Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜 作:黒曜【蒼煌華】
今迄待って下さった方々、本当に申し訳御座いませんでした。
そして有難う御座います。
此れからもマイペースですが、宜しくお願い致します。
番外編の様に順風満帆な生活を送る主人公とは違うのでご安心を。
ㅤ移動を開始してから三時間経過。
ㅤきさらちゃんとあづみさんに空腹が襲い、俺達は早めの途中休憩をする事にした。
ㅤ時刻は丁度一時頃だろう。
ㅤそう思った俺が全員に伝えようとすると。
「午後1時ね。お腹が空くのも仕方ないわ」
ㅤリゲルさんが自身のバトルドレスの機能を使い、正確な時刻を告げた。
ㅤある意味体内時計と思ってくれれば想像し易いだろう。
ㅤ結構ざっくりしているが、バトルドレスを繊細な部分まで説明するのは骨が折れる。
ㅤ程に面倒臭いという事だ。
ㅤ俺は大木に寄り掛かるあづみさんの服が汚れないよう、黒いコートを手渡す。
ㅤリゲルさんはその場に立ったまま周りを見渡している。
ㅤそれはA-zちゃんも同じだった。
ㅤ二人共周囲全体を軽く見渡し、何かを探す。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ㅤ一方で、俺はあづみさんときさらちゃんの見守りを担当。
ㅤ互いに側から離れないよう気を付ける。
ㅤあづみさんが直ぐ隣に、きさらちゃんは俺の膝の上にと、気を付けなくとも離れる事の無い位置まで近い距離。
ㅤそんな状況ですら、俺の中に違和感は無い。
ㅤ片方は彼女という存在、もう片方は半成人にすら満たない7歳の少女。
ㅤ二人の女性の肌がくっ付く位に近かろうが、興奮や戸惑い等といった感情は湧かない。
ㅤそれに加え、俺からすればきさらちゃんという存在は妹に近しい。
ㅤ前世で読んだ事のある同人誌とやらみたいに、妹を対象に興奮する変態では無いと自分で自覚している。
ㅤそれでも大切な存在。
ㅤ守ってあげなければと、俺の中では既に決まっていた。
ㅤきさらちゃんは妹として見ている事も。
「あづみさんもきさらちゃんも、寒くない?」
ㅤそういう理由で、二人の繊細な部分まで気に掛けている。
ㅤあづみさんは重度の病気持ち、きさらちゃんは心身共に幼く、双方の体調が心配だった。
ㅤ事実、後者にはここまで来るのに俺の背中を何回か借した。
ㅤその度に前者からは、羨ましそうな視線を送り付けられていたけど。
(後であづみさんにもやってあげよう)
ㅤ彼女の視線に耐えられなくなった俺は、何の躊躇も無くそう思った。
ㅤ本来なら男性が女性を背負う行為は、必要最低限の時以外にしてはいけない。
…訳では無いが、無意味にする事こそ必要無い。
ㅤじゃあ何故咄嗟にそう思ったのか。
ㅤ答えは簡単。
ㅤ俺はあづみさんという存在其の物を大切にし過ぎているのだ。
ㅤ既に依存を越したレベルとも言える。
ㅤそこまで到達してしまう程に彼女が好きなのだ。
ㅤあづみさんが俺をどう思ってくれているのかは分からないが、少なくても好意を抱いてくれている事は知れた。
ㅤその事実を聞かされた昨日は…飛び跳ねる程に嬉しい気分を味わったな。
ㅤ思い出しては口元がにやけてしまう。
ㅤそんな変態紛いな事をしていると、リゲルさんが此方に近付いて来た。
「…ふぅ、何か食料になる物はないかしらね」
「言うて此処らは森林一帯。食べれそうな物は見当たりませんよ?」
「いいえますた、木の実ならそこら中に実ってます」
ㅤそう言われ周りを見渡すと、A−Zちゃんの行った通り。
ㅤ木の実なら沢山実っている。
ㅤだが、安全かどうかも分からない木の実を彼女達にに食べさせる訳にはいかない。
ㅤ俺が毒見して口にしても安全かどうか、序でに美味しいか確かめてから調理なり何なりした方が良いと思う。
ㅤなに、壊れるのは歯で砕かれた木の実と俺の腹だ。
