Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

32 / 69
第三十一話: 心の奥に潜む者

 

‐‐‐

 

九条大祐視点(心中)

 

‐‐‐

 

 

 全てを壊滅させれば良い。

 二人の自由を奪う者達を。

 俺は壊乱を望む。

 二人の幸せを奪った青の世界の。

 

 いや、望むだけじゃ足りない。

 自らが実行しなければならないのだ。

 誰にも頼る事なんて出来ないんだ。

 信じ、頼れるのは自分だけ。

 自分以外になるならば、二人だけ。

 信用に値しない不確定要素になんぞ、必要無い。

 神頼み等持っての他。

 

…何よりも、この世界に神などいない。

 存在しない物に願い事なんて馬鹿馬鹿しい。

 自分が強ければ、例え神が存在していても関係無い。

 それを超す力さえあれば。

 この世は金、よく言えたもんだ。

 この世は力の間違いじゃないのか?

 力さえあれば誰をも屈服させれる。

 力さえあれば自分の好きなように行動出来る。

 力さえあれば守りたい物を守る事が出来る。

 

 あづみさんとリゲルさんを…二人を不幸へ導く奴等から守れる。

 最早理由等、その一つが事実となるだけでもういい。

 満足だ。

 

(君、力が欲しいの?)

 

 当たり前だ。

 力さえあれば…力さえあれば。

 非力な自分等いなくて良い。

 そんなの、何処にも要らない。

 俺は…強者となる自分だけを望む。

 それで二人が満足してくれるなら。

 二人の幸せを掴み取れるなら。

 三人でなくとも構わない。

 俺が犠牲になり、二人が何不自由無く生きていけるのであれば。

 それだけで良いんだ。

 俺は…満足なんだ。

 

(何でも壊滅に導ける力。そんな魅力的な力が欲しい?)

 

 壊滅?

 いや、違う。

 俺が望む力は、二人の幸せを掴む力だ。

 それ以外は何だって、どうだって良い。

 

 もしその壊滅の力を利用し、二人を最高の世界へ導けるのであれば話は別だが。

 

(じゃあ、自分にとって邪魔な存在を破壊し尽くせば良いんじゃないかな。)

 

 それも一理ある話。

…だが、俺にとって邪魔な存在ではなく、二人の幸せな世界を拒む奴等を壊滅に導いてしまえば良い。

 という話だな。

 

(そうそう、そゆことっ♪)

 

 誰がどうなってしまおうが知った事では無い。

 二人が望む世界が、俺の望む世界だ。

 その世界を確立させる為、邪魔者は消し去る。

 悪くない選択肢だ。

 

 沢山と言っていい程に存在する選択肢の中でも、中々良作じゃないか。

 話のストーリーとしては、最後に俺が死ぬパターンだったりな。

 力に溺れて二人に殺されて…それで二人は幸せな世界を築き上げ。

 素晴らしいストーリーだ。

 ここまで出来の良い話だと、俺が死ぬ…それは二人の幸せを意味する物なのか?

 何だか悲しい、そして寂しいな。

 自暴自棄もそろそろ止めようか。

 

 兎に角、俺に力をくれるのか?

 この非力で役立たずな俺に。

 

(何回も言わせないでくれるかな?さっきからそう伝えてるよ。一回聞いただけで答えを返してくれないと…私、苛立って君の事を殺しちゃうよ?)

 

 殺す…か。

 こんな意味不明な事で、更に見ず知らずの誰かさんに殺されるなんて、勘弁願いたいな。

 お前が何者かは分からないが、今は当てにするしかないよな。

 恐らくだが、このまま時間が経過すると。

 

(間違いなく、君は死ぬね。)

 

 だよな。

 見当は…ある程度だがついていた。

 左肩から右腹部、ざっくりと斬られている感覚は今でも続いている。

 不思議と痛みは無いのだが、違和感だけが残り続ける。

 今まで考えを張り巡らせていたせいで、気付いていなかった。

 ふと、不快感と気持ち悪さが目立ち始める。

 

(あーだめだめ。そのまま目を瞑ったままでいてっ。)

 

 考え事をしていると思わず目を瞑りたくなる。

 そんな衝動に駆られる事はありませんか?

 僕は大抵そうです。

 というか、今現在起きていますから。

 だから、今までずっと俺は何処で、どういう体勢でいるのか、把握出来ない。

 喋りかけてくるこの声の主すら、視界に映せない。

 ずっと真っ暗な世界に包まれている。

 体?浮遊感しか感じれない。

 そんな状況で目を開けようとした時、不意に後ろから両手を被された。

 

(君は今、何処にもいないよ?この世に存在していないから。)

 

 じゃあ、此処は何処なんだ?

