Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第四十九話: 弱いままの自分

ーーー

 

リゲル視点

 

ーーー

 

 

ㅤtype,II、type,IX、type,X。

ㅤオリジナルXIII…随分と嫌なタイミングで現れてくれたわね。

ㅤつい三日前、言ってしまえば四日前に戦ったばかり。

ㅤtype,IIに至っては重傷を負った筈よ。

ㅤなのにどうして、こんなに回復が早いの…?

 

「さぁリゲル…大人しく拘束されて貰います」

「それだけは御免ね」

 

ㅤ今から本格的に人員を集めて、戦力を安定させようと行動している大事な時に。

ㅤ此処で負けてあづみも大祐も私も捕まるなんて…そんな幸せを手放す事等、私には到底出来ない。

ㅤそれに二人と約束したのだから。

ㅤもう離れ離れにはならないって。

ㅤ無論、私はその為にも負ける訳にはいかない。

 

「意地でも通して貰うわ」

「私の下位互換も、随分な口を叩く様になったわね」

 

ㅤ相変わらずtype,IIのその言葉に苛立ちが湧く。

ㅤけど。

 

「違うもんっ!」

 

ㅤ私の直ぐ隣から可愛らしい声が、それでも全力の否定を込めた力強い声が周りに響き渡る。

 

「リゲルは貴女とは違うっ、リゲルは…リゲルだから!」

 

ㅤあづみのこの言葉が私にとって何れ程嬉しかった事か。

ㅤすると彼女はカードデバイスを構え、戦闘態勢に移る。

ㅤ私の事を二度もああ言われて怒ってくれているあづみ…私の大事なあづみ。

ㅤ例え私が犠牲になってでもあづみだけは助ける。

 

「そうね…私は貴様とは別の存在。全くの別人よ」

「その偉そうな態度も、今回限りで二度と目にする事は無くなるわ」

「…リゲルも変わりましたね」

 

ㅤtype,X、type,II、彼女達もベガの操り人形だという事を、何故分からないの。

ㅤやはり、感情を支配され上官の思惑通りに動かされるというのは恐ろしいわね。

ㅤ私はもう…ベガの元に戻るのだけは絶対に嫌。

ㅤあづみと此処まで来たんだもの、こんな所で止まっていられないわ。

ㅤそれに私達を自由にさせてくれた大祐に恩返しも出来ていないから。

 

ㅤ大丈夫、二人が居てくれる。

ㅤ何としてもこの状況を抜け出してみせるわ…!

 

「互いに通じない話をし合うのは止めです。リゲル、ベガ様の為に大人しく捕まって下さい。これが最後です」

「私がそんな命令に従う能無しに見える?貴様等に何と言われようが私は自分で決めた事を全うするだけよ」

「コピーの分際で…強制的にベガ様の元へ連れて行くしか無いわね」

 

ㅤtype,IIはそう言うとサーベルを取り出して一気に距離を詰めてくる。

ㅤ直後、私は空中戦に状況を持っていく。

 

「あづみ下がって!リソースの供給をお願いっ!」

「うんっ!」

 

ㅤあづみのやる気満々なその返事は私に力をくれた。

ㅤ此方もサーベルを抜き出し、最初から出力全開で力の差を見せ付けていく。

ㅤ彼方では大祐がtype,IXを生身で引き付けてくれてる…私達も頑張らないと。

 

「はぁっ!」

 

ㅤ冷静に、けれど圧倒する状態を維持して。

ㅤ私はサーベルを振るう手を止めない。

ㅤすると最初に仕掛けて来たtype,IIの表情が、私の猛攻で徐々に曇り始める。

ㅤこの勢いを失った時点で負けるのは目に見えていた。

ㅤけれど、スペックならどんなオリジナルXIIIにも負けはしない。

ㅤ然しそれはこの最大出力を使用している時に限った話だ。

 

ㅤそう、以前戦ったその時から違和感があった。

ㅤ彼女達に彼処まで力、能力は無かった筈。

ㅤベガの元で共に行動していた頃とは丸で別物。

ㅤ私とあづみが謀反を起こす前は、何をしなくても私が彼女達を圧倒していた。

ㅤでも今はーー

 

