Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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ラブラブな展開が苦手な方はお気を付けて下さい。
(ラブラブは次話も続きます)


第四十一話: 相場

「アカン…これはアカン…!」

 

 えー…只今俺は、あづみさんの部屋の目の前に来ております。

 視界一杯に扉が広がっております。

 現在時刻は[23:30]。

 もう少ししたら日が変わる真夜中です。

 そんな中でどうして、俺は大好きな女の子の部屋の目の前に立っているのだろうか。

 

 リゲルさんとの話し合いが終了して、へっきーの部屋へ「突撃!隣の犯罪者さん!」を決行して、きさらちゃんと仲良く遊んで、其処らでふらついていたらあづみさんと鉢合わせをし。

 この時間に来てくれと指定をされ。

 それまでの時間を潰す為にA-Zちゃんと話がしたいと思ったけど追っ払われて、きさらちゃんが遊び足りないという事で遊んであげ。

 先程まできさらちゃんの部屋にいて、彼女が寝付くまでの間側にいてあげた。

 勿論きさらちゃん本人からの願いで。

 

 すーすーと寝息を立てるきさらちゃんの顔を見ていると、何だか時間を忘れて…。

 気が付けば指定された時間になっていた。

 

 という訳で今、あづみさんの部屋の目の前に。

 

…いますんですが。

 

 胸の高鳴りが止まず、ドアをノックする事すら出来ない。

 だって真夜中に大好きな女の子と二人っきりなんだよ?

 しかも相手方の部屋で二人っきりなんだよ!?

 これからお話するだけなのに…何故にもこんなドキドキしなきゃならないのか。

 うーん、この。

 取り敢えず、待たせると悪いからノックするか。

 

………………………………………………………………………………………………うん、無理。

 

 と、確信した瞬間、目の前の扉が新たな道へと導くかの如くキィと開く。

 そしてそこから顔を出したのは。

 

「あ、だっ大祐くん…」

 

 一人の超絶可愛い天使だった。

 

「約束の時間を守ってくれてありがと。ちょっと外の空気を吸いに行きたくてドアを開けたら大祐くんがいたから…タイミングばっちりだね。」

「ですな。」

 

 厳密にはばっちりじゃないが。

 

「でも、どうして外の空気を吸いに?」

「え、えーと…」

 

 あづみさんが俺と視線を合わせず、キョロキョロとしている。

 何やら返答に困っている様だ。

 

 ん?待て、今の俺の質問は可笑しくないか?

 外の空気を吸いたいと言っている相手に、何故?と聞いたのだ。

 そんな理由なんてはっきり分からないじゃないか。

 吸いたいと思ったから吸いに行こうとした訳で。

 というか、外の空気を吸いに行きたいというのが立派な理由じゃん。

 まずったな…地雷踏んだか?

 

「ご、ごめんなさい。無理に答えなくても――」

「…大祐くんと二人っきりって考えると何だか緊張しちゃって…それで一回自分を落ち着かせようって思ったの。」

「今からでも行きます?」

「ううん、大丈夫。」

 

 どうやら緊張していたのは俺だけじゃ無かったようだ。

 まぁ…男女が二人っきりで一つの部屋にってなって、おどおどしない方が珍しい。

 よっぽどの精神力の持ち主か、ある程度男と関係を持った事のある奴か、ビッチか異世界魔物か。

 はたまた女装したおっさん………いや、別の意味で胸が高鳴るな。

 殺される、男として的な感情で。

 というか最後の辺りから対象路線がずれてきてたな。

 反省反省。

 

「えっと、取り敢えず私の部屋に…」

「あ、はい。お邪魔します。」

「どっどうぞ!」

 

 力強い返事が返ってきた。

 ふと気付いたが、何故かあづみさんが扉から顔しか出していない。

 体は隠しているみたいだけど…部屋に入れば分かる事なんだけどさ。

 では、入室致しますか。

 

「さて…俺は何処に座れば―――」

 

 そう言い掛けて俺は絶句した。

 それは勿論、良い意味で。

 

