Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜 作:黒曜【蒼煌華】
ㅤ一触即発。
ㅤお互いに下手な手出しは許されない、緊迫した空間に立たされていた。
ㅤ此方から仕掛ければ、間違い無く対処され、今迄の時間が水の泡となってしまう。
ㅤ相手が仕掛けて来た事に対して、一番適切な判断を下し、対処する。
ㅤそれが何より強い札になると、彼女達も察しているだろう。
ㅤだからこそ、お互い五体満足に動けない状態が続く。
ㅤ此方としては時間さえ稼げれば、それで良い。
ㅤリゲルさんが三人をこの場から逃がし、彼女と共に、この戦闘を切り抜ける事が目的なのだから。
ㅤ其れ迄、この体が耐えてくれるかも分からない。
ㅤ少なからず、体力は限界へと近付いているのだから。
ㅤ兎に角…この状況を打開するには、リゲルさんとの連携が必要不可欠だ。
ㅤ彼女の真なる力を見出す。
ㅤ蜂兵達にも施したあの技術を、リゲルさんにも。
ㅤ俺が一人でどうこう出来る様な相手でないのなら、彼女と二人で力を合わせれば良い。
ㅤ大丈夫だ…リゲルさんとなら、出来る気がする。
ㅤいや、必ず無事に帰るさ。
「………………………………」
「………………type,X、支援要請をーー」
「type,II、九条大祐から目を離してなりませんっ…!!」
「隙を見つけたっ…!」
ㅤtype,IIがアイコンタクトか何かで、type,Xの方へと目を向けた瞬間。
ㅤ相手の陣形を取り乱すには今しか無いと、隙を突くべく前に出る。
ㅤ斜め下90°に潜り込み、Vの字を描く様にtype,IIへと斬り掛かる。
ㅤ急速に曲がる事を利用すれば、相手の死角から取りに行けるだろう。
ㅤそう直感した俺は、即座に行動に移す。
「っ…!相変わらず、あのバトルドレスはどんな機動力をしてーー」
「黙れっ…!!」
ㅤビームライフル乱射からのアロンダイト一閃。
ㅤ牽制として撒くライフルにより、他のオリジナルXIIIの救援が一歩遅れる。
ㅤライフルを避けるべく下がろうとしたtype,IIを、デスティニーの超機動で追い付き、斬り逃げ。
ㅤの、予定だったが。
「ぐっ…!」
ㅤtype,Vの正確な一射により、ライフル其の物が破壊され。
ㅤ更にはタービンビットのテリトリーに入ってしまい、一度退かざるを得ない状況となってしまった。
ㅤこの最悪な状況を打破するに必要な要素は、一体何だ…?
ㅤ本当に、リゲルさんとの2人だけで切り抜けられるのか。
…だが、今はとやかく言ってる場合では無い。
ㅤ彼女達を潰す為の手段を、予め試しておかねば勝機は見えない。
ㅤその一つとして、強襲斬り込み。
ㅤこれが通用するかどうか、結果は見えていたさ。
ㅤ相手は多人数。
ㅤ対して此方は一人。
ㅤ俺の事をしっかりと凝視している4人に阻まれ、失敗に終わるだろう。
ㅤそれは案の定、然も2人だけで止められてしまった。
ㅤ然し乍ら、こうして少しでも攻め気を見せないと、此方が隙を突かれてしまう。
ㅤ先に動いた方が負けとは言った、だが相手は多人数でのごり押しを見込める。
ㅤどうすれば良い。
ㅤ逃げれなくも無い…が、追い付かれて終いだ。
ㅤリゲルさんもそのまま撤退してくれていれば良いのだがーー
「大祐!」
…やっぱり、それは願っても叶わない様だ。
ㅤ背中から聞こえて来る声と共に、何発かの青い閃光が、オリジナルXIII目掛けて駆けて行く。
ㅤそれは紛れも無い、彼女の撃ったライフルだと直ぐ様気付いた。
ㅤあんなにも精密で美しい弾道…側で見ていた側の人間として、間違える筈が無い。
ㅤ熟、味方で良かったと思わされる。
「…………………リゲル、という事は………」
「逃げられましたね」
「チッ…………………まぁ、良いわ。リゲルと九条大祐、2人を捕らえさえすれば、各務原あづみも自ずと姿を現すでしょう」
「ベガ様の為に、という事を一番にですよ」
「ベガ様以外の為に、私が動くとでも?」
「………………………………………ポラリス様、本当にこれで良いのですか…?」
ㅤ勝手に話していろ。
ㅤあづみさんもリゲルさんも、渡しはしない。
「…大祐、その………有難う」
ㅤふと、彼女の声が耳に入る。
