果たして、ミッションは成功するのか?
それでは第4話です。
1stチームが遂行するはずだったミッションが、2ndチームにより行われていた。
どうしてなのだろうと考える時間はなく、彼らは倭の部屋に集まって、真ん中に置かれたテーブルを中心に5人が座って難しい顔をしている。
「それでこのミッションについてだが、どうやら条約違反のISがあるそうだ」
と直貴が空中ディスプレイにミッションデータを表示して難しい顔をする。
なんで難しい顔するのかと思うかも知れないが、今回はISを使用した亡国企業の拠点に武力介入をするからだ。
それにミッション開始日は、今日の午後3時からなのだ。
「たく中途半端な時間だな……」
翼が呆れた表情で言う。
「……それでもやるしかない、それが戦争根絶のために繋がる大事なミッション。〝ブルーコスモス〟の理念を果たすためだ」
無表情ながらも自分の意思を示し、呆れた表情をしている翼に向かって言った。
「倭は、ミッション用の機体は完成したの?」
と聞いたのは月光椿だ。
彼女のいう通り、専用機持ちとしてこの学園に転入したのだから機体を持っていないと怪しまれてしまう可能性があることに恐れたからだ。
「陣さんによれば、間に合わないから〝暁〟を武力介入に使ってという連絡が入ってきたよ」
月光遥が状況を報告する。
倭が端末を操作させて、確認を終える。
「機体の最終調整は、俺に任せてくれ」
直貴が一同を見据えると、倭に視線を合わせる。コクリと頷きを見せると、4人も了承したように首を縦に動かす。
いよいよ、本格的の武力介入が始まる。命のやり取りをこの身で実感するのだ。怖くないと言えば嘘になる。
倭は目の前で力無き人々の命が散っていく姿が頭から離れないまま現地へ到着した。
「いよいよ僕が開発したISの実戦投入か。楽しみだな~」
白衣を身に付けた男が、椅子に腰掛けてニヤニヤとしているのが、開発者の陣博士だ。
その傍らにもう1人白衣を身に付けた少し髭を生やし、モニターに目をやった男は直貴・倭の父親である吉良直哉。
「でも、どうして君の子がマイスターに選ばれたのか?」
「さあ分からない。誰かが候補にいれたしか考えようがない」
「細かいことは気にしても仕方ないか……武力介入を見届けようじゃないか」
「そうだな」
――頼むぞ、しくじるなよ……
「なんだありゃ?」
上空からISが近づいてきている。いまでは降下してくる機体の形状をはっきりと視認することができた。〝リヴァイブ〟や〝打鉄〟とは根本から設計コンセプトが違うようだ。〝打鉄〟は日本の鎧や武士をイメージした形状で、〝リヴァイブ〟は〝リヴァイブ〟で違う。ならあれは何だ?
「……〝暁〟目標を確認。これよりファーストフェイズを開始する」
降下するのを途中で止め、空中で姿勢をとるとこちらに向かって何か突きつけている。
今回は火力特化型の外装装備〝ニーダー・ブレンネン〟。
〝暁〟の姿を隠すために陣が考案した外装装備で、両肩・両膝にビームキャノンを取り付け、〝紅蓮〟が使用するビームバズーカの改良型で片手持ちができる上に連射も行えるようになっている。
視認できないが何かが光っているのは確かだ。その光がだんだんと膨らむと形ができはじめる。それは丸い球状の光へとなる。
球状の光はゆっくりとここに接近してくる。近づけば近づくほど大きく見え、その光は本の一瞬にして亡国企業拠点の屋根を吹き飛ばした。辺りには破片が飛び散り煙も上がっている中、影らしきものが見えた。それもあの球状の光を放った機体だ。
「ファーストフェイズ終了。セカンドフェイズに移行……目標を攻撃する!」
両手に持っている武器を構えてすぐ一条の青いビームが基地内に撃ち込まれた。
混乱する亡国企業は打つ手が無く、攻撃された場所が悪かった。武器・弾薬に奪取したISの格納庫がやられたからだ。
辛うじて助かったのは待機形態で身に付けていたIS、つまり幹部と一部の者だけだ。
「なんだてめぇーは! 人様の土地に土足で入ってよ」
