極星寮のお兄さん?   作:ジョニーK

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さて、もも回です。


第二十四話〜落ち着く空間〜

竜胆との旅行から帰って三日が経ち、本日は最後の一人であるももとのデートだ。デートなのだが、何故か居るのは俺の仕事部屋だ。家デートならぬ、仕事部屋デートなのか?いや、仕事とプライベートを混同したらまずいだろ。とはいっても、仕事をしている訳ではなく、ただ応接用に置いてあるソファーに二人並んで座って寛いでるだけなんだが。

午前中は急な仕事ができてしまい、処理をしていた。ももに連絡をして、別の日に変えるか聞いたところ、今日で構わないとのことでそれに甘えさせてもらった。仕事を終えてももに連絡をし、待ち合わせや時間はどうするのか確認すると、俺の作業部屋で待つよう指示を出され、今の寛ぎモードという訳である。

 

 

「な〜、どこか出掛けたりしなくていいのか?」

 

「うん。ももはこれでいい」

 

 

つい、本当にこれでいいのか確認するも、ももは頷いてから持ってきた鞄から弁当箱を二つ取り出す。そういや昼飯がまだだったな。

 

 

「はい。これ」

 

「いいのか?」

 

 

ももは弁当箱の一つを俺の前に置き、食べて良いのか聞くと頷いて応える。じゃあ遠慮なく、と言って可愛らしい弁当箱の蓋を開ける。

 

 

「おお、美味しそうだな」

 

 

中身は色鮮やかで、バランスもとても良さそうだ。さすが十傑第四席だ。スイーツ料理を得意とはしてるが、別に他の料理ができないという訳ではない。まあそんなことは当たり前なんだが、久しぶりにもものこういう料理を食べるから、なんとなく新鮮。

 

 

「それじゃいただきます」

 

「いただきます」

 

 

早速、ほうれん草のおひたしを一口。うん。美味い!次は、里芋の煮っころがしを一つ。おほー!これも美味い!美味い!美味いぞおおお!

いかん。あまりの美味さに美味いがゲシュタルト崩壊してきた。よくよく考えると、現十傑の料理を食べれるって結構な贅沢だよな。普段から試食やらなんやらで、その辺の感覚がおかしくなったのかもしれん。

 

 

「デザートもあるから」

 

「マジか」

 

 

ももは当たり前でしょ、と言いながら小さな口に料理を運ぶ。ブッチーは横に置いて、綺麗な所作で食べている。

俺は俺で、ガツガツとドンドン口に料理を運ぶ。そんな俺を見て、少しは味わって食べないさいよ、とももが注意をしてくるが、俺の手は止まらない。

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 

気づけば完食していた。そういえばお茶を淹れてないと気づき、席を立つ。デザートもあるということだから、少し渋めでいいだろう。

お茶を湯呑みに注ぎ、一つをももの前に置き、もう一つを自分の前に置いて、一口飲み一息つく。ももはありがとう、と一言お礼を言って、一口飲み食事を再開する。ももが食べ終わるまで暇なので、ももを観察してみる。背は低く、童顔。普段はブッチーというぬいぐるみを持っていて、体型も相まって下手したら小学生と間違えても仕方ないかもしれない。

 

 

「圭、今ものすっごく失礼なこと考えてたでしょ」

 

 

ものすっごいジト目で見られた。それと見すぎだと注意をされてしまった。ごめんごめん、と謝罪をするとまた食事を再開した。

また暇になってしまった。ももの観察はもうできないし、食べ終わるまで大人しく待つとするか。

 

 

 

 

数分後、ももが食べ終わりデザートタイムとなった。出来の方は、さすがは遠月きってのパティシエと言われるだけのことはあるガトーショコラで、美味しかった。ここでも自分の感覚がおかしいのではないかという疑問が浮上した。普通の人ならリアクション大の一品なのだが、リアクション小くらいの反応しかできなかった。舌が肥えてきたということで片付けても良いのだろうか、とももの若干不服そうな表情を見てそう思った。さて、デザートも食べ終わり、これからどうするかと考えていると、横からももが袖を少し摘まんで引っ張っている。

 

 

「どうした?やっぱりどこか行くか?」

 

「ううん。今からお出掛けしたりするのもあれだしいい」

 

 

