シズ・デルタ、第四階層守護者との逢瀬   作:空想病

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 時系列としては、書籍四巻のリザードマンの戦いです。
 第四階層の描写などは、ナザリックならこんな感じになるんじゃないかなという感じ。
 
 あと一言だけ言わせて。
 
 シズ、きゃわわ。



シズ・デルタ、第四階層守護者との逢瀬

 

 

 

 

 

 

 

 私はシズ・デルタ。

 正式名称、CZ2128・Δ――それが、私。

 私には、好きなモノが、ある。

 たくさん、ある。

 創造主たる至高の御方。

 ナザリック地下大墳墓。

 戦闘メイド“プレアデス”の姉や妹。

 共に至高の存在へと忠義を尽くす同胞たち。一般メイド。エクレア。

 でも。

 一つだけ、苦手なモノが、ある。

 私は今、その苦手なモノの前に――彼の目の前に、いる。

 

 

 

 

 

 彼と出会ったのは、この地に残られた至高の存在のまとめ役であるアインズ様が、蜥蜴人(リザードマン)という集団に宣戦布告をなされた時のこと。

 

「…………ガルガンチュア様の起動?」

 

 ガルガンチュアを起動させよ。

 そうアルベド様を通じ、アインズ様に命じられたのが、すべての始まりだった。

 シズはナザリック地下大墳墓のすべてのギミックに通じるという設定を、至高の存在たちに与えられている。そんな彼女に、その命令が通達されたのは、至極当然な流れだったのかもしれない。相手を威伏させ、絶望に陥れるという目的に、彼という存在は極めて有用。そして、シズは彼を起動する方法にも通暁していた。しかもこの時、ナザリック内に残っている戦闘メイドはユリとシズだけ。ナーベラルはアインズ様と共に、ルプスレギナはカルネ村に、ソリュシャンは王都に、エントマはコキュートス様のもとで、それぞれ任務を果たしている。そうなると、この役目を引き受けることができるのはシズだけという結果が生まれる。ユリはプレアデスの副リーダーとして、万が一の場合はナザリックの防衛を一手に担う役割を持つのだから、ここはシズが動くしかない。

 実のところ、シズは名前だけは聞かされて知っていたが、彼と出会ったことはなかった。というか、出会ったという者さえも少ない。

 

 それもその筈。彼は他の守護者とは些か以上に事情が異なっているのだ。そもそもにおいて、厳密には守護者とは呼べないとまで言われているのだから、その程度が窺い知れるというもの。守護者としては、ナザリックにおいて単体最強と謳われるシャルティア様を優に超える力を発揮するとされながら、力の序列に彼が加えられることはないというのだから驚きだ。

 

 まず。他の守護者が、至高の存在各々の「かくあれ」という願い、望み、求めによって、その存在を構築されているのに対し、彼の原型はそういったものを抜きにして、最初からこのナザリックの第四階層に存在していたという。それは、彼がギルド拠点製作ルールの上で必須となる、戦略級攻城ゴーレムであったが故だ。言わば彼という存在は、ナザリック地下大墳墓において最初にして最古の守護者と言えなくもないのだが、至高の御方々にとっては拠点の一部、ナザリックにおける必須ギミックの一つに過ぎない。第六階層の闘技場に設置された大量のゴーレムたちと同列とも言えるだろう。

 次に。彼の体躯の巨大さは、異様の一言に尽きる。数字で表せば30メートルを優に凌ぐ。これは平均的な雄のマッコウクジラの倍に等しい。十階建ての建築物を見上げれば、彼のその巨体ぶりが判るだろう。当然のことながら、ナザリック内を自由に闊歩できるようなスケールでは断じてない。そのため、彼は己が守護する階層から外へ出ることは原則として不可能だ。

 移動するには〈転移門(ゲート)〉などの魔法的な補助が必要不可欠となる。

 

