Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第四十話: 疑惑

「さて、食事にしましょうか。」

 

 ヴェスパローゼさんの一言に、俺はハッと思い出す。

 自分達が出掛けた理由をすっかり忘れていたのだ。

 ヴェスパローゼさんからの頼まれ事をすっぽかして、四人のコーディネートに夢中になっていた。

 買い物は予めリゲルさんとA-Zちゃんがしていてくれたから事なきを得たが…正直に自分に失望した。

 いや、元から自分に期待等していないのだが。

 こんな駄目人間に期待してくれる人達なんているのかと、何時も思う。

 

 だが、信用してくれる人達が居てくれるというのは何とも有り難い話だ。

 その思いに報いる為にも頑張りを見せなければ。

 

「…それで、何でこんなに遅くなったのか、理由を説明してくれる人はいるかしら?」

「あっ、全部僕です。理由は後でちゃんと話します。」

「そう…まぁ、貴方の事だから別に話さなくても良いけれど。」

 

…うん?

 ヴェスパローゼさんからの信頼度が厚過ぎやしないか?

 彼女からの厚意と思いたいが、少し不安になってきたな。

 しかし…不信からは何も生まれない。

 信じる事が大事だと自分に言い聞かせ、誤魔化す。

 

「さぁ、移動するわよ。きさらが案内してくれるかしら?」

「うぃ!」

 

 俺達全員はきさらちゃんに案内され、一番上の階に位置するヴェスパローゼさんの部屋から、下の階にある食事場所へと移動する。

 内装は何処までもホテルに変わりはない。

 外見から見れば只の大樹なのに、一体どうやったらこんな誤魔化しが効くのか。

 何やら、ファンタジー世界に有りがちな幻影の術的な匂いがプンプンする。

 そんなのがあれば教わりたい位だ。

 

 そう言えば、何故にヴェスパローゼさんは来ないのか。

 用事でもあるのなら仕方無いが…まぁ、食事する時に合流するだろうし気にする事は無いか。

 彼女は彼女で、大変なのだろう。

 

「ほー…こりゃあマジのホテルだな。あの外見からこの内装。凄いの一言だ。」

「だいすけ、ついた!」

 

…え、どうして俺指定?

 ま、まぁ、きさらちゃんが連れて来てくれたんだし、お礼は言わなくちゃな。

 

「ありがとね、きさらちゃん。」

「うゆゆ〜♪」

 

 きさらちゃんは凄い機嫌良く、俺の側へと近寄ってくる。

 彼女は俺のお礼や誉め言葉を求めているのか、「ありがとう」や撫で撫で等の言動を起こすと、至極嬉しがる。

 俺としてはきさらちゃんが喜んでくれるならそれで良い。

 彼女やあづみさん達の笑顔を見るだけで、此方が笑顔になる。

 そして癒しを貰える。

 彼女達の笑顔は、素晴らしい位に最高の笑顔だ。

 バトルドレスという力が無くても、その笑顔を守れるようにしなくては。

 

 だが、力無き者が大切な者を守るなんて幻想にしか過ぎないのかもしれない。

 それでも、想いや気持ちが強ければ願いは叶う。

 それが偽りの想念でなければ。

 

 しかしながら、幾ら想いが強いからって叶う物でもない。

 実際に行動に移さなければ話にすらならない。

 要するに、自分の願いを叶えたければ、それ相応の代価を支払えと言う事だ。

 それが如何に辛くて厳しくても、自分の願いを叶える為に必要な代価だと思えばやっていける。

 

 受け入れられない現実も、受け入れなければ前に進めないのと一緒だ。

 今は順調に事が進んでいるが、何時挫折するかは分からない。

 俺もそんな不安感を抱きながら、自分の大切な存在を守る為に尽くそうと頑張っている。

 自分にとって「一番の存在」というのは、必要不可欠なのかもしれないな。

 

 それを守る為なら、如何なる犠牲も払って見せよう。

 例えそれが自分の命と引き換えになろうが。

…本当は犠牲なる奴なんか、俺一人で充分なんだけどな。

 例え綺麗事だと罵られても、この考えを変える気はさらさら無い。

 今はこれが一番だと思っているから。

 

 己の覚悟を再認識した処で、あづみさんやリゲルさん、きさらちゃんに見られている事に気付いた。

 A-Zちゃんは何故か一点を見つめている。

 へっきーは横を歩いて――

 

「…大祐くん、あまり思い詰めるのは良くないよ?」

「街に着いた時も言ったけど、相談事があれば遠慮無く言って。」

「だいすけのもあもあ、きぃがなくす!」

「…有り難うあづみさん、リゲルさん、きさらちゃん。」

 