「考え事は他所でする事ね」

「…!」

 

ㅤまずいっ…今更昔の記憶を掘り返している暇は無かった。

ㅤtype,IIの振り下ろすサーベルに反応するのは間に合っていたが、反応速度に体が追い付いていない。

ㅤこのままじゃギリギリ当たるーーいや、当たって堪るものか。

 

ㅤ私は右斜め前に向かって、ぐんっと体を前進させる。

ㅤこういう場合は敢えて相手の近くに寄るのが正解だ。

ㅤその考えが功を奏したのか、擦れ擦れでtype,IIのサーベルを避ける事に成功した。

ㅤだが然し。

ㅤtype,IIは私の行動を察していたかの様な動きで、体如サーベルを横に一回転。

ㅤこの攻撃は…躱せないーー

 

バチィッ!

 

………?

ㅤ瞬間、何故か私の前からサーベル同士のぶつかり合う音が頭に響いた。

ㅤ構えを取るのが間に合ったの?

ㅤいや違う。

ㅤ私の目の前には小さな影が一つ、type,IIのサーベルを受け止めていた。

 

「…何をしているの?type,I。貴女はオリジナルXIIIの一人でしょう?」

「私はますたに従っただけです」

「A–z…」

 

ㅤまさかA–zに助けられるなんて。

ㅤ情け無い、けれど助かった事に変わりは無い。

ㅤ私も負けられないわね。

ㅤtype,IIの意識がA–zに向いている隙に、私は体制を立て直す。

 

「あづみ、もっとリソースを!」

「分かったっ」

「そんな簡単に許すとでも?」

 

ㅤ出力全開状態はリソースを頗る消費する。

ㅤだから供給を行ってくれるパートナー、あづみの存在が何より大切。

ㅤtype,Xはそれを察知し、先ずあづみから潰そうと彼女に近付いていく。

ㅤ本当、舐めてくれるわね。

 

「その言葉…そっくりそのままお返しするわ!」

 

ㅤ私のあづみに手出しなんてさせない。

ㅤ例えパートナーで無くても、彼女の存在は私の一番なのだから。

ㅤあづみの居ない世界なんて価値すら無い。

ㅤ私は彼女を何としても守る。

ㅤその為に生まれて来た様なものだもの。

 

「たあぁっっ!!!」

「これはーーくっ…!?」

「…覚悟しなさい、あづみに近付く不幸は全て切り捨てる!」

 

ㅤそう言い放った通り、私は背中を向けているtype,Xの腹部を一閃する。

ㅤ自分でも驚く程の速さで。

 

ㅤ然しオリジナルXIIIは甘く無い。

ㅤこんな事で簡単に重傷を負いはしない。

ㅤtype,Xは私が斬り掛かる事を先読みし、敢えてあづみを襲う真似をしたのだ。

ㅤそして私の攻撃をカウンター。

ㅤ少しでも負傷させ動きを鈍くさせようとしたらしい…けど。

 

ㅤどうやら先の速さに追い付けなかった様だ。

ㅤ私自身、今迄行ってきた攻撃の中でも一番の速さ。

ㅤ自分の大切な物を守りたいと思う気持ちは、ここまで力になるのね。

ㅤなら…私は何処までも強くなってみせる。

 

「…くふっ…中々、やりますね」

「少しでも手を抜いてみなさい?一瞬にして切り刻んであげるわ」

「リゲル、頑張れっ!!」

 

ㅤあづみのその言葉と同時に、私の体の中にあるリソースが急激に増幅する。

ㅤ相変わらずあの子の声には元気付けられるわね。

ㅤこれなら…今ならtype,Xを倒せる。

 

ㅤ初めて戦った時はボロボロにやられて、あづみを心配させて。

ㅤ力の無い自分を恨んだわ。

ㅤあの時の雪辱、今此処で晴らす。

 

「あづみの幸せは…私が掴み取る!」

 