 部屋に入って直ぐに後ろへと振り向く。

 すると其処には今日、俺が選んでプレゼントしてあげた服を着ているあづみさんの姿があった。

 こんな行き成り着て貰えるなんて、努努思いもしなかった。

 精々休日のお出掛けやらに着て貰えるだろう位にしか考えていなかったのだ。

 残念ながら今の所、その休日とやらが無いから着て貰えないだろうと考えていた。

 

 それがこのサプライズ。

 嬉しい事この上無い。

 

「大祐くんが選んで買ってくれたのが嬉しくて、折角だし着ようかなって思ったの。えへへ…似合う、かな?」

 

 そう言ってあづみさんはくるっと一回転して見せる。

 その動作、回った後のにっこり笑顔に悩殺させられた。

 この服を着てくれたあづみさんは試着を含めて二回目だが――

 

「くっそ可愛いなおい。」

「えっ、大祐くん…?」

 

 っと、ついつい本音を口にしてしまった。

 二回でも十回でも何回見ても、飽きのこない可愛らしさ。

 やはり服では無く、あづみさん本人の魅力なんだなと確信する。

 可愛いったらありゃしない。

 

 それにしても、嬉しいと思ったいたのはあづみさんも一緒だったのか。

 二人して同じ感情を抱いていたとはね…ぐふふ。

…やっぱりキャラじゃないな、こういうの。

 

 取り敢えず座る場所…を探していたら、あづみさんにベットの上を指定された。

 二人で一緒に、一緒のタイミングで座る。

 

 いやーしかし、やはり自分好みに選んだせいかストレートゾーンにド直球だな。

 小悪魔的なあづみさんを想像して選り抜きしたんだが…。

 

「だっ、大祐くん、なっ何から話しましょうか!?」

 

 あづみさん自身がすげー戸惑っている所為で、どう見ても小悪魔というのは無理がある。

 何と言うかー…何とも言えんな。

 しかしながら人の目を魅了する小悪魔的要素は持っている。

 事実、俺の頭の中は目の前のあづみさんで一杯だ。

 うん?元からだったな。

 

「九条さんは…えと…んと、何かしたい事はありますか…?」

「あづみさん、敬語になってますし何時も通りに名前で呼んで貰えませんか?違和感がヤバイです。」

「あっ…ご、ごめんなさい。それじゃあ大祐くんも私に敬語禁止。…それと名前で呼び捨てね?」

「あづみさ―――あづみは無理難題を仰る。」

「…えへへ」

 

 何だ?俺に呼び捨てされるのがそんなに嬉しい事なのかなぁ…?

 どうにも理解が追い付かない。

 まぁ、他ならぬ美少女あづみさんからの頼み事だ。

 今日一日は呼び捨て、タメ口であづみさんと接しよう。

 明日になったら元に戻るがな。

 

「あ、もう一日が終わりま…終わるよ。」

「本当だ、今日は楽しかったなぁ。」

「俺も楽しかった。というか心が癒されたな。」

「きさらちゃんに?」

「うーむ…きさらちゃんもそうだしリゲルさんもだけど、やっぱりあづみに癒された感。現状も癒され続けております、なんてね。」

「ふふっ、私は大祐くんをもっと…その…」

 

 何だか凄く言い辛そうだ。

 ここは男として察してあげねばなるまい。

 俺もそこまで鈍感じゃない、筈だよな?

 

「…あづみみたいに優しくて、思い遣りのあって、可愛い子が…どうしてこんなに重い病気を患ってしまったのだろうな。」

「大祐くん?」

「そう言えば、今日の買い物の最中に一瞬あづみと離れたね?大丈夫だったかい?」

 

 俺と離れると、あづみさんはリソース症候群を発症する恐れがある。

 だからあまり距離を取ってはいけない。

 離れれば離れる程にあづみさんがリソース症候群を――

 

「…その言い方、やっぱり大祐くんの御蔭だったんだね。」

「何の話だい?」

「大祐くんの『リソース放出能力』だっけ…?あれ、私のリソース症候群を抑える効力もあるみたい。」

「ああああぁぁぁぁ!!!」

 

 俺の叫び声に、一瞬体をビクリとさせたあづみさん。

 丸で子犬の様な可愛らしい反応を…じゃなくて!

 何で今まで黙っていたんだ俺は!?