 さらに。ダメ押しとなるのが、彼は起動するまで「地底湖」の底に封じられており、自分の意思や判断で行動することができないことだ。これは守護者どころか、全階層に散らばるNPCの中でもあまり見かけない、ゴーレム種に共通する特徴である。理由は単純明快。拠点防衛用という観点から見れば、彼を常時起動させておく理由などあまりないからだ。各階層の守護は他の僕たちで十分に役目を果たせているし、現状、ナザリックを脅かすほどの敵が侵入しているといった状態でもないのだ。過剰な戦力を無策に遊ばせておく余裕など、未知の多い転移後の世界では存在しない。

 

 そこまでを数秒で思案したシズは、一も二もなく命令に従っていた。

 シズ・デルタは自動人形(オートマトン)。命令に忠実であるナザリックの同胞やメイドの中でも、さらに命令に忠実であろうとするのは、極めて当然な反応でしかない。

 疑問も興味も抱かない。

 与えられた義務を、役割を、着実に、そして確実に遂行していく。

 それのみが存在理由。それだけが自分自身。

 

「…………わぁ」

 

 許可を得て第四階層へと上がったシズの前に広がっていたのは、重い藍色に染まる地底湖を中心とした深淵の鍾乳洞だった。第六階層ほどの広さではないが、この広大さは見る者を圧倒する。冥府や地獄を思わせる地下階層は不気味な光エフェクトに包まれており、自動人形であるシズですら、感嘆に声を上げてしまったほどだ。その荘厳さは、第三階層の地下聖堂や、第六階層の夜空にも匹敵する。

 もっとも、このフィールドは侵入者迎撃の際には完全に消灯され、侵攻してくるプレイヤーは常時〈闇視(ダークビジョン)〉を魔法なり装備なりで発動しておかなければならない制約を設けられている。無論、その程度の備えは、並みのユグドラシルプレイヤーであれば必須条件である。〈闇視(ダークビジョン)〉の他に、〈永続光(コンティニュアル・ライト)〉などの魔法や道具を使えば、ある程度の光源を確保できるが、暗闇の中で灯る光など、シズなどに言わせれば囮でもない限り、ただのマヌケな射殺対象でしかない。

 シズはガルガンチュア起動のため第四階層に上がる際、この光エフェクトをONにしてやってきた。作業を簡便に済ませるという意味もあるにはあったが、第四階層のエフェクトが確実に機能しているかどうかの点検の意味も含まれている。ユグドラシルにあった頃ならいざ知らず、未知の世界へ転移した今は、こうして定期的に各階層の点検や確認を怠ることはできない。シズの機械の右目は「ガンナー」「スナイパー」として特に優秀な性能を発揮する。エフェクトに不具合がないことはもちろん、第四階層全体に異常がないことも手に取るように分かった。

 

「…………問題ない」

 

 シズは即座に行動を開始する。プレアデスにおいては最低の合計レベル46と設定された自動人形の脚だが、針山のような鍾乳洞の崖を走破することに支障はない。苦も無く地底湖の(ほとり)に降り立った。

 そのままメイド服を着た状態で、シズは湖面に足をつける。至高の御方の手で作られた魔法のメイド服は、水にぬれる程度でダメージは負わない。水の抵抗で動作に鈍さや重みが加わるのは仕方がなかったが、やはりシズのレベルならば問題なく水中を行動できる。彼女の種族「自動人形」は水で満たされた環境に適応しているわけではないが、その程度のことは至高の存在たちによって対策済みである。真に、至高の御方々は偉大である。

 湖の底は深い。地底湖は、ガルガンチュアの巨体を覆い隠してもあまりある容量を誇るので、容易く目的のものまで到達できない。

 長いこと湖の中を沈み、ようやく巨大な岩盤を幾重にも重ねたような岩塊が右目に映る。

 それを見たシズの抱いた印象は、たった一言。

 

「…………かわいい」

 

 思わず声に出てしまった。水中でも声を発することが出来たのは、彼女が呼吸を必要としない自動人形だからだ。聞き咎めるものはいない為、大して問題になるはずもないのだが、なぜか反射的に手で口をふさいでしまった。

