Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第四話: 同行許可

 音の無い世界。

 何も聞こえない空間。

 例えとしてはどちらもあっている。

 

 俺は夢の世界から、現実世界に意識を戻す。

 

 朝だ。

 嫌な感覚だった。

 今までは。

 特に良い夢を見ている時は。

 

 そう、今までは。

 

 今日の朝の目覚めは嫌な感覚など無い。

 自然に起きれた。

 嫌な感覚では無いが、痛い感覚はある。

 背中が痛い。

 硬い壁に寄り掛かって寝ていたのだから当然だ。

 だが、痛い感覚はあっても嫌な感覚は無い。

 それは何故か。

 

…実は先程のニ択、どちらとも外している。

 音の無い世界でもなければ、何も聞こえない空間でもない。

 正解は寝息だけが聞こえる空間だ。

 

「「くー…すー…」」

 

 そう。

 この二つの寝息。

 それだけが聞こえる空間なのだ。

 何とも可愛らしい。

 

 一つは俺の膝の辺りから。

 もう一つは俺の横から。

 この寝息の主二人…一人はとても可愛い少女、一人はとても美しい女性。

 そんな二人の寝息がこの距離感で聞こえて来るというのは、中々に理性が削られる。

 元々こういった事に関してのメンタルは高くないのに。

 ええい!メンタルが脆いとこんなものか…!

 

「…で、俺は…どうすれば良いんだ?」

 

 早く起きてしまうからこうなる。

 朝起きての開口一番の言葉に、虚しくなってしまった。

 

 

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

 

 

 少し時間が経つと隣で寝ていた女性…リゲルさんが目を覚ました。

 俺が「御早う御座いますリゲルさん」と一声掛けた瞬間、即座にバトルドレスを装着したリゲルさんに、戦場で扱っていたスナイパーガンを向けられた。

 焦る俺を見て、リゲルさんは思い出したかの様にバトルドレスを解除。

 「ごめんなさい…」と謝られた。

 

 因みに焦ったのは事実だが俺の膝の上で寝ている少女、あづみさんを起こさない為に身動きは取れずに。

 あのまま撃たれていれば間違いなく当たっていた。

 死ぬかと思ったよ、うん。

 

 その後はあづみさんが起きるまでまったりトーク。

 気付けば少し盛り上がってしまっていた。

 

「…それで、どういう攻撃方法を持っているの?」

「いや、あれですよ。酷いったらありゃしませんよ。初めて見たときはもうね、虐めと思いましたよ。あれは。…だって腹パンからの、さっきまで一緒に戦ってくれたお友達を投げるんですよ?」

「腹パン…お友達を投げる…」

「挙げ句の果てにはお友達爆散しますからね」

「爆散…!?凄まじいわね…」

 

 今話しているのは、某ゲームの某キャラクターの攻撃方法。

 全身が青いのに、急に赤いモヤモヤを纏い始めたと思いきや腹パンしてくるわ、お友達を投げてくるわ、火力(攻撃力)は高いわ。

 ある一定の高さから特殊動作を行う事で隙を減らしたりと、キャラ其の物は面白くある。

 使わなかったけど。

 

 こういう、ゲームの格闘技はカッコいいのが多くて参考にしたくなる。

 だが現実でやれば容赦無くお縄に捕まって終了だ。

 個人的にはロマン技とかあって良いと思うんだけどなぁ…。

 

 そんな話をリゲルさんにしてみた所、「どんな攻撃方法でも、止めを刺せればそれで良いじゃない」と言い放たれた。

 しかし、話してみるとリゲルさんが止まらなくなってしまったという。

 やはり、攻撃方法って大事だと心底そう思う。

 何かと言ってリゲルさんも拘るらしい。

 

「…味方を投げて爆散させる、ね。貴方を使って…」

「嫌ですよ、リゲルさんに投げられて爆散なんか」

「ふふ、冗談よ」

 

 リゲルさんはクスッと笑みを浮かべる。

 本当ですよね?

