5/15 宿泊研修と実地研修(スタジエール)を間違えていたので修正しました。ご報告ありがとうございます!
第十三話〜宿泊研修〜
『宿泊研修』とは、遠月学園の高等部一年生全員が参加する強化合宿である。毎日過酷な料理の課題が出され、低評価を受けた生徒は即刻退学を言い渡される地獄の合宿。毎年、多くの生徒がここで脱落していき、酷い年は半数以上がふるい落とされた。
はーい!現場の諸星圭です。いや〜絶好の宿泊研修日和ですね!私は今、遠月学園の高等部一年生達の恒例行事、宿泊研修が行われる遠月リゾートホテル“遠月離宮”にお邪魔しています!では早速、生徒達の顔を観てみましょう!あれれ?皆、元気がないぞ?そんなんじゃこの宿泊研修は乗りきれないぞ★
うん。ごめん。気持ち悪い上にこれ俺のキャラじゃないし。こういうのは創真の初食戟の時に司会してた、“川島麗”さんなんかが良いと思うわ。さて、何故一年生の行事に三年生である俺が参加しているかというと、話すと長くなるから簡単に一文で説明しよう。
総帥に行ってこいって命令されました。ねえ?俺って仮にも十傑だよ?仕事はいいの?帰ったら溜まってるとか、そんなことあっても俺絶対やらないからな!絶対だぞ!
まぁさすがに総帥もそこまで鬼ではないだろう。信じよう。信じないとやってられん…
はぁ…別に研修を受ける訳じゃなくて講師陣のサポートとかだから良いけどさ。あ、やべっ!堂島さんに挨拶しないと。
ノックをし、入室許可をもらい中へ入る。
『堂島銀』さん、元遠月十傑第一席で歴代最高得点で学園の卒業試験をクリアした第69期卒業生。現在は遠月リゾート総料理長兼取締役会役員という地位にいる。極星寮OBでもあり、極星寮の黄金時代を築いた一人でもある。
ちなみに俺達、第90期生の宿泊研修の時、この人も講師を担当していた。
「失礼します。高等部三年 遠月十傑特別席 諸星圭です。総帥の命により参りました」
「うむ。二年ぶりだな、諸星。話は総帥から聞いている。しっかりとサポートの方、頼むぞ」
「はい!」
直立不動で緊張した面持ちで挨拶をする俺に対し、椅子に座り事務的に返す堂島さん。しかし、俺を見る目は見定めようとするような目であった。
「えっと…堂島さん?」
「ふむ。あの頃からしっかりと成長しているようだな」
「ハハハ、さすがに一年の頃から変わってなきゃ残ってませんよ」
苦笑混じりで応える俺を、先程と変わらない目をして未だに見ている。
「…諸星、料理人としての道は諦めたのか?」
「!?」
突然、そう言ってくる堂島さん。この人は知ってる側か…大方、総帥から聞いたんだろうな。
「いえ…諦めた訳では…ありません。ただ……」
先を言おうとするが、突然扉が勢い良く開き飲み込んでしまった。な、なんだ!?テロリストか!?
驚いて振り返ると、そこには乾さんがいた。どうやら先程の堂島さんとの会話を聞かれていたようだ。
「乾さん!?」
『乾日向子』さん、元遠月十傑第二席で第80期卒業生。在学時は『霧の女帝 』と呼ばれていたとのこと。現在は日本料理店『霧のや』の女将だ。
普段はマイペースでおっとりとした雰囲気の彼女からは想像できない行動に驚いている俺と、深い溜め息を吐いて見ている堂島さん。え?なに…この状況…俺はどうしたらいいの?
「圭君!料理人を辞めるってどういうこと!?」
戸惑っている俺を他所にいつの間にか回復していた乾さんが肩を掴み揺さぶってくる。
「ちょ!?お、落ち着いてください」
「これが落ち着いていられますか!?貴方は卒業後、“霧のや”で働いてもらうんですから!」
「えぇ〜〜〜!?」
俺の知らない所でいつの間にか就職先が決まってました。ってかマジで何も聞いてないんですけど!?それよりもいい加減揺するの止めてもらわないと吐いちゃう!
「日向子、諸星は“リストランテ・エフ”に来るからそれはない」
「は!?いや、あのそれよりーー「ナニヲフタリハイッテルンデスカ!ケイハ“テゾーロ”ニクルニキマッテルジャナイデスカ!」…誰か…助けて…」
いつの間にか現れていた水原さんとドナートさん。助けを求める俺を他所に、次々と俺の就職先が勝手に決まっていく。いや、マジでヤバイ…意識が…
「お前ら!そこまでにしろ!諸星の顔が青ざめているぞ」
「は!?大丈夫ですか!?圭君!」
堂島さんの一喝で解放され、乾さんに心配される。いや、あんたが原因なんだが…
ぐったりとしている俺に堂島さんが水を渡してくれる。貴方が神か…今ならなんでも言うこと聞いちゃう!
もらった水を飲み、落ち着いてきた。水が上手いぜ!