 ずんぐりとした巨体。逞しく膨れた二本の手足。岩を削り出して仕上げた彫像というより、岩と岩を繋いで組み上げたヌイグルミにも見えた。テディベアを巨大な岩で作ろうとしたら、こんな感じになる気がしないでもない。

 何よりも素晴らしいのは、他のゴーレムとは一線を画す焔のような鼓動。

 分厚い胸の岩盤から漏れる深紅の輝きは心臓を、というより、大地の脈動を感じさせる。

 まさに、至高の存在たちが造り替えた自然の権化。暴力的なまでの愛らしさと、無機的な造形美を共存させた、造物主たちの傑作が、この湖の底に封じられている。

 シズは受けたあまりの衝撃に、数瞬もの間、自らに与えられた使命を忘れ自失していた。

 仕事を疎かにしては、戦闘メイド“プレアデス”の威信を汚してしまう。それは巡り巡って、自分の大好きな姉や妹たちの評価を貶める行為にもなりかねない。そんなことを望む者など、このナザリックには存在しない。存在してはならない。

 だが、シズはそこにある守護者の姿に魅せられていた。

 有体に言ってしまえば、その、見惚れてしまったのだ。

 頬が蒸気でも出そうなほど熱くなる。水中の冷たさが問題にならないほど、全身くまなく(ほて)ってしまう。

 状態異常に耐性を備えているはずの自動人形が胸を抑え、一時的ながら行動不能に陥るその様は、見るものが見れば、可憐な恋する乙女のそれにしか見えなかっただろう。

 シズは自分の中に残されていた理性を総動員させて、何とか務めを果たすべく行動する。

 脈打つ岩塊の上に降り立ち、起動のためのパスコードを入力するのにも緊張を要した。ひょっとすると至高の御方の前に控える時にも匹敵する。相手はただのゴーレム、厳密には守護者とは呼ばれない、動き回る岩の像でしかないはずなのに。

 

「…………第四階層守護者、ガルガンチュア――――起動する」

 

 パスコードの入力を確認して、シズは離れ難い衝動を必死に抑え、彼の胸から離れる。

 途端。大地の脈動は煌々と輝きを増し、鼓動は早鐘を打つ速度にまで加速する。

 岩塊には血管か神経、あるいは植物の根を思わせる赤い線が縦横無尽に浸透し、指先から爪先まで、くまなく力の波動を漲らせていく。

 赤熱し白熱し、明滅を繰り返す岩盤は、その内に生命の萌芽を宿すかのよう。

 自動人形である少女の目に、それは太陽の燃焼を想起させるほどだった。

 

「…………アルベド様、ガルガンチュア様の起動、確認」

 

伝言(メッセージ)》越しに守護者統括から感謝と帰還命令を受け、シズは一瞬だけ返事に窮しそうになるが、即座に持ち直した。《伝言(メッセージ)》を打ち切り、後ろ髪を引かれる想いで、起動したばかりの瞳を眺めつつ、湖から飛び出した。

 

「…………何、これ」

 

 畔に佇むシズは、自分の体に起こる不調に気づいていた。気づかないはずがなかった。

 それでもどのようにすればいいのか判らず、そのまま第四階層を離れるしかなかった。

 第九階層にまで戻ったシズは、ユリにでも不調の事を(しら)せておこうかと思いはしたが、結局、誰にも相談することはできず、時間だけが過ぎていく。

 自分は、至高の御方によって創られ生み出された存在。それが不調をきたすなんてありえないことだと、シズは信じて疑わない。

 それを疑うということは、至高の御方々へ不敬を働くことになりはしないか?