顔だけももの方へ向け、首を傾げて問いかけるも、顔を横に振り否定する。ただ、もじもじとして何かを言おうとしているので待つ。ここでトイレか、と言おうものなら強烈なビンタが飛んでくることは間違いないので、黙って待つ。

 

 

「えっと、その…」

 

「おう」

 

「ひ、膝枕して」

 

 

袖を握る力が強くなり、俯いてしまった。そんなことかと思って、安堵して一つ息を吐く。そんな俺の反応にビクッと反応するももを見て、苦笑を浮かべて自分の太股を軽く叩き、ももを待つ。少しすると、ゆっくりと頭を太股へ乗せてきた。

 

 

「前にもやったことあっただろ。何を今さら恥ずかしがってるんだよ」

 

「うるさい!」

 

 

ももはブッチーに顔を押し付けて耳まで真っ赤にしている。俺的には本当に今さらなんだがな。もっと恥ずかしいことを入院してる時にしてただろ。

 

 

「ごめんごめん」

 

 

ももの頭をゆっくりと撫でながら謝るも無視をされてしまう。どうしたものかと撫でるのをやめ頭を掻く。

 

 

「――でて」

 

「ん?なんだって?」

 

「もっと撫でて」

 

 

最初はブッチーを顔に押し付けているため上手く聞き取れなかったが、二回目は顔からブッチーを少し離して言ってくれたためなんとか聞き取ることができた。

そんな言葉を聞いて、つい苦笑を浮かべてしまい、またゆっくりと頭を撫でる。

 

 

「やっぱり圭に撫でられると落ち着く」

 

「そっか」

 

 

ももはそう言ってブッチーを胸元で抱きしめ、顔を隠すように腹の方へ寝転がる。俺もソファーの背もたれに身体を預け、楽な姿勢になる。

 

 

「ちょっと固いのがいただけないけど」

 

「それは仕方ない」

 

 

そんなくだらない会話を笑いながらする。

しばらく話していると、沈黙が訪れる。外では、セミが忙しなく鳴いている。今頃、一年の選抜に選ばれたやつらは必死に試行錯誤しながら調理をしているんだろうな。

気持ちの良い沈黙に包まれながら、そんなことを考えながら物思いにふける。

 

 

「たまにはこういうのもいいでしょ?」

 

「ん。そうだな」

 

 

なんだかんだこの空気に落ち着いている。安心というか普段通りでいいというか。確かに外に出て遊んだりしたりするのも良いが、こういうのも良い。

 

 

「ももは圭とこうしてるのが一番好きだから」

 

 

そんな嬉しくもあり、恥ずかしくもあることを、平然と言ってのけるもも。さっきまでの照れ屋はどこへいったのやら。

 

 

「そ、そっか」

 

 

少し言葉に詰まってしまった。べ、別に嬉しくなんてないんだからね!…俺のツンデレとか誰得だよ。

 

 

「そうだ」

 

 

ももは何を思いついたのかいきなり起き上がり、ソファーに座り直す。何事かと姿勢を戻し首を傾げていると、ももが自分の太股を軽く叩いている。

 

 

「今度はももが膝枕してあげる」

 

 

ももはフフンと鼻息を鳴らし、ドヤ顔をしている。何を思いついたのかと思えば、そういうことか。確かに、いつもは俺が誰かしらにやったりすることはあれど、やってもらうってのはないな。

 

 

「んじゃ、そういうことなら遠慮なく」

 

 

ももの太股に頭を乗せると、ビクッと反応するもも。なにやらアワアワとしているが、気にせずに膝枕を堪能する。さっき膝枕をする時に感じた甘い匂いがまた鼻腔をくすぐる。少しドキドキするが、なんだか落ち着く。

 

 

「ちょ、ちょっと!いきなり過ぎるわよ!」

 

「いやだって、ももがしてくれるって言うから」

 

 

声を荒げるももに、目を閉じながら応える。うーとか、あーとか唸っていたが漸く落ち着いたのか、小さく息を吐くもも。そんなに緊張とかするならやるとか言わなきゃ良いのに。

そんなことを考えていると、不意に頭を撫でられた。目を開けると、ももが顔を赤くしながら撫でていた。

 

 

「ど、どう?」

 

「ああ。悪くないな」

 

