ISANOTHER STORY   作:ブルーインパルス

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今回は、主人公たちが春風島に赴いてる間に起きた出来事になります。


SUBMISSION11「福音」

翼の模擬戦からしばらく時が過ぎる。倭と翼は別任務を遂行するべく学園から離れ、椿・遥・佐助はIS学園で大人しく過ごしていたところへ緊急連絡が入る。

すぐさま学園から南太平洋海盆沖にある組織の秘密ドッグへ向かったのだ。

秘密ドッグに到着するや否やブリーフィングルームへ入室すると、老人が椅子に腰をかけて待っていた。組織を創設した男〝吉良直信〟だ。

マイスターが席につくと直信は話を切り出す

 

「まず、君たちに伝えなければならないことがある。それはな、暴走したISの破壊ミッションだ」

 

暴走したISの破壊。何故ISが暴走するのか、マイスターたちには理解できなかった。

有人機のISならパイロットが操作するのだから、暴走を起こすはずがないと思っている。

 

「暴走って……人が乗るISは大丈夫なはずじゃ……」

 

遥は直信に尋ねる。

 

「パイロットが搭乗する前に、何者かが遠隔操作によるハッキングが行われたのじゃよ」

 

ハッキングによるISの暴走。

余談だが、ハッカーっていうのは良い人をさす意味で、悪い人をさすのはクラッカーと呼ぶ。

 

「それができるのは、篠ノ乃博士だな?」

 

直信の話を理解した直貴は、彼に答えが合っているのか確認をとる。

 

「 するどいうのう、直貴。孫の言うとおり、篠ノ乃博士によるものじゃ」

 

一同はざわつき、落ち着きを取り戻さない。ブリーフィングルームに声が響き渡る。

 

「どうして私たちが関わるのですか?」

 

椿は疑問を問う。

 

「我々は争いを生む原因となるものは全て紛争幇助対象となる」

 

「篠ノ乃博士を殺すつもりなんですか?」

 

椿はさらに質問をした。

 

「彼女は――これ以上放っておくことができん」

 

「私たちの目的は紛争根絶であり、特定の人物を殺すことではありません!」

 

椿は声を荒げ、組織の理念について再確認する。

 

「彼女自身争いを生む権化じゃ」

 

「しかし――!」

 

「お姉ちゃんやめて!」

 

遥が間に割って入り、話を変える。この状況で言い合っても、話の進展がしない。暴走したISは待ってくれない。

 

「こうしている間にも、暴走したISは織斑一夏たちがいる元へ向かっているんだ」

 

彼らのやり取りを聞いていた佐助はようやく口を開いた。

言い争う暇があるなら早く任務を実行しろという目付きで、遥を睨む。

 

「遥……私は先に行くよ」

 

椿は機体の最終チェックに向かうめ先に行くことを妹に伝え、ブリーフィングルームから退室する。

 

「遥、それほど気に入らないなら任務から降りてもらうでござるよ」

 

いくら友人だといえ、これほど冷たく棘のある言葉を発した佐助は初めてだ。

彼は戦争根絶をするためなら何だってしてしまうのだろうか?

遥には考えられない。

話は少しそれるが、ISが表舞台に現れてから世界は変わった。女性にしか反応しないことから、彼女たちは何を思ったのか自分達は男姓よりも優れている。いつしか自らの尊さに酔い、男性は蔑まれるようになり女尊男卑という言葉が生まれた。「周りが男性を蔑むから自分もそうする」と実に馬鹿げている。

だが、女尊男卑に留まらずISは白騎士事件をきっかけに兵器の価値として見出だし、悪用する者も現れた。

その結果がフランスのパリで起きたテロ事件だ。未だ詳細が把握できていないが、テロに使用されたISの中にデュノア社製の第2世代〝ラファール・リヴァイブ〟が確認されたと組織の上層部から聞いた。

可能性として考えられるのがデュノア社の中に内通者がいたのか、あるいは奪われたのか。デュノア社はその事について何も発表していない。

いずれ本件についての詳細は究明が必要になるだろう。

 

佐助・椿・遥の3人で暴走したISを阻止すること。

やつの通るルートを予測した上で待ち伏せをして20分が経過したとき、レーダーに反応する。

ハイパーセンサーで視認を終えると、すぐさま戦闘モードへと気持ちを切り替える。

向こうも気付いたらしく、戦闘態勢に入ると無数の凶弾が解き放たれる。重装甲の機体が全面に躍り出ると、フィールドが後方にいる味方を包み込む。〝紅蓮〟の最大防御、〝PSフィールド〟が全面に展開された。遥は機体を飛行形態から人型形態へ移行すると同時に〝PSビームサブマシンガン〟で牽制する。