 信じても良いんですか?

 そんな言葉が口から漏れそうになる。

 リゲルさんなら大丈夫だと…あ、けど。

 あづみさんが危なくなったら投げられ………無い、よな…?

 

「…ん…んぅ…」

 

…あづみさん、寝言?

 返事を返してくれたようにも捉えられるけど。

 というか、静かにしなければあづみさんが起きてしまうではないか。

 もうちょっと膝枕をしてあげたい…訳では無く、あづみさんの睡眠を妨げたくない。

 本当だよ。

 嘘じゃないよ。(棒読み)

 

 まぁ、睡眠を妨げたくないのは本当だ。

 リゲルさんと話をしていたい気持ちもあるが小さな声で喋るのすら躊躇してしまう。

 が。

 

「…」

「大祐…!?」

 

 あづみさんの頭を撫でたいという衝動に駆られてしまった。

 薄い青…じゃなくて、水色の更に少し薄い感じの色の、さらさらとした手触りの良い髪の毛。

 上から下へと撫でると、手がするすると通って抜ける程のさらさら感。

 素晴らしい。

 俺は彼女を起こさぬよう、優しく、ゆっくりとあづみさんの頭を撫でる。

 

「…えへへ…リゲル…」

 

 撫でる手が一瞬にして止まる。

 そして俺は気付かれないように手を遠ざけた。

 

 ごめんねあづみさん。

 俺はリゲルさんじゃないんだ。

 

「…リゲルさんがしてあげて下さい」

「先ず、いきなりあづみの頭を撫でるのはどうかと思う」

「…ですよね。申し訳御座いません」

「大祐の気持ちも分からなく無いわ。…可愛いもんね、あづみは」

 

 そう言いつつリゲルさんも、あづみさんの髪の毛を触る。

 にっこり笑顔のあづみさん、とても幸せそうだ。

 

「…んー…」

 

 と、リゲルさんが撫で始めて直ぐにあづみさんの目が開いた。

 

…相変わらず、綺麗な赤い瞳だ。

 宝石のルビーみたいに。

 あづみさんはリゲルさんの顔を見ると、ふにゃっとした可愛らしい笑顔を向けた。

 そして朝の挨拶を口にする。

 

「おはよう、リゲル」

「おはよう、あづみ」

 

 何とも微笑ましい。

 二人共お互いを見て笑顔になっていた。

 熟、この空間には場違いだと思い知らされる。

 

 俺が勝手にそう思っていると、此方を向いたあづみさんと目が合った。

 取り敢えず朝の挨拶をしなければ。

 

「大祐くんも、おはよう?」

 

…先手を越された。

 何故疑問系なのかは、俺がまだ眠たくないかどうかの確認の為だろう。

 何と優しい事か。

 兎に角、先手を越されたとかは放っておいて言われたからには返さねば。

 

「御早う御座います、あづみさん」

「…」

 

 あれ?

 無反応?

 俺、もしかして無視された?

 

 少し焦る気持ちを抑えつつ何で無視されたかを考える。

 だが、考える必要は無かった。

 あづみさんは俺を見て頬を赤くさせている。

 察しろよ、みたいな現場だ。

 

「…もしかして、大祐くんが…ひ、膝枕してくれてたの…?」

「はい。昨夜、あづみさんが寝てしまい此方に倒れて来たので、受け止めてリゲルさんにどうすれば良いか聞いてみたところ」

「リゲルは…?」

「『大祐、膝枕をしてあげれる?』との事です」

「…う〜…リゲル〜!」

「な、何かしら?あづみ…」

 

 あづみさんは笑っていなかった。

 流石に、初対面と言っても過言では無い人物…それも異性に膝枕をして貰ったのは恥ずかしかったのか。

 顔を真っ赤にさせ、頬をぷくーと膨れさせながらリゲルさんに鋭い眼光を向けている。

 何この可愛い生物。

 