ㅤ自分を犠牲にして彼女達の食料を得られるなら安い安い。
ㅤきっちりと代償に見合っている。
「あ、俺が毒見しますよ」
「駄目よ。食べても大丈夫か分からないんだから」
「だからじゃないですか。俺が食べて、もし安全なら全員口に出来ますし。そうじゃなかったら俺が腹を抱えて呻くだけです」
「それこそ時間のロスになってしまうわよ?…あ、そうね…持参した物を食べれば良いだけじゃない」
「えっ…持参なんて方法、あったんですか?」
ㅤそれってヴェスパローゼさん宅から拝借してきたって事だよな。
ㅤ相手方の了承の上なのか、将又盗ったのか。
ㅤもしヴェスパローゼさんから許可を得ているなら、リゲルさんの近くに居るあづみさんも貰って来てーー
ㅤあぁそうか、あづみさんはバトルドレスじゃなかった。
ㅤバトルドレスじゃないという事は多量の荷物を持ち運べない。
ㅤバトルドレスであるリゲルさんにこそ、ヴェスパローゼさんは許可を下ろしたのか。
ㅤ将又盗みを働い…いや、やはりリゲルさんに限ってそれは無い。
ㅤ彼女は以下にも不誠実を嫌いとしている。
ㅤ自分で盗みに手を染める筈等ない!
ㅤはず。
ㅤ確証?あづみさんの為ならリゲルさんは何だってするからなぁ…。
ㅤ取り敢えずそれは置いて、だ。
ㅤじゃあA−Zちゃんも承諾を得て、何か持ってきたのか?
ㅤ抑リゲルさんは何を持ってきたのか?
ㅤ俺はふと疑問が湧いた。
ㅤだから質問する。
「A−Zちゃんとリゲルさん、二人の持ち物を確認しても?」
「えぇ、構わないわ」
「私は持参をしていなければ手荷物すらありません。ますたの食料だけでも持って来れば良かったです?」
「いや、もし俺の分だけ持って来たとするならば三人で分けて欲しいかな」
ㅤあれれ、見当外れか。
ㅤてっきりA−Zちゃんも何かしらは持ってきていると思ったんだけど…。
ㅤとなると荷物を持っているのはリゲルさんと、小さいリュックを背負ったきさらちゃんだけか。
ㅤるんるんと、恐らくピクニック気分で楽しんでいるきさらちゃんが可愛らしい。
「リゲルさんはヴェスパローゼさんから何を?」
「…大祐の中では、あの蜂女から私が何かを貰ったって勘違いしてるけど…実際には違うわ。貴方の親友「碌でなしの森山碧」が私にとある物を勧めてきたのよ」
「ろっきーさん…だっけ?」
ㅤあづみさん、それはちゃう奴や。
ㅤ随分と違う方向で覚えられたな、へっきー。
ㅤ何処からかテレーテーとか流れそうだ。
ㅤまぁ、間違えるのも分からなくない。
ㅤリゲルさんが碌でなしの森山碧とか言っちゃうから、あづみさんが略してしまっただけの事。
ㅤ何故碌でなしと言ったのかまでは不明だ。
ㅤまさかとは思うが。
「リゲルさん、へっきーが俺に攻撃してきたの…まだ怒ってます?」
「あっそうだっ、へっきーさんだったね」
「怒こるも何もあの男は親友である大祐に襲い掛かったのよ!?…あのままじゃ、私のあづみと貴方は危なく…」
「リゲル、違う感情が混じってるよ」
「はい?リゲルさん、最後の方が聞き取れなかったんですが…」
ㅤ兎に角、過ぎた事を気にしても始まらない。
ㅤ確かにへっきーが攻撃してきた理由も、普通の人からすれば理解し難いだろう。
ㅤだが、長年友達付き合いをしてきた俺なら分かる気がしなくもない。
ㅤ絶対に分かるなんて無責任な事が言えない辺り臆病チキンだと察して頂けるだろう。
ㅤ例の森山碧はそれ以上にチキンだけどな。
ㅤ取り敢えず先程の件に関して、へっきーは蜂が嫌いだからそれに味方した俺如襲い掛かってきたのだろう。
ㅤという結論で話を終わらせたい。
「…で、その変態から貰った物って何ですかい?」
ㅤ例の森山くんから貰った物。
ㅤはてさてリゲルさんは何を渡されたのか。
ㅤあの変態がリゲルさんみたいな美人さんにプレゼントする物だ。
ㅤ信用ならない…訳では無いが、まさかへっきー、リゲルさんに目を付けて…!
