこでキャッチ。

 一瞬、何が起きたのか分からなくなったあづみさんが可愛い声を出す。

 

「えっと…貴方はさっき一緒にいた…」

「すみません、今は二人の安全の確保です。…リゲルさん!」

 

 直ぐ様リゲルさんにキャッチ&リリース。

 もうちょっとお姫様抱っこしたかったな…。

 という気持ちは封印。

 今は生き残る事を最優先に考えねば。

 

「あづみ!…っと」

 

 あづみさんをナイスキャッチしたリゲルさん。

 互いに抱き締め合い、泣いている。

 

「良かった…あづみが無事で…」

「リゲル…もう離れたく無いよ…!」

「ごめんなさい、あづみ…!」

 

 何とも微笑ましい光景。

 ずっと見ていたい。

 

 しかしながら今はそんな暇は無い。

 既に周りにいた球体が、俺達を囲っている。

 二人には悪いが後でにして貰おう。

 

 俺はビームライフルを何発か撃ち、敵の注意を引いて二人に近付かせない様にする。

 自分が生き残らなければという気持ちもあるが、それ以上に。

 

「二人共逃げて下さい!今なら行けます!!」

「貴方は…」

 

 二人を逃がしてあげなきゃという気持ちで一杯だった。

 

 俺がバトルドレスを装着している事に、驚きを隠せないリゲルさん。

 先程まで貧弱だった人間が、急にバトルドレスという力を得る。

…それは、Z/Xの世界にとって常識はずれな出来事だ。

 

 前世の俺は趣味として、且つ結構ガチでZ/Xをやっていたのでこの世界の設定位分かる。

 あの球体は分からないが…。

 一つだけ言える事は、[奇術機械カンジュラー]というキラーマシーンに酷似している。

 フォルムはそのままだが、付けている武装が地味に違う。

 恐らく、戦闘用として改良されたカンジュラーだ。

 元が捕縛用と、良いバランスが取れている。

 最初出会ってしまった時に気付かなかった時点で、認識としてはその程度だったという事だろう。

 一体の戦闘力はあまり高く無いが、数が集まると厄介だ。

…今、体験して分かった。

 

「俺がこいつらを相手してる間に…!」

 

 その言葉にリゲルさんは苦い表情をした。

 あづみさんと自分だけ逃げるか、それともこの場所で俺と一緒に戦うか。

 

 無論、前者だろう。

 

 自分達の…第一にあづみさんの安全を確保したいリゲルさんなら、迷わず[逃げる]選択肢を取るに違いない。

 あづみさんは戦う事が出来ないという理由もある。

 二人が逃げる為の隙は何度か作っているが…。

 

 何で逃げてくれない。

 

 そして何故か、リゲルさんはあづみさんの表情を伺っていた。

 

「あづみさん…リゲルさん…?」

 

 どうして逃げてくれないのか疑問に思った俺は、二人の名前を口にする。

 次の瞬間、あづみさんが頷いた。

 リゲルさんも頷いた。

 互いに向かい合って。

 THE・アイコンタクト。

 心が通じあっている証拠だ。

 二人はそのまま俺の方を向き、二言。

 

「貴方を…援護させて貰うわ」

「!?」

「リゲルが戦うなら…私も近くにいなきゃ…!」

「ファッ!?」

 

…ちょちょちょ待っていな!

 何で一緒に戦う事前提で話しているの!?