「…あづみ…ごめんなさい。今度からは私がするわ」

「もう…膝枕其の物がされなくても大丈夫って話だよ?」

「あづみに硬い地面を枕に寝かせろって話なら、大丈夫じゃないわ」

「リゲルは気にし過ぎだよ。心配してくれてるのは嬉しいけど…」

 

 おっと?言い合いが始まったな。

 凄く仲が良さそうな二人でも此処は言い合いが発生する、仕方が無い、か。

 

…そりゃ、そうだよな。

 寧ろ言い合いの度を越えない事自体、流石あづみさんとリゲルさんって思うけどね。

 ていうか、膝枕の話で言い合いって。

 二人の会話を聞いていると何だかほのぼのしてしまう。

 止めろよって言われたら止めに入りますが。

 

「…とはいえ、枕代わりになる物は持ち歩けないし」

「そんなに心配しなくても私は大丈夫だよ?」

「…あづみがそこまで言うなら良いけど」

「えへへ…でも、ありがとね」

「〜///」

 

 あ、リゲルさんが折れた。

 やっぱり二人の言い合いの時は、大抵リゲルさんが折れる場合が多いのかな。

 いや、実際に見たのは今回が初めてだけど。

 何と無くそんな感じがする。

 本当かどうかは分からないが。

 

「…えっと…その…ありがとね、大祐くん」

「いえいえ、とんでもない。僕としては嬉しかったですよ。こんなに可愛い子に膝枕をしてあげれて」

「えへへ…///」

 

 照れながら笑うあづみさん。

 凄くかわええな。

 

 さて、あづみさんも起きたし昨日の話の続きかな。

 膝枕は置いといて。

 

 あれ?

 でも、あづみさんが膝枕を必要としないって事は。

 俺、いらない?

 ま、まさかね。

 一人の人間じゃなくて、膝枕という名前の道具として見てないよね?

 リゲルさん?

 リゲルさん…返事をして下さい!

 リゲルさーん!

 

「…」

 

…なんて被害妄想も置いといて。

 俺がこんなんでは話が進まないじゃないか。

 自覚を持たねば。

 

 取り敢えず昨日の続きだ。

 えーっと?

 あぁ、そうだ、最後の質問を聞くんだ。

 あづみさんとリゲルさんが楽しそうに話している今…は、ちょっと気が引けるな。

 

 いや、あの楽しそうな二人をずっと見ていても良いんだけどね。

 これが最後かもしれないし。

 唯、それで先に進まないのであるならば話は別だ。

 何はともあれ先に進みたいのですよ、俺は。

 話していて自己中心的な精神が目立ち、自分で嫌になる。

 転移して間も無く左足を失ったやつが何を言ってるんだ、って。

 

 そんな左足も、バトルドレスを装着してからは元通り。

 デスティニーにナノマシン(回復機能)なんて無い筈だ…。

 何故か服まで元通りになっている。

 まぁ、そこら辺は後で調べて構わないだろう。

 話を戻さねば。

 兎に角、今は話し合いが優先だ。

 

「…楽しそうに話している最中に申し訳無いのですが、昨日の話の続き、しませんか?」

「昨日の………あ、最後の質問の事ね」

「忘れてました?」

「ち、違うわ。寝起きだから…その…」

 

 寝起きって…。

 リゲルさん、貴女が起きてからもう一時間位経ってますよ。

 態と突っ込まないけど。

 

「リゲル、昨日の話って…?」

 

 俺とリゲルさんが話し合いを始めようとすると、首を傾げたあづみさんが疑問系で尋ねて来た。

 無論、リゲルさんに。

 

「まぁ、今から話すから大体は分かると思う。詳細はまた後で話して良い?」

「うん、分かった」

「…それじゃあ大祐。最後の質問なんだけれど」

「はい」

 

 やっと聞ける。

 昨夜からずっと聞きたくてソワソワしていた。

 勿論、態度には出さないけど。

 