佐助は背部ウェポンランクに懸架している2本の柄を握ると、勢いよく抜き放った。実体刃の周りに薄く粒子がまとわり〝福音〟へと振り下ろされる。

すんでのとこでかわすと、無数の凶弾が降り注ぐ。機体を巧みに操り、ビームの驟雨を縫い潜ると剣先が敵を捉えた。だが、切っ先は空を切り裂くだけで、上空へ取り逃がしてしまう。

逃げた先には〝紅蓮〟の砲撃が待ち受けていた。しかし、それも避けた。

矢継ぎ早にビームを射かけ、叩き落とそうとするも発射するまでのタイムラグのせいで敵を捉えることができない。

 

「私が気をそらすから」

 

遥は2人にプライベートチャンネルで告げると、〝福音〟に銃口を向けトリガーに指をかける。

銃口から光が迸る。無数のエネルギー弾が〝福音〟の動きを封じる。

さらに、〝暁Ⅱ式〟のシールドの先端部分がわかれる。今まで1度も使用したことがないが、〝暁Ⅱ式〟のシールドにはクローモードが備えられている。

クローが〝福音〟を捕らえ、自由を奪う。

 

「私ごと撃って!」

 

遥の怒声が響く。

自分ごと撃てだなんて、馬鹿なことを。

こっちは、火力重視の機体だと言うことを忘れているのだろうか?

椿は両肩の〝PSキャノン〟の展開をする。だが、実の妹ごとを撃つことなんてできない。

しかし、これは〝福音〟を止めるチャンスなのだ。

迷いを振り払い〝PSキャノン〟の同時斉射を行い、遥ごと撃った。

爆発し、煙が上がり、中から〝暁Ⅱ式〟が出てきた。

直撃する寸前に、〝PSシールド〟を腕から取り外したようだ。

 

「……やったのか」

 

「いや、まだよ!」

 

遥は、煙の方を直視した。

煙の中から福音が姿を見せる。右腕と左脚の下部は消えて無くなっていたが、光の翼を展開していた。

あの翼からは、厄介な攻撃を兼ねていることは分かっている。

どうすることもできない。動きを止め、止めを刺すなんてことは。

困ったものだ。

頭のなかで、何百・何千通りと考えたが、やはり思い付かない。

悩んでいると椿がプライベートチャンネルを使って呼び掛ける。

 

「私がこいつの動きを止める」

 

「無理だっ!そんな機体でできるはずない」

 

佐助は制止を呼び掛ける。

――火力重視の機体だ、できるはずがない。

 

「〝楓〟っ!」

 

椿が叫んだそのとき、〝紅蓮〟の肩部の、腕の、胸部の、脚部の装甲がパージされていく。

その中からは、女性を思わせる細身の体型。

椿の思考のみで〝楓〟を操り、瞬時に白銀の機体から目に見えない特殊なフィールドが展開された。

〝楓〟を中心に全方位放射されたそれは、〝福音〟をすっぽり包み込み、〝福音〟のシステムにある信号を届ける。

そして、〝福音〟に異変が起きた。外見的には何も変わったところがないように思える。

しかし、〝福音〟はまったく動かなくなっていた。最初からそのポージングで製作されたオブジェクトのように、ピクリとも稼働しない。トリガーにかけられている指が、それ以上引き込めないかのように固定されていた。

〝システムダウン〟。

それが〝楓〟の行った〝福音〟に対するアタックであった。

受け身を取ることもできず、地面に激突して土煙を上げた。

椿の眼差しが地表に落ちた〝福音〟を冷たく見すえる。

 

「敵と見なすものを制御下におく……」

 

まるで裁判官が判決文を読み上げるように、抑揚なく椿が言った。

 

「……これが〝楓〟の真の能力。橘椿のみに与えられた、マイスターへの〝リストレイントシステム〟」

 

──制止(リストレイント)システム。

ゆえに、彼女の存在は特別なものであるため、彼女に委ねられた。

 

「これで終わりよ」

 

〝PSビームサーベル〟を腰だめに構え、目標に向かって加速していく。

〝楓〟が〝PSビームサーベル〟を突き出し、〝福音〟の胴体を貫いた。

突き刺さったのを確認すると、サーベルを引き抜いた。

そして、〝福音〟は完全に機能を停止し、やっと戦闘が終わった。

 

「あれは一体‥‥?」

 

遥は今になって、あの機体を疑問に思った。

組織のデータバンクに記載されていない未知の機体。

突如として〝福音〟の動きが止まったのは分かったが、あのシステムは一体なんだと言うのか。

これは聞かない方が、組織的にいいのかもしれない。

 

「戻るでござるか」

 

「うん」

 

「了解……」

 

3人は破壊した〝福音〟を回収し、合流地点を目指し飛び去る。




次回から最終章へ突入しますが、その前にキャラクターを新たに紹介しようと考えていますので宜しくお願いします。
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