Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜 作:黒曜【蒼煌華】
「………大祐!?」
ㅤデスティニーのビームシールドを前に、飛来する狙撃を直に喰らう。
ㅤその際、周りには大きな音が鳴り響いた。
ㅤリゲルさんは一歩遅れて、反応を示す。
ㅤあれだけの眩さだ。
ㅤ目眩しと言うには勿体無い程の閃光。
ㅤ一瞬でも反応が遅れて、当然だろう。
「…貴方…まだ、動けるというのですか」
ㅤ自分でも分からない、逆に聞きたい位だ。
ㅤ何故、こんな状態でも体は動くのか。
ㅤ意識なんて、殆ど消え掛けているというのに。
ㅤこの場から、一歩足を踏み出すだけで、倒れてしまうというのに。
ㅤ彼女達を守ると誓った思いだけが、この体を突き動かす。
ㅤ死に物狂い?そんなのは何時もの事だ。
「……大、祐…くん……?」
「ます………た……」
「………………………………」
ㅤだが…もう何をすれば良いのかも、どうすればこの場を切り抜けられるかも分からない…考えられない。
ㅤあれやこれや、何を試そうが無駄に終わる事なんて知っている。
「各務原あづみへの狙撃は…失敗しましたか」
「瀕死状態の男、あれが邪魔ですね」
ㅤ彼女達を、守ろうとした。
ㅤ何としてでも。
ㅤその結果が、これだ。
ㅤ彼女達は窮地に、瀕死の状態に陥っている。
ㅤ守る事なんて、出来なかった。
…いや、それでも、守りたいという思いは…守ってみせるという意思に、偽りは無い。
「仕方無いですね…type,XI、切り込みます」
「させはしないっ!!」
「…リゲル、もう諦めて下さい。私達はあの液体の御蔭で完全復活、加えてtype,V、type,XIの増援。貴女達に勝ち目は有りません」
「それでもっ…あづみだけは必ず守る……守ってみせるわっ!!」
「戯言を…」
ㅤ偽りは確かに無い。
ㅤだが…このままじゃ、何も守れない。
ㅤ全てを奴等に奪われ、失ってしまう。
ㅤ俺には…何も残らない。
ㅤだから、此処で倒れては…いけない。
ㅤそして、この状況から…彼女達だけでも絶対に助ける。
「ぐぅっ…!」
「リゲル、邪魔です」
「何とでも言いなさっ…いっ…!?」
「タービンビット、リゲルを捕らえなさい」
「しまっ…!大祐…あづみ!!」
ㅤ守る…守る…?
ㅤずっと防衛するだけが、守る事なのか?
ㅤ常に彼女達の側に居て、危険が迫り次第動くだけで良いのか?
ㅤそれは…違う。
ㅤ彼女達を襲う可能性のある奴等を、事前に排除してしまえば良い。
ㅤそうすれば、彼女達が狙われる心配は無くなる。
ㅤ要するに、半永久的に守る事が出来る。
ㅤこんな簡単な事に…何で、今迄気づかなかったのだろう。
ㅤそれが彼女達の幸せに繋がるのであれば、さっさと殺してしまえば良い。
ㅤ奴等を、彼女達を狙う奴等を。
ㅤ青の世界を…この手でーー
「…崩壊してしまえ」
「その場を動かないで下さい」
ㅤ誰だ…?
ㅤ目の前に、小さな少女が現れる。
ㅤ片手にはビームサーベルを構え、勢い良く此方へ突進してくる。
ㅤ冷酷な瞳…確実に、俺を殺すつもりだろう。
ㅤ彼女は思いきり、手に持つビームサーベルを振り翳す。
ㅤその場を、動くな…?
