私が私として認識できたのは、まだまだ自然の色濃く残るような世界の中心だった。
気づけばそこに立っていた。
なぜ、とか。どうして、とか。そんな疑問に答えられる存在は周囲になかったし、それは何千年と月日が経った現在でもとうとう現れることはなかった。
名前もない、記憶もない、それでも未来の知識だけはなぜか覚えてる。あまりにも
額から伸びる二本角。
口以外のパーツを隠してしまうのっぺらぼうの仮面。
自分で言うのもあれだが、それらの要素に不釣り合いな華奢で頼りない肉体。
拳ひとつでクレーターを生む膂力があることを理解してしまえば、あとはもう自分は怪物なのだとすんなり納得できた。心に
はたして、私は鬼となってしまったようだ。
なんか怪物メンタルのおかげか、気持ちに余裕ができたな。
あれかな。これは俗にいう転生なのかな?
『知識』通りならばここは普通に地球だろうし、魔王が生まれるわけでも、世界を揺るがす存在が出てくることもない。つまりは私の独壇場になるかもしれんワケだね。
そうは思っても私TUEEEをする気にもなれず、冬の
漠然とした生きる理由さえも私にはないのだ。
それに気づいたとき、途端に、存在する理由さえも消失したような虚しさが生まれる。詰んだ。
いったい私がなにをした。生まれた瞬間にアイデンティティーが崩壊するとか冗談じゃない。
――砂上の楼閣。
脆いモノの総称のような言葉が頭に浮かび、冷や汗を流しながらバカバカしいと跳ねのけた。
人並みの生に固執する心があったのかさだかではないが、当時の私はたったひとつの目的のために立ち上がる。
自分が何者なのかを知りたい。
なぜこんな、生きてるのか死んでるのかも解らんような境遇にいるのかと。
まるでそれが唯一の安寧を手に入れられる手段であるかのように妄信し、私は世界を巡り、ありとあらゆる情報と知識を集めていく。思い返してみると、自分でも引くほど貪欲だった。というか相当ハジケてやがった忘れたい黒歴史の総集編だ。
けど時間だけはあったからね。努力で得られるモノはすべて手に入ったのではないか。いまならば、この世のすべてをそこに置いてきたと言われる某財宝さえ単独で入手できそうだ。そう確信できるくらいには頑張ったんだ。
――結果、私はいまも自分が何者であるかを知らず。
ありとあらゆる幻想を閉じ込めた世界――幻想郷の地下、旧都において。
小さな小さな食堂を営んでいる。