これから物語は動いていきます。
MISSION6「内通」
私設武装組織BCが亡国企業への武力介入から3日が経つ。
各マイスターたちは、IS学園で、次のミッション通達が来るのを待っていた。
現在、エージェントたちが情報を収集を行っている。
その間、彼らは学園で大人しく過ごさなければならない。
あの武力介入から世界は動き出そうとしている。
我々は初めて世界の表で、注目されるよう武力介入した。これは世界に対する警告、武力で解決または民族紛争を行おうとするもの全て、武力をもって駆逐する。
組織を全面的に支援する1人の男が、顔だけをモニターに映さず声明を発表した。
『我々は私設武装組織〝ブルーコスモス〟だ。全人類に告ぐ。我々はこれより全紛争にて武力介入を開始する。争いを生むものとなるもの。これは警告である』
椅子に腰掛け、体格からして歳のとった老人。
これを見て腰を抜かしたのは政府だけでなく、IS学園もだった。
老人だから腰を抜かしたのではなく、その声明だ。
なぜなら、ここもその対象になるかも知れないと結論付けたからだ。
しかし、声明を発表しても本当に活動するのかという疑問が浮かんでくる。
教師たちがモニターを切り替えようとしたとき、緊急ニュースが舞い込んできた。
『ニュースです。たった今声明を発表した私設武装組織が、イラクへ武力介入を行った模様。ご覧ください、映像には見慣れぬISが……』
それは見たことのないフォルムのIS。
人型兵器と言ってもいい。それに排気部からキラキラと光輝く物が排出されている。
映像に映されているのは、抵抗をするまもなく制圧されてゆくというより武器の威力が妙におかしい。
そこで教師たちは、最も考えたくない最悪なことを思い浮かべた。
リミッターの解除。
IS本来の性能を最大限に引き出すことができ、まともに殺り合えばパイロットを死に追いやってしまうほど解除することが危険なのである。
だから、IS学園ではある程度リミッターをかけるよう各代表候補生や学園のISに設定を義務付けるようにし、生徒たちの安全を心掛けている。
しかし、例外が1つだけある。
それは戦争だ。
極一部の者だけにしか知らない、本当のアラスカ条約。
こんなことになれば、決まった数しかないコアを失えば2度と製造なんてできない。
彼らの勝手な都合で作られた条約は、〝ティウンス〟と呼ばれる新たな国家によって破られようとしている。
軍本部が、地球軍と戦争になりかけている。
理由はただひとつ。地球軍は遺伝子を操作するなど忌み嫌い、人為的によって命を産み出すことは間違っていると主張している。
人間は授かり生まれいずもの。故に神の理に反していると彼らは訴えている。
それに普通の人間と比べ、身体能力、学習能力が優れ差が出てしまう。
彼らは我慢してきたが、とうとう堪忍袋の尾が切れ、民間人が移住した宇宙コロニーに攻撃を仕掛けた。
無論、彼らも黙っている訳にもいかなかった。罪無き同胞たちが撃たれたのだ。許すはずがない。すぐ行動に出た。
〝ティウンス〟は、秘密裏にISの大量開発を行っていた。
拠点制圧用から各地に適したISまでも作り上げた。
まだ水中用のISだけは開発に至ってないと聞いている。全身装甲にしたとしても、もしエネルギー切れを起こせばどうなるのか、結果は目に見えている。
水中用ISを除き、〝ティウンス〟は総攻撃を開始した。いつしか〝ティウンス〟は国連から独立した国家を立ち上げ、遺伝子操作した者たちを〝GM(GENE MANIPU LATION)〟と呼び、開発途中で諦めていたコロニーをISを利用して造り上げた。そこを自分等の住みかとし居場所を作ったのだ。
そして、戦力の準備を整え終えてから〝ティウンス〟は地球に攻撃を仕掛け、戦火の火蓋が切って落とされた。
もうじき、専用機持ちを交えてのタッグマッチ戦が開催される。
クラス代表戦にもIS委員会などのお偉方が、今大会も来客になるそうだ。
その他に、各国から来ている代表候補生のお偉方も。
