Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜 作:黒曜【蒼煌華】
ㅤ見兼ねたのか何なのか。
ㅤ知らぬ間にtype,IIが接近していたとは。
ㅤ恐らく、先程リゲルさんを逃したからだろう。
ㅤ見た所、腕に多少の傷を負っている。
「大祐!」
「っ…!」
ㅤと、唐突に聞き慣れた声が頭に響き渡った、かと思いきや。
ㅤ俺の周りは多数のタービンビットで囲まれていた。
ㅤ即座にその場で光の翼を広げ、後ろへと後退する。
ㅤ案の定、タービンビットは残像へ攻撃を開始し、俺は難無く退避成功。
ㅤtype,IIも流石に残像には敵わないのか、追撃は止していた。
「…リゲルさん、感謝致します」
「いえ、それは此方の台詞よ?あの状況から、私を救ってくれるだなんて」
ㅤ一旦下がり、繰り広げるリゲルさんとの会話。
ㅤそれは先の出来事の話。
ㅤ彼女を捕らえていたタービンビット、その上二つ、両腕を拘束していたそれを、ビームライフル2発で破壊。
ㅤギリギリ、リゲルさんに掠らない程度の距離を狙って。
ㅤそして上手い事タービンビットを破壊し、リゲルさんの両腕が解放。
ㅤ彼女は直ぐ様、両足を拘束しているタービンビットを壊し。
ㅤフッと、横へと軽いステップを踏んだ。
ㅤリゲルさんは更に、type,II達の目の前で、徐ろにtype,XIを狙ってライフルを構える。
ㅤだが、type,IIがそれを阻止しに来る事は当然だ。
ㅤ然し其処へ、リゲルさんとtype,IIの間を遮断するかの如く、走り抜ける長距離高出力ビーム砲。
ㅤその間にリゲルさんは、1発、発射までは早いが精密性に欠けるライフルをtype,XIに打ち込む。
ㅤそして見兼ねたtype,IIが、type,XIの援護に入った。
ㅤリゲルさんは上手い事離脱。
ㅤという仕掛けだった訳だが。
「…まさか彼処で、type,IXの事も狙っていた、なんてね」
「ええ…でないと、限り無く高い可能性で、リゲルさんの離脱を阻害してきたでしょうから」
ㅤその場で唯一、自由に動きの取れるtype,IX。
ㅤ彼女をそのまま放置してしまうと、リゲルさんが再度襲われ、狙撃も出来ず、最悪あづみさん達がtype,XIの餌食となる未来が待っていただろう。
ㅤだが、type,IXの佇んでいた場所。
ㅤ其処は丁度、リゲルさんとtype,IIの間だった。
ㅤ事が上手く運んだのは、此方の運が良かった、としか言いようが無い。
ㅤ何れか一つでも手順を違えば、大惨事では済まされなかっただろうから。
「…本当に、助かったわ」
「………………っ」
「大祐…!?」
ㅤそんな話をしていると、ぐらっと、一瞬にして意識を持っていかれる感覚を味わった。
ㅤ唐突に、頭其の物を引っこ抜かれる様な。
ㅤ俺の体は前に倒れ掛け、それでもと足を踏ん張る。
「…まだ…、死ぬ訳にはいかないっ…。まだ終わらせない…!!」
「…っ!貴方…どうして…?」
ㅤオリジナルXIIIを排除、若しくは撤退させるまで…倒れはしない。
ㅤ人は言葉を口にすると、多少なりとも体は動いてくれるもので。
ㅤ余計な感情は要らない。
ㅤ今は只、目の前で起きている事、その対処だけに意識を向けろ。
ㅤそれが、守る為に必要な最善の選択だ。
ㅤふと、リゲルさんが驚愕の表情を浮かべている事に気が付く。
ㅤ一体何に対しての驚きなのか。
ㅤ今更、驚く程の事が有るのか。
「大祐…貴方、本当にーー」
「リゲルさんっ…!」
ㅤだが…今大事な事は、其処では無い。
