私、航空戦艦山城は、田島提督の命令でパラオ泊地の監視をしている。好きではないが、あんぱんと牛乳という組み合わせで三食間食全てを済ます。それが私の張り込みの作法。張り込みが終わるまでそれ以外は腹に入れない。それは、八百万の神にささげる供物。私が嫌いでも張り込みの神様が好きなのだから仕方ない。それは、古今東西の刑事ドラマが示す通り。張り込み成功を祈願し、カレー、甘味、秋刀魚。湧き上がる欲求をおさえ、今日も私はあんパンを食らう。
「張り込み対象との接触は避けるのが情報でしょう。山城さん、それでも観察ですか?」
私が借りているアパートの一室に
「張り込みを張り込むなんていい趣味してるのね。そんな暇があるなら最初から提督がここに座ればいいのに。」
「荒れてますね。相変わらずあんパンばっか食べて、願掛けだか何だか知らないですが、食べるもの食べないと身が持ちませんよ。」
「えっ?」
「んっ、ご苦労さまです。」
「余計なことしないでよ提督、ラーメンなんてホント要らないんだから!!!まぁ、でも・・・どうしてもって言うなら仕方ないかなぁ。相手は駆逐艦でも、提督の命令には逆らえないし・・・」
私は開封済みの二袋目のあんぱんを床に置き、
既に
「え?なんですか??」
「なんでもないわ・・・」
「で、どうでしたか?
「普通に優秀そうな指揮官だったわ。少なくとも私が見張ってた5日間はね。とても艦娘達を兵器扱いしてる提督とは思えないくらい。」
「そうですか・・・。」
そう言いながら
「ちょっと・・・、提督近い・・・。ていうか、最近着任した駆逐艦が潜入捜査するんじゃない?そこはどうなってるの?」
「今、潜入捜査の準備を明石さんにして貰っています。準備が終わり次第本人に通達します。」
「艦娘をエサに
「じゃあこのままパラオ泊地をほったらかしにするのが気持ちのいい話ですか?それに漣達、艦娘を人間同様に扱っている提督を捕まえるためのエサとしてパラオ所属の艦娘達で狙ってきたとしたら・・・」
私は提督の言葉に驚きながらもずっと聞いていた。
「漣と新しい駆逐艦の2人で提督を一網打尽にします。汚れ仕事は漣たちがやります。山城さん、貴女の任務を告げます。・・・艦娘達を守って下さい。」
航空戦艦山城監察レポート
あんパン生活も一週間目を迎えた。いい加減みそ汁の味が恋しくなってきたが相変わらず提督に動きはない。
アンパン生活8日目
昨日輸送艦まで食料を取りに行ったら遠くの方で「アンパン戦艦来た!!!マジ来た!!!」とか逃げながらひそひそやっていた駆逐イ級達が居たが相変わらず提督に動きはない。パラオ泊地内も周辺も変化もないが穏やかな毎日だ。願わくは彼女のこの平和な日々が続いてほしい。立場を忘れてそんな事を思いつつ今日も私はアンパンを食らう。
アンパン生活12日目
気づいたらここ数日誰とも喋ってない最後に喋った「いや、袋一緒でいいです」が三日ぶりに発した言葉だった。が、相変わらず提督に動きはない。・・・一瞬提督がこちらを見ていた気がしたが気のせいだろう。私は緩んだ気を引き締めるように今日も私はあんパンを食らう。でも、半分残した。
あんパン生活15日目
輸送艦まで食事を取りに行ったら「袋一緒でいいです戦艦来た!!!また絶対あんパンと牛乳一緒に持ってくぜ!!!絶対一緒だぜ!!!」と船団護衛の艦娘達がひそひそやっていたが相変わらず提督に動きはない。このまま何も起きなかったらどうなるんだろう。とふと考えた邪念を吹き払うように今日も私はあんパンを食らう。そして、全部吐いた。
アンパン生活20日目
あんまり誰とも喋ってないので私、声出るかなぁと「あー」と叫んだらお隣さんから「うるせぇ!!!」と壁を殴ってきて久しぶりに会話が成立してうれしかったが相変わらず提督に動きはない。毎日毎日飽きもせずに書類を作成。世の中にはもっといろんな刺激のある楽しい生活があると思うのに。例えば新しく横須賀鎮守府に配属された駆逐艦が襲撃してきたとか?そんなことを考えながら今日も私はアンパンを・・・
壁にたたきつける 。
アンパン生活22日目
もういい加減にしてくれ。いつになったら提督と新しい駆逐艦はくるんだ。いつになったら私はアンパンの呪縛から解き放たれるのよ!!!提督ぅ!!!早く来てくれぇ!!!私をこのエンドレスアンパンから救い出してくれぇぇぇぇ!!!