 アンタは一体、誰なんだ?

 

(質問は一回ずつ。先ずは前者からね。此処が一体何処なのか。…言うまでもなく、君の心中。謂わば君の心の中だよ。うん、意味はまんまだね。)

 ん〜…?

 

 アンタが誰かは後で聞くとして、此処が俺の心中?

 心の中?

 確かに意味はまんまだけど、何でまた俺の心中に知らない誰かさんが侵入できちゃうの。

 可笑しくないか?

 

(君さ、随分と態度変わるね。怒りが湧いたと思ったら急に落ち着いて、更には疑惑をぶつけてくる。君の周りにいる人達は大変だねぇ。)

 

 こういう奴の事を情緒不安定っつーうんだよ。

 只、俺の周りにいる人が全員大変な事位、自分が一番分かっている。

 他人様にどうこう言われる必要は無いね。

 

(ふーん…ま、どうでも良いけどっ。)

 

 アンタは中々な自己中だな。

 自分の言いたい事だけ伝えて、後は知らん振りか?

 

(君が言えた事じゃない。自分の気持ちだけ伝えて、後はさよなら。)

 

…っ!それは…!

 

(ねぇねぇ、そろそろ自分で目を閉じててくれるかなぁ…。いい加減、後ろから目隠ししてあげるの辛いんだけど。体勢的に。)

 

…自分の気持ちだけ伝えて、相手の気持ちには答えない。

 一番自己中で最低なのは、俺自身じゃないか。

 やっぱり底辺の人間で間違いはないな。

 

(ねっ、もういいかな?)

 

 さっきから…離したいなら離せば良いじゃないか。

 アンタ恐らく女性だろ?

 喋り方に声、俺の瞼を覆っている手の細さに柔らかさ。

 そして先程から背中に当たってる二つの物。

 完璧に女性確定じゃないか。

 

 流石に女性がしてくる目隠しを、ずっと耐えられる程に心構えは出来てなくてね。

 寧ろ、さっさと離してくんないか?

 自分で目は閉じるからさ。

 

(やっと気付いたのっ!?もう…遅過ぎる。馬鹿なんじゃない?)

 

 寧ろ今更か。

 俺が馬鹿って気付くの遅くない?

 

(…もういい。別に言い合いをしに来た訳じゃないから。)

 

 そう言えば話を戻すが、何で俺の心の中に入り込めるんだ。

 理由と原理を教えてくれ。

 馬鹿でも分かるように、詳しくな。

 

(無理、教えれない。)

 

 はぁ?

 

(だって、それを教示しちゃったら私が誰か分かっちゃうじゃん。)

 

 まぁ…人では無い事は確かだな。

 

(案外、そうでも無いかもよっ♪)

 

 えぇ…。

 

(正直そこら辺は秘密かな。大丈夫、後々分かるって。)

 

 なら良いや。

 これ以上詮索するのも面倒だし。

 先にも後にも、解らずじまいが一番嫌でね。

 物事は、はっきりさせたいんだ。

 

(とか言いながらも、ここまで茹だり続けたのは誰かな?自業自得だよねぇ。)

 

 何で俺の恋心を知ってんのか気になるが、否定は出来ないな。

 あの状況で告白なんて、此方の酷薄だ。

 何でもかんでも上手く行くわけ無いよなぁ。

 

(…君さ、そんな見ず知らずの誰かさんに色んな事を話しちゃって良いの?)

 

 あぁ、かまへんかまへん。

 もう何がどうなっても知らん。

 実際、この気持ち悪さとアンタから解放されれば何だって良いよ。

 

(その代償として、君の大好きな二人の命を奪うって言ったら?)

 

…てめぇ、ふざけんのも大概にしろよ。

 俺の目的は二人の幸せを邪魔する奴等の排除だ。

 アンタが誰かは分からんが、発言次第ではアンタも排除対象と見なす。

 

 気を付けるんだ――

 

(君みたいな弱者に負ける訳無いじゃんっ。守りたい人を守れずに死んでいく、無様な君にはね。…それに、大口叩いてるけどこのままじゃ本当に死ぬよ。君がそう望むなら構わないけどね。)

 

…言いたい様に言ってくれるじゃねぇか。

 ニコニコと笑いながら喋ってる。

 そんな口調が俺としては苛々するんだが。

 

 只、まぁ俺が無様なのは認める。

 否定の仕様が無い。

 自ら肯定すらしてしまう程だ。

 

 何一つ、自分の事すら守れなかった。

 だから力が欲しいんだ。

 戦う為じゃない、守る為に。

 時には戦わなきゃ守れない事だって幾らでもあるだろう。

 その時は仕方無く戦うさ。

 二人を魔の手から助けられるなら。

 守り抜けるのなら。

 どんな代償でも支払ってやる。

 守る力を手に出来るなら。

 

(守り守るって少し五月蝿いなぁ。綺麗事は其所までにして、純粋に何が欲しいの?)

