Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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何時の間にかこの小説を書き始めて一年が経過しました。
もう直ぐで50話に到達。
今迄見て下さった方々、本当に感謝致します。
此れからも頑張って投稿していきますので、宜しくお願い致します。
来週は水曜日に更新します。
(下手ながら挿絵も描いている途中です故、両立で頑張ります)


第四十八話: 危機脱出の希望

「流石に…厳しいか…!?」

 

ㅤオリジナルXIIItype.IXとの邂逅から数分。

ㅤ俺達は既に疲労困憊となっていた。

ㅤ此ればかりは当たり前の結果と言っても過言では無い。

ㅤ青の世界を統べるアドミニストレーター、其奴等が産みの親であるオリジナルXIII。

ㅤ彼女達が強大な力を持ち得ているのは必然。

ㅤそんなオリジナルXIIIの内、三人を同時に相手しているんだ。

ㅤ厳しく無い筈が無い。

 

「くぅっ…!」

「リゲル!」

「リゲルさんっ!」

 

ㅤ加えて、俺は現状バトルドレスを失っている。

ㅤ自分に与えられた唯一無二の力が手元に無いというのは、この世界ではある意味死を表していた。

ㅤであるが故に、戦力として動けるのはリゲルさんにA–zちゃん、きさらちゃんの三人のみだ。

 

ㅤその三人でtype,Xちゃん、type,IIさんを相手している訳だが…明らかにオリジナルXIII側の二人が圧倒している。

ㅤ如何してだ?戦闘能力、センス共に負けず劣らずのリゲルさんに加えてオリジナルXIIIの一人であるA–zちゃん、数で押し切れるきさらちゃんが共闘しているのにも関わらず…三人は押されていた。

 

ㅤまさかそんな…と、内心意表を突かれた気分を味わう。

ㅤ然し、丸で余裕の表情を見せながらリゲルさんを窮地へ追い詰めるtype,IIに気を取られているとーー

 

「余所見はいけませんね」

「ちぃっ…!」

 

ㅤ横から、背後から、真っ正面から、絶え間無いビットの嵐が襲い掛かって来る。

ㅤそしてtype,IXは高みの見物。

ㅤ至極苛つく光景だった。

ㅤだが…少しでも気を緩めると一瞬にしてビットの餌食となる。

ㅤtype,IXがどんな態度であろうと、気になんかしている暇無い。

 

「ふふっ、中々良い反応を見せますね。バトルドレスを装着しないでそれとは…二人が過大評価していた理由も頷けます」

「はぁっ…はぁっ…!」

 

ㅤ勝利の笑みを浮かべるtype,IXに、息切れしながらも兎に角動く自分。

ㅤ対照的な俺達の姿は見るに耐えない光景と化していた。

 

「…何時バトルドレスを装着しないのですか?良い加減粋がるのは止めた方が身の為ですよ?」

 

ㅤtype,IXがその言葉を放つと同時に、ビットの攻撃は激しさを増した。

ㅤビット本体から放たれている電撃も強まっているのが、目に見えて分かる。

ㅤ何時までも嫌な音を響かせながら反撃して来るその物体。

ㅤ流石に体力の限界があった。

ㅤ一瞬、ほんの瞬間的な隙を晒したその時、俺は直ぐ其処までビットが近付いている事に気が付いた。

 

…が、無論、今更反応したところで時既に遅し。

ㅤ俺はギリギリで躱そうとするも、その電撃に体を蝕まれーー

 

「しーくっ、だいすけ!」

 

ㅤと、戦場にきさらちゃんの声が響き、スカウトシークが俺の身代わりにビットの攻撃を食らってしまった。

ㅤつい最近、出会って直ぐに仲良くなったのにも関わらず…現実とは非情だ。

ㅤスカウトシークはきさらちゃんの言葉に躊躇せず動いて。

ㅤ目の前で電撃に焦がされていく姿を、俺は見ている事しか出来なかった。

ㅤ蜂と言えど、懐いてくれれば可愛い。

ㅤ俺を好いてくれて擦り寄って来るその姿は、見慣れれば犬や猫と何ら変わりない。

ㅤ愛着が湧くっていうか…可愛いのだから。

 