…リゲルさんは俺とあづみさんの顔を交互に見て、目を瞑った。

 五秒間程すると、瞑っていた目を開き、俺を見つめる。

 何かを確かめている感じの眼差しだ。

 その眼差しを俺から外さずに、リゲルさんは口を開いた。

 

「…貴方…いや、大祐。これからは、私達と一緒に行動してくれるかしら」

「…はい?」

「リゲル!?」

 

 内容は…訳の分からないものだった。

 言い換えれば、直ぐには理解が出来ない内容だった、だろう。

 

「…それは、何故?」

 

 だが、俺は兎に角返答した。

 自分が理解が出来ていないからこそ。

 

…この話は俺だけにメリットがある。

 故に、あづみさんとリゲルさんにはメリットが無いのだ。

 なのに何故こんな話を持ち掛けて来るのか。

 

「…大祐には、私達が追われている事は教えたわよね」

「はい。『アドミニストレータ・ベガ』に追われていると」

「実はね、それの他にもう一つ理由があって逃げているの」

「もう一つ?」

「…この話をする前に、大祐に一つ尋ねるわ」

「何で御座いましょう」

「あづみの事、好き?」

「ぶっ」

「リ〜ゲ〜ル〜…!」

 

 いきなりの衝撃に思わず噴いてしまった。

 アカンやつやこれ。

 好きと言えば始末され、嫌いと言えば殺される。

 俺自身はあづみさんの事、それはもう大好きなんだけど。

 

 唯、それを言ってしまうと「あぁ、そう。さようなら」の二言で、俺の転移LIFE(ライフ)…基人生が終わりそうでならない。

 かといってあづみさんを嫌いだと言うのには、抵抗があり過ぎる。

 死んでも「嫌い」等と言いたくない。

 だって好きだから。

 

 本当の事を言うか、はたまた嘘をついて有耶無耶にするか。

 究極の選択肢だ。

 

…嫌でも、死んでも、俺は前者一択にしたい。

 可愛い子だなと思いました、それ以上の感情はありません。

 って言った方が良いような選択もある。

 

「あづみは、大祐の事をどう思ってる?」

「…もう、リゲルは急過ぎるよ」

「即急に聞きたい事だもの。今回ばかりはあづみも急いで欲しいわ」

「うーん…」

 

 これは珍しい。

 リゲルさんがあづみさんを急かしている。

 まぁ、そう言うリゲルさんの表情は苦そうだけど。

 

 即急なら俺も早く答えてあげねば。

 あまり時間を掛けては迷惑だろうし。

 返答次第では、さっきの話は無しになる可能性も有り得るが…。

 その時はその時だ。

 正直に答えよう。

 

「…そう言えば、リゲルは何でこんな話をするの?」

「私達にはこれからに響く大事な事だから。…それと、大祐は私達を知っているっぽいし」

 

 知っているって言っても少しですが。

 取り敢えず敵ではない事は認識して貰えているらしい。

 多分。

 それに、答えたいのは山々だがあづみさんの返答が気になる。

 先に答えて頂きたいところだが…。

 

 俺が一人で「君の事が好きなんや!」って言ったあとに「…ごめんなさい、そういうのはちょっと」的な返事をされると途方に暮れる結果になるのは目に見えている。

 所謂、自爆行為。

 THE爆散。

 

 それは嫌なので、先にあづみさんの返答を――

 

「私は、大祐くんの事嫌いじゃない。好きと言われれば違うかもだけど…私にとっては優しいお兄さんみたいな感じかな。敬語は止めて欲しいけど…」

 

――俺の返答一択。

 今はまだ好きとは言わない。

 予め考えていた言葉で返させて頂こう。

 

「俺は彼女を…あづみさんを守ってあげたいと思いました。好きや嫌いでは無く、唯、守ってあげたいと」

「守る?」

「はい。…駄目ですか?」

「…好きか嫌いかだったら?」

「断然、好きと言えます」

「ふぇっ…!?」

 

