Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第五十八話: 意思を貫くという事

ㅤ見兼ねたのか何なのか。

ㅤ知らぬ間にtype,IIが接近していたとは。

ㅤ恐らく、先程リゲルさんを逃したからだろう。

ㅤ見た所、腕に多少の傷を負っている。

 

「大祐!」

「っ…!」

 

ㅤと、唐突に聞き慣れた声が頭に響き渡った、かと思いきや。

ㅤ俺の周りは多数のタービンビットで囲まれていた。

 

ㅤ即座にその場で光の翼を広げ、後ろへと後退する。

ㅤ案の定、タービンビットは残像へ攻撃を開始し、俺は難無く退避成功。

ㅤtype,IIも流石に残像には敵わないのか、追撃は止していた。

 

「…リゲルさん、感謝致します」

「いえ、それは此方の台詞よ?あの状況から、私を救ってくれるだなんて」

 

ㅤ一旦下がり、繰り広げるリゲルさんとの会話。

ㅤそれは先の出来事の話。

 

ㅤ彼女を捕らえていたタービンビット、その上二つ、両腕を拘束していたそれを、ビームライフル2発で破壊。

ㅤギリギリ、リゲルさんに掠らない程度の距離を狙って。

ㅤそして上手い事タービンビットを破壊し、リゲルさんの両腕が解放。

ㅤ彼女は直ぐ様、両足を拘束しているタービンビットを壊し。

ㅤフッと、横へと軽いステップを踏んだ。

 

ㅤリゲルさんは更に、type,II達の目の前で、徐ろにtype,XIを狙ってライフルを構える。

ㅤだが、type,IIがそれを阻止しに来る事は当然だ。

ㅤ然し其処へ、リゲルさんとtype,IIの間を遮断するかの如く、走り抜ける長距離高出力ビーム砲。

ㅤその間にリゲルさんは、1発、発射までは早いが精密性に欠けるライフルをtype,XIに打ち込む。

ㅤそして見兼ねたtype,IIが、type,XIの援護に入った。

ㅤリゲルさんは上手い事離脱。

ㅤという仕掛けだった訳だが。

 

「…まさか彼処で、type,IXの事も狙っていた、なんてね」

「ええ…でないと、限り無く高い可能性で、リゲルさんの離脱を阻害してきたでしょうから」

 

ㅤその場で唯一、自由に動きの取れるtype,IX。

ㅤ彼女をそのまま放置してしまうと、リゲルさんが再度襲われ、狙撃も出来ず、最悪あづみさん達がtype,XIの餌食となる未来が待っていただろう。

ㅤだが、type,IXの佇んでいた場所。

ㅤ其処は丁度、リゲルさんとtype,IIの間だった。

ㅤ事が上手く運んだのは、此方の運が良かった、としか言いようが無い。

 

ㅤ何れか一つでも手順を違えば、大惨事では済まされなかっただろうから。

 

「…本当に、助かったわ」

「………………っ」

「大祐…!?」

 

ㅤそんな話をしていると、ぐらっと、一瞬にして意識を持っていかれる感覚を味わった。

ㅤ唐突に、頭其の物を引っこ抜かれる様な。

ㅤ俺の体は前に倒れ掛け、それでもと足を踏ん張る。

 

「…まだ…、死ぬ訳にはいかないっ…。まだ終わらせない…!!」

「…っ!貴方…どうして…?」

 

ㅤオリジナルXIIIを排除、若しくは撤退させるまで…倒れはしない。

ㅤ人は言葉を口にすると、多少なりとも体は動いてくれるもので。

ㅤ余計な感情は要らない。

ㅤ今は只、目の前で起きている事、その対処だけに意識を向けろ。

 

ㅤそれが、守る為に必要な最善の選択だ。

 

ㅤふと、リゲルさんが驚愕の表情を浮かべている事に気が付く。

ㅤ一体何に対しての驚きなのか。

ㅤ今更、驚く程の事が有るのか。

 

「大祐…貴方、本当にーー」

「リゲルさんっ…!」

 