かなり緊張に包まれた中、持てる力を発揮しなければならない。大会はまだだが、少年は少々緊張していた。
それを解すため、故郷の春風島に散策していた。
やっぱりここの風と町の雰囲気は落ち着く。自然と疲れが体から抜けていく感じだ。
「もうすぐ夏休みか……そろそろ教え子たちにも立派になってもらわいと」
「その通りなのです、兄さん」
彼らの名は、星野優人、星野心。IS学園に通う1年生で日本代表候補生。
その実力は計り知れない。
「それにしても、最近は物騒な世の中に……」
優人が最近の情勢について語り出す。
「怖いです」
心が珍しく表情が暗くなる。
今の地球上で遠く離れた場所で戦争が実際に起こっている。
彼ら、〝BC〟の武力介入により結ばれた糸が切れ戦争を起こすきっかけとなった。
優人は彼らの行動を決して許さない。争いを無くすのに武力で解決することは間違っている。
「たまにはゆっくり過ごすのも悪くない」
だが、そんな彼らに平和の一時は訪れなかった。
突然優人のシェルに緊急通知音が鳴り響いた。
それは何者かに基地の襲撃を受けているからだ。
「早く行かないとみんなが――!」
「なーんだ、こいつらつまんないな」
彼女は不敵な笑みを浮かべていた。その顔は余裕で満ち溢れている表情。
目の前に広がるのは、戦闘に負けた第8基地の部隊だった。基地内は至るところから煙りが昇り、優人は不審な人物を目にする。
「待ってましたぁ! おー待たせってね!」
「よくも……」
優人の怒りのボルテージが上がり、声を荒げる。ISの展開を素早く終えると即座にライフルを構え射かける。
両肩に設置する外套状2枚のシールドが機体を覆い、ビームを触れされることなく歪曲させた。
「そんな……ビームが曲がる!?」
「そんなんでこの私を殺ろうって?」
相手は余裕の表情を浮かべ、笑っている。
「なめんなよ!」
スナイパーライフルを構え、スコープに目をあて、レンズで照準を絞る。
――当てる!
引き金に指をかけるとトリガーを引いた。光条は、寸分の狂いなく真っ直ぐと銀色機体へ。
トリガーの引く動きを確認した瞬間、優人は機体を操作しすんでのとこでかわす。
――こいつ、強い……
苦笑じみた表情で、優人はライフルを拡張領域へ格納する。
周りの状況を把握するため、ハイパーセンサーを駆使して探すも反応がない。
「余所見……それはいけないね」
射程距離に問題なく確実にエネルギーを効率よく奪うためには、攻撃を当てられないようかわし守ること。
守りこそ最強。彼女はいつものように守りの態勢をとる。
「どうして……」
なぜだ、なぜここを狙う?
――答えろ……
「どうしてここを狙う?」
「大人しくしな……すぐ楽にしてやるからよ!」
――もう1機?
しまった、ビームを歪曲させる奇妙なISを気をとられ過ぎ、もう1機が長身のランチャーを構える動作に気づく。腰だめに高エネルギーを放った。
そのエネルギーは、〝銀翼〟の脚部装甲を溶解させ抉った。
「おいおい、そいつは鹵獲するのだよ」
(これだから、困るのだよ……短気の人間は)
「やあ〝銀翼〟のパイロット、君のそれ頂けないかな?」
見た目は17といったところか。眼帯の少年は微笑みかけて問う。
その瞳は違和感を覚える。戦場を駆けてきた優人には分かる。あれは殺気だ。
「断る……と言えば」
「う~ん、そうだね……」
少年は口元を歪ませる。彼の視線の先は後ろを睨み付けた。
そこに黒い機体がいた。首元にコンバットナイフ〝アーマーシュナイダー〟を突きつけていた。黒い機体はステルスシステムを用いて〝銀翼〟の背後へ回り込んでいた。
「これかな?」
少年の右手のみ部分展開を行い、アンカーが射出される。〝銀翼〟を捕らえようとアームが左右に開く。黒い機体を踏み台代わりにすると瞬時加速を行う。アンカーは捕らえるはずの標的を見失い、動きが止まったように思えたその次の瞬間。
90度に曲がると真上へ回避した〝銀翼〟へ目掛けて上昇する。優人はライフルを拡張領域から即座に取り出すと、撃ち落とすようにビームを撒き散らす。