「………今更。早くこの場を切り抜けるぞ」
「…?え、えぇ…勿論よ」
ㅤ余裕が無い。
ㅤ悟られてはいけない。
ㅤリゲルさんに、負担を掛ける訳にはいかない。
ㅤ少しでも、隙を見せてはならない。
ㅤそう思った矢先。
「…っ、ごはっ…がはっ…」
「大祐…!?貴方、血がーー」
「…はぁっ………俺に………………、構うな…………はぁっ……」
「構うなって…もう、限界じゃない…」
ㅤ分かっていた。
ㅤ元から、死に物狂いで動かしていたこの体だ。
ㅤ吐血位、して当たり前だろう。
ㅤだが、このタイミングで俺が弱って来た所を見せてしまうと…当然。
「二度目のチャンス、今度は逃がさない」
「type,II…type,XI…!」
ㅤ相手方は仕掛けて来るに決まっている。
ㅤ又もや同じ陣形、type,Vとtype,IXが後衛に変わりは無い、か。
ㅤまだ手に力は入る…な。
ㅤ近距離は全て俺が凌ぎ、遠距離はリゲルさんに任せる他、手段は潰されている。
ㅤ本当、苛々する様な状況の持ち込み方をしてくれる。
ㅤ丸で誘導されているかの如く。
「それでも…っ!」
ㅤやれる事を全力でやるだけだ。
ㅤその気持ちを察してくれたのか、リゲルさんも瞬時にしてライフルを構える。
ㅤ俺に…前を任せてくれた、という事か。
ㅤならばその信頼に応えるべく、俺はパルマフィオキーナを両手に展開し、type,II、type,XIの腹部を狙って手を前に出す。
ㅤやられる前にやれ、という戦法だ。
ㅤ彼女達のサーベルが俺に届くのが先か、俺の掌が彼女達を貫くのが先か。
ㅤ何方が早いか、賭けるしかーー
「っ!後ろに…!?」
「type,V…舐めるなよ…!!」
ㅤふとした瞬間、リゲルさんが驚愕の音を上げた。
ㅤ前方にてハンドガン型ライフルを構えていたtype,Vが、デュアルに持ち替え、体勢を崩しながらビームを乱射。
ㅤだが、その弾道一つ一つは、しっかりと俺とリゲルさんを狙っていた。
ㅤ俺は『情報演算処理能力』を利用し、type,Vの動き、type,XI、type,IIの動きを読もうと。
ㅤ切羽詰まった俺は、完全に焦り、無理をした。
「がっ…!?」
ㅤ超反応を見せるオリジナルXIIIの、三人の動きを同時に演算処理しようとしたのだ。
ㅤ更には限界を迎えている体。
ㅤ脳に掛かる負担は、既に容量オーバーになっていた。
「………動…け………………動いて…く、れ………」
「まだ…今度は、私が貴方を助ける番だから…っ!」
ㅤ力を失い、脱力する体。
ㅤ最早言う事を一切、聞いてはくれなかった。
ㅤ俺は、何も無い空中に膝を着く。
ㅤデスティニーのブースターだけが、辛うじて生きている様な状態だ。
ㅤ体は中に浮かせられるが、力が入らないなら只の浮遊物。
ㅤ目の前に映るのは、リゲルさんの姿とtype,Vの放ったビームライフル。
ㅤリゲルさんも、流石に挟撃されては無理が有るだろう。
ㅤ一瞬にして武器を持ち替え、サーベルでの迎撃を試みていたものの…既に放たれているtype,Vのライフルはどうしようもない。
ㅤリゲルさんが躱せば、俺が死を迎える。
ㅤその事が『回避』という思考を迷わせているのか、彼女はその場から動かなかった。
…どうして、何時もやらかしてしまうのか。
ㅤどうして、リゲルさんは俺を守ってくれるのか。
ㅤ守る側の人間が、守られるなんてな…皮肉なものだ。
ㅤ神様、無理を承知でだ。
ㅤリゲルさんだけでも…逃してくれ…頼むから。
ㅤ頼むからっ…!!
ㅤ俺は…心の中で必死に叫んだ。
ㅤ何が有ろうと、リゲルさんには死んで欲しくないから。
ㅤ必ず守るって決めたんだ…。
ㅤ神様に縋るのは勘弁願いたいが、今はそうするしか無い。
ㅤ一度俺の望みを裏切ってくれたんだ…彼女達を助けたいという願い位、叶えてくれ。
ㅤと、青い弾道が目の前まで接近した。
ㅤその時ーー
バチッ、バチィッ!!
「なっ…!?何故…!」
ㅤ刹那、不思議な音が頭に響いた。
ㅤ聞き慣れた事の有る、ビームが何かとぶつかり合う音。
ㅤ加えて、その後に続く『ぐちゃ』という擬音。
ㅤ目の前に飛び散るは緑色の液体。
「何で此処に…蜂達が居るのですか…!」
「関係無いわっ、このまま2人にとどめをーー」
バチィィィッッ!!
「…大祐には、触れさせない」
ーーー