ㅤよし、後でシメておこう。
ㅤとか言う心配は無いから安心してくれて構わない。
ㅤへっきーはそう軽々しく女性に手出しなんかしないから。
ㅤん?待てよ。
ㅤなら何故リゲルさんにプレゼントなんかを渡したのか。
…やっぱりへっきー、リゲルさんをーー
「…大祐、何だか顔が険しいわよ。人を恨む様な顔をしているわ」
「リゲルさん、へっきーが貴方を狙ってる可能性が浮上してきました…!」
「はぁ…?何の為に?」
「いや、単純に好意で」
「そんな訳無いじゃない!」
「有り得なくは無いです。…くそっ、へっきー!リゲルさんは渡さないからなぁ!」
「ちょっ、大祐…そこまで大声出さなくても…」
ㅤふぅ、スッキリした。
ㅤこうでも叫んどかなければ俺の気持ちが治らない。
ㅤだが、この叫びが後々後悔する事に繋がるとは知る由もなかった。
「〜♪♪だいすけ、うゆゆ〜♪」
「…お腹空いてるだろうに。ごめんね、ちょっと待っててくれるかな」
ㅤきさらちゃんが膝の上でパタパタと足を動かしてる。
ㅤその動作だけでも至極可愛らしいのに、彼女は更に、後ろを振り返って俺の胸元に抱き付く。
ㅤで、満面の笑み。
ㅤあかんな、可愛過ぎる。
ㅤそんな相も変わらずなきさらちゃんだったが、ふと何かを思い出したのか持参したリュックの中を漁り始める。
ㅤ一体どうしたのだろうか?
ㅤ必死にリュックを探るきさらちゃん。
ㅤ少しするとそのリュックから手を抜き、何かを差し出して来た。
ㅤ果たして彼女の手が握っていた物とは。
「だいすけ、あづ、きぃでわけゆっ」
「…有難いけど、それ、何入ってるの?」
ㅤきさらちゃんの手には、小さな袋が握られていた。
ㅤ色は黄色。
ㅤだから中身は見えない。
ㅤでは、何が入っているのだろうか。
ㅤ俺が質問すると、きさらちゃんはいそいそと袋を開けて中身を見せてくれた。
ㅤ何方かと言えば彼女の笑顔を見ていたいのだが…そうも言っていられない。
「…これは…お菓子、かな?」
「うぃ!」
ㅤ元気良く返事を返してくれるきさらちゃんは、そのまま自分でお菓子を口にする。
ㅤ食べても大丈夫だという事を伝えたいのだろう。
ㅤ見た目は四角く、短い棒状。
ㅤ俺はそのお菓子を手に取り「有難う」と一言、そして口に入れる。
ㅤきさらちゃんは隣に居るあづみさんにも袋の空き口を見せ、食べてとアピールしていた。
ㅤそれを察したのか、空腹を満たす為にもあづみさんは笑顔で袋に手を入れる。
ㅤ殆ど同じタイミングで彼女とそのお菓子を頂く。
ㅤうん…これは中々美味しい。
ㅤ感想。
ㅤ見た目といい食感といい、○ロリーメイトに近い感じがした。
ㅤだが、あそこまでパサパサとはしていない。
ㅤ噛んだ瞬間に分かったが、あの類の菓子よりも圧倒的に柔らかいのだ。
ㅤそして口当たりも良く、何より甘い。
ㅤ然し砂糖等の甘さでは無い。
ㅤこの味はアレしか無いだろう。
「美味しいね。きさらちゃん、これ…ヴェスパローゼさんから渡されたの?」
「ろーぜが、みぃなでたべてって」
ㅤまぁ、だよな。
ㅤこの甘さにヴェスパローゼさんが絡んで来るともう確定だな。
「これ、蜂蜜かなぁ…?凄く美味しい」
「おっ、あづみさんも気付いてたんだね。きさらちゃん…良ければリゲルさんやA-zちゃんにもあげてくれるかな」
ㅤ俺がそう言うと、きさらちゃんは二人の前に行き。
「えーぜ、あげゆ」
「そんな…私は大丈夫ですよ?ますたがお食べ下さい」
「りげゆ、や」
「…私、何でこんなに嫌われてるのかしら。別に構わないのだけれど」
ㅤんー…きさらちゃんとリゲルさんって相性悪いのかな…?