「くどい!」
再び腰だめにランチャーが解き放たれる。
優人は機体のエンジンを切り、落ちるようにして回避してみせた。彼がさっきいた場所にビームが通り過ぎる。
「その機体、いただく!」
態勢を立て直したところへアンカーが迫りアームが〝銀翼〟を掴むとそこから電気が流れ、優人は苦しみの声を上げる。
手を勢いよく下に振り下ろすと、白銀の機体は地面へ叩きつけられる。
ハイパーセンサーで気を失っているのを視認すると、拡張領域からデータ抽出専用の機械をコールする。
ケーブルを接続し、データ抽出を開始した。
「なんか残念だね。だって、こいつ(COMPULSIVE DEPLOYMENT)の出番が無かったから」
「もしかして、パイロットの意思関係なしに強制展開させる装置だった?」
「そう、通称〝CD〟。名前はダサいけどね……データ抽出完了、帰るよ」
ISは解除され、地面に横たわる少年を残して彼らはこの島を後にした。
そこから約1時間は経過し、とある研究室に来ていた。
白衣を着た男が出迎えた。
「〝はかせ〟~データ持ってきたよ」
「あ~もう~、〝はかせ〟ではなくちゃんと呼んでよ、いくらその字だからってさ」
「こんなことをして大丈夫なのか? いくらなんでも組織は日本政府直轄だと言うのに、裏切る行為だよ? どうして〝ティウンス〟に?」
少年は問う。
「いずれ分かるさ。なんたって僕と彼は遺伝子操作に関与していたし、それにあの例のエンジン開発のために5機のISに搭載させ、実験しているのに」
「あーあ」とため息着くと、ポケットから端末を取り出し渡す。
「これが例のデータだ」
男は口元を歪ませ「ありがとう」と述べる。
「どの日か、確実に君たちはぶつかるだろう」
どうしようもない事実。目指すものは同じでも、進む道が異なっている。交わることのないまま――。
「昨日のガキ、大したことないな」
「そう?」
レックスとメアリーは、昨日白銀の機体の交戦に関しての会話を交えながらブリーフィングルームに向かっている。
あの見開く目、ビームが曲がることに驚いた表情。予想外の事態に動きが硬直したかのように見えた。
「俺たちには敵わねぇよ」
彼女はクスクス笑った。彼の余裕振る顔に対して笑ったのだ
「笑ってんじゃねーよ、バーカ」
子供のように言い返すレックス。腕を頭に回し鼻唄を始める。
「馬鹿はあんたよ」
――星野優人……次はその命を貰う!
体の血が煮えたぎり、熱くなるのを感じる。彼女は彼の後を追いブリーフィングルームへ歩みを再開する。
少年、星野優人は眠りから覚醒する。体を起こそうとするが、まるで重りがのし掛かるような感覚がし、体を起こすことができない。
最悪なことに、昨日の襲撃により数名の命が奪われ、格納庫(ハンガー)が1つ落とされた。
警備態勢は万全なはずだったが、あのようなビームを曲げるシールドを持たれては、対処のしようがない。
「情けないよな……」
優人は落ち込んでいた。
心と夕が見舞いに来たので明るく振る舞うようにした。
彼の様子を見る限り、明日にでも退院できそうに思える。いつも訓練生が誤って撃ったミサイルに当たっても死なないぐらいなのだから大丈夫だと安心していた。
が、今回ばかりは命の危険を覚えた。戦闘をして分かったことは彼らは自分達と違って幼少期からずっと戦闘訓練を施されていたのだと考えられる。
「優人、大丈夫か?」
夕が心配の言葉を掛ける。優人は笑って返すが仲間の犠牲のことによるショックのほうが大きかった。
――今度こそ守ってみせる……今度こそ
「無理はするなよ」
「分かってるさ」
優人は返事をするものの、外の風景を眺めながらこのときばかり〝力が欲しい〟と願った。
第2章突入後に登場人物が増えました。
追々簡易紹介をします。
さてこの章は物語の中でも大事なことが多くなります。
それでは次回。
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