ㅤだが、そんな子達が俺を守ろうと次々にビットの電撃を食らっている。

ㅤ一度相手にした時は何も思わなかった…けど、こうして聞こえて来る蜂達の悲痛な鳴き声は聞くに耐えない。

ㅤ俺はその光景に圧倒され、動きを完全に止めていた。

 

「だいすけっ、にぇてっ!」

「…っ!ごめん!」

 

ㅤきさらちゃんの声にハッと意識を取り戻した俺は、蜂達を犠牲に後ろへ下がる。

ㅤ此処で一度type.IXの視界から消えなければ、又波状攻撃を食うだけだ。

ㅤこれ以上犠牲を生む訳にはいかない。

 

「…邪魔ですね。先ずは其処の少女から片付けるとしましょう」

 

ㅤふと、俺はtype.IXの標的が自分からきさらちゃんに移った事に気付く。

ㅤ駄目だ…只でさえ蜂達に指令を出し、リソースを消費しているきさらちゃんがあのビットに狙われるのは。

ㅤ守るんだ、きさらちゃんを。

 

ㅤそう思った俺は、考える間もなくきさらちゃんに向かって全力疾走する。

ㅤその間にも蜂達が一匹、又一匹とビットの電撃で倒れていく。

ㅤ段々ときさらちゃんに近付いていくビット。

ㅤ何としても彼女をあの場から離脱させなければ。

 

「幼い体は雷に蝕まれ、その命は散り散りとなる」

「ぶいけいどっ、しーくっーー」

「きさらちゃんっ!其処から離れてっ!」

「…っ!」

「もう手遅れです。行きなさい、タービンビット!!」

 

ㅤ恐らく最終自衛として、ロイヤルブリゲイドとスカウトシークを盾として自らの前に立たせたのだろう。

ㅤ然しtype.IXの操る「タービンビット」とやらは蜂達を容赦無く焼き殺し、きさらちゃんへと接近して行く。

ㅤその危機感を察したが、然しきさらちゃんの足は動かなかった。

ㅤ怯えて竦んでしまったのか。

ㅤ俺は兎に角全力で彼女へと走って行く。

 

「さぁ、良い悲鳴を聞かせて下さい?」

「い…あ…きぃーー」

 

ㅤそしてタービンビットときさらちゃんの距離が殆どゼロに近くなってしまった時。

 

「間に合うか!?」

 

ㅤ俺は擦れ擦れで彼女の体を抱き締め、タービンビットを回避する。

ㅤそのまま地面を転がりそうになったが、何とか足に力を入れて踏ん張る事に成功。

ㅤ直ぐ様きさらちゃんの体をお姫様抱っこして木の陰に隠れる。

 

「チッ…逃がしませんーー」

「やらせないわっ!」

 

ㅤtype.IXは隠れた俺ときさらちゃんを追撃しようと試みるが、リゲルさんがすかさずカバーに入る。

ㅤ然し良く見ると、彼女の腹部には一閃された様な傷口が顔を覗かせていた。

ㅤ重傷…どころでは無い。

ㅤその傷口からは鮮血が滴り落ちている。

 

ㅤそれでも此方を危険と認識してくれて来てくれたのか…だが、先程から姿の見えないA–zちゃんが一人で二人を相手する事となってしまった。

ㅤやはりオリジナルXIIIとの戦いに楽という文字は無いな。

ㅤリゲルさんとあづみさん、A–zちゃんが必死に耐えてくれている中、俺はどうやってこの状況を打破しようかと思考を回転させる。

ㅤ俺だけが投降すると言っても反応は薄いだろう。

ㅤだからと言ってこのまま戦闘を続けても負けは目に見えている訳であって。

 

ㅤそうして周囲に意識を飛ばしていると、きさらちゃんの小さな体が小刻みに震えている事に気がつく。

 