ㅤきさらちゃん、良く見るとあづみさんに似てる部分が一杯あるんだけど。
ㅤあ、でもな…外見的には似てるって話だからなぁ。
ㅤもしかしなくても、リゲルさんはあづみさんの外も中も全部好きだろうから、やはり二人は完全に違く見えているのだろう。
ㅤ兎に角それは置いて、だ。
ㅤ食料確保に安全ルートの確認、野宿出来る場所を探さなければ。
ㅤやるべき事は沢山残されている。
ㅤ一つ一つ、確実にクリアしていかなければ。
「…さて、そろそろ動くか」
「そうね。少し早いけれど、仕方無いわ」
「きぃ…まだやすぅたぃ」
「もしあれなら背中を貸すからさ。もうちょっと我慢しててくれるかな」
「がまんすゆっ、だいすけ、せなか!」
ㅤ何か俺が背中其の物みたいだな。
ㅤそれって最早、人間として見られていない…圧倒的に便利な乗り物というか。
ㅤ俺の勝手な思い込みだろうけど。
ㅤいや然し…話が変わるが、俺はきさらちゃんに随分と気に入られている…のか?
ㅤ膝にも背中にも乗りたがるからなぁ。
ㅤまぁ俺としては凄く嬉しいから良いんだが。
ㅤただ一つ心配なのは、彼女は俺の言う事を何でも聞いてしまう事だ。
ㅤ万が一にも俺が変な事を言う可能性はゼロに等しい位に有り得ないが…きさらちゃんの将来的に怖い。
ㅤこのままずっと俺から離れたがらなくなってしまったらどうしようか。
…その時はその時考えよう。
ㅤ今頭で考えるべき事では無かったな。
「あづみ、良かったら私が…お、お姫様抱っこ…してあげるから。何時でも遠慮無く言って」
「ふふっ、ありがと、リゲル」
「ますた、此処から何方に進めば良いのでしょうか?」
ㅤ丁度目的地までの道を確認しようと遠くを眺めていると、A−zちゃんが近くに寄って質問してきた。
ㅤまあ、確かにA−zちゃんの言う通りだよな。
ㅤ先ずは向かいたい方角を決め、そこから安全ルートを探す事に派生させる。
ㅤという事は。
「リゲルさん。お手を患わせてすみませんが…」
「いいえ、大丈夫よ。方角でしょう?此処、緑の世界から白の世界への方角は………北西。だけれど…まさか突っ切って行く訳にもいかないわ」
「ですね…途中には青の世界も待ち構えています。どうやって切り抜けるか」
ㅤ野宿する事も考えると相当な時間が必要になりそうだ。
ㅤだが、此処らで詰まっている訳にはいかない。
ㅤパッと決めてささっと移動したいが…それとノープランは丸で話が違う。
ㅤあづみさん、リゲルさん、A–zちゃんは青の世界から狙われている訳で…。
ㅤいや、俺も指名を手配されていたな。
ㅤ言ってしまえば青の世界だけじゃなく、赤の世界からも。
ㅤ戦力的には厳しい相手が勢揃いしている二つの世界。
ㅤ何としても避けたいところだ。
ㅤ俺はどうしようかと試行錯誤を繰り返し重ねる。
ㅤあまりに悩んでいる所為か、リゲルさんが心配し近付いて表情を伺っている。
ㅤ相変わらず美人だこと。
ㅤそんな彼女に心配は要らないと、ニコッと爽やかな笑顔を見せる。
ㅤするとリゲルさんも頰を赤くさせながら笑顔を返してくれた。
ㅤその可愛らしい表情に思わずドキッとしてしまう。
ㅤやはり壊滅的な可愛さ、美しさを兼ね備えたリゲルさんには敵わない。
「…大祐、あまり悩まないで?歩きながら考えるのも手よ」