 何、今のあづみさんの声。

 とっても可愛かったんですが、物凄く可愛かったんですが。

 今のあづみさんの声録音したかったなぁ。

 割りとマジで。

 

 ていうか、好きか嫌いかでは無く――とか言ったそばからこれだよ。

 好きって断言しちゃったよ。

 どうしようか。

 ま、まあ、どっちかって言われたからね、しゃーないよね。

 全く…情けない、これでは道化だよ。

 

「二人共互いをしっかり認識してる、と。…うん」

 

 リゲルさんが何か独り言を口にしてる。

 ま、まさか…!

 こいつうざいわ、マジ無いわみたいな独り言ですか!?

 止めて!それ以上言わないで!

 九条大祐のライフはもう0よ!

 やっぱり俺のライフは既に終わっていたか。

 

 どうでもええわ。

 被害妄想も程々にしとけや、とか言われそう。

 

「…よし。それじゃあ、大祐は私達について来てくれるって事で良いのよね?」

「二人が宜しければ、僕はついて行きます」

「勿論。此方から頼んだ事よ?あづみはそれで大丈夫かしら?」

「うん、私は大丈夫。…えっと、今日からよろしくね大祐くん」

「僕の方からも、二人共宜しくお願い致します」

「そんなに畏まらなくても…まぁ、良いわ。宜しくね、大祐」

「了解です」

 

 話が非常にスムーズに進んだ。

 それ位、リゲルさんは急いでいるんだろう。

 その急ぎの用事を少しでも手助けしてあげたい。

 一応、戦力にはなれると思う。

 俺は何をすれば良いか、分からない事に変わりは無いが。

 

「…っと、もう一つ、私達が逃げている理由を話さなければね」

「逃げているっていうのはちょっと違うけど…旅をしているって言った方が良いかな?」

「旅…ですか」

「えぇ。あづみのリソース症候群を治す為の薬を」

 

 ん?

 リソース症候群を治す為の薬?

 

「…それは、お偉いさん方から出されているのでは?」

 

 昨日、あづみさんがリソース症候群を発症してしまった時にリゲルさんが飲ませていた青い液体の様な薬。

 あれはリソース症候群を治す薬では無いのか?

 こんな大事な記憶まで覚えていないのは自分で少し残念になってくる。

 

「あれはリソース症候群を一時的に抑える薬。治す為の物では無いわ」

「…では、その薬を一緒に探せば良いんですね?」

「お願い出来るかしら」

「自分勝手で嫌だけど…私からもお願いします。まだ、死にたくないから」

 

 そんなの、答えを考える必要もありはしない。

 俺からの返事は一つだけだ。

 

「勿論ですよ。…それに先程述べた通り、僕はあづみさんを守ってあげたい。病気だろうが何だろうが関係ありません。そう言う類の物からも貴女を守ってあげる事が、僕の使命です」

「大祐くん…」

 

 決まったな。

 俺の転移LIFEの目的。

 あづみさんだけでは無く、リゲルさんの事も…二人を守ってあげる事が俺の使命。

 一度決めたからにはなにがなんでも押し通す。

 

「えへへ…ありがと」

「…私からも、協力有難う」

 

 二人のお礼も頂いた。

 これからは、あづみさんとリゲルさんを危険から遠ざける様に行動すれば良いのかね。

 最も、一緒に行動するのだからその都度聞けば問題無いだろう。

 多少は自分で動く事も覚えた方が良さそうだが…下手に動いて二人の足を引っ張るみたいな真似はしたくない。

 無理に動かない方が無難かも知れないな。

 

「さて、一緒に行動する上でお互いにして欲しい事ってある?」

 

 お、良いタイミング。

 ここでさっき思っていた「その都度聞く」という提案を出せば、動きやすくなる。

 受け入れて貰えれば。

 昨日学んだ事を利用するのであれば、取り敢えず話をしてみるのが大事だ。

 折角だし他にも色々と考えるか。

 