ㅤ瞬間、私はサーベルを構えてtype,Xに突撃する。

ㅤ先程の攻撃によって左脇腹を負傷したtype,Xは、傷口を庇いながらもダガーによる防衛を見せた。

 

「ぐぅ…っ!」

「此れだけだと…思わない事ねっ!!」

 

ㅤなら…!と、受け止められたサーベルを一度空へと放る。

ㅤ彼女は空中へ投げ捨てられたそれに注意を向けた。

ㅤその一瞬の隙に、私は自らの体を一回転させてtype,Xの腕を蹴り上げ。

ㅤサマーソルトを喰らったtype,Xは思わずダガーを手放す。

 

「…っ!しまっーー」

「有難く使わせて貰うわ!」

 

ㅤ回転しながら空中を舞うtype,Xのダガー。

ㅤ私は上にステップしそれを左手に、自分の放ったサーベルを右手に掴む。

ㅤそのまま両手を思いっきり振り翳し、下に居るtype,Xに向かって全力で叩き付けた。

 

「当たる訳には…いきません!」

 

ㅤするとtype,Xは一歩後ろに下がり、回避行動を取る。

ㅤならば…!

 

「まだまだ!」

 

ㅤ距離を離したtype,Xに、彼女のダガーを力一杯投擲。

ㅤヒュンッと音を立てて一直線に飛んで行くダガーに、彼女は一歩反応が遅れる。

ㅤ結果、投擲したダガーは見事にtype,Xの右腕を貫いた。

 

ㅤ然し相手も諦めてはいない。

ㅤ右腕に突き刺さった自らの武器を抜き、即座に私との距離を取る。

ㅤ無論、ここまで力量を見せ付けられたからには使うしか無いだろう。

ㅤ私はそれを阻止しようとtype,Xに接近する。

 

「はぁっ…くっ、リソース限界解ーー」

「させはしない!」

 

ㅤ此処であれを使われれば勝機は薄れる。

ㅤそれどころか皆無になると言っても過言では無い。

ㅤ私も、今は之が全力なのだから。

 

ㅤそれは重々承知していた。

ㅤだから防がなければならなかった。

ㅤ私はtype,Xに対して、自身のサーベルで斜めに斬りかかる。

ㅤでも。

 

「…リゲル様…!駄目、です…!」

「…今更遅いわよ」

「!?」

 

ㅤtype,Xと私の真ん中に割り込む形で、type,IIがヌッと現れる。

ㅤその瞬間、私は危機感を覚え、兎に角下がろうと後ろにワンステップ踏み込もうとした。

 

…然しtype,IIの言う通り。

ㅤ私は確かに後ろへ下がる事は出来た。

ㅤだが、唐突に腹部に激痛が走る。

 

「がっ…!?」

 

ㅤ思わず傷口を覆い隠し、口から吐かれる吐血に恐怖を感じる。

ㅤあの一瞬の間に何があったのか…私にはそれが分からない。

ㅤそしてふと、あづみの居る方をチラッと見てしまった。

ㅤ彼女は目を見開き私の名前を叫んでいた。

 

「いやだ…リゲルっ!!」

「…ふふっ。良い光景ね」

 

ㅤそんなあづみの悲痛な叫びとは正反対に、type,IIは不敵な笑いを零した。

 

「下位互換は下位互換也に、大人しくしてなさい?」

「誰がっ…ーーー!?」

 

ㅤtype,IIの余裕を含んだその言葉に苛立ちを隠せず、私は彼女をキッと睨み付ける。

 

…そして私は漸く気付いた。

ㅤtype,IIのバトルドレスが明らかに違うそれだという事に。

ㅤ何時ものバトルドレスでは無い…露出度は何時もと変わり無いが、背面が赤、前面が白の綺麗な配色で。

ㅤ右手に持つ大きなライフル、左手の黄色いサーベル、その持ち手に付着している赤い液体。

ㅤあれは間違い無く私の血だ。

ㅤ加えてtype,IIのあれは、間違い無く彼女の物では無い。

 