幹部と思わしき女性が崩壊した瓦礫の上に立っていた。
見た目は約30歳ぐらい。釣り上がった目。その瞳から物凄い殺気が伝わってくる。
「ただじゃ帰さない、それに命も貰う!」
展開したISは、やはり奪取されたデュノア社製の第2世代〝ラファール・リヴァイブ〟だった。
カラーリングは通常カラーから悪をイメージさせるダークブラックに塗り替えられ、両肩にガトリング砲、腕部はシールドと一体化した攻盾システム〝リュストゥング ・シル〟、脚部に内蔵された小型ミサイルを装備したカスタム機。
目の前の敵は微動だにせずじっとしている。
まるで電源を落とされたかのように、ただ立っているだけだ。怖じ気づいて動けないのか、あるいは見下しているのか。
どちらにせよ敵にかわりない。
「貴様ァ、黙ってないで何か言えよ!」
幹部の女は両肩に装備したガトリング砲の弾を撃ち出した。だが敵はいまだに動かず避けようともしない。女は当たったと確信した。だが、敵のISに無数の弾丸が当たることなくキラキラと光る何かに防がれた。
「防がれ……た?」
機体をすっぽり包み込む球体は、襲いかかる凶弾から守られていた。
「ならこいつで……!」
女はこの組織の〝リヴァイブ〟に装備する共通の武器を両腰からナイフが射出される。両手にしっかりと握り、スロットルを全開にし排気部が唸りを上げる。
球体にすっぽり包み込まれている機体向かって飛びかかった。
「くらぇ!」
女の操る機体のスピードと運動性に、〝アーマーシュナイダー〟の切っ先が敵ISの首のジョイント部に突き立てたと思った。しかし切っ先は謎の球体により防がれナイフは宙を舞う。
右手を挙げた。その手には〝PSバズーカⅡ〟を握り、銃口が青く光始める。光が溢れてたところでトリガーを引いた。女の操る機体に向けられ、至近距離で青いビームが放たれた。
「きゃぁっ!」
機体全体に大きな衝撃が走り相手から突き放される。
被弾した左股の装甲に目をやると生身の足が見えていた。
なんて恐ろしい威力なのだろうか。 これだけの火力をISに持たせるとは……
――ならここで殺る!
女の操る〝リヴァイブ〟が手に残ったナイフ〝アーマーシュナイダー〟の矛先を向け突っ込んできた。
「……頼んだ翼」
岩石の林立する荒野の一角、モスグリーンと白を基調としたISが岩壁を背にもたれるような恪好で戦況を見据えていた。狙撃型ISBCー003〝零〟。手には長距離射撃用PSスナイパーライフルを握っていた。
「タイミングは俺に任せろか。これが〝零〟と神道翼の力だ」
どこか陽気な笑みを浮かべた神道翼は、V字形センサーが下にスライドしてガンカメラモード用のカメラアイが現れた。カメラアイのレンズが絞り込まれ、標的に照準が固定される。接眼用モニターに映し出された〝 リヴァイブ〟にポインタが重なったとき、翼はトリガーを引いた。〝PSスナイパーライフル〟から発射された光線は、寸分の狂いもなく〝リヴァイブ〟が握っている〝 アーマーシュナイダー〟を撃ち弾いた。
「俺の射程圏内にいる限り、逃げれないぜ」
更にトリガーを引き〝リヴァイブ〟のSEを奪っていく。戦線離脱をしようとする〝暁 零〟を追おうとするも〝PSスナイパーライフル〟から発射される光線に邪魔をされ苛立ちを覚える。
「このままおとなしく、エネルギー切れになってもらう」
トリガーを引き続け当たり続ける粒子ビームに身動きさえできない〝リヴァイブ〟はついにエネルギーがゼロになった。
倭は 〝暁〟を敵に背を向けフワッと浮かび、背中から大量の光の粒子を噴出させて、一気に上空の彼方へと飛び立っていった。
「ここまでなら来ないはず」
安堵していた九条だが、目の前からさっきと同じキラキラ光る粒子を噴出する機体が、急速に接近してくる。
「まだいたのか……そいつを貸せ!」
「しかし、九条さん――!」
「いいから早くっ!」
九条は焦ったのか、部下の進言も聞かずにISを装着した。
展開しようとしたそのとき、痛みが体中に走った。まるで何かに蝕まれるような、自分の体が何者かに侵食されているような感覚。