 ルクスリアさんに会って間も無い時に教えて貰ったじゃないか。

 俺のリソース放出能力でその女の子のリソース症候群を抑えれるって。

 それを再会出来たら直ぐに言おうと思っていたのに…

 再会状況がアレだったから仕方がないが、リゲルさんからも何も聞かれなかったし。

 正直自分でも忘れていた。

 二人との再会に夢中になって、一番大事な事を。

 

 全くもって呆れる程に忘れ易い性格だな。

 認知症でも患っているんじゃないか?

 こんなに生温い症状じゃあないだろうが。

 

「大祐くん、ど、どうかした?」

「いやぁ?自分の無能さを改めて実感しただけだよ。」

「…大祐くんが無能、それは絶対に無いよ?」

「その言葉は素直に嬉しいけど、リソース放出能力のもう一つある能力を忘れる馬鹿なんで。」

 

 あづみさんは横に首を傾げる。

 

「さっきあづみの言った通り、リソース放出能力はリソース症候群を抑える効力もあるんだ。七大罪の色欲さんが言うから間違い無いと思う。」

「それじゃあ私のリソース症候群は…」

「俺の近くに居れば発症しないと思う。どの位の範囲までかは分からないけど。」

 

 実際それを試すのは心が引ける。

 それであづみさんがリソース症候群を発症したら元も子もない。

 リソース症候群を抑える為にある能力なんだからな。

 認識を誤らない様にしなければ。

 

「大祐くん自身から言ってくれたから、疑いが確信になったよ。」

「あづみは薄々気付いていたのかい?」

「ソトゥ子さんと出会う前位だったかな。大祐くんと一緒に居る時は大丈夫だったんだけどね…離れ離れになっちゃったら急にリソース症候群が…」

 

 あの時の事は思い出したくないと言わんばかりに言葉を遮る。

 という事は、あづみさんは一度リソース症候群を発症してしまってたのか。

 これは俺の所為だ。

 俺から突き放した様なものだったからな。

 状況が状況だったとはいえ、結果論だがあづみさんが苦しむ事になってしまった。

 

…しかし、あの場に全員残って戦っていたらあづみさんは苦しまずに済んだのかと言われれば怪しい。

 ここで「はいそうです」と答えられない俺は、あの時皆を守れると思っていなかったからだろう。

 誰か一人、若しくは二人、最悪全員に被害が加わる…そう思いが強まったからこそ突き放したのだ。

 

 その詳しい理由として、一番最悪なパターンを想定しよう。

 もしもあの場で全員戦闘参加していたら。

 多勢に無勢で数の暴力を喰らい、アーサーやアレキサンダーといった兵(つわもの)に苦戦を強いられ、戦う事の出来ないあづみさんとほのめ嬢を守りながら戦うという、一方的に不利な戦況になっていただろう。

 それに加えてウイングゼロは解放されずに、アーサーに蹂躙され。

 あづみさんやリゲルさんは青の世界へと取り引き材料にされ、ほのめ嬢とびんが嬢は赤の世界に囚われの身に。

 後者の二人に至っては大方、その美貌が故に赤の世界の男共に犯されでもされていただろう。

 脳筋な奴等にその思考があるかは分からないが。

 俺に限っては殺されていたとしか考えられない。

 相手方は処刑するとか言ってたしな。

 

「兎に角、あづみと俺はあまり離れない方が良いらしいなぁ。」

「でも、大祐くんが買い物に行った時は大丈夫だったよ。」

「要するにあの距離は良いと。」

「私は大祐くんが何処まで行ってたのかは分からないけど…」

「だけどなぁ、万が一の事があってからじゃ遅い。基本的にはお互い近くに居よう。」

「うっうん!」

 

 まぁ、あづみさんが望めば付かず離れずの距離でも良いけどさ。

 個人的には離れても大丈夫な距離が不明な為、そんなにあづみさんとの間を空けたくない。

 それは恐らく彼女も思っている事だろう。

 

 何時発症するかも分からない重病が、特定の人の側にいると治まるんだ。

 しかもそれがお互いに好意を向けている者同士なら、尚更近くに居たいだろ。

 

「あ、そうそう。さっきリゲルさんと話してきたけどさ…」

「リ・ゲ・ル」

 

 何故リゲルさんまで呼び捨て?