「ベガ様に与えられたこの力…必ず使い熟して見せる」

 

ㅤそう言うとtype,IIは、ライフルの銃口を此方に向ける。

ㅤ彼女のバトルドレス…あれは一体。

ㅤベガから与えられたという事はtype,II専用のバトルドレスなのか。

 

ㅤいや、今はそれを考えている場合では無い。

ㅤ重傷を負わされたこの状態で、type,IIの攻撃を躱す事は出来ないだろう。

ㅤならば受け止める為に何かを盾にしなくてはならない。

ㅤ然し今の私には何も無い。

ㅤ何かを構える力も残っていない。

ㅤこれでは殺されてしまう。

 

ㅤtype,IIはそんな私を見て、口元に笑みを浮かべながらライフルからビームを放つ。

 

…死ぬ訳には、いかない。

 

「足掻いて…見せる…!」

 

ㅤ私は手元に現れたスナイパーライフルを構え、ビーム同士を相殺させるべく残されたリソースを使い切る位に高出力の状態でtype,IIに放つ。

ㅤそれに合わせて彼女もビームをライフルから発射。

ㅤ私の武装…スナイパーライフル、ビーム自体は細いが威力は破格だ。

ㅤそれを高出力で放ったのだから一方的に負けはしないだろう。

 

ㅤだが、その思いは直ぐに掻き消された。

ㅤtype,IIのライフルから放たれたビームは、私のそれを「バチッ」と音を鳴らして一瞬で消し去ったのだ。

ㅤそんな…力及ばずなんて物では無い。

ㅤこのままでは直当たりしてしまうーー

 

「…っ!」

「しぃく!」

 

ㅤと、半ば諦めていたその時。

ㅤ戦場には似合わない少女の声が周りに響き、私の目の前に何匹もの蜂が集まっていく。

ㅤそして見事、type,IIの放ったビームを防ぎ切ってくれた。

 

「りげゆ、にげて!」

「…!きさら、ありがとう…!」

「リゲル様、此方に!」

 

ㅤまさかきさらに助けて貰う事になるなんて。

ㅤ私は腹部を抱えたまま、A–zの側に寄って行く。

ㅤするとA–zは即座に私を木の後ろへ隠し、typeIIに負わされた傷口を調べ始めた。

ㅤ背後からは蜂の羽音、そしてビームを放つ音にサーベルを振り翳す音が混じり合って私の脳内に響き渡る。

ㅤそうだ…あづみ、あづみは大丈夫なのかしら。

 

「リゲル様、あまり動かない方が身の為です。あづみ様は私がお連れしますので」

 

ㅤ少しでも動こうとすると、彼女にストップを喰らった。

ㅤ然し、そう言う彼女の体も既にボロボロだ。

ㅤ所々に傷が見受けられる。

ㅤあの時間の間…type,IIを対処してくれていたのだ。

ㅤ逆に、良く致命的なダメージを受けなかったと思う。

ㅤ記憶が無くなってから一回も戦闘に参加していなかったのに、今日これだ。

 

「…そう。じゃあ、お願い…するわ…」

 

ㅤ私は途切れ途切れの言葉を繋げて彼女に伝える。

ㅤそしてA–zは直ぐ様、あづみの元に向かう為姿を消した。

 

…後ろから聞こえて来る騒がしい戦闘音に、私は嫌気が刺した。

ㅤ何で私は、こんなにも弱いのだろう。

ㅤオリジナルXIIIの一人にも勝てないで…あづみの事も守ってあげられなくて。

ㅤ生身の人間である大祐はtype,IXを引き付けてくれていて。

ㅤ彼の事だもの…何としても私達だけを逃がそうと考えているに違いない。

ㅤ大祐が居てくれなければ、あづみも私も寂しい事なんか知らないで。

 

ㅤどうして…私は弱いままなのだろう。

ㅤ私があづみを守りたいと思う気持ちは、所詮この程度なの?

 

ㅤ違う。

ㅤ私は自分を…何を犠牲にしてでもあづみを守る。

ㅤ彼女だけでも幸せになってくれるのであれば、それで良い。

 

…そうだ。

ㅤ私は彼女を守る為に存在しているのでしょう…?