 三人からの思いやりに涙が零れそうになる。

 だが、それよりも気にかかった事があった。

 

「へっきーは何処に行った?」

「 「………え?」 」

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

 大体二時間程だろうか。

 皆で楽しむ食事会は終わりを告げた。

 今はヴェスパローゼさんに与えられた部屋のベッドで寛いでいる。

 自室に一人だけというのは、何とも言えない解放感があるな。

 

 にしても、食事会は中々だった。

 途中で消えたへっきーが料理を作って出しているわ、食事会と称したヴェスパローゼさんとの会議が始まるわで。

 俺はあまり食べれなかった。

 あぁ、食べきれなかったの方が正しいか。

 

 しかし、へっきーの作る料理を皆は美味しそうに食べていた。

 流石、食に関しての知識は一般人を凌駕する。

 因みに買ってきたケーキをへっきーに見せると、アレンジを付け加えられた。

 そのお陰でケーキは更に美味しく、見た目も少し派手となった。

 それを皆で食べる。

 勿論へっきーも。

 その姿を、俺は遠目から見ていた。

 

 目の前で幾ら美味しそうに食べられても、食欲等沸かないものだ。

 これ以上は腹に入りきらないと、俺の腹が断言したのだから。

 恐らく彼処で詰め込みなんかしていたら、トイレへレッツゴーしていた所だろう。

 そんな馬鹿な事はしたくない。

 自分の友人に「トイレの一歩手前で吐いた」人がいるから余計にそう思う。

 食べていたら、絶対に後悔していただろう。

 因みに、料理の内容はご想像にお任せしよう。

 

「…あ、へっきーの部屋にでも進撃してこうかな。」

 

 ふと思い付いた衝動。

 それに駆られるかの如く、俺は立ち上がった。

 食事後の腹とは、何とも重たいものだな。

 

 俺は重たい腹を抱えて歩いてドアを開ける――

 

「あ、大祐。ちょっと良いかしら?」

 

 するとなんと、美人さんが立っているじゃないか。

 いや、リゲルさんなんだけど。

 彼女からお誘いなんてどうしたのだろうか。

 

「何かありました?」

「いえ…これからの事で話を進めたくて。大祐の部屋を借りても大丈夫?」

 

 これからの事。

 重要な話なのか…重要な話だからこそ、あづみさんが一緒に居ないのだろう。

 先ずは俺とリゲルさんの二人で話し合うという事か。

 

「どうぞ、先の事は大事ですもんね。」

「食事が終わった後、直ぐにでごめんなさい。どうしても話をしたくて。」

 

 そう言う彼女の眼差しは真剣其の物だ。

 ならば俺も真面目に考えよう。

 へっきーの部屋に進撃するのは後でも出来る事だ。

 先ず、無理に進撃する必要事態ないのだが。

 

 取り敢えず俺は、椅子が一つしか無いという事で俺が椅子に、リゲルさんをベッドに座って貰った。

 丁度対面になるし、良いポジションだ。

 

「…それで、今後の話とは?」

 

 座って間も無く俺は本題に移る。

 急ぎでは無いだろうが、時間とは待ってくれないもの。

 話を進め、決定するにまでは時間を有する。

 それに関係ない話をする必要性も丸で感じられない。

 今はリゲルさんの話を聞く事が最優先だ。

 

「あの蜂女から少し情報を貰ったの。現状、青の世界と赤の世界の繋がりは見られないって。」

「成る程。」

 

 しかし何故、それをリゲルさんに伝えたのか。

 ヴェスパローゼさんが決めたのだろうから、文句一つ無いが。

 

「でも、赤の世界と緑の世界。この両世界は繋がっている可能性が浮上してきたって。」

「緑の世界が関わっているのは、あまり好ましく無いですね。」

 

 けど、リゲルさんの件が発生してからは薄々気付いていた。

 だが緑の世界が関係しているとなると、俺が間違いなく危ない。

 赤の世界で指名手配されている男が、緑の世界で目撃された。

 よし、じゃあ殺そう、みたいな話になってしまうからな。

 

 言うて此方の戦力もまだまだ足りていない。

 それでいて緑の世界のお偉いさん方が、赤の世界に加担し始めたら逃げ場等無い。

 一番の打開策としては…。

 

「このままじゃ此方が不利になるだけ。って訳で、大祐と今後を話し合いたくて。」

「取り敢えず、ちょっとした遠出が必要になりますね。」

「それはどうして?」

「此方の戦力を増強したいので、赤の世界に加担される前に緑の世界のZ/Xを味方に付ければ良いと思いまして。」

「その対象は?」

 

 赤の世界に協力されると嫌な奴等。

 そんなものは決まっている。

 

「八大龍王を引き入れます。」

「えっ!?」

 