「私から、一つ良いかな」

「どうぞ、あづみ」

「…大祐くんが私相手に敬語、さん付けを使うのは止めて欲しいな」

「う、え、うーん………何て呼べば宜しいでしょうか」

「呼び捨てでも…良いんだよ?」

「例えば…あづみ姫」

「私はお姫さまじゃ無いよ…」

「そんな!僕にとっては――何でも御座いませぬ」

 

…危なかった。

 俺があづみさんを大好きだって事実が、俺自身の口から出てしまう所だったよ。

 ふぅ…落ち着け。

 今の俺の脳内は、感情を処理出来ん人類はゴミだと教えた筈だがな、という言葉で制御されている気がしてならない。

 あれ?じゃあ、俺ゴミ?

 ダストシュートとかされちゃう系?

 その瞬間に「俺は…人間になれない…」とか言わなきゃ駄目?

 

………あ、そうだ。

 あづみさんの呼び方を考えなきゃ。

 一人で楽しむぼっちごっこは止めだ。

 そうだな…呼び名、呼び名かぁ。

 

「あづみ嬢」

「えっと…」

「あづみ様」

「無い…かな」

「あづみ閣下」

「閣下…!?」

「…あづみちゃん」

「えっと、それが良いな」

「嫌です」

「…どうして?」

 

 少し悲しげな表情を見せるあづみさん。

 その表情を見た俺の心は八つ裂き状態。

 とっても痛い。

 

「…そう言えば、大祐くんは何歳なの?」

「15ですが」

「14歳の私より年上なのに、敬語にさん付けは…」

「あづみさんをあづみちゃんとか馴れ馴れしく呼ぶのは嫌です。どの面下げて言ってんだ、とか思っちゃうんですよ」

 

 誰がどう呼ぼうが勝手なのはそうだが、あづみさんを[ちゃん]と呼ぶのは無礼過ぎる。

 そんなに軽く呼んで良い存在では無い。

 こんなに可愛い子を…。

 いや無論、リゲルさんにも言える事だが。

 このお方を[リゲル]と呼び捨てにするのは駄目絶対。

 何処のお偉いさんだ。

 

…思わず感情を高ぶらせてしまった。

 俺の個人的な解釈にしか過ぎないけど。

 

「なので、あづみさんと呼ばせて頂けませんか?」

「…じゃあ、敬語を止めてくれれば良いよ」

「あづみさんは無理難題を仰る…。まぁ、努力はしてみます」

「努力は?」

「…す…る…よ」

「ありがと、大祐くん」

 

 ぐぅ…。

 ここまで言われてしまうと実行せざるを得ない。

 あづみさんとは思えない程の押し通しっぷりだ。

 これまた珍しい。

 これからは敬語を使わないように頑張ろう。

 

「あれ?リゲルさんは?」

 

 あづみさんと話をしている間に、リゲルさんが目の前から消えた。

 周りを見渡しても何処にもいない。

 唐突な出来事もあるもんだ。

 あづみさんに聞いても、首を傾げている。

 可愛い。

 じゃなくて、可愛い。

 

……ええと、リゲルさんは一体何処に――

 

「…そこで何をしているんですか、リゲルさん」

「ふふ、バレてしまったわね。後ろから驚かそうと思ったのだけれど」

 

 何故か俺の後ろに立っているリゲルさん。

 「驚かそうと思ったのだけれど」なんて可愛らしい事を言われても経緯が分からない。

 リゲルさんもお茶目やなぁ。

 

「背後からの奇襲にも気付ける…しっかり見ているわね。これ以上の確認はいらないかしら」

「急に何かと思いましたよ。…そう言えば、リゲルさんはバトルドレスを解除しなくても良いんですか?リソース量が…」

 

 昨日俺が転移した時から、リゲルさんはバトルドレスを装着しっぱなしだ。

 大量のリソースを消費していないかが気になるところ。

 

「これを解除する必要は無いわ。武器を使用したりする時だけリソースを使うから」

 

…初めて知った。

 バトルドレスは、装着しているだけじゃリソースは食わないのか。

 ならリゲルさんが解除していないのも納得だ。

 唯、バトルドレスを着ているリゲルさんは露出度が高くてな…。

 多分隠している面積の方が少ない。

 足は問題無いけど。

 何故って?

