柳緑の閃光   作:れっどhope

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セクション6 驚き、衝撃、愕然

高校生活二回目の帰りの会を終え、今は放課後。廊下は、二日目という割には盛んに声が飛び交っている。

 

「そういえば、今日から一週間ぐらい部活動見学期間だったよな」

「そうだよ、翔くん」

 

翔真が床を掃きながら光にはなしかける。が、それに返したのは苺だった。

 

「じゃあさっさと…え、なんでうちの教室の掃除してんの?」

「一人で待つのも寂しいから手伝ってるんだよぉ」

「いや、他のクラスの手伝いとか聞いたことねえよ!」

「相変らず仲がいいな、お前ら」

 

光が机を運びながらそう言うと、翔真はため息をついた。

 

「そういえば光、うちの学校ってなんで野球部ないんだ?」

 

翔真がそんな疑問をなげかける。翔真は野球に詳しくないが、プロ初の女選手や後世に名を残すあの伝説の野球選手が恋恋高校でプレイしていたことは知っている。そんなことを聞くのは最もだ。

それを聞いて、光は待ってましたとばかりに答える…ことはなかった。むしろ額にしわを寄せるようだった。

 

「じつは、俺も詳しいこと知らないんだよ」

「まじでか!」

「なんか新しい高校がどうとか…」

 

光は曖昧にそう言う。これには翔真も驚きを隠せなかった。あんなにいいことを言ってた光がほとんど知らないなんて…。

 

「その高校って多分紅臨(こうりん)高校ですよ」

 

そんなやりとりを聞いて、苺がそう言う。

 

私立紅臨高校。恋恋高校が全国制覇した四年後、新しく作られた高校で、スポーツ面、特に野球部に力を入れていて、創立以来5回全国優勝している強豪校。そして恋恋高校よりもグラウンドが綺麗で定員数も多い。恋恋高校はこの高校にいい選手をもっていかれているのが現状である。

 

「な、そんなことが…」

「それにあっちは交通の便が恋恋よりいいですからね」

 

目を丸くする光。相当驚いたらしい。

 

「つーか、なんで光が知らないんだ?」

「確かに、閃道君なら知ってると思ってましたぁ」

 

二人は同じ感想を光に抱いた。確かに光が知らないのは不自然だ。それを聞き、光はあー、という。

 

「だって中学アメリカだし」

「あ、アメリカぁ!?」

「あれ、言ってなかったっけ」

 

その新事実に翔真はさらに唖然とするしかなかった。苺もこればっかりは驚きを隠せなかった。その二人を見て光は、

 

「驚きすぎだろ」

 

という感想を述べるしかなかった。

 

 

 

 

 

「遅いぞ光!」

 

新事実が明らかになった教室掃除を終え、八組のドアを開けた光たちに実はそう言い放った。

 

「わりい、掃除だったんだよ」

「掃除!?なんだよ、言ってくれれば手伝ったのに」

「え、違うクラスの掃除の手伝いって流行ってんの?」

 

そんな翔真のツッコミはさておき、光は教室を見渡した。白木、東凪兄弟、実、そして自分たち。全員集結したようだ。

 

「んじゃ、やるか」

「おう…でなにすんだ?」

 

白木がそう言って発案者の実のほうを見る。そして同時にちゃんと考えているのかと不安も抱く。

 

「えーと、とりあえずどうやってメンバーを九人集めるかを決めたいな。後は顧問の確保。まあ、暇そうな先生を見つけたら頼んでみるかな。それと…ってどうした白木、東凪」

 

なぜか驚愕してる二人を見て、実がそう言う。

 

「…いや、なんでもない」

「とりあえず話を続けてくれ」

「?おう」

 

白木と東凪が何を思ったかは言わずとも推し量れるだろう。

そんな二人はさておき、実は話を進めようとするが、ある事を思い出した。

 

「そうだ、まず部長を決めなきゃ」

「閃道でいいんじゃね」

 

白木がそう言うと、周りのメンバーも、

 

「確かに、俺を誘ったのは光だし」

「リーダーっぽいですしねぇ」

「僕もそれでいいと思います…」

「ま、早川よりかは適任だわな」

「おい東凪。…ま、俺も光がいいと思う」

 

それに同調し、皆が光を見つめる。そして光は…

 

「…ぉ、ぉう」

((((((照れた!))))))