そんな願いを込めて私はアンパンを天空に向けてスパーキング。
アンパン生活23日目
そこら辺にいた駆逐イ級に向けてスパーキング。
アンパン生活24日目
オリョクル中の
アンパン生活25日m
船団護衛の艦娘に向けてスパーキンッ!!!
アンパン生活26n
提督に向けてスパーキィィィィィィン!!!
アンパン生活28日目
目が覚めるとここ数日の記憶が無い。しかし、こんな私の変化とは裏腹にやはり提督に動きはない。いつもと同じく執務室であんぱんを作り秘書艦にあんぱんをあげる。夜あんぱん時にあんぱんをあんぱんしてあんぱんする。あんぱんにあんぱんをあんぱんであんぱんがあんぱんをあんぱんだあんぱんあんぱんあんぱん・・・
アンパン生活30日目
あんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱん
アンパン生活31日目
気がつくと下着姿、しかも、餡子まみれになっていて見たことのない場所に立ち尽くしていた。
「もう限界だ!!!任務もパラオの艦娘達も知ったもんか!!!もう私はあんぱんを一口たりとも食べたくないのよ!!!」
全てが嫌になり、私は走り出した。もう何もかもどうでもいい。私は身支度をするために部屋に向かった。だが、そこには・・・肉じゃがが置いてあった。
『あんぱんばかりだとお腹壊しますよ。鳳翔さんが肉じゃが作りすぎてしまったので食べて下さい。何時か助けにきてください。
パラオ泊地秘書艦より。』
私は涙が止まらなかった。何時から艦娘達が私の事に気づいていたなんて知らない。一つだけハッキリしているのは、彼女達にありがとうなんて言われる資格なんて無いことよ。くだらない願掛けのため、彼女達を危険に晒してしまったからだ。私はその日、張り込みの神様に反逆した。
肉じゃが生活3日目
目を開けると、目の前には見知らぬ天井が広がっていた。そして、苦々しい顔の提督が・・・。
「提督・・・。ここは・・・?」
「輸送船の医務室の中。」
「パラオ泊地はどうなったんですか?」
「そのまま。警備も強化されて監視さえできない環境になってしまいました。山城さん。漣達は嵌められたんです。」
楠木提督は、一ヶ月間もの間、私を知らないふりをしながら私が憔悴しきった所で所属する艦娘を使い、手を差し伸べ毒を持った。
「しかし、山城さんがあそこで提督を見張っていたおかげで憲兵達の家族を収容していた収容所を奪取出来ました。」
「山城さん。」
「漣。柄にもない事しないで。落ち込んでなんかないわ。私は自分自身が不幸だって知ってるから。ただ・・・どうせ負けるなら、」
私は、未練があるように丸い窓から見える雲一つない青い空を見上げた。
「私のやり方で負けたかったなって・・・。」
「今食べたいのはカレーなんかじゃ無いみたいですね。」
「いい?漣。おねだりしても。」
私はその時、生まれて始めて
「いやぁ、上手くいったなぁ。」
それから数週間後。パラオ泊地の執務室には楠木と秘書艦が居た。
「そうですか・・・。」
「これでしばらくは誰の邪魔もなく過ごせる。」
秘書艦は、楠木に頼まれ(頼まれたと言っても、姉妹艦でおどされていただけだが)毒を持った肉じゃがをアパートの一室の前に置いてきたのだ。
「開発資料を貰ってきます。」
気まずいのか、秘書艦は、直ぐにデイリー任務の開発の資料を取りに執務室から出ていった。それと同時に、轟音が執務室に接近。楠木が窓を覗くとそこには
催涙弾が装填されているハープーンは、執務室に着弾。直ぐにガスが部屋に充満した。楠木は、激しく咳き込み、鼻から洟水を出し、さらに床を這いつくばって半壊状態の執務室から廊下に出た。そこには人影が・・・。
「誰だ!?」
楠木は、ヨロヨロと立ち上がりながら姿を確認すると、そこには私、山城が立っていた。
「おい不幸!!!俺を助けろ!!!」
「無理よ。祭りに急いでるから。」
「はぁ!?祭り!?泊地のどこでやってるんだよ!!!」
楠木は、助けて欲しいと願っているが、私はそんなこと知らない。私は、私を負かした相手に一撃を加えるために、左手に持っていたビニール袋からあんぱんを取り出した。
「やってるわ。山城春のパンまつり。」
「!!!」
私は右手に持っていたあんぱんを楠木に思いっきり叩きつけた。これまでの鬱憤と一緒に。
山城春のパンまつり63日目。
「お前・・・、本当に・・・、あんぱん・・・、好きだなぁ・・・。」
床に倒れている楠木がゆっくりと体を起こして餡子まみれの顔で私を見ていたいた。私はそれを嘲笑うように見ながらあんぱんを齧った。
「好きじゃないわ。」
今日も私はあんぱんを食らう。
「あんぱん」が多数続くのって、字数稼ぎに入ってしまうのですかね・・・。狂気感を表現したかったのですがね・・・。