竜胆、すまん!
『極星寮』、遠月学園の学生寮。大御堂ふみ緒が管理している。
かつては多くの十傑を輩出し、十傑全員が寮生だった黄金時代が存在した。現在では入寮者が少なくなり、『変わり者の巣窟』と呼ばれているが、十傑メンバーである、諸星圭や一色慧も所属していることから寮生の実力は確かである。
諸星side
竜胆と食事をしてからあいつの住んでいるマンションまで送り終え、今は自転車と写真部に依頼していた写真を回収して、可愛い後輩たちの待つ極星寮に向かって自転車を漕いでいる。
あ、あとついでにふみ緒さんね。
「(誰がついでだい!)」
………気のせいだな。心の声に反応するなんてないし、仮に声に出ていたとしても聞こえる距離ではないしな。うん。そういうことにしておこう。
エスパーふみ緒とか需要はないだろうし。ないよね?
極星寮に着いて自転車を置き携帯で時間を確認すると、既に時刻は21時になろうとしていた。ふむ。充実した時間を過ごしていると時間が経つのは早いな。
「ただいまー」
玄関の扉を開け、いつもより声を張って帰宅を告げる。
すると、ふみ緒さんが部屋から出てきた。
「おや、圭。おかえり。随分と遅かったね」
「ただいま。ふみ緒さん。仕事があったこと忘れててね。」
「そうかい。それにしたって遅かったじゃないか」
「あはは、まあちょっと野暮用がありまして。あ、これお土産です」
今日行ったお寿司屋さんのお寿司を渡す。
「あら、ありがとね。後でいただくよ。それよりも早くあの子達の所へ行っておやり。帰ってあんたが居なくて落ち込んでたよ」
「おっと、それはいかん!それじゃふみ緒さん、失礼します」
「あいよ。あ、圭!」
「???」
自分の部屋に不要な荷物だけを置き、皆の分のお土産と写真を持ち宴会場になっているであろう『丸井善二』の部屋である205号室に向かおうとすると、ふみ緒さんが声をかけてきた。一体なんだというのだ。俺は早く後輩たちとふれあいたいのに!
「私をついで扱いとは良い度胸してるねぇ。罰として明日の朝食作り手伝いな!」
「イ、イエス!マム!」
「ん。それじゃ頼んだよ」
敬礼をして、ふみ緒さんが部屋に戻るまで見送る。
ってか怖い怖い!え?なに!?うちの学校の女性達は皆エスパーなの!?あの声は気のせいじゃなかったのかよ!?ってかあれはテレパシーなの?脳内に直接話しかけてきてるの?あとで使い方教えてもらおう。
「(あんたにゃ無理だよ)」
だから怖いって!ってかこの距離で使うなよ!!
大きな溜め息を吐きながら205号室を目指す。
直ぐに205号室に着き、ノックをして向こうから悠姫の「はーい」と言う返事と「ここは僕の部屋だぞ!」という善二のツッコミとワイワイと盛り上がる皆の声が聞こえてくる。
そんなやり取りを聞きながら微笑みを携えながら待っていると扉が開く。
「はーい、あ!諸星先輩!おかえりなさい!」
「おっと、ただいま。悠姫」
俺だと気付いた悠姫が抱きついてきて、それを受け止め少し頬を赤らめ微笑みながら空いている方の手で頭を撫でる。
「えへへ、って違う!帰るの遅すぎじゃないですか!」
「「「「そうだそうだ!」」」」
悠姫のあとに続いて、峻と恵以外の一年生組が悪ノリをしてくる。
「ごめんな。ちょっと仕事と野暮用でな。それより!ほら、皆にお土産のお寿司だぞ!」
「「「「「わーい!」」」」」
お寿司の入った箱を見せたあと空いているスペースに箱を置くと、またしても峻と恵以外の一年生組がはしゃぐ。
俺はちょうど良い所に座っていた慧の横に座る。
「おかえりなさい。諸星先輩。はい、飲み物をどうぞ」
「ただいま。ありがとう、慧」
お互いに微笑みあいながら挨拶をし、乾杯をする。
一年生たちの寿司争奪戦を眺めながら、今日のことを慧と話している。
