緋弾のアリア 悲しみの悪魔   作:osero

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第十一話『事件前の静けさ』

「暇だ……」

 

 翌日、ぐっすり寝ていたリンは重体のため、安静のために何も出来ず、何もするわけでもなく、窓を眺めていた。

 

 普通の人よりも回復速度が早いリンだが、さすがのリンでも重体ならそんなにすぐには直らないのだ。直る方法もなくはないのだが、それを使えば解決するのだが、色々めんどうがあるため、よっぽどの事が無い限り使わず、自然に直すようにしていた。

 

 窓の外に移る夕日を見ながら、暇な時間を潰しているとドアがノックされる音が聞こえ、視線を窓からドアに向ける。

 

「どうぞ」

 

 リンが許可するとドアから入ってきたのはキンジだった。相変わらず、だるそうな顔をしていたが、今日は何かに悩んでいるのか、深刻そうに顔を顰めていた。

 

「よおリン調子はどうだ?」

 

「まずまずだな。怪我よりも退屈な時間の方が辛いな」

 

「相変わらずだな……」

 

 リンのその言葉にキンジは軽く返すだけだった。それから、しばらく何もしゃべらず、沈黙が部屋を支配する。時折、キンジが何か言いたそうにリンに視線を向けるが、声がでず黙ったりをひたすら繰り返していた。

 

 それを見ていたリンはため息を吐き、キンジに問いただす。

 

「何か俺に相談したい事か、言いたいことがあるんだろう?」

 

 その言葉にキンジは驚いた様な表情をしていた。

 

「なんで分かった?」

 

「そんな視線をこっちに何回も向ければ何か言いたい事なんて分かるだろ……で、何を悩んでるんだ?」

 

 その言葉にキンジは思考していたが、やがてぽつりぽつりと今の自分の気持ちを声にだす。

 

「昨日アリアと言い合ったんだ。それで今日あいつがパートナーを探す理由を知ったんだ!」

 

「……それで?」

 

 キンジが感情を出すのが珍しくリンは驚くが続きを聞く。

 

「俺は……俺はどうすればいいと思う?あの力を使えば、俺はアリアを救ってあげれるかもしれない……でも、俺は……」

 

 (キンジお前変わったな……)

 

 リンは拳を握り震えるキンジを見てそう思った。キンジは今葛藤していたのだ。キンジにはそれだけの力がある。でも、過去に受けた傷は深い。だからそれの板挟みになっているのに気づいた。昔のキンジならそんな事考えず、ただ逃げるだけだったのに、今はアリアを救いたいと思い、自分に相談してきたのだ。だから自分は友として真剣に答える。

 

「……それを決めるのはお前次第だ。他人がどうこう言える事じゃない」

 

「それでも俺は!どうすればいいか分からないんだ……」

 

「分かってる。だから俺から一つアドバイスだ。それを聞いてキンジは自分なりの答えを出せば言い。人から言われた事を鵜呑みにするんじゃ駄目なんだ。自分で気づいて答えを出さないと、その思いなんて偽物だと思うから。俺が言えるのは一つ 後悔だけはするな。 これだけだ」

 

「後悔だけはするな……か」

 

 キンジはリンの言葉を聞き、頭にその言葉を留めるために言葉を刻む。それを見てリンは笑う。

 

「フっ。大丈夫だ。キンジは今感じてる気持ちをそのまま行動に移せばいいだけだ。アリアが何故パートナーを求めているのか、何にこだわっているのかは俺にはわからない。でもキンジはアリアのその理由を聞いて一瞬でも守りたいと思ったんだろう?……なら行動は一つだろ?」

 

 自分でも柄じゃないのは分かっていたが、友のためだと言い聞かせ、キンジに自分なりの考えを伝える。

 

「……あぁそうだよな。ありがとなリン!俺はもう行くよ」

 

 しばらく、考えていたキンジだがふと視線を上げた時、キンジの目は決意を決めた目であり、リンは頼もしさを感じていた。

 

「言って来いキンジ」

 

 部屋を出て走りさるキンジの背中を見ながら、そう声をかけていた。

 

 

 

 

 キンジが去ってしばらく、リンはただ何も無い真っ白な天井をぼんやりと見ていた。

 

「皆、良い意味で変わったな……」

 

