「総理。総理宛への手紙が……」
「見せてみろ。下がってよい」
手紙を受け取り、部屋の中を自分だけにすると封を切って中身を確認する。
文の内容はこう記されていた。
【漆山武人総理大臣殿。貴方が選んだ選択肢は、間違いだ。間もなく日本政府は、我々が排除勧告するだろう。日本のIS学園にテロリストを匿っていることは、貴方は知っているだろう? 国民にこの事実を伝えなければならない。後悔したところで、もう遅いだろうが貴方の答えを翌日聞かせてもらう】
漆山の表情が曇る。選択肢の指す理由は、分かっていた。
だが、どうしてこの事が政府以外の人間が知っていたのかが、彼にとって一番の問題。
彼はしばらく考え、結論を急いだ。
しかし、良い方法が見つからないまま1日が過ぎてしまう。
翌朝、総理の元に面会を求める者が官邸の近くまで来ていた。
彼は、官邸から少し離れた面会用の部屋へ移動する。
数分後、面会者が扉をノックして中に入る。顔を見れば、なんと少年だったのだ。
「初めまして、漆山総理。昨日の手紙――お読みになりましたか?」
少年の面会目的は、おおよそ見当がついていた。
手紙の内容に関しての返答を聞きに、わざわざ官邸まで来たのだ。
他の者には、大切な来客だと上手く言いくるめて彼を面会室に連れてきたのだ。
「選択肢を間違えたとは――どういう意味だね?」
少年が「フフ」って鼻で笑うと、漆山の様子を伺ってから質問に答える。
「それは……世界を騒がせている武装組織ですよ。貴方はご存知のはずだ」
世界を騒がせている武装組織、漆山の脳裏にあの組織が浮かぶ。
では、少年はなぜ間違いだと主張しているのか?
彼は少年に問う。
「私設武装組織〝BC〟のことだろう?」
「もうじき公式発表で、国連が加盟国に呼び掛けて会議行いますが――恐らく日本は呼ばれないでしょう」
部屋の置物を見物しながら、少年は淡々と答える。
「それを……民間人である君がなぜ知っているのかね?」
民間人がこの情報をどこで入手したのか、普通に考えればおかしい。
少年の正体は、一体何なのか?
「では総理、貴方に2つの選択肢を与えましょう。1つ目は組織に味方し国連に滅ぼされるか、2つ目は国連に味方し、共に組織を滅ぼすか」
少年が、漆山に2つの選択肢を提示する。
彼は、しばらく思考を巡らせる。1つ目の案は、組織と共に確実に滅びること。
2つ目の案は、組織を見捨て国連と共に滅ぼすこと。
後者を選択したところで、果たして自分に危害が及ばないか心配している。
考えが纏まったところで、彼は決断した。
その選択肢は、
「無論1つ目と答えたいところだが、自国の信頼を失うとまずいことだから後者を選ばせてもらう」
と答えたのだ。
だが、漆山の考えを始めから分かっていた少年は口元を歪ませ、彼に気付かれることはなかった。
「分かりました」
少年は、愛想よく言葉を返すとポケットからUSBを取り出し、机に置くと別れの言葉を告げる。
「〝さようなら〟、漆山総理大臣」
少年は、総理大臣と別れてから数分後携帯端末で連絡を取る。
その電話相手は、少年が属する組織のリーダーであるリード・リボーン。
「やあ大和、仕事は終わったかい?」
リードは、爽やかな口調で成果を聞き出す。
「はい、全て予想通りの回答でした」
少年、大和は話した内容を伝え終えるとリードは礼の言葉を述べる。
「ありがとう。後日、君に指示内容を纏めたミッションデータを送るよ」
「分かりました」
――兄さん、もうすぐだ……
少年の瞳は狂喜に満ちていた。
次回から最終章へと入ります。
彼らを待ち受ける運命とは?