 

「あの…俺は二人を逃がす為に戦って…おい、止めろ!今は二人と話をしてるから!」

 

 捕縛用カンジュラーのアームが飛んで来たので斬る。

 

「誤解しないで。貴方と共闘した方が安全と思っただけよ」

「でも…」

「貴方は私とリゲルを助けてくれた。…駄目、かな…?」

 

 全然駄目じゃ無いです。

 寧ろ有り難いです。

 そういう言葉が思わず口から出てきそうになる。

ㅤだが、こうして迷っている時間は無い。

 

 ここまで言われて、断れる事なんか出来ない。

ㅤ俺は心の中で決めた。

 

 よし…二人と共闘しよう、と。

 

 あづみさんとリゲルさん、二人と一緒に戦える事が嬉しい…けど、確実を取るならばやはり逃げた方が…。

 いや。

 それなら俺が守ってあげれば良いんだ。

 何も、難しく考える必要は無い。

 好きな人を守るのは当然だ。

 それに、二人と知り合う事で何かメリットがあるかもしれない。

 今だけでもメリットの領域を越しているのは事実だが。

 

「…了解しました」

 

 俺にとっては苦渋の選択、と言った感じか。

 まぁ、勝てば良いんでしょ。

 要するに…勝てば官軍負ければ賊軍だ。

ㅤ絶対に負けられない、必ず勝つと今決めた。

 勿論二人を守りながらね。

 万が一犠牲になる覚悟位は出来てるつもりだし。

 

「それじゃ、行きますよ!」

「援護するわ!あづみ、下がるわよ」

「うん、分かった!」

 

 俺が前衛、リゲルさんが後衛、あづみさんがリゲルさんのリソース回復という陣形が完成した。

 先程まで俺に気を引いていたカンジュラー達が、リゲルさんとあづみさんを狙い始める。

 

 どうやら、俺に攻撃が当たらない事を察したのだろう。

…機械が察する事とかあるのか?

 もしかしたら学習するタイプの賢い奴等なのかもしれないな。

 

 俺はビームライフルからアロンダイトへと持ち替え、二人に近付くカンジュラーを優先し叩く。

 

「消えろ!」

 

 一体をアロンダイトで斬り倒し、もう一体をビームライフルで撃ち抜き。

 俺に近付くカンジュラーはリゲルさんが撃ち落とす。

 それで消費したリソースはあづみさんが回復。

 このまま続ければ余裕だな。

 

「邪魔だ!」

 

 急に目の前に出てきたカンジュラーに対し、アロンダイトで真っ二つ。

 更に二体同時に仕掛けて来るが…

 

「やらせない!」

 

 一体はリゲルさんが狙撃。

 後の一体は、両肩に装備されている[フラッシュエッジ2]を片方だけ取り出し、右斜め上から左斜め下に切る。

 

「あづみ、調子は大丈夫?」

「私よりもリゲルは?」

「あづみのお陰でまだまだ行けるわ!」

「えへへ…私も頑張なきゃ!」

 

 何とも余裕な会話が聞こえて来る。

 実際、俺も余裕だ。

 が、最後まで気を引き締めて行かねば。

 二人に万が一が起こらないように。

 

…しかし、リゲルさんは凄いな。

 あづみさんと喋りながらも全弾的中させている。

 今は[ソードスナイバーリゲル]さんの状態だろう。

 あづみさんを守りながら遠くの敵を撃ち抜く様は宛ら、レンジ∞を彷彿とさせる。

 

 その強力な援護を後ろに、二人に近付く敵を掃討していく。

 

「あと一体…!」

 

 20という数のカンジュラーも、残り一体となった。

 ていうか今更だが、どうやってそんな数量産していたんだろうか。

 戦闘とはまるで関係無いが。

 

「…これで最後か」

 

 いや、考えるのは後にしよう。

 俺は最後の一体にアロンダイトを振りかざす。

 決め台詞付きで。

 振りかざされたアロンダイトはカンジュラーに直撃。

 

…しなかった。

 

 目の前からカンジュラーがいなくなっている。

 

「…は?」

 

 訳が分からず、変な声が出てしまう。

 さっきまで目の前にいた筈のカンジュラーが…え?