 そう思うと、シズは胸の中心で疼くものを、他の創造された者へ知らせるのが躊躇われた。

 たとえそれが自分の上司であり、大好きな姉妹であり、尊敬に値する同胞であったとしても。

 

「…………だいじょうぶ」

 

 我知らず、シズは自分自身へ言い聞かせていた。

 自分はナザリック地下大墳墓、戦闘メイド“プレアデス”のシズ・デルタ。

 そんなものに、不調など起こるはずもない。

 そのように思い、割り切って、シズは己の使命に邁進していく。

 

 蜥蜴人(リザードマン)の村への侵攻は着々と進められ、その様子をおさめた動画は、ナザリック内に住まうほぼすべての従僕(しもべ)たちにも観覧された。仕事中のものたちが後から見れるようにというアインズの心配りによるものであったはずが、アインズ様の進軍となれば、全ての従僕たちが観覧を希望するのは無理からぬこと。結果として、最低限の守備兵や指揮官などを除き、ほぼすべてのものが第九階層の大広間へ集合。特大のスクリーンに映し出されるアインズ様と各守護者たちの御姿に、皆が起立の姿勢を保った敬服の姿勢で視聴する様は、映画館というよりも演説会のような様相を呈している。

 神話のごとき尖兵の群れ。

 怯え慄き震え上がる蜥蜴共。

 さらに至高の存在が放った超位魔法が、世界を覆す天変地異を成し遂げた様は、多くの同胞たちの胸を打つ。

 惑乱し、混迷し、瞬く内に統制と規律を喪った下等生物の有り様は、見るものによっては憐れを抱くほどに悲壮な情景だった。当然、ナザリックに属する存在が、それ以外のもの――特に、至高の御方へ刃を向けた愚か者たち――に、憐れみを抱くことなど皆無なのだが。

 皆が口々に、アインズ様の偉業と偉大さに万歳を唱え始めるのは、自然の摂理ですらあった。

 だが、シズだけは、現れた巨大な影を見て、さらにもう一段階ほど、鼓動が加速するのを自覚する。

 狭い動画の枠の中に納まりきらない、巨岩の異様。

 その腕に握るのは、自分の肉体に匹敵するほどの厚い岩盤。あれで一体、何をしてみせようというのだろうと思うより先に、守護者は構造的にありえないような動作をとって、(からだ)を僅かに沈みこませる。

 それは、火山の噴火する直前の沈黙。

 ゆっくりと、そして確実に、巨像は動く。

 

「…………わぁぁぁ!」

 

 シズは珍しく声を上げてしまった。

 腕が振り抜かれた瞬間、風を切る死の塊が宙を舞う。

 降り注ぐ大質量が大気を劈き、次いで、轟音と爆音と破砕音が世界を引き裂く。

 投擲された巨岩の激震で、辺り一帯に小規模な地震が発生した様子が映るのは、動画を撮っている者の身体すらも震わせることの証明。地上班のみならず、空中班すらも余波で吹き飛ばされかけているのだから、その威力はまさに桁を外している。これが、ただの岩の投擲――この威力は甚大に過ぎるだろう。

 暗闇の世界の中でも、彼が成し遂げたことは明らかだった。

 彼こそが、守護者最強。

 単純な出力でいえば、他の守護者を圧倒して余りある、暴力の化身。

 シズは、身体の中心が再び熱せられるのを感じ取る。再び訪れた不調は、決して不快かつ不穏な気配など存在しないのだが、それでも自動人形の明晰な頭脳には、耐えがたい負担を強いた。

 知らず、自分の身体を抱きしめてしまうほど。

 

「…………なんで、こんな」

 

 呟いた声は、周囲から沸き起こる興奮の喝采と万歳の斉唱に掻き消される。

 自動人形は矜持と責任と何かを杖に、何とか直立の姿勢を保ち続けていた。

 激甚に過ぎる土煙の晴れた後には、彼の姿は消え失せているのを見て、安堵したような、残念なような。

 シズはそのまま、至高の御方が巨岩の上の玉座にまします姿を目に焼き付ける。

 それから四時間後、蜥蜴人(リザードマン)の最後の抵抗を、コキュートス様が見事踏み破ったところで、中継映像は終了の運びと相成った。

 ユリの主導で、集まっていた同胞たちは各階層へと戻され、己の責務に従事していく。

 シズはその誘導を手伝うのを終えると、即座に第四階層へと向かった。勿論、ガルガンチュアのもとへと馳せ参じるために。ユリは妹の申し出に一時困惑し、アインズに許可を願った。すると、至高の御方は二つ返事で了承してみせる。シズが主張していた「起動に何か不具合がないか」「外で活動して何か問題が生じていないか」などの確認作業は、実のところアインズも懸念していた案件である。それを従僕(しもべ)から提案されたとあっては、アインズにしてみれば渡りに船。コキュートスの成長と併せて喜ばしい、それはNPCの自己判断能力の萌芽にも思えたのである。

