この時期、私にとって大事なことでしたので投稿ができませんでした。
それでは本編へどうぞ。
〝模擬戦〟から少し長い時間(とき)が過ぎ、IS学園は夏休みに入る手前だった。彼らは島に来ていた。
その島は、東京と隣の県の県境近くの海上に浮かぶ島。面積は割と大きく、本土とは連絡船と、島から橋で繋がっている。
主要産業は四季折々の風景(特に春の桜が有名)と島の各地にある温泉、離島もあり〝人が皆温かい〟と評価され有名な観光島。
多分、この島にいる島民は平和しか知らない。
本土で起きていることなんて、島の外の世界で起きているにすぎないだなんてことを思っている。
正直彼らはこの島に住んでいる島民のことを勝手に嫌っているだけであり、本音を言えばあまり嫌いだとは思っていない。
島に入ることなんて簡単だ。エージェントもまた、島の島民として紛れて情報を収集し、マイスターたちが来るなら上手いこと連絡船や橋を通してくれるからだ。
倭と翼は町中を散策していると、校舎が目に入った。
「……情報通りか」
翼が周りを見渡す。
「平和……か」
倭はどこか羨ましく呟く。
「羨ましいのか?」
翼が揶揄する。
「……違う」
それを否定するが、「へぇー」と軽く受け流される。
2人は南IS学園前まで来ており、日曜日は基本クラブ生以外は来ていないようだ。
校門を挟んだ向こう側から、何人かの生徒が2人を凝視していた。
「そんな珍しいのかね、見知らぬ者がいてさ」
翼は苦笑じみた表情を交えながら、歩みを進める。
「……基地の様子を見に行く」
そう言って倭は、目的地を目指しながら島の散策を再開する。
平和の島と言う割りに、付近には軍の基地が設置されている。
島を守るためなのか、それとも別の目的があるか。
それよりも、情報によれば、この島に男のIS操縦者がいるらしい。
この世界にまだ適正を持つものがいるかもしれない。
でも、巻き込まれてほしくはない。
心の中で思いながら一歩踏み出そうとしたとき、呼び止められた。
「ここのもんじゃないな。どこから来た? 本土からか?」
門を潜り抜けて出てきたのは、制服を着用した少年であった。
「そういうことかな?」
翼が冗談半分で言った。するとそれに反応したのか、目付きが変わった。
「ふざけるのはやめていただきたい」
そのとき、彼らの後ろのほうで雰囲気の違う眼帯を着けた少年に目が入った。あまり遠くにいることもあり見えないが、表情の変化に乏しく思えた。
やはり気のせいだと、眼帯を着けている少年は冗談半分で言ったやつの隣にいたんだ。
ましてや双子なのか? そんなもの聞いてみなきゃ分からない事だろうと内心考えた。
「お前さん、そこの生徒だろ?」
翼が両腕を頭の後ろに組ながら聞いた。
「そうですけど……」
「まあまあそう警戒するなよ、な?」
今少年は、彼の話すペースに巻き込まれた。それと同時に苦手だと思った。
「……行くぞ」
倭が口を開く。
「あなたたちも、IS学園の生徒ですか?」
「……俺は先に行く」
彼は構ってられるかといった感じで一歩踏み出す。
「まあ待てよ倭。彼に島の案内をしてもらおうぜ」
「……仕方ない」
どうしてこんな状況で、こういこと言えるのか不思議で仕方ない。さっきは苦手だと思ったが、彼は意外と面白い。
「いいですよ、案内します」
優しく微笑むと早速話を切り出す。
春風島について観光地や彼のオススメスポットを案内してもらうと、商店街へやって来た。
「大体島のこと、お分かり頂けたでしょうか?」
「いやぁ~すまないね、色々と世話になったよ」
翼は感謝の言葉を述べ、近くにある喫茶店に行こうと少年に誘った。
「あれ? 兄さん、何をしているのですか?」
振り向くと、そこには2人の少女が立っていた。
1人は背が小さく、もう1人は腰辺りまである豊かな赤毛をポニーテールに纏め同色系統の目の色をした女の子。
「あなたたちは、誰?」
「紹介しよう、彼女は――」
「あたしは天城夕だ! よろしく!」
「私は、星野心と言いますです!」
「こりゃどうも。俺は、神道翼だ。本土から来たIS学園の生徒だ」
神道翼と聞き彼は、最近開催された模擬戦を思い出した。
吉田夏海が話題にした組織の人間かもしれない。
今は普通の一般人変わりないが、人は見かけによらずだ。
「……吉良倭」
2人の少年と少女は、互いに握手を交わした。
これから付き合いがあるかどうか、確証はないかもしれない。
――吉良倭って人、握手はするんだ
優人は1人心の中でそう思った。
「あー! やっぱりIS学園の生徒ではないですか!」
少し前は教えてくれなかったのに対し、なぜ彼女たちに教えたんだろうか?