「そういえば式典の方にもいらっしゃいましたよね?」
「ん?あぁ、皆の晴れ姿を撮りに行ったんだよ。ほら、慧もしっかり撮っておいたからな」
写真を袋から出し、慧の姿が映っている物を渡す。それと他の皆が映っている物を何枚か出し見せる。すると、瞳を輝かせながら写真を見始める。
「ありがとうございます。おぉ!皆素敵ですね!」
「だろ!?これなんか珍しく緊張してる大吾と昭二だ!それとこっちはーー」
二人で一年生たちの写真を見ながら盛り上がっていると、寿司を食べ終わったのか此方に一年生たちが寄ってくる。
「今日の式典の時の写真だよ。順番に渡していくからね」
「「「「はーい」」」」
「「うぃーす」」
それぞれに渡して行くと、様々な反応をしお互いに見せあっているようだ。ふと、まだ渡していない一人を探して部屋を見渡すと、端の方で一人座る峻に気付き渡しに行く。
「お疲れ、峻。はい、これは君の分だよ」
「お疲れ様です。諸星先輩。ありがとうございます」
微笑みつつ挨拶をし写真を渡すと受け取る峻。
隣に座り、自分の分を笑顔で眺めていると峻が話しかけてきた。
「先輩はどうして俺たちの写真を毎回撮ってるんですか?」
「あぁ、う〜ん…何て言えば良いのかな…」
何とかわかりやすく伝えようと腕を組ながら黙考をし、口を開く。
「趣味ってのもあるけど、そうだね………写真とか動画ってさ、その時の自分とか風景に会えるじゃん?」
「………」
「料理の道ってのは長くて長くて、ゴール何てあるのかって考える時があるんだよ。それの答えは一人一人が持ってると思う。自分の店を持って料理長になった時、三ツ星認定された時とかさ。でも、壁にぶち当たる時ってあると思うんだ。そんな時にさ、夢を追い始めてギラギラした目をした自分を見るとなんかこう、負けてられないなって俺は思っちゃうんだよ。ほら、これなんて良い顔してるじゃないか」
峻に渡した一枚の写真を手に取り見せる。
それはとても眩しくやる気に満ち溢れた顔をした峻が映っていた。
「だから皆にも通じるかはわからないけど、そんな時に役立てくれればなってね」「………」
話終えて隣を見ると此方に顔を向け、何かを考えているような峻。
峻が口を開きかけた時に、峻とは反対側の視界の外から何かが腕に抱きついてきた。
そちらを見ると驚いてしまった。涙目で腕にしがみつきながら上目遣いで此方を見ている悠姫がいた。その姿に更に驚いてしまい動揺してしまう。
「ど、どうしたんだ悠姫!?どこか痛いのか!?」
「い…「胃!?胃が痛いんだな!?待ってろ!今胃薬をーー」良い話だよ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
立ち上がろうとした瞬間に悠姫が声をあげた。
それにまたまた驚いてしまった俺は、周りに助けを求める為に声を出そうとして止めた。
「「うおおぉぉーーーん!!」」
男泣きをしている、大吾と昭二。
小さく鼻をすすりながら目にハンカチをあてる、善二と涼子と恵。
隣の峻は顔を反対側に向けているためわからない。
離れてその光景を優しく微笑みながら見ている慧がいる。
俺は離れている一年生たちに手招きをして、近くに座らせ全員を抱き締めるように優しく包んだ。
「よしよし」
落ち着かせるように背中をポンポンと叩く。
「悠姫、君の天真爛漫な姿は皆を元気にするこの寮のムードメーカーだ。それを皿に乗せれば必ず皆を笑顔をできる」
「うん」
「涼子、君は落ち着いていてお姉さんっぽくて頼られることが多いと思う。けど、たまに見せる可愛らしい笑顔も皆が知ってる。辛くなったら皆を頼ることを覚えていきなさい」
「はい」
「恵、君は人を思いやることができるとても優しい子だ。臆病なところもあるが、大丈夫。君が努力してることもやればできることも、ここに住んでいる皆は知ってる。自信を持ちなさい」