 後でリゲルさんに謝っておこう。

 

「緑の世界『八大龍王』、白の世界『十二支徒』、黒の世界『七大罪』、赤の世界に関してはほのめ嬢にびんが嬢。この中から誰を優先で味方にしていくかを、り……リゲルと話し合っていたんだ。」

「凄い面子のZ/Xさん達だね…」

「味方にするなら優良物件でないとね。最初は取り敢えず緑か白にしようと思っている。」

「近いから?」

 

 流石あづみさん。

 緑か白の世界にした理由をそこはかとなく当てていく。

 今居る世界か隣国の世界から先に済ませたい。

 だからと言って、まさか青の世界に行きたいだなんて思わない。

 遠いから無視しても良いんだけど。

 

「その旅に誰を連れていくかをあづみとも話したくて。へっきーに緑を任せて、俺は白に行こうと思っているんだ。」

「えっと、私は大祐くんが決めた場所なら何処までも付いてくよ?」

「離れたらリソース症候群云々問題が発生するからね、あづみは確定。そうなると必然的にリゲルも確定かな。」

 

 後はやはりA-Zちゃんかなぁ。

 だが、彼女が戦っている姿を見た事がない。

 まだまだ秘められし力が隠されている…と信じて。

 きさらちゃんは留守番係かな。

 ヴェスパローゼさんと一緒なら安心安全だろうし。

 

「なんか何時も通りの面々だね。」

「大祐くんは不満?」

「俺としては幸福であり至福。」

「大祐くんにそう言われると嬉しい――くしゅんっ」

 

 部屋中にあづみさんの可愛らしい嚔の音が響き渡る。

 本当に小さな嚔だ

 へっきーとは比べ物にならないぞ。

 

「あづみ、大丈夫かい?」

「う〜…何だか寒いよぅ…」

「今の季節って秋から冬になる前位なのかな。冬程じゃないけど寒いし。」

「私…寒いの嫌い。大祐くんは?」

 

 暑いのも嫌、寒いのも嫌。

 しかしながらどちらにも耐えられる。

 まぁ要するにだ。

 

「んー特定してないね。」

「大祐くんは暑いのも寒いのも順応出来るんだ…凄いね――くしゅんっ…うー…」

 

 嚔であづみさんが萎えてきている。

 此処等で一発、男の本気を見せるとしようじゃないか。

 

「ほら、あづみ。」

「?」

 

 俺は両腕を広げてあづみさんを歓迎する様に体勢を構える。

 

「寒いんでしょ?俺で良ければ暖めてあげるけど。」

「だっ大祐くん!?」

「いや、嫌なら別に良いんだけど。」

「あっ…その…えと……本当に良いの…?」

 

 あづみさんが遠慮気味に此方を見ている。

 それと同時にもじもじとしているのが何とも言えない位に可愛い。

 しかも此方を見ているというのは、体と顔は真っ正面を向いているのに目だけチラチラと此方を見ているという意味。

 破壊力抜群、壊滅的な可愛さだ。

 

 因みにここで布団を掛けてあげるという選択肢を捨てている俺は外道なのだろう。

 

「あづみさえ良いなら。」

「は、はい…お願いします。」

 

 そう言うとあづみさんは俺に近寄り、体を密着させてくる。

 それを確かめた俺は広げていた両腕を彼女の体の後ろに回し、包み込む様に抱き締める。

 

 あづみさんの顔と自身の顔がゼロ距離だ。

 更にはあづみさんの心臓の音が俺の体に伝わってくる。

 彼女の心臓は早く鼓動を繰り返していた。

 

「どう?少しは暖かい?」

「うん…とっても…暖かい。」

 

 あづみさんは目を閉じ、全体重を俺に委ねる。

 寝てはいないだろうが眠くはあるだろう。

 もう少しで新しい日を迎える時刻なのだから。

 何時も21時や22時に寝ていたあづみさんは、とっても眠いだろうに。

 それを察した俺は彼女の背中を優しくとんとんとたたく。

 叩くというよりは平仮名が似合うくらいに優しく。

 

