Z/Xの世界に転移 〜この世界で幸せを見つける〜   作:黒曜【蒼煌華】

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第六十話: 限界

ㅤ一触即発。

ㅤお互いに下手な手出しは許されない、緊迫した空間に立たされていた。

ㅤ此方から仕掛ければ、間違い無く対処され、今迄の時間が水の泡となってしまう。

ㅤ相手が仕掛けて来た事に対して、一番適切な判断を下し、対処する。

ㅤそれが何より強い札になると、彼女達も察しているだろう。

 

ㅤだからこそ、お互い五体満足に動けない状態が続く。

ㅤ此方としては時間さえ稼げれば、それで良い。

ㅤリゲルさんが三人をこの場から逃がし、彼女と共に、この戦闘を切り抜ける事が目的なのだから。

ㅤ其れ迄、この体が耐えてくれるかも分からない。

ㅤ少なからず、体力は限界へと近付いているのだから。

 

ㅤ兎に角…この状況を打開するには、リゲルさんとの連携が必要不可欠だ。

ㅤ彼女の真なる力を見出す。

ㅤ蜂兵達にも施したあの技術を、リゲルさんにも。

ㅤ俺が一人でどうこう出来る様な相手でないのなら、彼女と二人で力を合わせれば良い。

 

ㅤ大丈夫だ…リゲルさんとなら、出来る気がする。

ㅤいや、必ず無事に帰るさ。

 

「………………………………」

「………………type,X、支援要請をーー」

「type,II、九条大祐から目を離してなりませんっ…!!」

「隙を見つけたっ…!」

 

ㅤtype,IIがアイコンタクトか何かで、type,Xの方へと目を向けた瞬間。

ㅤ相手の陣形を取り乱すには今しか無いと、隙を突くべく前に出る。

 

ㅤ斜め下90°に潜り込み、Vの字を描く様にtype,IIへと斬り掛かる。

ㅤ急速に曲がる事を利用すれば、相手の死角から取りに行けるだろう。

ㅤそう直感した俺は、即座に行動に移す。

 

「っ…!相変わらず、あのバトルドレスはどんな機動力をしてーー」

「黙れっ…!!」

 

ㅤビームライフル乱射からのアロンダイト一閃。

ㅤ牽制として撒くライフルにより、他のオリジナルXIIIの救援が一歩遅れる。

ㅤライフルを避けるべく下がろうとしたtype,IIを、デスティニーの超機動で追い付き、斬り逃げ。

ㅤの、予定だったが。

 

「ぐっ…!」

 

ㅤtype,Vの正確な一射により、ライフル其の物が破壊され。

ㅤ更にはタービンビットのテリトリーに入ってしまい、一度退かざるを得ない状況となってしまった。

 

ㅤこの最悪な状況を打破するに必要な要素は、一体何だ…?

ㅤ本当に、リゲルさんとの2人だけで切り抜けられるのか。

 

…だが、今はとやかく言ってる場合では無い。

ㅤ彼女達を潰す為の手段を、予め試しておかねば勝機は見えない。

ㅤその一つとして、強襲斬り込み。

ㅤこれが通用するかどうか、結果は見えていたさ。

ㅤ相手は多人数。

ㅤ対して此方は一人。

ㅤ俺の事をしっかりと凝視している4人に阻まれ、失敗に終わるだろう。

ㅤそれは案の定、然も2人だけで止められてしまった。

 

ㅤ然し乍ら、こうして少しでも攻め気を見せないと、此方が隙を突かれてしまう。

ㅤ先に動いた方が負けとは言った、だが相手は多人数でのごり押しを見込める。

ㅤどうすれば良い。

ㅤ逃げれなくも無い…が、追い付かれて終いだ。

ㅤリゲルさんもそのまま撤退してくれていれば良いのだがーー

 

「大祐!」

 

…やっぱり、それは願っても叶わない様だ。

 

ㅤ背中から聞こえて来る声と共に、何発かの青い閃光が、オリジナルXIII目掛けて駆けて行く。

ㅤそれは紛れも無い、彼女の撃ったライフルだと直ぐ様気付いた。

ㅤあんなにも精密で美しい弾道…側で見ていた側の人間として、間違える筈が無い。

 

ㅤ熟、味方で良かったと思わされる。

 

「…………………リゲル、という事は………」

「逃げられましたね」

「チッ…………………まぁ、良いわ。リゲルと九条大祐、2人を捕らえさえすれば、各務原あづみも自ずと姿を現すでしょう」

「ベガ様の為に、という事を一番にですよ」

「ベガ様以外の為に、私が動くとでも?」

「………………………………………ポラリス様、本当にこれで良いのですか…?」

 

ㅤ勝手に話していろ。

ㅤあづみさんもリゲルさんも、渡しはしない。

 

「…大祐、その………有難う」

 

ㅤふと、彼女の声が耳に入る。

 

「………今更。早くこの場を切り抜けるぞ」

「…?え、えぇ…勿論よ」

 