 リゲルさんに、気が狂ったんじゃないかという目で見られる。

 まさかぁ、俺は至って普通ですよ。

 なんてどうでも良いことは置いて。

 

 緑の世界で相手に回られると厄介なのは、一番に八大龍王だろう。

 力あり、権力あり、裏繋がりありと面倒臭いZ/X達だ。

 正直関わる必要が無いのなら、関わりたくない。

 あまり面倒事に首を突っ込みたくない主義の人物でしてね。

 今までの行いを見てくれば嘘と言われるかもしれないけど。

 あづみさんとリゲルさんの事に関しては、例え面倒だろうと首を突っ込んでやる。

 

 話が逸れた。

 

「八大龍王を…リスクはあるけど、それ相応のリターンも得られるわね。」

「まんま、ハイリスクハイリターンと言ったところでしょうか。」

「でも、八大龍王は八人もいるわよ。全員を味方にするのは時間が掛かり過ぎるんじゃないかしら…。」

 

 そう、八大龍王とは、名前の通りに八人いる。

 それらを味方に引き入れるには少々無理な話だ。

 

「ですので、最低限欲しい八大龍王を選んで味方にします。」

「最低限?」

「要するに、有用性の高そうな八大龍王を選ぶって事です。」

 

 誰かなんて分からないけどな。

 先ず、八大龍王の内容を知らないし。

 

「リゲルさんのオススメは?」

「私はデータとしてなら知っているけど…実際に見た事が無いから何とも言えないわね。」

「そうですよね…。」

 

 ここはヴェスパローゼさんに聞いてみるのが一番か?

 緑の世界で、彼女が何れ程偉いのかは分からないが、八大龍王位なら知っていると考えよう。

 八大龍王の件はヴェスパローゼさんから聞いた時に決めるとして。

 

「問題は、八大龍王以外に誰を仲間にしたいかですね。」

 

 青の世界に味方はいない、緑の世界は八大龍王、黒の世界は…

 

「七大罪…とか、大祐は知り合いがいるのよね。」

「ルクスリアさ――そう言えば、二人は何でルクスリアさんと一緒に居たんですか?」

 

 黒布と戦いが終わって、ヴェスパローゼさんの住処に住まわせて貰い始めた時。

 二人を探し始めようとしたら、A-Zちゃんを含めて全員が一緒に居た。

 何故かルクスリアさんに連れられて。

 

「あの七大罪が大祐を知っているって言ったから、連いて行っただけよ。」

「ほうほう…まぁ、七大罪も味方にしたいですね。」

 

 何か治安が悪くなる気配しかしないが…各々の世界にいるお偉いさん方を味方にすれば、戦力はえげつないうなぎ登りを見せるだろう。

 後は白の世界…十二使徒か。

 確か星座が元となった天使が、そう呼ばれているんだよな。

 個人的には牡羊座を味方にしたい。

 自分が牡羊座だから。

 清々しい位に単純だ。

 

「赤の世界は…無いわね。」

「そうとも言えませんよ?」

「どうして?」

「ほのめ嬢にびんが嬢、後は俺が知り合ったマイスターさん。協力してくれそうな人達は居ます。」

 

 あの時放置してそのままにしてしまったアームドさん。

 それに加えてはぐれてしまったほのめ嬢にびんが嬢。

 後はアームドさんの知り合いマイスターか。

 数こそ少ないが、今は重宝する存在。

 仲間になってくれる可能性がある存在は、慎重に引き入れていかねば。

 

「後は各々の配下的なZ/Xが必要になります。強い力は手に余りかねますから。」

「そうね…まぁ、それは旅に出てる途中でも良いんじゃないかしら?」

 

 リゲルさんの考えは効率的で話が進め易い。

 だから助かるのだ。

 

 存在の大きいZ/X達を味方にする為の道中で、配下になるZ/Xを探す。

 凄く良い案だ。

 正直、それしか最良の考えが頭に浮かばないのも採用理由だが。

 

「あ、話をくるっと一回転させるけど。」

「何でしょう?」

「大祐がバトルドレスを装着出来ないの、あれで初めて知ったのだけれど…。本当にそうなの?もしそうならあのお金は一体何処から湧いて出たのかしら。」

 

 うむ、流石リゲルさん、随分と痛いところを突いてくる。

 まぁ、リゲルさんだけでは無いのだろう。

 俺がバトルドレスを装着出来ない事を知って、疑問を抱いたのは。

 素直に言えばこのまま黙っておきかった。

 黒布の事を掘り返すのも嫌だし、何よりも、事実を伝えればあづみさんとリゲルさんに心配を掛ける事になってしまうから。

 