感覚ではなく侵食されているのだ。その名の通り侵食する機体〝イロージョン〟なのだから。
その形状は異様でISと言うより化物のようだった。
「くぅぅぅ……この程度の痛み、なんとも」
「目標を捕捉、あの方の予測はさすが。〝暁Ⅱ式〟、これより目標の排除行動に入る」
白とオレンジ色のトリコロールで、両膝には飛行機の翼部みたいに展開され高速で目標に接近する。
右手には高い連射性能を持つ二連装ビーム砲〝PSビームサブマシンガン〟を握っていた。2つの銃口から青いビームが化物のようなISに着弾した。
更に高速を維持したまま流れるように後ろに回り込み背後から〝PSビームサブマシンガン〟を撃ち込んだ。
奇妙なISはクローを展開すると、飛び回る〝暁Ⅱ式〟に攻撃を入れようとする。が、動きが早く捉えることができない。
「なによ……あの気味悪いのは」
嫌悪感を抱きながら遠くで見ていた双子の姉月光椿は、不機嫌だった。
艦隊戦や要塞攻略と対IS戦を想定して作られた重厚フォルムのIS、BCー006〝紅蓮〟。右手に握る〝PSバズーカ〟が大きく振り上げられ、両手でがっちりと支えられた。そして胸の前で目標に向かって構えられる。
〝PSバズーカ〟の奥から光が膨れ上がっていく。エネルギーをチャージしているのだ。光は刻々と大きくなっていく。まるで人がジャンプするときに、ぎりぎりと足のバネを引き絞り、力を溜め込んでいくように。
そして完全にエネルギーが充填されたところで、椿はトリガーを引いた。
〝PSバズーカ〟から巨大なビームが放たれる。圧倒的な破壊力を持ったまばゆい光だ。巨大ビームは〝イロージョン〟の機体を包み込み、溶解させ、蒸発させ、機体の限界を超えたところで爆発させた。
爆発の煙を残し、ビームの光だけが尾を引いて彼方へと消えていく。
〝紅蓮〟は〝PSバズーカ〟の構えを解いた。
「サードフェイズ終了」
「了解」
安堵する椿に遥。後は佐助がフォースフェイズを完了させるのみ。先にミッションをクリアした倭と翼はIS学園に帰っているだろうし早く戻ってゆっくりしようと思い 、IS学園へ帰った。
「拙者は清掃仕事でござるか……」
フォースフェイズを開始した猿飛佐助。
BCー004〝朧〟。全ての機体開発の元となった〝 朧火〟のフレームをほとんど引き継いだ機体。
黒を基調としたトリコロールに、組織初のステルスシステムを搭載している。右手に握られている〝朧〟専用の〝PSビームライフル〟が半壊した亡国企業の格納庫を襲った。
フォースフェイズのミッション内容はファーストフェイズの〝暁〟の攻撃による格納庫の破壊、それにより敵が反撃をしてくることを予想し、セカンドフェイズは〝零 〟の狙撃能力を活かし敵ISのパワーダウン。
サードフェイズは高機動型IS〝暁Ⅱ式〟の牽制により火力特化型IS〝紅蓮〟が条約違反機を排除する。 フォースフェイズは半壊した格納庫を綺麗に後始末をすること。抵抗する者たちを片付け終え、格納庫にわずかに取り残されたISは、爆発と共に跡形もなく無くなった。
「フォースフェイズ、終了でござる」
「無事終了のようだ」
吉良直哉は結果を見て満足している。これで成功しなければどうだって話だから。
「ところで、バックパックは完成した?」
陣が開発中である装備に関して伺う。
「あとは装備を届けるだけだ」
「倭君、格闘戦が得意なのによく戦えたね。それに合わせたバックパックだろうね」
組織の機体を開発したメカニックの陣博司は、付き合いが長い直哉にバックパックの詳細を求める。
「すでに完成していた〝セブンソードストライカーパック〟、それを強化するのが〝ソードストライカーパック〟だ」
「これを使う日が楽しみだよ~」
陣は満足したのか、ノートパソコンのキーボードを叩き仕事を再開する。
直哉もまた、新たな武装開発のためドックへ戻った。
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