ㅤ俺はリゲルさんの声を断ち切り、割り込む。
ㅤすると彼女は、何かに怯えた様子で体をビクッと反応を示した。
「…な、何かしら」
「………こんな状況だからこそ、又……頼みます……。『この場から三人を連れて、逃げて下さい』」
「…!?き、急にどうしてっ…」
ㅤ彼女の問い掛けに、俺は無言で足を前に踏み出す。
ㅤそして、答えを言い放つ。
「『お願いですから…!!下がって下さい…俺が全て倒します…!』。………………だから貴女は、早く三人を連れて…安全な場所へ。その為に、きさらちゃんに頼んで、蜂達を下げたのですから…!」
「で、でもっ…!」
「俺は貴女達を失いたく無いんですっ…!!」
「…っ。残念だけれど…嫌よ。幾ら大祐と言えど、私は指図なんて受けない。私にだって、守りたい物が…大切な人がいるの」
「………………………」
ㅤそれ位…分かっているさ。
ㅤリゲルさんが何れだけ、あづみさんの事は『自分が守ってあげなければ』と思っている事なんて。
ㅤ俺は2人を守りたいから、失いたく無いから、下がってくれと頼んでいるのに。
「…私は、大祐と一緒に戦う。あづみの事を守る為、そして…もう貴方と離れ離れになりたく無いから」
「………………俺は、1人で十分だ…!」
「勘違いしないで。私は誰かに頼ってばかりでいるのが嫌なだけ。それに…大祐、貴方があづみにとって何れだけ大切な存在か、ちゃんと理解して欲しいわ」
「分かっているからこそーー」
「大祐は何も分かって無いっ!………私の事なんてどうでも良い、けど…!あづみの気持ちだけは…お願い………………貴方を失ったら、あづみの心は…」
「…………………」
ㅤ初めて、リゲルさんの『心』を垣間見た気がする。
ㅤ今迄彼女が必死な表情を浮かべていた事は、確かに有った。
ㅤだが、こうして自分に対して向けられると、何とも言い難い気持ちが湧いてくる。
ㅤそして何より、リゲルさんにとって『各務原あづみ』という少女の存在は本当に大切で、大事なのだと。
…彼女は本当に、全てが美しい女性だと、熟そう思わされる。
ㅤ自分の決めた事は滅多に曲げない、軸のしっかりしている方だ。
ㅤだからこそ…あづみさんと俺、そしてリゲルさんの3人で言い放った『ずっと一緒』という誓いを…。
ㅤその『自分の意思を貫く美しさ』は、彼女だけのものだろう。
ㅤこんなにもあづみさんを思って…
「………それに、私だって…貴方を失いたく無いの」
「…リゲルさん」
ㅤ反射的に、俺は彼女の言葉を上書きするかの如く声を遮る。
ㅤ何も聞いちゃいない。
ㅤ彼女の放った言葉。
ㅤ俺は敢えて、耳に入れなかった。
ㅤ未だ彼女の信頼を、完全に得られているという気がしないから。
ㅤだから、リゲルさんの口にした言葉が何かは分からない。
ㅤ今は…この状況を打開する為に動いているのだから。
ㅤそれに、リゲルさんの話は…しっかりとこの頭に残したい。
ㅤこんなごちゃごちゃな場面で、彼女の話に耳を傾ける事が出来そうに無いから。
「………話は、後にしましょう。来ますよ」
「大祐…………」
ㅤ俺とリゲルさんが会話を交わしている間に、オリジナルXIII達は既に態勢を整えていた。
ㅤ今は話している時間すら無い。
ㅤ加えて、これ以上事態が悪化してしまうと手が付けられない。
ㅤ出来る限りの全力を用いて、対処するしか無いのだ。
「オリジナルXIII.type,II」
「…オリジナルXIIItype,XI」
「「目標を排除(するわ)します」」
………やるしか、無いんだ。
ーーー