 A-Zちゃんはあまり関心を惹かれなさそうだから気にしていなかった。

 きさらちゃんはバトルドレスを知らない、ヴェスパローゼさんには伝えてある。

 それでいて、二人に事実を言えば力無き俺の価値は無に等しいからだ。

 二人に必要とされなくなるのは、精神的にも、自分自身的にも辛い。

 だから本当は内緒にしておきたかった。

 あの時は反動で口を滑らせてしまったが。

 

「へっきーの前で話した通り、ステータス画面は開けます。一度終った物も取り出せますし、再度終う事も出来ます。」

「肝心のバトルドレスは?」

「…黒布との戦い以来、装着出来ず仕舞いです。」

 

 原因は未だに掴めない。

 黒布戦で『EXAM』を発現させ、その強力な力に支配されてからこうなった。

 思い返せばあの時俺に話し掛けてきた奴は誰だったのだろうか。

 というか黒布はどうなったんだ?

 幾ら彼奴でも、あんだけ重傷を負えば死んだも同然と思って良いだろう。

 もし生きていたとしても、匆匆に手出しをされる事は無い筈だ。

 そこまで軽い傷で済ませたつもりはないし、此方人等殺す気満々で攻撃していたからな。

 

「ですが今の所、驚異なのは赤と青の世界。欲を言えばバトルドレス復活が望ましいですがあまり期待はしていません。」

 

 過度な信用は後々自分の毒になる。

 別で言えば、過信だ。

 自分の所持品を対象にした話をしているのだからな。

 

「そう…でも、例えバトルドレスが無くたって私は大祐を信頼しているから。恐らく、あづみも同じ気持ちよ。」

「その言葉は凄く有り難いのですが…受け取るには勿体無い。二人も、過度に俺を信用するのは遠慮した方が宜しいかと。」

「あら、それならもう手遅れよ。私達の信用を勝ち取ったのは大祐なんだから。責任取りなさいね?」

「…少々荷が重いです。」

 

 が、悪くない。

 寧ろこの場で跳ね上がりたい位に嬉しい。

 

「話を戻す…というよりは、纏めますか。」

「そうね。あづみには大祐から伝えて貰えるかしら。今日の夜は二人っきりって、凄くにこにこしてたから。」

「取り敢えずは白、緑の世界でお偉いさん方の引き抜きで良いですね?」

「こらこら、無視しない。」

 

 無視?知らない子ですね。

 俺の辞職にはスルーという単語しか載っていませんよ。

 

「…それじゃあ、明日は私と二人っきり…かしらね?」

「どちらに行くかはヴェスパローゼさんの情報次第。近いので八大龍王を優先したいですが、有用性の高い方を仲間にするのが一番です。そこら辺は話し合ってからにしましょう。」

「相変わらずの堅物ね。」

「そして明日は二人っきりで夜を楽しみましょう。…とは言っても、話を進めるだけですが。」

「だ、大歓迎よ!」

 

 

 リゲルさん、それは此方の台詞ですよ。

 彼女が明日の夜を楽しみそうにしているのは気のせいか?

 高が話の続きをするだけなのに、楽しみって…。

 リゲルさんも相変わらず真面目だ。

 この際、明日の夜にいけない事でも教えてやろうかな。

 男女の関係とか、赤児はどうやって出来るのかとか。

 

……やだ、止めておこう。

 何だか俺のキャラじゃない。

 柄に合わない意味不明な行動をしても、自爆するだけだぞ。

 あれだ、普段着は凄くラフだけど似合っている奴が、合コンの時だけ派手に着飾ってドン引きされる奴みたいに。

 どこぞの隣国である北の朝鮮さんが「核は撃たないから安心してね☆」って言って余計怪しまれるみたいに。

…うん、○ポドンかな?

 

 実際そんな事が起きたら悲しみ背負い過ぎて笑い転げるけどな。

 熟最低な人間だ、俺は。

 

「それじゃあ詳細は後程。」

「そうね、あづみに宜しく。…明日はどうしようかしら。」

 

 リゲルさんが最後に何か言ったが、その何かが聞き取れなかった。

 まぁ何となく検討はついている。

 明日の洋服やら何やらの事を気にしているのだろう。

 個人的には俺の選んだ服で来てくれると嬉しいけど、そこは個人次第。

 リゲルさんの決めるべき事だ。

 

「あ、そう言えば。」

 

 ドアノブを握りながら、リゲルさんは此方に振り返った。

 何かあったのだろうか。

 

「ケーキ、美味しかったわ。御馳走様。」

 

 そう言い残して、リゲルさんは部屋を出ていった。

 彼女には俺がケーキを買った事がバレていたらしい。

 中々の洞察力で。

 

 それよりも明日の夜、俺達は此処にいるのか?

 

‐‐‐

 

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