ㅤ余裕が無い。

ㅤ悟られてはいけない。

ㅤリゲルさんに、負担を掛ける訳にはいかない。

ㅤ少しでも、隙を見せてはならない。

 

ㅤそう思った矢先。

 

「…っ、ごはっ…がはっ…」

「大祐…!?貴方、血がーー」

「…はぁっ………俺に………………、構うな…………はぁっ……」

「構うなって…もう、限界じゃない…」

 

ㅤ分かっていた。

ㅤ元から、死に物狂いで動かしていたこの体だ。

ㅤ吐血位、して当たり前だろう。

ㅤだが、このタイミングで俺が弱って来た所を見せてしまうと…当然。

 

「二度目のチャンス、今度は逃がさない」

「type,II…type,XI…!」

 

ㅤ相手方は仕掛けて来るに決まっている。

 

ㅤ又もや同じ陣形、type,Vとtype,IXが後衛に変わりは無い、か。

ㅤまだ手に力は入る…な。

ㅤ近距離は全て俺が凌ぎ、遠距離はリゲルさんに任せる他、手段は潰されている。

ㅤ本当、苛々する様な状況の持ち込み方をしてくれる。

ㅤ丸で誘導されているかの如く。

 

「それでも…っ!」

 

ㅤやれる事を全力でやるだけだ。

ㅤその気持ちを察してくれたのか、リゲルさんも瞬時にしてライフルを構える。

ㅤ俺に…前を任せてくれた、という事か。

 

ㅤならばその信頼に応えるべく、俺はパルマフィオキーナを両手に展開し、type,II、type,XIの腹部を狙って手を前に出す。

ㅤやられる前にやれ、という戦法だ。

ㅤ彼女達のサーベルが俺に届くのが先か、俺の掌が彼女達を貫くのが先か。

 

ㅤ何方が早いか、賭けるしかーー

 

「っ!後ろに…!?」

「type,V…舐めるなよ…!!」

 

ㅤふとした瞬間、リゲルさんが驚愕の音を上げた。

ㅤ前方にてハンドガン型ライフルを構えていたtype,Vが、デュアルに持ち替え、体勢を崩しながらビームを乱射。

ㅤだが、その弾道一つ一つは、しっかりと俺とリゲルさんを狙っていた。

 

ㅤ俺は『情報演算処理能力』を利用し、type,Vの動き、type,XI、type,IIの動きを読もうと。

ㅤ切羽詰まった俺は、完全に焦り、無理をした。

 

「がっ…!?」

 

ㅤ超反応を見せるオリジナルXIIIの、三人の動きを同時に演算処理しようとしたのだ。

ㅤ更には限界を迎えている体。

ㅤ脳に掛かる負担は、既に容量オーバーになっていた。

 

「………動…け………………動いて…く、れ………」

「まだ…今度は、私が貴方を助ける番だから…っ!」

 

ㅤ力を失い、脱力する体。

ㅤ最早言う事を一切、聞いてはくれなかった。

ㅤ俺は、何も無い空中に膝を着く。

ㅤデスティニーのブースターだけが、辛うじて生きている様な状態だ。

ㅤ体は中に浮かせられるが、力が入らないなら只の浮遊物。

ㅤ目の前に映るのは、リゲルさんの姿とtype,Vの放ったビームライフル。

 

ㅤリゲルさんも、流石に挟撃されては無理が有るだろう。

ㅤ一瞬にして武器を持ち替え、サーベルでの迎撃を試みていたものの…既に放たれているtype,Vのライフルはどうしようもない。

ㅤリゲルさんが躱せば、俺が死を迎える。

ㅤその事が『回避』という思考を迷わせているのか、彼女はその場から動かなかった。

 

…どうして、何時もやらかしてしまうのか。

ㅤどうして、リゲルさんは俺を守ってくれるのか。

ㅤ守る側の人間が、守られるなんてな…皮肉なものだ。

 

ㅤ神様、無理を承知でだ。

ㅤリゲルさんだけでも…逃してくれ…頼むから。

ㅤ頼むからっ…!!

 

ㅤ俺は…心の中で必死に叫んだ。

ㅤ何が有ろうと、リゲルさんには死んで欲しくないから。

ㅤ必ず守るって決めたんだ…。

 

ㅤ神様に縋るのは勘弁願いたいが、今はそうするしか無い。

ㅤ一度俺の望みを裏切ってくれたんだ…彼女達を助けたいという願い位、叶えてくれ。

 

ㅤと、青い弾道が目の前まで接近した。

ㅤその時ーー

 

バチッ、バチィッ!!

 

「なっ…!?何故…!」

 

ㅤ刹那、不思議な音が頭に響いた。

ㅤ聞き慣れた事の有る、ビームが何かとぶつかり合う音。

ㅤ加えて、その後に続く『ぐちゃ』という擬音。

ㅤ目の前に飛び散るは緑色の液体。

 

「何で此処に…蜂達が居るのですか…!」

「関係無いわっ、このまま2人にとどめをーー」

 

バチィィィッッ!!

 

「…大祐には、触れさせない」

 

ーーー

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