「有難う御座います。リゲルさんの言う通りかもしれませんね」
「リゲル、大祐くんが心配なんだよ?ずっと顔見てるもん」
ㅤあづみさんの言葉に「み、見てた訳じゃ無いわっ…」と誤魔化そうとするリゲルさん。
ㅤ先程から頰の赤が引かない辺り、事実らしい。
ㅤリゲルさんにずっと見られてたと思うと…何だか此方が恥ずかしくなってくるな。
ㅤそう意識すると、何故か彼女の顔が見れなくなってしまった。
ㅤそれはリゲルさんも一緒らしく、彼女も俺から目を逸らしている。
ㅤ偶にチラッと視線を送るとリゲルさんも此方を向いていて…咄嗟に顔を背けてしまう。
ㅤ今彼女の事を意識してどうする。
ㅤ兎に角今は違う物に視野を向けろ。
「…ふふっ、リゲルが照れてる」
「なっ…!そんな事は…無い、わ…」
「りげゆ、かぉまっか」
「リゲル様が熱を患ってる可能性がありますね」
「だ、大丈夫よ!放っておいて頂戴…」
ㅤリゲルさんは丸で逃げる様に話を終わらせた。
ㅤあのルックスから初々しさなんて見せられたら彼女に抗える者はいないだろう。
ㅤ全く…卑怯ですね、リゲルさんは。
ㅤそんな会話を楽しみながら俺達は歩みを進めた。
ㅤ此れから訪れる不幸に気付きもせずに。
ーーー
ㅤそれから一時間程足を動かし続けた。
ㅤ全員で話し合い、一時間歩いては5〜10分程の休憩を挟む事にした。
ㅤあづみさんやきさらちゃんの身体的な事を配慮しての決断だ。
ㅤ二人に無理はさせたくないから。
「…ふぅ、じゃあ休みますか」
「つかれた…足がくたくただよぅ…」
「そうね。あづみが少し辛そうだし…長めの休憩を取りましょう」
「きぃはらぃじょぶ!」
「ふふっ、きさらちゃんは体力あるね」
ㅤまぁ…俺が背中におぶってるからかな?
ㅤ偶に後ろから寝息みたいなのが聞こえてきたのは恐らく気の所為だろう。
ㅤきさらちゃんが元気なら良いんだよ。
ㅤ問題はあづみさんだ。
ㅤ彼女は相当疲れたのか、木に寄り掛かってぺたんと座り込んでしまった。
ㅤ至極心配だ。
ㅤ取り敢えず気休めにでも。
「リゲルさん、A–zちゃん、見回りをお願いします」
「OK、分かったわ」
「了解です、ますた」
ㅤ俺の指示に従い、直ぐに行動に移す二人。
ㅤ流石だ、その行動力が羨ましい。
ㅤえっと後はーー
「きさらちゃん、蜂達を呼ぶのってリソース消費する?」
「うぃ。すこし」
「もし良かったら、蜂達も見回りに加わって欲しいんだけど」
「ょゅぅ」
ㅤきさらちゃんはそう言うと「しーく、ぶいけいど」と蜂達の名前を口にして、自分の近くに呼び寄せる。
ㅤするときさらちゃんまで見回りに行ってしまったでは無いか。
ㅤ付近にリゲルさんとA–zちゃんがいるから…とは言え、あまり離れるのは良く無い気がするな。
ㅤ恐らく本人は良かれと思って行動に移したのだろうけど。
ㅤそんな事より…あづみさんの事だ。
ㅤ俺は彼女に近付き、地面に膝を着いてあづみさんをみつめる。
「…何処か痛い箇所とか、優れない箇所とかある?」
「えっと…足が、痛いかな…」
「分かった、有難う」
ㅤそれを聞いた俺は羽織っているコートを脱ぎ、草や葉っぱが散らばった地面に敷く。
「ちょっとこの上に横になって貰えるかな」
「う、うん」
ㅤちょっと急過ぎて驚かせてしまったかな。
ㅤあづみさんは遠慮気味に、俺のコートの上に寝転ぶ。