ㅤならこの命、あづみの為に捧げるのは本望であり。

ㅤ私の使命じゃ無いのかしら…?

 

ㅤ分からない。

ㅤ自分が何の為に生きて、存在しているのかが。

ㅤでも…此れだけは分かる。

ㅤこの現状を何とかしなきゃ、私の大切な二人は奈落の底へと落とされてしまう。

 

ㅤだから今。

ㅤ私は自分を犠牲にして戦う。

ㅤ後の事は大祐達に任せよう。

ㅤだから今は…今だけは、私の体…耐えて頂戴。

 

「…先ずはtypeIXの注意を此方に向けて、大祐が身を隠す為の時間を稼ぐ。その後はーー大祐なら察してくれるでしょう」

 

ㅤあづみの事を一番に任せられるのは彼しかいない。

ㅤならばその彼を助け、あづみと一緒に逃げてもらう他無いのだ。

ㅤそれが現状、最良の選択だ。

 

「…はぁ…んくっ…!」

 

ㅤ決まったからには直ぐに行動に移す。

ㅤ私は木に手を付きながら立ち上がり、口の中に溜まっていく血を飲み込んだ。

 

「…あづみ…だけでも…!」

 

ㅤ目の前がグラグラと揺らぎ、立っているだけでもやっとの状態だ。

ㅤ気を抜けば一瞬で倒れてしまう。

ㅤ腹部からは未だに出血し続けている。

ㅤ私の体が何時迄持つかは分からない。

ㅤ意識を失ってしまう前に、あづみを…!

 

「…バトルドレスに異常無し。死ぬ覚悟は出来てるわ」

 

ㅤ私はそう言い残して地面を思い切り蹴り、彼の元へと一直線に向かう。

ㅤ生身の人間がオリジナルXIIIに敵う筈が無い。

ㅤ引き付け役である大祐がtype,IXに押されているのは、遠目から見ても分かった。

ㅤ其処へ直ぐ様きさらがフォローに入り、然しtype,IXに圧倒され、今度は大祐が彼女を助けて。

ㅤ二人三脚、互いに助け合い、生き長らえている。

ㅤ最近出会った仲とは思えない程、心が通じ合っている様だ。

 

…少し悔しい。

ㅤ確かに、今はそんな事を思っている暇等存在しない。

ㅤけれどパッと頭に浮かんでしまった。

ㅤ駄目ね…もう少し感情を処理出来る様にならないと。

 

「チッ…逃がしませんーー」

「やらせないわっ!」

 

ㅤ木の陰に隠れた大祐ときさらに追撃を試みるtype,IXが、タービンビットを展開する。

ㅤ二人だけを集中的に視野に入れていたtype,IX。

ㅤ私はその隙を突き、一気に切り掛かる。

ㅤだが、彼女は一瞬の内に反応し、私との距離を離そうと回避。

ㅤけれど私の速度には追い付けなかった様子ね。

ㅤ振り下ろしたサーベルは見事にtype,IXの左腕を切り裂いた。

 

「邪魔立てを…!」

「大祐には…近付かせ無い…わ…!」

「死に損ないの裏切り者が、よくも…」

 

ㅤ負傷した左腕を庇いながら、type,IXは此方を睨む。

ㅤ本体にダメージが通ったのは良い事だが…彼女にはあまり関係の無い話だろう。

ㅤ抑type,IX自身は動いていないのだから。

 

「全く…typeII、typeXは何をしているのですか。ベガ配下の割には役に立ちませんね」

「リゲル様っ、あづみ様と一緒にーー」

「行かせるとでも思ったのかしら?言ったでしょう。逃がさないと」

「くっ…あづみ様、リゲル様かますたの側へっ」

「リゲル!その体で動いちゃ駄目だよっ!」

 

ㅤあづみを見つけ、迫り来るtype,II、type,Xを食い止めようと応戦するA–z。

ㅤ彼女も自分を犠牲に私達を助ける積もりだろう。

ㅤ大祐から指示されていないのに…どうして。

 