 レキや綴、キンジ、それぞれが学校に来たときよりも頼もしくなっていたり、覚悟を決めていたりとそれぞれが良い意味で変わっていた。

 

「それなのに俺は……」

 

 皆がそれぞれ決意を決め、変わっているのに自分だけは何も変わっていなかった。自分の力の事も、気持ちもすべてを隠して、ただただ逃げている自分が惨めだと自嘲していた。

 

「かっこ悪いな……」

 

 ベットに背中をあずけ倒れこみ顔を隠す。夕日が落ち暗闇が部屋を包みこむ。物音もなく静かな病室でリンの言葉だけが虚しく響き渡る。

 

 

 

 

 

 

------------------

 

 リンの病室から出たキンジは柄にもなく走っていた。似合わないなと自分で思いつつもそれをやめようとは思わなかった。

 

 走りながら自分の事を考える。リンが来てから自分は変わったと、そう自覚する。最初は武偵をやめようとも思っていた。兄が死に自分の力を悪用され、武偵なんて目指すだけ無駄だとそう言い聞かせて生きていた。

 

 ただそんな日々から、リンが来て、その生き方を見て自然にリンと共に一緒にいる事がいつのまにか当たり前になっていた。そして聞いた事があるのだ。何故そこまで自分を犠牲にしてまで他人を優先するのか、周りに何を言われても気にしないのか。それを聞いたリンは何事もないように『ただ俺は失いたくないだけだ。だから俺は行動する。後悔なんて後で幾らでもできる。周りなんて気にしなくて良い、自分の思いを貫けばそれでいい』と。それを聞き、いかに自分の考えが小さいものだと思い知らされたのだ。

 

 その時から、明確に自分が酷く惨めに思えたのだ。周りを気にせず、自分の意思を貫く心の強さ。あの試合の時に見せた思いを貫くだけの実力。あの試合を見た時、一瞬でも自分がどこまで通用するか確かめたいとも思っていた。

 

「俺は……」

 

 まだ明確な意思は決まらないが、この瞬間だけは自分が感じたままに動こうと決意する。

 

「まずは……この事件の関係性を自分なりに調べるか」

 

 いきなりアリアの所に行こうとも、追い返されるのが見えている。だから、できるだけ情報を集め、アリアを認めさせる。

 

 そう覚悟を決めキンジはひたすら走り続ける。

 

 

 

 

 

 

 

東京が強風に見舞われた週明け、自販機の前にリンはいた。暇な時間を潰すために軽く病院の中を歩きまわり、喉が渇いていたのか、飲み物を買おうとしていた。

 

「ん?」

 

飲み物を買おうとした所で隣の方からお金が入れられた。

 

「さっさと買いなさい。私の奢りよ」

 

「あぁ、アリアか、それじゃ遠慮なく貰うよ。ありがとな」

 

 リンはコーヒーを買い。隣のアリアはミルクティーを買い飲んでいたが、美味しそうに飲むその様子が猫のようで思わず、いつのまにかリンはアリアの頭を撫でていた。

 

「なっ!い、いきなり、なにすんのよ!」

 

「す、すまない。つい猫みたいで可愛くて撫でてしまった」

 

「っ!か、可愛い!そ、そんな事いってもあたしは誤魔化されないんだから!

 

 顔を真っ赤にし、猫のように毛を逆立て噛み付くように怒っているのだが全然怖くなかった。むしろ余計撫でたくなったが、リンは我慢していた。

 

「……それよりこんな朝早くにどうしたんだ?学校がはいいのか?」

 

 しばらくアリアは騒いでいたが、やっと落ち着いたため、リンはこんな朝早くに学校も行かず、ここに来た理由を聞く。

 

「そうね、リンには言っておこうと思って、あたしは今日イギリスに帰るわ」

 

「いきなりだな……パートナー探しはもういいのか、そのために来たんだろう?」

 

「あたしが探してたパートナーはいなかったわ。リンがなってくれるのがいいんだけど、何か理由がありそうだから。だからあたしはこれからも一人で頑張るわ」

 

 そう言ったアリアは悲しそうでリンは罪悪感を感じる。だが、自分よりも合うパートナーがいると確信があり、またそのパートナーにふさわしい友は今頑張っているのだ。だからはっきりと言える。