ㅤ当たり前だ。
ㅤ俺がこの場を動く筈が無いだろう。
ㅤ後ろには、大切な彼女達が居るというのに。
「…type,V、其方の少女を頼みます」
ㅤtype.,V…そう呼ばれているオリジナルXIIIの1人。
ㅤ彼女は少女の指示を聞き入れ、片手に持つ、銃身の長いライフルの銃口を、横たわっているきさらちゃんへと定める。
ㅤ動かない、動けないと知っての事だろう。
ㅤ未だ7歳の少女を、殺めようとするとは。
ㅤ然も、きさらちゃんは既に…死と隣り合わせの状態だというのに。
ㅤ幾ら自分達の目的の為だからとはいえ、あまりに卑劣な行為だ。
…もう、抑える事等出来やしない。
ㅤ今迄の行い、そして、今起きようとしている惨劇を。
ㅤ只見ている事なんて。
ㅤ自分の限界等、知った事では無い。
ㅤ死ぬまで生きて、彼女達を守るだけだ。
ㅤ俺は…この身が滅ぶ最後のその刻まで、自分の力を使って大切な人達を守ってみせる。
ㅤだから、力を貸してくれ、デスティニー。
ㅤいや…俺がこの世から消え去る瞬間、一時まで、付き合って貰うぞ。
ㅤ彼女達の幸せな未来を創り上げる為に。
ㅤそれが、俺の選んだ《運命》なのだから。
「切り拓け…」
「…この男…っ!?」
ㅤ先ずは此奴等、道を阻む者達の排除。
ㅤ先程切り込みを仕掛けて来た少女、彼女の振り翳すビームサーベルに、ウェポンラックから取り出したアロンダイトをぶつける。
ㅤバチィッ!と、激しい音を周りに響かせたが、俺は力任せにその少女を吹き飛ばした。
ㅤ多数対少数で戦いを始めた場合、1人だけに固着する理由は先ず無い。
ㅤ俺はその場から直ぐに離れ、きさらちゃんを狙うtype,Vへと近付く。
ㅤだが、type,Vに限らず…オリジナルXIII達の状況判断力は凄まじく。
ㅤtype,Vは、俺が接近したと同時に手に持つ武装を変更。
ㅤ見た目ハンドガンの様な銃へ持ち替える。
ㅤ更には先程の少女。
ㅤ俺がその場を離れると同時に、吹き飛ばされた体勢を整え、直ぐ様あづみさん、A–zちゃんへと接近していく。
ㅤこの中間距離からでは、きさらちゃんか、あづみさんとA–zちゃん…何方かしか守れない。
ㅤなら、考えられる択を見出し、最優先の択を選びどうにかして対処するまでだ。
ㅤとなれば、これしか無いだろう…。
「穿て…」
「…っ!」
ㅤリゲルさんを捕らえているタービンビット4基。
ㅤその内の2つ、彼女の両腕を拘束しているビットに対して、ビームライフル2発、長距離高出力ビーム砲1発を放つ。
ㅤその後直ぐにtype,V、恐らくtype,XIと呼ばれていた少女両方に対して、フラッシュエッジ2をダガーより少し長い程度に調整。
ㅤブーメランの要領で双方に投げ付けた。
「…!危ない、ですね」
「邪魔…」
ㅤどうやら、type,Vにだけは効果が出た様子だ。
ㅤ事実、彼女の手に持つ銃を破壊する事に成功。
ㅤだが然し、type,XIはフラッシュエッジをそのまま切り落とす。
ㅤ彼女は止まらず、あづみさん達へと近付いていた。
…やはり、間に合わない。
ㅤだが、一瞬でもtype,XIを足止め出来れば追い付ける。
ㅤ方法…ライフルじゃあ速度が追い付かない。
ㅤ長距離高出力ビーム砲、構えているまでが長過ぎる。
ㅤフラッシュエッジ2は使い切り。
ㅤこの距離を光の翼で一気に近付いたとして、type,XIがあづみさん達に接触する方が早いというのは、目に見えて分かる。
ㅤそれ程までに開いた距離。
…だが、伏線は既に貼っている。
ㅤどんな距離からでも関係無い、的確な狙撃を持つ彼女なら。
「…狙い撃つ!!」
ㅤその声が周囲に響き渡った刹那、type,XIは青い閃光に貫かれーー
「…流石です、リゲル」
…てはいなかった。
ㅤ彼女は即座にその場を離れ、リゲルさんの狙撃を見事に回避。
ㅤ再度背中を向け、あづみさん達へと接近を試みていた…が。
「通す訳無いだろ…」
「…っ!何時から…っ」
ㅤ彼女が後ろを振り返ったその瞬間、目の前では俺がアロンダイトを振り翳していた。
「くっ…!」
ㅤtype,XIは直ぐ様後退を始める。
「逃すか…!」
ㅤそんな彼女に対し、俺はデスティニーの武装である光の翼を展開。
ㅤ残像をその場に残し、刹那にしてtype,XIの懐へと踏み込む。
「残、像…!?追い付けないっ…」
「先ずは1人目…!」
ㅤ油断したtype,XI。
ㅤその隙を逃すまいと近付き、アロンダイトを完全に振り切る。
ㅤこのゼロ距離からでは躱す事すら、況してや迎撃する事すら不可能だろう。
ㅤ確実にtype,XIを脱落させた。
ㅤと思った矢先。
バチィッ!!
ㅤ先程は俺に味方をしたこの音が、今度は俺を裏切った。
「…あんな事されて、ずっと見ている訳が無いでしょう?」
「邪魔だな…アンタっ…!」
ーーー