ㅤと、一瞬でも違う事に意識を向けると、type,IXのタービンビットの猛攻に反応が追い付かなくなる。

ㅤ取り敢えず状況だけでも把握したいのだけれど…そう上手くも行かせてくれないのが彼女達だ。

ㅤ命令は絶対という思考が、相手を完膚なきまでに叩くという結果に辿り着かせているのだろう。

 

「そうです。type,IIとtype,Xは其方を捕縛して下さい。私はこの欠陥品を捕まえますから」

「ベガ様以外に指図される積もりは有りません」

「それに私のコピーは死に掛け。喋っている暇があるなら、早く仕留めて下さい」

 

ㅤ随分と余裕のある、舐めた事を言ってくれるわね。

ㅤだけど、確かに…。

ㅤ今の私に現状を覆せる要素は何一つとして無い。

ㅤリソースも、あづみからの供給が途絶えてしまった。

ㅤ恐らく「もう戦って欲しく無い」という彼女の優しい想いだ。

 

ㅤ皆で逃げる為には私が戦わないと、とでも言えばあづみは力を貸してくれるだろう。

ㅤでも…私には出来ない。

ㅤあづみを、一番大切な彼女を騙すなんて。

ㅤ今迄散々嫌な思いをして来たであろうあづみに、裏切りなんてしたらどうなるか。

ㅤ拗ねて顔を背けられて、一生口を聞いてあげない、なんて言われて。

ㅤそんな軽いものでも私にとっては一大事だ。

 

ㅤけど、私はそれで良いの。

ㅤ例えあづみに嫌われても、あづみの命が助かるなら。

ㅤ一生口を聞いてくれなくても、側に居るだけで幸せだから。

 

ㅤだから…何としても、あづみだけでも。

 

ㅤそう強く願っても、体は言う事を聞いてはくれなかった。

 

「リゲル、諦めて下さい」

 

ㅤtype,IXの無慈悲なその言葉と同時に、タービンビットからの攻撃を正面から食らう。

ㅤしょうがないじゃない…。

ㅤリソースも碌に無い状態で重傷も負って、それでもtype,IXと戦闘なんかした所為で体が動いてくれないんだもの。

 

「…かはっ…!」

「リゲル…下がって!」

「リゲル様ーーぐぅっ…!?」

 

ㅤ電撃を放たないタービンビットに殴られ、丸でジワジワと嬲り殺しにされている気分だ。

ㅤA–zも流石に限界を迎えたのか、type,IIの攻撃を対処出来ずに食らっていた。

ㅤ然し少しの時間は稼いだ。

ㅤ後は大祐ときさら、二人があづみを連れて逃げるだけ。

ㅤA–zには悪いけど…一緒に囮役として最後まで粘って貰うわ。

ㅤそしたら私とA–zはベガの元に戻り、あづみ達はヴェスパローゼに助けて貰ってーー

 

「…今!」

「しぃく!ぶいけいど!」

 

ㅤと、意識が朦朧とする中で、彼の声が脳内に響き渡る。

ㅤ大祐が指図を出し、きさらが蜂達を呼んだという事は逃げる準備が出来たのでしょう。

ㅤそのままあづみと三人で安全圏までーー

 

「大祐…!?」

「今更雑魚を盾にしたところで…舐められたものですね」

 

ㅤなんで、どうして?

ㅤ大祐は逃げるどころかきさらをお姫様抱っこし、周りに蜂達を集めて戦闘態勢を取っていた。

ㅤtype,IXに圧倒されていた蜂達に一体何が出来るのか。

ㅤ私の中では「早く逃げて頂戴」という気持ちで一杯だ。

ㅤだが、彼には。

 

「きさらちゃんと蜂達だけを対象に…リソース、全解放!!!」

 

ㅤ逃げるという選択肢其の物が存在していなかった。

 

ーーー




果たして九条大祐の打開策とは…

来週の更新は少しばかり遅れてしまうかと思われます。
申し訳御座いません。
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