ㅤだが…今大事な事は、其処では無い。

ㅤ俺はリゲルさんの声を断ち切り、割り込む。

ㅤすると彼女は、何かに怯えた様子で体をビクッと反応を示した。

 

「…な、何かしら」

「………こんな状況だからこそ、又……頼みます……。『この場から三人を連れて、逃げて下さい』」

「…!?き、急にどうしてっ…」

 

ㅤ彼女の問い掛けに、俺は無言で足を前に踏み出す。

ㅤそして、答えを言い放つ。

 

「『お願いですから…!!下がって下さい…俺が全て倒します…!』。………………だから貴女は、早く三人を連れて…安全な場所へ。その為に、きさらちゃんに頼んで、蜂達を下げたのですから…!」

「で、でもっ…!」

 

「俺は貴女達を失いたく無いんですっ…!!」

 

「…っ。残念だけれど…嫌よ。幾ら大祐と言えど、私は指図なんて受けない。私にだって、守りたい物が…大切な人がいるの」

「………………………」

 

ㅤそれ位…分かっているさ。

ㅤリゲルさんが何れだけ、あづみさんの事は『自分が守ってあげなければ』と思っている事なんて。

ㅤ俺は2人を守りたいから、失いたく無いから、下がってくれと頼んでいるのに。

 

「…私は、大祐と一緒に戦う。あづみの事を守る為、そして…もう貴方と離れ離れになりたく無いから」

「………………俺は、1人で十分だ…!」

「勘違いしないで。私は誰かに頼ってばかりでいるのが嫌なだけ。それに…大祐、貴方があづみにとって何れだけ大切な存在か、ちゃんと理解して欲しいわ」

「分かっているからこそーー」

「大祐は何も分かって無いっ!………私の事なんてどうでも良い、けど…!あづみの気持ちだけは…お願い………………貴方を失ったら、あづみの心は…」

「…………………」

 

ㅤ初めて、リゲルさんの『心』を垣間見た気がする。

ㅤ今迄彼女が必死な表情を浮かべていた事は、確かに有った。

ㅤだが、こうして自分に対して向けられると、何とも言い難い気持ちが湧いてくる。

ㅤそして何より、リゲルさんにとって『各務原あづみ』という少女の存在は本当に大切で、大事なのだと。

 

…彼女は本当に、全てが美しい女性だと、熟そう思わされる。

ㅤ自分の決めた事は滅多に曲げない、軸のしっかりしている方だ。

ㅤだからこそ…あづみさんと俺、そしてリゲルさんの3人で言い放った『ずっと一緒』という誓いを…。

 

ㅤその『自分の意思を貫く美しさ』は、彼女だけのものだろう。

ㅤこんなにもあづみさんを思って…

 

「………それに、私だって…貴方を失いたく無いの」

「…リゲルさん」

 

ㅤ反射的に、俺は彼女の言葉を上書きするかの如く声を遮る。

 

ㅤ何も聞いちゃいない。

 

ㅤ彼女の放った言葉。

ㅤ俺は敢えて、耳に入れなかった。

ㅤ未だ彼女の信頼を、完全に得られているという気がしないから。

ㅤだから、リゲルさんの口にした言葉が何かは分からない。

ㅤ今は…この状況を打開する為に動いているのだから。

 

ㅤそれに、リゲルさんの話は…しっかりとこの頭に残したい。

ㅤこんなごちゃごちゃな場面で、彼女の話に耳を傾ける事が出来そうに無いから。

 

「………話は、後にしましょう。来ますよ」

「大祐…………」

 

ㅤ俺とリゲルさんが会話を交わしている間に、オリジナルXIII達は既に態勢を整えていた。

ㅤ今は話している時間すら無い。

ㅤ加えて、これ以上事態が悪化してしまうと手が付けられない。

ㅤ出来る限りの全力を用いて、対処するしか無いのだ。

 

「オリジナルXIII.type,II」

「…オリジナルXIIItype,XI」

「「目標を排除(するわ)します」」

 

………やるしか、無いんだ。

 

ーーー

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