「はいっ」
「大吾、昭二、良いライバルを持ったな。二人がお互いに高めあってるの気付いてるか?そんな関係になれる二人を羨ましく思うよ。大切にするんだぞ?」
「「ウス!!」」
「善二、君は本当に研究熱心だな。その努力する足を決して止めたら駄目だ。今は小さな一歩かもしれない。でも君が歩んできた道に嘘はない。いずれそれが君の宝物になる。頑張れよ。あ、あと体力つけような」
「はいっ!」
「峻、君は寡黙でクールだ。周りのこともよく見ている。それに自分の料理に対する自信も持っている。それは中々できることじゃない。俺にもその自信を分けてほしいくらいだ。その自信と燻製料理が君の支えになっていると思う。そこに皆も混ぜればもっと強固になるはずだ。」
「…とっくに混ざってますよ」
「それならよし!頑張れよ」
「うす」
それぞれに語りかけながら頭を撫でる。
それに対して、各々が返事を返してくれた。
さっきまで泣いていた皆の顔が自然と笑顔を浮かべている。
うん。これなら大丈夫だな。
「さっ!なんかしんみりしちゃったけど、宴の続きをしよう!」
「「「「「「「「おおーーーーー!!」」」」」」」」
パンっと両の掌を合わせ仕切り直しをし、宴の続きが始まった。
時計の針が天辺を越えてかなりの時間が経った。善二は床で寝てしまっている。そんな彼にそっと毛布をかける慧。
そのタイミングでいつものように片付けずに去っていく悠姫たち女子組と、大吾・昭二の二人が部屋をあとにし、最後に峻が出ていこうとして足を止め、此方に顔だけを向けていた。
「峻?どうした?」
「???」
慧も首を傾げている。
「その…ありがとうございました」
それだけ言うと部屋から出ていった。
俺と慧は顔を見合せつい笑ってしまった。
ある程度、片付け終わらせ善二の部屋を出た。
慧がもう少し話したいというので今は、俺の部屋で慧と床に座りながら話している。
「う〜ん…楽しかったな」
両腕を上げ一つ伸びをして慧に微笑みかける。
「そうですね。先輩」
慧もいつもと変わらぬ微笑みを返してくれる。
だが、直ぐに真剣な表情に変えた為、「どうした?」と問う。
「さっき皆に話している時に顔がその少しだけ…「哀愁でも漂ってたか?」…はい」
ふむ。上手く誤魔化せてたと思ったんだがな…慧には気付かれたか。
他の十傑メンバーがあの場に居なくて良かった。皆、勘が鋭いからな。特に瑛士と竜胆は鋭すぎて困る。
「ごめんな。心配かけちまって」
「あ、いえ」
苦笑を浮かべながら謝ると、慧は視線を落としてしまった。
立ち上がり近寄って目の前に膝を曲げて目線を合わせる。
「ごめんな」
「…はい」
しばらく沈黙が空間を支配し、木々の揺れる音が聞こえてくる。
「必ず話すからさ。それまで待っててくれないか?」
「…わかりました。あ、あの先輩方には?」
先輩方というのは十傑の三年生たちのことだろう。
「いや、まだなにも。あいつらにもちゃんと話すよ。もちろん寮の皆にもな」
「はい。それでは明日、いやもう今日ですね。また後程。失礼します」
「おう。おやすみ」
「おやすみなさい」
慧と挨拶をして出ていくのを確認し、ベッドに横になる。
久しぶりにはしゃぎ過ぎたかな…疲れた…
ゆっくりと目を閉じ、今日の出来事を思い出しながら夢の中へ旅立った。
なんか書いてて某せんせーの最後の方のシーンの「一人一人に挨拶をしていたら時間が足りない」みたいな感じの台詞を思い出しました。
一人一人書くのに中々時間がかかりましたが、これでキャラ紹介みたいな感じにしようかと思ってます。
オリ主が卒業みたいな感じですが、まだしません。
なんかフラグっぽいものがありますが、どうなることやら。作者にもわかりません!
ではでは!(逃)