「足の痛みを取る為に、マッサージするよ?大丈夫かい?」
「は、はいっ。宜しくお願いします…」
ㅤ恥ずかしそうに返事を返してくれるあづみさん。
ㅤ可愛いなぁ…この光景が何と素晴らしい事か。
ㅤなんて煩悩は捨て置いて、俺は彼女の足をマッサージする為にその華奢な御足に触れる。
ㅤすると彼女の体はピクッと反応を示した。
ㅤ更にあづみさん自身の呼吸が荒くなっているのが分かる。
「…心配しないで。変な事はしないからさ」
「違うの…その…大祐くんに触られて、私…ドキドキしちゃって」
「俺もだよ。…段々リラックスして来ると思うから、眠たくなったら寝ても構わないからね。先ずは太腿から、徐々に下に向かってマッサージしてくよ?」
「…えと、スカート、邪魔じゃない…?」
「……………」
「……………」
ーーー
『そう言えば体調はどうだい?』
『うん、大祐くんの御蔭で安定してる…のかな』
『言うて俺も「リソース放出能力」の制御をしてるからね。まだ完全とは言えないけど、範囲を抑える事は出来てる状態なんだ』
『そうなんだ…じゃあ、私は大祐くんと離れない方が良いよね…?』
『肌と肌を密着させろなんて言わないけど、確かにあまり離れない方が先決かな』
『で、でも…普段から離れてない…もんね』
『それ位が良いのかなぁ…。まぁ俺があづみさんに合わせるから、お好きに』
『ありがと。けど、無理はしないでね』
『逆も又然り、だよ?』
ーーー
「…よし、終わったよ」
「ふぁ…気持ち良かった…ありがと、大祐くん」
「いやいや。少しは楽になったかな?」
「うんっ、凄く軽いよ。……あのね、良かったら…またして欲しいな」
「勿論。何時でも言ってよ」
ㅤ大体10分位の軽いマッサージだった。
ㅤ太腿から脹脛付近までを一通り揉んであげ。
ㅤ足の裏は?と聞いたら「き、汚いからやぁ…」と、超可愛く答えられた。
ㅤまぁ、本人が嫌がってるんだから無理強いはしない。
ㅤ後は…俺のメリットが大きかったな。
ㅤまさかあづみさんの足を触る事になるとは。
ㅤマッサージをし始めたのは俺だが。
ㅤえ?確信犯?違うから、あづみさんが少しでも楽になるようにしたかっただけだから。
ㅤ此れだけは間違い無い。
ㅤそれと…うん、あれだ。
ㅤあづみさんのスカートの中に手を入れる事態となってしまった訳だが。
ㅤ仕様が無かったんだ、まさかあづみさんにスカートを上げて貰う訳にもいかないから。
ㅤ出来るだけ彼女の方を向かないように頑張った。
ㅤ最後まで俺の理性が保たれた事に感謝だよ。
ㅤ結論、精神的にヤバい、そしてあづみさん細い…可愛い。
「…終わったかしら?」
「はい、無事に」
「何だか医者みたいね。…機会があれば、私にもして欲しいわ」
「構いませんよ?優しく致しますから」
ㅤまさかリゲルさんからも指名を受けるとは。
ㅤ対して俺が了承を出すと「楽しみね…♪」と、上機嫌そうに笑顔を浮かべていた。
ㅤ今日は随分と彼女達の笑顔が見れるな。
ㅤ嬉しい…な、毎日がこんな平和であれば良いのだが。
ㅤ因みにきさらちゃんはA–zちゃんとお散歩中。
ㅤ丁度今、戻って来たところだ。
「ただぃぁ」
「お帰り、A–zちゃんもね」
「周りには気配等感じられませんでした。此処は安全かと」
ㅤ成る程、偵察迄熟してくれていたのか。