…無理も無い。

ㅤ目の前で命が散って行く様を見せ付けられ、その刃が今度は自分に迫って来たんだ。

ㅤまだ7歳の彼女に…怯えるなという方が可笑しい話だ。

ㅤそんなきさらちゃんの体をぎゅっと抱き締めると、少しばかり震えが治まる。

ㅤ此れだけで彼女が安心出来るのであれば幾らでもしてあげたい。

ㅤだけど今は……今だけは、ちょっとだけ無理を言わせて。

ㅤこの場を乗り切るにはきさらちゃんの力が必要だから。

 

「…ぅゅ…?」

 

ㅤ彼女の事が心配で見つめていると、その綺麗で雫の溜まっている瞳を此方に向けられた。

 

「…あ、ごめんね。ちょっと良いかな…?」

 

ㅤ俺の口からは不意にそう言い放たれる。

ㅤ思わず出てしまった不可抗力な言葉だ。

 

「ぃい」

 

ㅤ然し彼女は肯定の頷きを返してくれた。

ㅤなら、続けるしか無い。

ㅤ何れにせよ今頼れるのはきさらちゃんなのだから。

 

「あのね…嫌がられるのを重々承知でおねがいするよ?俺と一緒に、彼処にいる敵を倒すの…手伝ってくれないかな」

「……」

「嫌なら無理にとは言わないよ。蜂達にお願いして、きさらちゃんだけでもヴェスパローゼさんの元にーー」

「きぃ、そえ…いあ。だいすけといっしょ…いい」

 

ㅤ彼女はそう言うと、俺の手をきゅっと握って離さない。

ㅤそうだ。

ㅤこの小さな手を守る為にも無理強いをしなければならない。

ㅤ此れならもしかしたら、彼女達だけでも逃げる事が出来るかも知れないのだから。

 

「…じゃあ、このまま手を握ったまま。万が一は俺が盾になる。だからお願い」

「………うぃ!」

 

ㅤきさらちゃんの純粋で元気なその返事…相変わらず心を和ませてくれる。

ㅤ確かに現状心を和ませている暇は無いが、今の俺にはこの場を見通す為の『落ち着き』が必要だ。

ㅤ冷静に…且つ大胆に。

ㅤ相手に一瞬の隙を与え、全員で離脱を試みる。

ㅤその為にはきさらちゃんとリゲルさん、A–zちゃんにこの力を託す他無い。

ㅤ無論、あづみさんの協力も必要不可欠だ。

 

…これならいける。

ㅤいや、上手くいかなければ其処で終わりだ。

ㅤだから絶対に相手の隙を逃してはいけない。

ㅤチャンスは…一度っきりだ。

 

「…かはっ…!」

「リゲル!下がって!」

「リゲル様ーーぐぅっ…!?」

 

ㅤ2人が耐え凌げるのにも限界が来た様だ。

ㅤいや、逆に良く耐えてくれたと思う。

ㅤ彼女達の稼いでくれた時間を無駄にはしない。

ㅤ今度は此方から…攻めさせて頂こう。

 

「きさらちゃん…頼んだよ!」

「うぃ!!」

 

ㅤ先程まで隠れていた木の後ろから俺ときさらちゃんは姿を現す。

ㅤ制御出来るかどうか不安で仕方が無かった『リソース放出能力』の出番だ。

ㅤ下手すれば相手にもリソースが渡ってしまう。

ㅤ慎重に、きさらちゃんと蜂達だけに集中してーー

 

「……今!!」

「しーく!ぶいけいど!」

 

ㅤ俺の声に合わせ、きさらちゃんが蜂達をこの場に呼び寄せる。

 

「大祐…!?」

「今更雑魚を盾にしたところで…舐められたものですね」

 

ㅤ流石のリゲルさんも「蜂達を集めて盾にし、その隙に逃げる」という、通用しない選択を取ったのかと勘違いして驚きを隠し切れずにいた。

ㅤ確かに…側から見ればそう思うしかないだろう。

ㅤ今の俺にはバトルドレスという力は存在しないのだから。

ㅤ唯一残されたこの能力だけだから…!

 

「きさらちゃんと蜂達だけを対象に…リソース、全解放!!!」

 

ㅤ隙が無いのなら作る他無い。

ㅤこの攻撃は必ず…成功させる。

 

ーーー

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