「…あづみは今日、俺と何が話したかったんだい?」

 

 俺が質問するとあづみさんは一拍置いて答えを出す。

 

「……前に言えなかった事を、ちゃんと伝えたくて。」

「言えなかった事?」

「黒い布を着た人と戦った時。大祐くんは私達に貴方自身の想いを伝えてくれましたよね。」

 

 あづみさんの急な敬語に、驚きが生まれる。

 だが今は其れ処じゃない。

 黒布と戦った時に、俺が二人に伝えた事。

 それは間違いなく二人が「好きだ」という想いだろう。

 しかしあの時はそのまま死ぬ予定だったんだ。

 変な奴が俺に話し掛けて来るまでは。

 

 俺はあづみさんが何故、俺と話したいのかを察した。

 その時は二人の返事も録に耳に入ってこなかったのだろう。

 正直にうろ覚えだ。

 しかもあのタイミングでの告白は、正に最悪。

 それを改めてあづみさんは、自分の想いだけでも伝えようと俺と二人きりで話したかったと。

 

「…私はあの時、自分の想いをしっかり伝えられなかった。だから今日、大祐さん…貴方に私の想いを打ち明けます。」

 

 そのままあづみは、俺と少し距離を取る。

 そしてベッドの上に正座で座り、真向かいで向き合う。

 釣られて俺もベッドの上に正座で座る。

 

「例え大祐さんの想いがあの時と違っても…此方を向いてくれなくても…私は後悔しません。」

 

 俺は、あづみの手が震えている事に気が付いた。

 

「出会って僅か二日目…大祐さんから独り占めに出来るのかなと言われたその時から、私は…貴方を心の奥でずっと想っていました。」

 

 顔を真っ赤にさせ、恥ずかしさのあまりに偶に視線を外そうとするが、何が何でも俺と視線を合わせる。

 それは俺も同じだ。

 だが、今のところ俺は視線を一回も外していない。

 あづみさんも俺が真面目に聞いているから、と無理に視線を合わせているのだろう。

 相変わらず自分に無理をさせる子だ。

 

「で…ですが、その気持ちを、大祐さんに伝えるには…勇気がありませんでした。何時も端から、見ているだけで…タイミングを逃して。」

「………」

「だからあの時、大祐さんが死んじゃうと思った時に。私の心は、後悔で一杯になりました。何で今まで勇気を出さなかったんだろう…って。」

「………」

「もう後悔なんてしたくない。大祐さん…私は貴方の事が…貴方の…事が…」

 

 無言で、唯只管に無言であづみさんの話に集中する。

 そしてあづみさんが告白の一部分を口にし始めた時。

 

「私は大祐さんの事がす――」

「悪い…あづみ。」

「えっ…?」

 

 俺は、予め謝った。

 少しの間、沈黙が部屋全体、更には俺とあづみさんを支配する。

 それが何分何秒かは分からない。

 俺はあづみさんが喋るまで待ち続けた。

 その時間は長く感じられた。

 何としても耐えろ、俺。

 

「………そう、だよね。ごめんなさい。私、早とちりしちゃったかな。」

「………」

 

 そう言うあづみさんの瞳からは大粒の涙が零れていた。

 そんな彼女を見るだけで心が締め付けられる。

 丸で心臓が潰れそうになるくらいに。

 

…そろそろ我慢の限界だ。

 もう彼女の悲しんでいる姿を見たくない。

 何があっても、あづみさんの笑顔が絶やされる事はあってはならない。

 じゃあ何故こんな真似をしているのか。

 理由なんて後からでも分かる。

 今は彼女の、あづみさんの表情を悲しみから嬉しさ、そして歓喜の表情に変貌させて見せようじゃないか。

 

「でも、私は何時までも大祐さんの傍に…」

「…それを言うのは俺の台詞だ。」

「えっ…?大祐く――」

 

 俺はあづみさんの言葉を遮る様に、彼女の体を抱き締めた。

 あづみさんは戸惑った様子でテンパっている。

 

「えっ…あ、あの…大祐くん…?」

「悪い、あづみ。告白するのは男の方からって相場で決まっているんでね。」

 

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