 アインズの勅命という後ろ盾を得て、シズは急ぎ第四階層へ。

 誰もが目を奪われる地底の美しさも眼中になく、シズは湖の中心に身を投げ出した。

 ザボンと勢いよく水柱を上げ、勢いをそのままに潜水していく。

 再び直接会い見えた歓喜に、シズは全身が震えてしまう。

 あれほどの力を持つ守護者。思わず見惚れるほどの、かわいさと暴力を総身に混在させた者。

 シズは熱っぽい頬をこすって、改めて挨拶することを試みる。

 

「…………あの、ガルガンチュア、様。私、シズ・デルタと言います」

 

 岩は動かない。

 炎のごとき鼓動は、休眠態勢の時と同じ規則性が窺えるのみ。

 

「…………戦闘メイド“プレアデス”の一員で、種族は自動人形」

 

 岩は動かない。

 そんな名前など知らんと言わんばかりの沈黙が返されるのみ。

 

「…………今日、すごかった。あんな大きなの、投げ飛ばせるなんて」

 

 岩は動かない。

 あれほどの力を示した両腕は、起動する前と同じ位置に固定されている。

 

「…………さすがは、守護者の、一員…………です」

 

 岩は動かない。

 あれだけの力を奮った全身は、裁き待つ虜囚のごとく硬直しきっている。

 

「…………それで、あの」

 

 岩は動かない。

 動くわけない。

 

「…………あ」

 

 シズはたまらず、彼の胸に触れてしまう。

 恐る恐るながら触れて、けれどもしっかりとした手つきで、岩肌を手指でなぞっていく。熱っぽい視線で彼の瞳を見つめながら、その奥に輝きが灯るのを見ようとして。

 それでもやはり、岩は動かない。

 まったくもって、岩は動かない。

 

「…………はは」

 

 気づいていたはずだ。

 というか、自分ならば知っていて当然ではないか。

 動像(ゴーレム)は、起動状態でない限り動くはずがない。

 この守護者は、アインズ様の指示で起動し、役目を終えたから、ここで再び眠りについている。

 それこそが動像(ゴーレム)の特長であり、そんな姿こそが、最も彼に相応しい在り方なのではないか。

 

「…………」

 

 シズはもう、与えられた役目を果たすしか、なかった。

 

 

 

 

 

 シズ・デルタは、ガルガンチュアが苦手だ。

 ユリたちのような姉妹に抱くような愛情はなく、エクレアを抱える時の小動物へ向けるような庇護欲もなく、アインズ様をはじめ至高の四十一人に対する尊敬や崇拝や忠義とも全く違う、特別な感情。

 それを抱かせる彼の存在は、まったくもって不可解極まる。

 それでも。

 彼女は今日も第四階層に向かい、地底湖の底に身を投げ出す。

 もう、これで何度目だろう。非番の時も含めると、三桁は超えているか。

 人形の心は、飽きることなく、諦めることもなく、自らの想いに囚われたまま、今日も彼という存在を追い求め、焦がれるように待ち続ける。

 

「…………ガルガンチュア」

 

 嬉しげに、寂しげに、恋い慕う名を呼びながら。

 

 

 

 

 

                   【終】

 




 ここまで読んでくれたあなたに、感謝の極み。

 さてさて。いかがでしたでしょうか。
 人形や機械の恋愛譚、などと言えば古今東西において使い古されたネタでありますが、大抵の場合は悲恋で終わるものが多いイメージ。
 ですが、私はシズのこの逢瀬を、悲恋などとは思っておりません。
 というか、悲恋で終わらせるようなことはしません。
 したくない。
 そんだけ(切実)

 次は誰の逢瀬と巡り合えるのか。

 それでは、また次回。            by空想病
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