ㅤやはりA–zちゃんは有能其の物だ。
ㅤ例え有能じゃ無かろうが側に居て欲しい存在だけど。
「じゃあ今日はもう野宿します?」
「そうね。休める時に休んでおかないと。幸い敵は居ないみたいだしーー」
ㅤA–zちゃんの偵察に間違いは無いだろう。
ㅤリゲルさんも見回りに出てくれた限り、敵影は確認しなかったらしい。
ㅤ二人が安全と言えば安全だ。
ㅤ何処かそういう確信があった。
ㅤそれは一瞬にして崩された。
ㅤリゲルさんの言葉を掻き消す様に、彼女と俺の前をビームライフルが通り過ぎて行く。
ㅤその一瞬で俺とリゲルさん、A–zちゃんは臨戦態勢を取った。
「見付けましたよ、各務原あづみ、リゲル、九条大祐」
「今度は逃さない。ベガ様の為に」
ㅤ何処かで見た事がある顔だ。
ㅤ二人共綺麗な青色の髪の毛でロングヘアー、片方は赤い瞳にもう片方は水色の瞳。
ㅤ俺は彼女達を視界に入れた瞬間、どうやってリゲルさん達を逃がそうか考えた。
ㅤ然しリゲルさんといいA–zちゃんといい、最早逃げるという選択肢は無いようだ。
ㅤ二人は既にビームサーベルを構えている。
「…オリジナルXIII、type,IIちゃん、type,Xちゃん。又顔合わせする事になるとはね」
「えぇ、嬉しいです」
「捕まえるには絶好のチャンスだから、かな」
「私達からすれば全然嬉しくないわ」
「そうね。次は顔合わせしなくて済む様にしてあげるわ」
ㅤまさか今とは…タイミングが悪い。
ㅤにしても復帰が早いな、つい何日間か前に戦ったばかりだぞ。
ㅤまぁ良い。
ㅤ現状俺は戦えない。
ㅤ要するに、逃げる以外選択肢が無い訳だ。
「どうするか…」
「ふふっ、逃げれると思っているのですか?」
「その不敵な笑みも二度と見たくないな」
「そうですか…ですが、今回は私達二人じゃありませんよ?」
ㅤオリジナルXIIIの一人、type,Xちゃんの話が終わると同時に、背後にぞわっと悪寒が走る。
ㅤ俺は振り返り、後ろにワンステップ踏んで直ぐ様その場所から離れる。
ㅤだが然し…俺の腹部には切り傷の様な跡が掠って残っていた。
「あれ、外してしまいました」
「やはり不意打ちは効きませんね。流石です」
「これは意外です。反応速度は中々良いようで」
「…オリジナルXIII、type.,X厄介者の登場ね」
ㅤ厄介者…リゲルさんがそう言うなら間違い無く面倒臭い相手だ。
ㅤ然もオリジナルXIII三人を同時に…どうすれば良い、何が正解だ?
ㅤ何をすれば隙を作れる、逃げれる方法は。
ㅤ俺の脳内はそんな事ばかり考えていた。
ㅤするときさらちゃんが俺の前に立ち、丸で渡して堪るかと言わんばかりの表情を見せていた。
「きさらちゃん…」
「だいすけは、きぃがまもゆっ」
「へぇ…そんな幼女に護衛されてるんですか。情けないですね」
ㅤ此奴っ…馬鹿にされても否定出来ないのが腹立つ…!
「まぁ良いです。取り敢えず、逃げれるって思わない事が大事ですよ」
ㅤオリジナルXIIItype,IXがそう言うと、彼女の周りに何やら円形状の物体がふよふよ浮き始める。
ㅤその物体は電撃を纏い始め、バチバチと嫌な音を鳴らしていた。
「さぁ…足掻いて見せて下さい」
ㅤ今回ばかりは…腹を括らなければならないか。
ーーー
森山君から渡された物…一体何でしょうね…?