 

「すまないな…組んでやれなくて、でもいるだろう。一人だけ、アリアにふさわしいパートナーがな」

 

「別にいいわよ。それよりあたしにふさわしいパートナーって……まさか、キンジの事?……あんなやつなんてあたしの見込み違いだったわ」

 

「まぁ、アリアがそうゆうなら別にいいがな」

 

「そ、そうよ。あんなやつ……期待してたのに……」

 

 顔を俯かせて悲しそうに言うアリア。

 

「まぁ、あいつにも色々あるのさ。それより、いつ帰るんだ?」

 

「今日の夕方の便で帰るわ。み、短い間だったけど、あ、ありがとう」

 

 それを聞いたリンは軽くだが頬が緩む。ちゃんとお礼が言えるんだなと関心していた。

 

「お礼いいなれてないんだな」

 

「し…仕方ないじゃない!友達なんて今まで少ししかいなかったんだから!」

 

「俺は友達と思ってくれていたんだな」

 

「そ、そうよ!悪い?」

 

 恥ずかしそうに言うアリアに相変わらず見ててあきず、それに友達だと思われていたのもリンには嬉しかった。

 

「いや、嬉しいなと思ってな。向こうに行っても元気でな」

 

「えぇ、頑張るわ」

 

 リンとアリアが話している時、病院のアナウンスが流れ、リンの名前が呼ばれていた。

 

「呼ばれたな。検査があるから、俺はそろそろ行くよ」

 

「あたしも帰るわ」

 

 お互いが別れを告げ、アリアがスーツケースを引きずりながら歩き出す。そんな後ろ姿にリンは声をかける。

 

「アリア」

 

「何?」

 

 呼び止められアリアは首をかしげる。

 

「一つだけ言っておく、アリアのパートナーはすぐ見つかる。これだけは断言しておくよ」

 

 きょとんとしたアリアだが、やがて笑う。

 

「フフ。なによそれ。でも期待しとくわ」

 

 そう言って今度こそアリアは病院を出て行き、リンはその後姿を見つめていた。

 

「さてと検査を終わらしてキンジに伝えないとな」

 

 そう言いリンは検査を終わらせるため歩き出す。

 

 

 

------------

 

 東京武偵高の教務科(マスターズ)そこに綴はいた。

 

「ふぅー困ったなー」

 

 タバコの煙を色んな形にして吐き出しながら綴は悩んでいた。魔剣(デュランダル)がもう潜伏しているかもしれないと諜報科(レザド)から報告が入ったからだ。

 

「どうしようかなぁー」

 

 元々そうゆう事は聞いていたのだが、リンの事を優先していたため対応が遅れていたのだ。だからどうしようか迷っていた。武偵高の秘蔵っ子の白雪が狙われているため、綴は慎重にならざるえなかった。

 

「んー……そうだ。良い事思いついたね。あいつにボディーガードさせるかぁー」

 

 椅子にもたれながら、考えていたが、よほどいいボディーガードを選ばないといけないため、悩んでいたが、身近にその存在がいる事を思い出したのだ。

 

「リンなら引き受けてくれるだろうしな」

 

 身近で見ている綴だからこそ、リンの力は分かっているし、まだ力を隠してることもなんとなくだが予測もできていた。それに白雪とリンは仲がいいため、白雪も断らないだろうと確信していたし、なによりリンなら安心してまかせられると信頼していた。

 

「今日もあいつの様子を見に行くかなぁー」

 

 ボディーガードの事が解決したため、日課になりつつあるリンのお見舞いに何を持っていくかを考える綴であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンは今、自分のバイクで空港に向かっていた。検査が終わった後、キンジにアリアが帰る事を伝えたのだが、キンジはそれを聞き、焦ったように今まで集めた情報を教えてくれた。そして、アリアが危ないと聞いて、リンは急いで羽田空港に向かっていた。

 

「まさか、『武偵殺し』がアリアを狙っていたとはな。それにしてもさすがキンジだな」

 

 キンジがこの事に気づいた事に関心し、一刻も早く着くためにリンは思いっきり握りスピードをあげ飛ばす。

 

「間に合ってくれよ」

 

 

 これから起こる事件に不安を抱えながらリンはバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

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