「助かりました。ありがとうございます。堂島さん」
「気にするな。それより立ち聞きとは感心せんなぁ」
そう言って入ってきた三人を咎める堂島さん。めっちゃ怖い…
「私は日向子が叫んでる声を聞いたから来ただけ」
「ボクモデスヨ」
『水原冬美』さん、イタリア料理店『リストランテ・エフ』のシェフで、元遠月十傑第二席の第79期卒業生である。小柄で基本的に無表情のせいか、ちょっと人形っぽいと思ってしまう。本人には言えないけど。
『ドナート・梧桐田』さん。オーベルジュ『テゾーロ』のシェフで、第80期卒業生。乾さんとは同期生だ。フランクでいい先輩だよな。
そう事実を述べる二人。乾さんの方に全員の視線が集まると、あわあわと動揺する乾さん。
「わ、私は“たまたま”通りかかって、そ、そうしたら中から声が聞こえてきたので」
「ほお…ここは会場とも乾の部屋からも随分離れているが?」
堂島さんの威圧に耐えきれなくなったのか「すみません」と言って頭を下げる乾さん。うん、確かに今の言い訳は苦しいな。たまたまを強調しすぎるとこが怪しすぎだし。
「シャペル先生に挨拶に行ったら、圭君がここにいると聞いて…来てみたらあんな話をされてたのでつい…」
「他の二人もそうか?」
「「まあ(ハイ)」」
申し訳なさそうに言う乾さんと堂島さんの言葉に頷く二人。なんというか色々とタイミングが悪かったな。
すると、また別の二人が来た。来たのは四宮さんと関守さんだった。
『四宮小次郎』さん、パリのフランス料理店『SHINO'S』のオーナーシェフで、元遠月十傑第一席。第79期卒業生で水原さんと同期である。フランスで、日本人初となる『プルスポール勲章』を受章した尊敬する一人の先輩だ。向こうでは『野菜料理(レギュム)の魔術師』と称えられている。
『関守平』さん、鮨店『銀座ひのわ』の板長で、遠月卒業生である。
ちなみにこの場に集まった全員が第90期の時も来ていた。
瑛士や他の現三年十傑達もリクルートされてたっけな。ももは乾さんとドナートさんにお持ち帰りされそうになっていたな。面白そうだから傍観してたけど。
おっと、昔を振り返ってる間にも話は進んでいたようで、どうやら二人は堂島さんに挨拶と開会式が始まる時間になり呼びに来たようだ。挨拶が終わった後にリクルートも忘れなかった。
リクルートについては、適当に誤魔化して逃げ、堂島さんとの話も開会式のため、打ち切られた。
会場となるホールに移動した俺達は、壇上の袖に控えていた。そして、シャペル先生の挨拶と宿泊研修の説明がされていた。シャペル先生の紹介で今回の特別講師陣が壇上に姿を現すと一年生達がざわめきだした。まぁそうなるよな。俺達の時もそうだったし。
袖から少しだけ顔を出して一年生達の様子を窺うと、四宮さんが創真の隣の生徒を指差して壇上から降り退学を言い渡した。理由は簡単で、整髪料の問題だ。匂いが強い柑橘系の整髪料をつけていたためだ。御愁傷様と心の中で合掌をする。全員が壇上に戻る四宮さんに視線を集中させていると、今度はドナートさんが恵に近づいて口説き始めた。なにやってんだ!?あの人は!恵は渡さん!渡さんぞ!
そんなことを考えていると今度は乾さんが恵を口説き?始めた。あの、食べごたえがあるってどういう意味ですかね!?やめて!純真な恵をそれ以上汚さないで!
シャペル先生の睨みに気づいた二人が壇上に戻ると、改めて卒業生達の姿を見て名だたる面々であることを確認したようだ。
そして、俺もシャペル先生の紹介で登壇した。
「今回、諸星には講師陣のサポートをしてもらうことになっている。諸星、簡単に挨拶を」
そう言ってマイクを渡される。挨拶って…困ったな。適当でいいか。
「えーと、おはようございます。諸星圭です。俺もこの宿泊研修を体験しました。ハッキリと言っておくと…地獄です。俺達の代でも何人もの生徒が退学していきました」
地獄と退学という言葉に反応する一年生達。生唾を飲み込み真剣に見つめるやつ、さっきの生徒を思い出してざわめくやつ、様々だ。
「…ただ、こういったことを乗り越えた先に俺達先輩がいる。また笑顔で再会できることを、祈っている」
そう言ってマイクをシャペル先生に返し、後ろに下がる。
次に堂島さんがマイクを受け取り挨拶とこの合宿の厳しさを伝え、移動の号令をする。
それぞれが激励等をし、会場から去っていく。一年生達を見送りながら「頑張れよ」と小さく呟いた。
無理やり主人公を捩じ込ませました。総帥には逆らえんのよ。
主人公は先輩達を尊敬しているので名字呼びです。
堂島・四宮・水原・関守は主人公を名字呼びですが、日向子とドナートは名前呼びにしました。
卒業生と絡めようと90期生の年も同じメンバーということにしました。
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それでは!