 

不安そうに聞いてくるももに、微笑を浮かべて応える。そんな反応に安心したのか一つ息を吐いて、頭を撫で続けてくる。

 

 

「っていうか悪くないってなによ」

 

 

撫でる手を止めて、今度はジト目で見つめてくる。ごめんごめん、と謝罪をすると今度は溜め息を一つ吐かれ、再び撫で始められる。ああ、本当に悪くない。

 

 

「こういう日も、悪くないな」

 

「そうね」

 

 

お互いに穏やかな表情を浮かべて、また沈黙が部屋に訪れる。

しばらくすると、どちらからともなく寝息をたてて寝始めてしまった。

 

 

 

 

 

 

どれくらいの時間が経ったのだろうか。ゆっくりと目を開けると、窓から射し込む夕陽の陽射しに目を細める。目が明るさに慣れてきたので身体を起こす。軽く身体を解しながらももの方へ視線を移すと、まだ眠っているようだ。

身体を解し終えて、ももの優しく頭を撫でる。手に頭を擦り付けるように身動ぎをするが、起きる気配はない。気持ち良さそうに寝てやがるわ。

せっかく身体を解したのになんだが、二度寝をするのも悪くないかとももの寝顔を見て思い、起こさないようにももの頭を移動させ、膝枕をしてまた目を閉じた。

 

 

 

再び目を覚ました時には、日が沈んでいた。時計を確認すると20時を過ぎた頃で、さすがに寝過ぎたと思い、まだ眠っているももを起こす。

寝惚けているももは、ブツブツとなにやら文句を言いながら目を覚ます。とりあえず現在の時間を告げると、漸く意識が覚醒したのか、慌て始める。

 

 

「ね、寝顔見られた」

 

「いや、そっちかよ」

 

 

慌てていた理由が、寝顔を見られたというなんとも今さら感の強いことだったので、脳天にチョップをするというツッコミをいれてしまった。

 

 

「いたっ、背が縮んだらどうすんのよ!?」

 

 

頭を押さえてこちらを睨みながら抗議をしてくるが、スルーして夕飯はどうするか問う。スルーしたことに対して、文句を言ってくるがこれもスルー。そんなことをしていると、ももは頬を膨らませて拗ねてしまった。

 

 

「悪かった。悪かったよ。んで、本当にどうする?」

 

 

溜め息を一つ吐いてから、苦笑を浮かべて謝罪をする。そんな俺を見て、ももも溜め息を一つ吐いて、こちらを向く。まだ若干怒っているようだが、いつものことなのでももが応えてくれるのを待つ。

 

 

「圭が料理しなさい。ももがサポートしてあげるから」

 

「了解」

 

 

そう言って作業部屋を二人で出ていく。昔、俺が勝ち取った調理場に移動し、夕飯を作る。リハビリも兼ねたかったので、一人で作ることにしてもらい、ハンバーグとサラダを作った。

ハンバーグがなんだかんだで一番作っている料理ということで選んだ。ももにも一応合格をもらい、食事をして片付けをして、ももを送るために部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

「ここまででいい。今日はありがとう」

 

「こちらこそ」

 

 

ももの住んでいるマンション前に着き、数歩前に躍り出たももがこちらに向き、お礼を言ってきた。微笑を浮かべて右手を挙げ、反対側に戻ろうとすると後ろから足音が聞こえ、振り返ろうとするも誰かに抱きしめられ、できなかった。

 

 

「もも?」

 

 

抱きしめてきた相手に呼び掛けるも、反応がない。これで間違えてたら恥ずかしいな。いや、時間も時間だし、さっきまで周りには誰も居なかったから間違いないだろう。何より、身体と身体の間にあるぬいぐるみの感触が相手が誰であるか伝えてくる。

 

 

「好き」

 

 

か細い声でそれだけを言って離れ、また足音が遠ざかっていく。振り返るとマンションの玄関を潜るももの後ろ姿を確認した。後ろ姿が完全に見えなくなるまで、俺はその場に立ち尽くしていた。




ももはデートというわけではありませんでしたが、こういうのも有りかなと思った今回でした。


さて、これでヒロイン組とのデートは終了。主人公は誰を選ぶのか。はたまた選ばないのか。
おそらく次回が最終回です。
それでは!
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