 

…力、だ。

 

(素直だね。それが一番だよ。あまりしつこいと…。)

 

 殺す、だろ?

 アンタの脳内、殺す事しか考えてないじゃん。

 別に関係無いけどさ。

 兎に角、アンタは俺に力をくれるのか?

 

(君が力を欲しているのは本心らしいから、そうだね。君に力を授けるよ。)

 有り難い。

 親切な誰かさんもいるもんだな。

 

(今回は特別だから良いけど、次からは代償を貰うからねっ。)

 

 あーはいはい。

 どうぞご勝手に。

 

(…分かった。じゃあ、今から君という人格は無くなるから。)

 

………はっ?

 

(君の中に眠るもう一人の君。それを呼び覚ますからね。覚悟した方が良いよっ?)

 

 ちょっと待て!

 純粋に力をくれるんじゃないのか!?

 

(勿論、授けるって言ったけどね?但し、私のやり方でね…♪)

 

 嘘だろ…!

 違う!もう一人の俺なんか、俺じゃ――

 

(はい其処、ウダウダ言わない。)

 

 くっそっ――

 

 一瞬だが、何かが途切れた感覚がした。

 糸が切れた、そんな感覚が。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

 何時からだろうか。

 此奴が俺の中に生まれたのは。

 初めて自覚したのは、両親が死んだ時だったかな。

 父親が不慮の事故で病院へ搬送。

 母親がその病院へ向かう際に、丸で狙ったかの様に車同士の衝突。

 片方は知らない人の、もう片方は…母親の車が。

 父親が事故に会ったという事実を知らされ、完全にテンパっていたのだろう。

 周りが見えていなかったと言っても正しい。

 

 唯、その時の車に俺は同席していなかった。

 それは何故か。

 外へ出掛けていたからだ。

 母親からおつかいとやらを頼まれていて。

 俺に知らせ等は届かなかった。

 携帯なんぞいらん、という考えを持っており、それを持ち得ていなかったからだ。

 

 俺に両親が事故に会ったという情報が耳に入ってきた時には、既に二人共亡くなっていた。

 在る意味連鎖的に死んだという。

 

 俺は家の中を荒らしまくった。

 壁を壊し、物も壊し、目に映る物全てを破壊した。

 あの時の記憶等無い。

 何故なら、あの時に俺を支配していたのはもう一人の俺だから。

 壊して、壊して、それでも心の喪失感は癒えなくて。

 それどころか、更に虚しくなるだけで。

 最終的に壊し尽くされた家の中を見つめて、自分を取り戻した。

…その日が、此奴の生まれた初めての日だ。

 

 それから何日間かは此奴の好き放題だったが、時時刻刻と存在が失せていた。

 そして今の今まで、俺自身も此奴の存在を忘失していた。

 今回、知らない誰かさんに言われてやっと思い出したが。

 

…まぁ良いさ。

 こうするしか力を手にする事が出来ないのであれば、その事実を受け入れよう。

 これで二人が満足してくれる、そんな未来が見れるのなら。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

(…気分はどう?もう一人の君。)

 

―――破壊する…。

 

[その瞬間、俺の善の心は死んだ。]

 

(…そうだよ。)

 

[その瞬間、俺の心の中に悪が生まれた。邪魔者は全て破壊する。不必要な世界は壊滅へと誘う。そんな悪心が、俺の心を支配した。]

 

…全ては二人の祝福の為、不要物共はこの俺が――

 

 破壊する…!!!

 

(今の君こそ、私が見たかった者の姿。破壊という概念で支配された心。そこに善など存在しない。悪だけが無限に湧き出ずる。それでも、あの二人を想う気持ちが変わらないのは予定外だけど…別に良いよねっ。さぁ、私を楽しませてよっ♪)

 

…もう一人の俺。

 正体は自分でも知っている。

 此奴だけは二度と表へ出したくなかった。

 だが、今は仕様が無い。

 二人を守る為に、頼らせて貰おう。

 存分に暴れて貰おう。

 破壊し尽くして貰おう。

 もう一人の俺に。

 

‐‐‐

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。