「わりぃ、わりぃ。俺は女性限定で優しいんだよ」
なにが「女性限定で優しいなんだよ」と言ってやりたかったが、ここは我慢する。
「夕理と心は先に基地へ戻っといて。僕はこれから彼らと話をするからさ」
「分かりましたです!」
「分かった」
軽く手を振って別れを告げると、喫茶店へと入る。
少し緊張じみた様子で、誤魔化すように店員にドリンクを注文する。
「それで話とはなんだ……?」
彼(吉良倭)から話を振ってくるだなんて意外だった。隣に座る神道翼も少し驚いて、若干目を見開いていた。
「君たちは……何しにここへ?」
少年は目的が何なのか軽く探りを入れる。
「ここにある〝IS学園〟を〝ついでに〟見に来たのさ」
翼が簡潔に答える。
「観光地はどうでした?」
「まっ、平和で温なとこだな」
彼の述べた感想に満足したのか、とても嬉しそうに頷いている。
この島の良さを知ってもらえたのは、島民として嬉しいこと限りない。でも眼帯を着けた少年は、人を避けるような妙な違和感を覚えた。
「すまない……他に見たいものがあるから先に行く」
翼が止めようと声を掛けようとしたら、倭は代金だけ置いて店を後にした。
「仕方ない、2人で話すか」
「ええ、……そうですね」
苦笑じみた表情で言葉を返す。
ずっと気になっていた疑問を投げ掛ける。
「ちなみに学年……は?」
「学年か? う~んそうだな、2年だ」
「ええ!?」
腑抜けた声が、店内に響く。
椅子からずり落ちそうになるが、なんとか左手で椅子を掴んで堪えた。
そのあと顔を赤らめて恥ずかしがり水を慌てて飲む。
「おいおいおい、そんな驚くことか?」
優人は勢い余って水が喉につまり、咳き込む。
「だ、だだだだ大丈夫ですよ」
「えらく動揺してるぜ?」
翼はあわてふためく優人を見て、笑いながら心配の声を掛けた。
「わ、笑わないで下さい!」
「笑うなって言われても、笑うさ。だって、お前さんの動揺っぷり面白れーんだからよ」
「あー、もう! 面白がらないで!」
優人は笑っている翼に言い返す。
「ほら、こぼしちゃいかんからよだれかけいるか?」
笑いの止まらない翼は、さらにからかいがヒートアップする。
「僕は赤ちゃんじゃない!」
優人は必死に赤ちゃんじゃないと訴え続けるが、笑いの止まらない翼の耳には届いていなかったのだ。
翼は何かを思い出したのか、笑うことを止めると名前を聞いた。
「そう言えば、お前さん名はなんと言うんだ?」
「えっ!? 僕ですか? 僕は星野優人。春風島出身の、ここ南IS学園の生徒です」
翼の質問にきっちり答えると、乱れた髪を慌てて整える。
「まっ、改めてよろしくな優人君」
「ええ、こちらこそ」
2人は軽い握手を交わし、しばらくの間沈黙が続いたのだった。
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