 黒いニーハイソックスを履いているからだよ。

 

…関係無い話になるが、ニーソ(ニーハイソックスの略)は良いよね。

 あの絶対領域が。

 

 ほとんどニーソで隠されている足…そんな中、僅かに見える太股…絶対領域。

 何であんなに素晴らしいのかね。

 隠されている様で隠しきれていない感じがヤバイ。

 

 ほら、女の子にもいるじゃん。

 自分の心を隠したくてもそれが今一出来ない子。

 クーデレやツンデレも同じ類いだよね。

 何時もはクールであまり喋らない、喋っても一言二言で終わってしまう女の子。

 そんなクールな子が、自分にデレた時のあの可愛さ。

 常時ツンツンして、反抗的に歯向かってくる女の子。

 そんなツンツンしている女の子が、自分にデレた時のあの可愛さ。

 

 二つの可愛さに共通している部分は、自分の気持ちを隠せないという所。

 なんと可愛らしい事か。

 

…一人で熱中してしまった。

 だが、まだまだ語り足りないな。

 特にニーソに関しては。

 初期症状に自覚を持てないのが怖い。

 いつの間にか好きになって…。

 あ、違うよ?

 ニーソが好きなんじゃなくて、ニーソを履いている女性大好き系男子って話。

…そんな俺の前には、ニーソを履いた美少女と美女が…!

 うあぁぁぁ!!!

 

…さて、何の話をしていたんだっけ?

 

 あぁ、そうだ。

 バトルドレスの話だっけ。

 随分話が逸れたな。

 戻さねば。

 

「…そろそろ動きますか?」

 

 現在時刻は大体昼前位だろう。

 逃げているのであれば、こうやってゆっくりしている暇は無い筈だ。

 俺と会って、相当予定が狂っているのは間違い無いだろうから。

 

「そうね。目的地に向かいましょうか。…あづみは大丈夫?」

「うん。私は平気だよ」

「…リゲルさん、何処に向かうんですか?」

「あづみの薬を優先したいから…緑の世界ね」

「緑の…!?」

 

 緑の世界に向かう。

 

…その言葉を聞いた瞬間、俺は記憶の一部を思い出した。

 二人が緑の世界に赴き、リソース症候群を治す為の物があると聞き、取りに行った後の結末を。

 この選択肢は…駄目だ。

 

‐‐‐




リゲル先生のパーフェクトZ/Xの世界教室2

赤の世界に存在するZ/Xの特長
・ブレイバー
歴史上の人物の名前を持つZ/X達の種族。
自ら戦闘を好む者が多く、戦闘能力に関しては赤の世界でトップに君臨する。
人形(ひとがた)なので話し合えば、出会って直ぐ殺されるという事は無い…多分。

・マイスター
武器作り能力に長けた種族。
戦闘は苦手な者が多く、どちらかと言えば作った武器を「ブレイバーさん!新しい武器です!」みたいな感じで援護するZ/X。
一応、戦う事も出来る。

・ギガンティック
見た目はどう見ても恐竜みたいな奴等が多い。
宝石の名前が自分の名前に使用されており、体の一部がキラキラしている。
如何にも売れば高そう。

・ミソス
リゲル先生もあまり知らないらしい。
何故ミソスだけ知らないのかと聞いてみた所、「ミソスの情報だけが抜けている」との事。
…リゲル先生も知らない情報ってあるのか。
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