 一体何処に。

 混乱する脳内を整理させ、一度落ち着かせる。

 残り一体でも放置させたくは無い。

 取り敢えずあづみさんとリゲルさんに合流を…。

 

「気を付けて!後ろに…!」

 

 二人の方を見た瞬間、リゲルさんの焦った声が聞こえて来た。

 

…それと同時に、俺の後ろに少し大きな影が現れる。

 その影の正体…暗殺用カンジュラーだ。

 カンジュラーシリーズが豊富過ぎて困る。

 どんだけカンジュラー好きなんだよ。

 ザク系統と似た様な感じの扱いなのか。

 

「危ないっ…!」

 

 あづみさんの声が周囲に響く。

 暗殺用カンジュラーは鎌の様な腕を一振り。

 次の瞬間、バチッと音がした。

 

「…へぇ!」

「凄い…」

 

 あづみさんとリゲルさんは驚いていた。

 常人…いや、恐らくリゲルさん程の反応速度で対処したからだ。

 ギリギリの所でもう片方のフラッシュエッジ2を構え、鎌を受け止める。

ㅤそう…俺はこいつが後ろにいる事、鎌で攻撃してくる事が分かっていた。

 それは何故か。

 

 実は俺がバトルドレスを装着した時に一つだけ、特殊な能力を憶えていた。

 

[情報演算処理能力]

 

 相手の行動を情報として取り入れ、その動きを演算、処理をするという名前まんまの能力。

 具体的には相手の行動を先読み出来る能力だ。

 未来が見えるのでは無く相手の行動を先読み出来るだけ。

 だが、その能力範囲は広く相手が見えていなくとも発動する。

 

 前世で頭を使ってばっかりいた俺の愚行が、こうした能力を開花させた…と、プラス思考で行きたい。

 デメリットは皆無。

ㅤ因みに先程の変な声を出したのは演技(迫真)。

 

「これで…!」

 

 左手のフラッシュエッジ2を出力増加させ、短かったサーベルをモンスター○ンターの太刀位の長さへと変える。

 

 そのビームサーベル一本だけで鎌を受けきり、右手のフラッシュエッジ2をカンジュラーの中心部分に突き刺す。

 それでも崩れ落ちないタフさを見せつけられ少しイラつく。

 俺にそんなタフさは無いぜ!

 刺されただけで死んじゃうぜ!

 羨ましいぜ…。

 

 そんなどうでも良い事を思いながらも、空いた右手でカンジュラーの核部分に触る。

 デスティニーガンダムの特徴、というか特殊武装。

 

[パルマフィオキーナ掌部ビーム砲]

 

 手で直に攻撃が行える武装。

 ビーム砲を構える動作無しに攻撃を行うことが可能で、ゼロ距離状態の相手を確実に破壊する。

 通称パルマ。

 

「敵対する者は殲滅する…!」

 

 俺はパルマを使い、暗殺用カンジュラーの核に思いっきり衝撃を与える。

 バキッという音が周りに響きカンジュラーは内部から破壊された。

 バラバラと崩れるカンジュラーを見て俺は唖然としてしまう。

 

「…威力たっか」

 

 そのままあづみさんとリゲルさんの方に振り返ると、二人共びっくりしていた。

 効果音を付けるなら、ポカーンという効果音が似合うだろう。

 

 俺は空中から地上に着地し、二人の近くに寄っていく。

 バトルドレスを解除するとその音で二人はハッと現実に返って来たみたいだ。

 

 リゲルさんは目の前の俺を見て警戒している。

 あづみさんはお礼を…。

 

「…あの…助けてくれて…ありが――」

「お…っと。あづみさん?」

「あづみ!?」

 

 急にフラフラとし始めたあづみさんは、前に向かって倒れてしまう。

 丁度良く目の前にいた俺は、あづみさんを受け止める。

 顔色がとても悪く、体が熱い。

 

「リゲルさん!あづみさんが…」

「あづみ!もしかして…!」

「はぁっ…はぁっ…」

 

 あづみさんの息が荒い。

 リゲルさんはこれまでに無い位に慌てている。

 この症状は…まさか。

 

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