「じゃあ、よろしくな、光」

「任せとけ、実」

 

ここに、新恋恋高校野球部(仮)の部長が決定した。

と、そんな中、翔真が、

 

「そういや、俺らってまだ自己紹介してないよな」

 

と切り出した。よくよく考えてみれば、翔真は白木や東凪のことをよく知らないし、それは白木と東凪もそうであった。

 

「確かにな。じゃあ、やるか。一番手は…」

「おねがいします、閃道光新部長」

「俺かよ!まあいいか」

 

ここで光は一つ咳払いをした。そして、みんなを見る。

 

「俺は閃道 光。右投右打で、ポジションはキャッチャー。守備に関しては、高校生の中でも一番だと思う」

 

その言葉を聞いて、野球経験者の四人は内心でにやける。ここまで自信をもってそういえるのは、確かな努力と実力があるからに違いない。

 

「あと、さっき驚かれたから言うけど、中学生のときはアメリカにいた」

「え、マジで!英語喋れんのか!」

「ま、まあ…それはいいとして、次は…翔真頼む」

「あ、おう」

 

光に指名され、翔真も咳払いをした。

 

「えーと、光と同じクラスの曽我部 翔真です。野球は未経験だけど、光に影響を受けて入部?しました。でもぜってーうまくなってみんなと甲子園にいきたい!…見たいな感じでイイのかな?」

「ほお、いいこというじゃねえか曽我部翔真!さすが光、いいやつを捕まえたな」

「だろ?んじゃ次は…」

 

と、この調子で自己紹介は続いた。白木はぶっきらぼうに、東凪兄はクールに、弟はおどおどとしながら、苺は甘い声とその容姿で男子の目を釘付けにしながら。…またしょうくんと言われた翔真が悶絶したのは置いておこう。

そして実の番がやってきた。

 

「よっしゃ、俺が最後か!」

「お前についてはみんな知ってんじゃね?うるさいし」

 

東凪がそう言うと、

 

「んだとお!?」

 

実が顔を真っ赤にして反論する。どうやら、というかわかりきったことではあるが実は短気でもあるらしい。まあ、収まるのも早いが。

 

「まあいい、俺の自己紹介を聞いて恐れおののくがいい!俺の名前は「たのもぉ!」

 

実が自己紹介をしようとした瞬間、ドアが開き、そして明るい元気な、女の子の声が教室に響き渡った。

全員の視線がその女子にいく。髪はもとプロ野球選手の橘みずきを思い出すような水色、背丈は女子にしては大きい。

 

「な、何者だ、貴様ぁ!」

 

なぜかノリノリな口調な実がそう言い放つと、その女の子はにやりと笑った。

 

「私が誰かなんてどうでもいい!私と勝負してください!」

「どういうこと!?」

「私が勝ったらぜひ野球部に入れてください!負けたら潔くあきらめます!」

「話がつかめない…」

「…音梨(おとなし) 沙羅(さら)さんですよね?」

 

誰一人状況がつかめない中、苺がその名前を口にした。その少女、音梨はそれを聞いて驚く。

 

「そこのセクスィー美少女、何故私の名前を!?」

「あ、そういえば」

 

光はもらったリストを思い出す。

 

「ミートが売りなんだっけ」

「何故あなたも!?」

 

音梨 沙羅。右投左打の遊撃手。中学校はそこそこ強いところで、彼女はそこで一番を打っていた。注目すべきはそのミート力で、ストレート、変化球ともに彼女が当てられないボールはない。弾道2、ミートA、パワーF、走力D、肩力E、守備力C、捕球E。

入部してくれるのなら勝敗は関係ない、貴重な戦力になるだろう。その旨を音梨に伝えると、彼女はさらに衝撃を受けた顔になった。

 

「ええ、いいんですか!?」

「おう…そもそもまだ九人そろってないから全然入ってほしいんだけど」

「そうなんですか!?やったあ!」

「ここに9人居ないの気づかなかったのかよ…」

「これでうるさいのが二人目かよ」

 

白木と東凪がおのおの感想を述べるが、音梨にはまったく聞こえてないようだ。眼をきらきら輝かせている。そんな様子を見て翔真はため息をついた。

 

「まったく、今日は色々おどろくな。この後もなんかあんじゃねえか?」

「さすがにないよぉ」

 

翔真と苺がそんな会話を交わす。

それを聞いてか聞かずか、

 

「でも、せっかくだから有名人の早川実君と戦ってみたかったな!」

 

そんなことを言う。光と翔真は頭上に?マークを浮かべた。他の人らは特に表情を変えないようだが。

 

「どうして、というか何で名前を知ってるんだ?」

「どうしてってそりゃ…」

 

その問いかけに、音梨ではなく実が答える。

 

「俺が早川あおいの一人息子だからだろ?」

「」

 

沈黙、そして

 

「ええええええええ!!!」

 

光の声が教室、さらには廊下中に響き渡った。翔真は口をあんぐりあけている。

その様子を見て、実は、

 

「おい、知らなかったのよ」

 

と言うしかなかった。

 

「いや、だって、ええ!?他のやつらは知ってたの!?」

「まあ、名前は知ってた」

 

と白木。

 

「さすがに有名だからな」

 

と東凪が。

 

「僕でもさすがに知ってました…」

 

と東凪弟も。

 

「私も顔を見てぴんっときましたよぉ」

 

と苺までも。

 

「マジかよ…俺たちだけかよ」

「…もう、驚きすぎて疲れた」

「驚きすぎだ」

「やっぱみんな面白い!」

 

音梨が暢気にそう言った。




もっと一話分の文字数を多くしないと…

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